危機管理時の広報対応について、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

社内で不祥事が発生しました。現時点では不確かなところがありますが、世間に少なからずの悪影響を及ぼす可能性も出てきており、何らかの形で対外的な公表を行ったほうが良いのではないかという方向で社内意見が固まりつつあります。

いわゆる危機管理広報を実施するに際し、どういった点に着目しながら進めていけばよいのか教えてください。

 

 

【解説】

インターネットにより一個人が全世界に向けて情報発信ができるようになったこと、情報拡散を可能にする媒体が個人の手に届くところにあること、内部告発を行うことに対する従業員の意識変化がみられること等の理由で、会社が隠したいと考えている負の事実、あるいは会社(上層部)が把握しきれていない社内の問題が、一般公衆に漏れ出すという事態が相次いでいます。

そして、こういった事態は大企業特有の問題ではなく、中小企業でも同様に起こっています。

しかし、中小企業においては、リソースの関係もあり、危機管理時にどういった広報活動を行えばよいのかについて準備ができていない状態です。

そこで、本記事では、初動対応として何をするべきか(特に公表の是非に関する判断の仕方)、公表するとしてどういった方法を用いるのかを解説しつつ、一方で失敗例を踏まえての対処法、平時に準備するべき事項についても適宜触れつつ解説を行います。

なお、本記事では、中小企業を念頭に対処法を解説していますので、大企業の場合、ここに書いてある以上の事項を実践する必要があること、ご注意ください。

 

 

【回答】

 

1.心構え

 

何らかの会社不祥事が発生した場合、社長や役員が頭を下げて謝罪しているにもかかわらず、マスコミから必要以上に糾弾されている場面を見たことはないでしょうか。ただ、なぜマスコミがあんな偉そうな態度で接しているのか、居丈高なのか理解ができず、万一自分がその場面に関係した場合、果たして感情を爆発させることなく対処できるのか不安を感じる事業者もいるかと思います。

また最近では、マスコミではなく、一般市民(?)が電凸等と称して、突然電話をかけてきて話を聞かせろと言ってきたり、取材と称して突然会社に乗り込んできたり、法的な回答義務がないにもかかわらず、質問状なる文書を一方的に送り付け執拗に回答を要求するといった、従来のマスコミ対応とは異なる、新たな対応が必要となるケースも増加してきています。

ただ、いずれにしても媒体はともかく、社外に何らかの情報を伝達するという点で相違はありません。したがって、大きくは、

  • ①正確な情報を社会に発信すること
  • ②二次的な風評被害の拡大を防止すること

の2点を抑えながら対処すれば事足ります。

なお、マスコミ等へ対応する目的として、会社が既に負ってしまった悪いイメージの転換を図る(可能であればイメージアップにつなげたい)と考える会社もあるかもしれません。しかし、基本的にはこのような考え方は持たない方が無難です。なぜなら、あえて言ってしまうと、マスコミ等は会社を叩くことが目的であって、会社のイメージ回復などには一切興味を持っていないからです。あくまでも現在進行形で悪化する会社イメージの低下を幾分か軽減できれば儲けもの…、といった程度の認識で臨んだほうがよいものと考えられます。

 

ところで、日本独特の話かもしれませんが、マスコミ・自称マスコミを問わず、会社の「冷静ではない言動」をスクープとして入手しようとする傾向があります。要は、世間的に面白おかしな場面を入手しようと煽り・高飛車な態度を含めあの手この手を使ってきますので、とにかく淡々粛々と言葉を選びながら対応するのがポイントです(矢継ぎ早に質問を浴びせられると、どうしてもマスコミ等のペースにはまって早口での回答になりがちですが、あえてゆっくりしゃべることを意識すれば、案外冷静さを失うことはありません)。

また、マスコミ・自称マスコミを問わず、自らが正義だと判断した場合、正義のためであれば何をしてもよい(事業者の権利を侵害することや担当者の人権を侵害しても何ら問題ない)と考えている節があります。したがって、行き過ぎた行為に対しては、事後的にその都度文書にて抗議するといった対応が望ましいと考えられます(なお、その場で抗議するという対応はよほどのことがない限り、止めておいた方が無難です。なぜなら、感情的になった場面を面白おかしく使いまわそうと考えているのが、マスコミ・自称マスコミの狙いだからです)。

 

 

2.初動対応

 

(1)対外広報の一元管理化

社内で不祥事が発生し、いつ公表されてもおかしくないという場合であれば、ある程度社内準備ができるかもしれません。

しかし、会社の予期せぬところで不祥事が発生し、会社が把握できないまま世間の知るところとなり、突然、マスコミ等から連絡が入った場合、当然のことながら会社は事前準備などできていません。マスコミ等からの連絡になれていない社内は不安に包まれ、会社から適切な指示がない場合、従業員は仕方なく各人の基準で対応をすることになります。この結果、マスコミ等へ応答した者が憶測で(好き勝手に?)説明することになるため、ますます情報が錯綜し、対応が後手に回るということもよく見かける光景です。

結局のところ、マスコミ等から連絡が入った場合、

  • 応答した者が勝手に答えてはならないというルールを明確にすること
  • いったんは「担当者が不在であり、私からはお答えしようがない」と言い切ること
  • 社内で担当者が決まった場合、全ての対応は当該担当者にて一元管理すること

が重要となり、これは普段から徹底しておくことがポイントです。

なお、最近では、Twitter等での炎上騒動が生じた場合、会社想いの従業員が、プライベート時間に匿名で会社擁護の投稿を行うといった事例が散見されます。ただ、往々にして火に油を注ぐ格好になることから、プライベートであっても、一切他言無用であることを従業員に指示する必要があります。

 

(2)事実関係の調査

マスコミ等から何らかの問い合わせが入った場合、とにもかくにも調査を行うことが重要です。この段階で一切の調査を行わない、または調査を行ったとしても結論ありき(会社は問題行動を起こしていない)で対処するといった方針を取ることで、かえって騒動を拡大させる事例(例えば、不誠実対応である、隠蔽体質である等の批判を浴びる等)が多く存在します。是非誤った対応をしないでほしいところです。

事実関係の調査ですが、原則的には次のような事項を整理していけばよいものと思われます。

①誰が行ったのか(主体の特定)

②いつ行ったのか(日時の特定)

③どこで行ったのか(場所の特定)

④誰に対して行ったのか(客体の特定)

⑤何について行ったのか(対象・テーマの特定)

⑥どういった言動を行ったのか(内容の特定)

⑦どうして行ったのか(理由の特定)

 

上記のような調査結果と社内にある客観的な資料(証拠)と照合し、現状分かる範囲で裏付けの取れる事実関係を把握することになります。

なお、具体的な社内調査の進め方については、次の記事もご参照ください。

社内調査を進めるに際し注意するべき事項について、弁護士が解説!

 

(3)公表の有無

例えば、個人情報の漏洩事故を起こした場合や重大なPL事故を起こした場合、所管する行政官庁への報告が義務付けられており、社外に情報が出るという意味では公表に該当します。しかし本記事では、各法律に基づく報告義務については検討対象外とし、会社が自主的に世間に公表するか否かの問題について解説します。

さて、基本的な考え方ですが、次のような基準で判断すればよいものと思われます。

①顧客に対し人身被害が生じる可能性がある(健康被害など生命・身体に危害が及ぶ可能性がある)場合
⇒よほどのことがない限り公表するべき。

②顧客に対する人格権侵害(プライバシー侵害、個人情報漏洩、名誉毀損など)が生じる可能性がある場合
⇒昨今の社会情勢からすれば公表するのが原則と考えるべき。但し、被害者が特定でき連絡が付く状況であり、これ以上の被害拡大の恐れがない場合は非公表とする選択肢もありうる。

③顧客の財産権侵害を生じる(金銭被害を起こす)可能性がある場合
⇒例えば顧客に対して詐欺を働いた場合はもちろん、誤信を招くような表示を行っていた場合などが想定されるが、被害者が特定でき連絡が付く状況であり、これ以上の被害拡大の恐れがない場合はともかく、原則公表するべき。

④会社自らの信用失墜が生じる可能性がある場合
⇒例えば偽装(検査、品質、産地など)、反社会的勢力との関与、労働問題(ハラスメント、過労死、長時間労働など)、社内犯罪(横領、背任、詐欺など)などが想定されるが、不特定多数の第三者に影響を及ぼしうる場合、例えば偽装や反社関与問題については原則公表する、社内で処理することが第一義なもの、例えば労働問題や社内犯罪については原則非公表と考えてよい。

⑤その他
⇒例えば従業員のプライベート時の犯罪(暴行、痴漢、交通事故など)、不適切投稿(いわゆる炎上騒動など)などが想定されるが、原則非公表でよいものと考えられる。

 

なお、非公表という判断を行ったとしても、内部告発や公益通報、タレコミ等で世間の知るところになることもあり得る話です。このような場合を想定して、非公表決定時点において「なぜ公表しなかったのか」を合理的に説明できるように準備しておくことが肝要です。

 

(4)公表のタイミング

上記(3)の基準に沿って検討した場合、①及び②については可能性がある時点で(たとえ調査未了段階であっても)直ちに公表する必要があるものと考えられます。一方、③及び④については、一通りの調査が完了した時点で速やかに公表するのがベターと考えられます。

 

 

3.対外広報を行う場合のルール

 

(1)媒体の選択

①WEB(自社が管理するホームページ等での公表)

おそらく一番手っ取り早く、費用負担も少ない方法になると考えられます。また、ホームページの場合、字数や形式に制限が無いため、会社として説明したいことを漏れなく説明できるという利点があります。なお、最近ではSNSのアカウントを開設している会社も多いかと思いますが、SNSは色々と制約があるため、SNSで直接説明を試みるのではなく、会社のホームページに誘導するような投稿に留めたほうが無難と思われます。

一方、自社が管理するホームページ=コーポレートサイトの場合、そもそも訪問する人が限られていること、高齢者等の中にはインターネット自体利用しない人がいること、トップページ以外の下層ページにて公表した場合、訪問者も気が付きにくいこと等様々な問題があります。形式的には不特定多数の人が閲覧可能な状態になっているという点では公表とは一応いえるものの、伝播性が乏しく実質的には公表したと胸を張っていえる状態ではありません。

したがって、例えば、健康被害等が疑われる事態が生じた場合の対外広報として、WEBのみという方法は不十分であり、他の媒体での対外広報が必要になると考えるべきです。

 

②プレスリリース

中小企業の場合、新聞・テレビ等のマスメディアと直接的なつながりが無いことの方がむしろ通常なので、あまり用いられない方法ではないかと思われます。ただ、最近ではマスメディアが情報提供窓口を設けているのが通常ですので、直接的なつながりがなくてもアプローチをかけることは可能です。

さて、プレスリリースですが、要は新聞・テレビ等のメディアに対して、会社が積極的に情報発信し、メディアが当該情報を報道する(拡散する)ことで対外広報を行おうとする方法となります。

インターネットが社会に浸透したとはいえ、世代を問わず情報が伝播されるという点では、まだまだマスメディアの方が優位と思われます。また、なんだかんだ言いつつもマスメディアに対する信頼性は高く、情報の受取り側に対する響き方も異なってくるのも事実です。

ただ、プレスリリースを行った場合、マスメディアが必ず取り上げて報じるといった保証は無いこと、会社が意図した内容とは異なって世間に報じられる可能性があること、マスメディアからの問い合わせ対応が必要となること等の新たな業務が社内で発生する可能性があります。この点を意識しないままプレスリリースを行った場合、ますます社内が混乱するということにもなりかねませんので、注意が必要です(とはいえ、緊急性を要する場合、ある程度見切り発車で対外広報を行う必要性が高く、準備が整わないから公表しないというスタンスはとるべきではありません)。

 

③記者会見

中小企業の場合、積極的に記者会見を行おうと決めて対応することは稀であり、記者会見をしないことには収拾がつかない状況に追い込まれ、やむを得ず実施するというのが実情ではないかと思われます。

さて、記者会見を行うに先立ち、よくメディアトレーニングを受けたほうがよいという指摘がされることがあります。たしかに、メディアトレーニングを受けることができるのであれば、受けたほうが良いこと間違いありません。しかし、上記でも記載した通り、たいていの場合は会社が追い込まれて記者会見を行うことになるため、メディアトレーニングを受けるだけの時間的余裕がないのが通常です。したがって、メディアトレーニングを必ず受けなければならないと考えるのは禁物であり、ましてやメディアトレーニングを受けていないから記者会見の日時を先延ばしするといった対応は絶対にNGです。場合によってはぶっつけ本番も覚悟しなければなりません。

一方で、想定問答については、限られた時間内にできるだけ作成したほうが無難です。具体的にどういった内容を作成すればよいのかについては後述(2)で解説しますが、記者会見の場合、「聞かれなくても先に公表するべきこと」、「聞かれたら個別に回答するべきこと」、「聞かれても一切回答しないこと」(なお、事実を隠蔽するという意味ではないことに注意)という視点での整理も重要となります。

 

あと、記者会見を行う場合、記者会見の様子・内容について、自社にて撮影することを心掛けるべきです。最近の傾向として、発言の一部が切り取られ、会社が意図する内容と真逆に世間に受け止められてしまい炎上するといった事態が後を絶たないからです。残念ながら記者会見の内容について、マスメディアは本筋とは関係の無いことを面白おかしく報じる傾向がありますので、世間が誤解していると会社が判断した場合、撮影した記者会見の内容を公開し、前後の文脈も含めて世間に判断してもらえる体制を準備することが肝要です。

 

④電凸等(YouTubeの生中継など)

これは会社が選択するというよりは、相手が設定した媒体に巻き込まれてしまうと言ったほうが良いかと思います。

ユーチューバーに代表される「取材」と称した会社へのアプローチは、たいていは悪意に満ちており、会社の言い分を聞く姿勢を持ち合わせておらず、一方的に言いたいことだけまくし立てたうえで、あえて会社応答者を煽る等して反応を視聴者に楽しんでもらうといった、エンターテインメント素材として扱われている節があります。会社としては迷惑以外何物でもありませんし、付き合うだけ損を見ることは明らかです。

したがった、どういった目的で連絡をしてきたのかを問い質し、会社が対外広報を通じて伝えたいと考えている当事者属性に該当しないと判断できた場合、淡々粛々と取材には応じられない旨回答し、やり取りを切り上げることがポイントです。

なお、ユーチューバーとはいえ、会社が対外広報を通じて伝えたいと考えている当事者属性に該当する場合、通常の顧客対応を実践すれば足ります(この場合、その場で回答することが難しい場合は憶測で回答しないこと、曖昧な回答をしないことが重要です)。

 

(2)公開する情報の選択

対外広報を行う場合、どういった情報を公表するべきなのか取捨選択をする必要があります。ただ、一般的に公表したほうが良いとされる事項は決まっており、次のような事項が考えられます。

・現在の状況及び事実経過

・発覚・判明した経緯、理由

・被害の範囲、程度、影響

・今後想定される危険の有無、内容、程度

・現在行っている対応、対策

・原因

・再発防止策

・経営に与える影響の有無、程度

 

※文書で公表する場合、頭書、末尾で謝罪文言を入れたほうが無難です。

 

なお、上記以外にも、公開時点で発表できるのであれば、「被害補償の有無、範囲、内容」、「社内での処分状況」、「今後の見通し」等を発表することも考えられます。

一方、大規模な事故等で時間的に検討・確認する時間がない中で公開を要する場合、「現状」、「現時点の対応」、「今後の方針」を第一報として発表し、追って追加情報を公表するというやり方もあります。

 

(3)公開後の指摘に対する反論の是非

何らかの発表を行った場合、感情的な意見が出てきたり、嫌悪感が示されること、これ自体は致し方ないこととして謙虚に受け止めるべきです。

しかし、公表事項に対して事実と異なる旨の指摘があった場合、会社としても看過するわけにはいきません。なぜなら、場合によっては、会社が虚偽の情報を公表したとして、さらなる風評被害等が生じる恐れがあるからです。もっとも、何も考えずにただ反論しただけでは、「責任逃れしている」、「不誠実である」、「開き直り」等の批判を浴びたり、あるいは一方的に「嘘をついている」と罵られるなど、かえって風当たりが強くなることも少なくありません。

反論する場合、証拠が存在することはもちろんのことですが、当該証拠が第三者による検証が可能であるかという視点を持ったほうが良いかと思います。すなわち、当該証拠が何らかの形で世間の目に触れることになった場合、素人から専門家を問わず様々な属性を持った人たちから多角的な観点(多くの場合は粗さがしを含めた批判的な観点)から分析が行われるところ、何らかの欠点があった場合、会社の反論に問題ありとして更に誹謗中傷を受けるからです。

ケースバイケースにもよるかと思いますが、反論は焦って直ぐに出す必要性がない場合が多いため、確実な検討を踏まえた上で行うべきかと考えます。

 

 

4.なぜ対外広報を失敗するのか

様々な原因分析があるかと思うのですが、執筆者の経験事例に基づき、執筆者なりに整理すると次のようになります。

 

(1)行き当たりばったり対応

ある従業員に聞いたらAと言っていたが、別の従業員に聞いたらBと言っていて、会社から発信される見解がその時々で変わってしまうと、批判にさらされやすい傾向にあります。

もちろん、何らかの不祥事が発覚した直後は、十分な情報分析ができていないこと、情報が錯綜し整理がつかない状況であることは十分に理解ができます。しかし、それを差し引いたとしても、世間やマスコミは論理一貫性を非常に好みますので、憶測で見解を述べず、分からないことは現時点では不明であると回答する勇気を持ちたいところです。また、前述2.(1)でも解説した通り、対応窓口を一元化し、会社から発信される情報の統制を図ることも極めて重要となります。

 

(2)責任者が表に出てこないこと

日本独特の考え方なのかもしれませんが、“トップが頭を下げて謝罪する”というのが非常に重視される傾向があります。要はこれが無いことには一区切りがつかず、いつまで経っても批判が継続することになります。

謝罪と法的責任を認めることとは別論の話ですので、よくある言い回しとはなりますが、「ご心配、ご迷惑をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます」と早い段階で表明することが肝要となります。

 

(3)マスコミの特性を誤解していること

マスメディアに対して妙な信頼感を持っている、すなわち当社の言い分について十分に耳を傾け、中立公平な立場で報じてくれると信じている事業者や担当者がいるのですが、執筆者個人の見解としては、それは幻想と言わざるを得ません。正直なところ、マスメディアの論調は、会社に対して批判的ですし、下手をすれば会社の言い分などに耳を傾けることなく、一方的な報道を行うところさえあります。また、マスメディアの中には、社長や担当者の人柄・態度・言動(言葉狩り)等を面白おかしく伝えることに一生懸命であり、エンターテインメント素材として取り扱っているようなところさえあります。

マスメディアに対して、必要に応じて取材に応えることは構いませんが、自らの主張をマスメディアを通じて拡散しようと考えるのは筋違いと考えたほうが良いものと思われます。

 

(4)人は見た目で判断されること

トップが頭を下げて謝罪するにしても、Tシャツ・デニム着用といったラフな格好で行う場合と、ネクタイを締め上下スーツ着用で行う場合とでは、残念ながら受け止め方に雲泥の差があります。おそらくはラフな格好での謝罪の場合、ふざけている、常識がない、誠実性に欠けるといった非難の嵐になること想像に難くありません。

もちろん中身(説明内容、公表するべき資料等)が大事なのですが、見た目という第一印象はかなりインパクトがあり、一度悪いイメージ・印象が付いてしまうと、それを払拭するだけで別の時間と労力を要することとなり、会社業務の正常化の妨げにさえなります。会社としても色々な主義・趣向はあるかと思いますが、「負けるが勝ち」という諺もあるくらいですので、ここは世間の目を気にしたほうがよいものと思われます。

 

(5)NGワードがあること

言葉狩り的なところもあるのですが、「誤解を招いたことにつきお詫びする」、「不快にさせたのであれば謝ります」といった、あたかも自社に非はなく、受け止める側に問題があるといったニュアンスを含む言葉を用いることは、回避するべきです(この言葉を使っただけで厳しい指摘を受けることがあります)。

また、慣用的に用いられる「遺憾に思います」という言葉も原則避けるべき言葉ではないかと執筆者個人は思います。というのも、本来の意味は「残念に思う」という意味であり、謝罪に向けて使う言葉ではないからです。

会社としても問題ありと判断している場合は、素直に「申し訳ございませんでした」と言ったほうが、意外と世間からの非難は収まるものだと考えるべきです。

 

 

5.平時の準備

危機管理広報は一朝一夕で対処できるほど甘くはありません。したがって、事前準備が非常に重要となるのですが、中小企業の場合、準備を行うだけでの十分なリソースがないのが通常です。そこで、最低でも次の3点だけでも整理することをお勧めします。

 

(1)窓口の一本化

前述2.(1)で記載した通りですが、予め広報担当者を決めておくことが重要です。

何かあった場合に当該担当者が対外窓口となって行動することで、会社から発信される情報の錯綜を防止でき、余計なトラブル拡大を抑止することが可能となります。

 

(2)従業員教育

上記「窓口の一本化」とも関連しますが、対外的に問い合わせがあった場合、広報担当者につなぐこと、当該担当者以外の者は余計な回答を行わないことを事前に周知することが重要です。

これによって、行き当たりばったり対応と世間に印象付けることを回避することが可能となります。

 

(3)社内向け説得

会社不祥事を世間に公表するか否かについては、ギリギリの判断が迫られることになります。ただ、本来的に公表を行うべきなのに、なかなか決断ができないという場合、次のようなことを検討していただければと思います。

・黙っていれば分からない
…内部告発などでいつ社外に情報が流出するか分からない。特にネット等で匿名告発された場合、レピュテーションリスクが会社の知らないところで発生することとなり非常に危険な状況となる。そして、会社が公表する前にマスコミ等に知れ渡ることとなった場合、隠蔽体質等の非難を浴びることは確実であり、取り返しのつかない事態に陥ってしまう。

・十分な調査を踏まえて公表するべき
…単なる先延ばしと世間は見がちであり、今ある情報だけでも公表したほうが世間受けは良い。現時点で分かっていたにもかかわらず、あえて後日に公表したとなると、どうしても隠蔽体質という批判は免れない。

・公表する法的義務があるわけではない
…法律論としては間違っていないかもしれないが、世間は法律論だけで判断してくれるわけではない。社会的(道義的)責任という観点からすると、公表しなくてもよいと積極的に説明できる合理的根拠が見いだせない限りは、公表を行うべきである。

 

 

 

<2022年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

&リスク管理・危機管理のご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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