業務委託(委任、請負)契約を締結する際の印紙税のポイントを弁護士が解説!

【ご相談内容】

業務委託契約書を締結する予定なのですが、委任(準委任)に当たるのか、請負に当たるのかで印紙税の取扱いが異なると聞きました。どういった点に注意して、委任と請負の区別を行えばよいでしょうか。

【回答】

印紙税の取扱いに関する「委任」と「請負」については、やや法務的な発想とは異なるところがあります。とはいえ、契約に基づく業務遂行の結果、何らかの成果物が想定される場合には請負と考えて対処したほうが無難ではないかと考えられます。

以下、【解説】にてご留意いただきたい事項を記載します。

【解説】

1.「請負」と「委任」との違いは?

現場実務で大きな問題となるのが、タイトルにも記載した、「請負」と「委任」の区別です。なぜこれが大きな問題になるかというと、請負契約なのか、委任契約なのかによって印紙税の取扱が全く変わってしまうからです。

さて、まず印紙税の取扱いについて確認しますが、次の通りです。

・請負契約…2号課税文書に該当するので、契約金額に応じた印紙負担(金額の定めがない場合は7号課税文書(継続的取引)への該否を次に検討する必要あり)

・委任契約…非課税文書(なお、継続的契約の場合は7号課税文書への該否を次に検討する必要あり)

>>継続的取引契約を締結する際に注意するべき印紙税のポイントとは?

上記からも明らかな通り、委任契約に該当する場合は印紙税の負担が不要となります。このため、実務では“委任契約書”とか“業務委託契約書”といった契約書のタイトルが好んで用いられたりするのですが、残念ながら請負契約か委任契約かは契約書のタイトルを見て判断されるわけではありません。では、どうやって判断するのか?

教科書的には、契約の中身を検討し、請負=仕事の完成を目的とする契約であれば請負契約と判断、委任=業務の遂行(完成までは求めない)を目的する契約であれば委任契約と判断する、というのが一応の回答となります。

ただ、非常に微妙な判断が伴うのも事実です。私個人としては、成果物の完成が条件となっているものは請負契約と判断、成果物は無くても業務遂行による結果が条件となっているものは請負契約、これらに該当しない場合は委任契約、という一応の判断基準を持ちながら検証するようにしています。抽象論では分かりづらいかと思いますので、具体例を次からあげていきます。

2.委託契約と2号課税文書

次のような契約の場合、基本的には2号課税文書に該当しないと判断してよいかと思われます。

(1)家事代行、業務支援、経営委託などのアウトソーシングサービス契約

家事代行については身の回りの世話(食事作り、清掃、洗濯、ペットの餌やり等)といった業務遂行に対して報酬が支払われる契約であり、個々の業務(仕事)の完成に対して報酬を支払う形態になっていないのが通常であることから、委任契約であり2号課税文書に該当しないと考えてよいかと思います。また、会社内の一部業務を外部に委託するアウトソーシングについても、一般的には個々の業務(仕事)の完成に対して報酬が支払われる形態になっておらず、業務遂行(業務遂行に要した時間)に対して報酬が支払われる形態になっていることが多いことから、委任契約であり2号課税文書に該当しないと考えてよいかと思います。

(2)秘密保持契約

開示された情報の取扱い方法を定めているのが通常であって、何らかの仕事の完成を目的とした契約にはなっていないと考えられることから、2号課税文書に該当しないと考えてよいかと思います。

>>会社担当者が知っておきたい秘密保持契約書を検討する際のポイントとは

(3)仲介契約

顧客を紹介し契約が成立することで初めて報酬が発生するので、仕事の完成を目的とした契約ではないかと思われるかもしれません。しかし、不動産の媒介について委任契約であると税務署が見解を出していることからすると、仲介契約については基本的に2号課税文書に該当しないと考えてよいものと思われます(おそらくは顧客の発掘が主たる業務でありこれ自体は仕事の完成ではないこと、報酬体系はいわゆる成果報酬にしているにすぎないこと、といった理由だと思います)。

3.建設・建築工事に関する契約書

建物を建設するという契約は、建物という成果物の完成を目的とする契約ですので請負契約に該当します。

ちなみに、大きな物件であるほど後で金額の増減調整を行うことがあるかと思うのですが、金額の増減調整に関する変更契約書を締結する場合、注意が必要です。すなわち、当初の報酬額より増額する旨を明記した書面を締結場合、2号課税文書として増額差額分に相当する印紙の負担が必要となります。一方、当初より報酬額を減額する旨明記した書面を締結する場合、2号課税文書に該当するものの記載金額なしとして200円の印紙負担が必要となります。増減した場合にまで印紙の負担があるとは…と思われるかもしれませんが、意外と失念しやすいものであり、税務調査後に印紙過怠で3倍負担というペナルティになりやすい例ですので、十分に注意していただければと思います。

ところで、建物建築の場合は分かりやすいのですが、建設・建築業界では、他にも例えば工務店が行う塗装や太陽光設備の設置といった比較的小規模な工事に関する契約、設計や監督、工事対象建物の周辺警備といった建設工事に付属する各種契約書が締結されます。

なかなかイメージが付きづらいかもしれませんが、

  • 塗装工事=塗装を行うという結果が求められているので請負契約
  • 太陽光設備の設置=設備の設置という結果が求められているので請負契約
  • 設計=設計図書の作成という結果が求められているので請負契約
  • 監督=現場監督を行う問い業務遂行が求められているのみで、何らかの結果が観念できるわけではないので委任契約
  • 警備=火災、盗難、不良行為の予防と安全確保という結果が求められているので請負契約

正直なところ、「監督」が委任というのであれば、「警備」も委任ではないのかという気がしないでもないのですが、税務署の見解は上記の通りですので、注意してください。

4.ITに関係する契約書類

請負契約=2号課税文書に該当するか否かについては、IT関係取引で色々と勘違いが生じやすい状況となっています。

(1) 典型的なものとしてWEB制作やシステム・プログラム制作に関する契約書があります。これについては、WEB(ホームページ)やシステム・プログラムという成果物の完成を目的とする契約ですので、請負契約に該当し2号課税文書として印紙を収める必要があります。これについては比較的成果物をイメージしやすいかと思うのですが、決してWEB(ホームページ)やシステム・プログラムは無体物だから成果“物”がないと考えてはならないことにご注意ください。

(2) では、システム・プログラムの制作の前提となる企画支援に関する契約書はどうでしょうか。これは非常に微妙なものとなります。企画支援に関する業務を行った場合、通常「設計書」という完成品を作成することになるところ、設計書それ自体が成果物と考えられるからです。結局のところ、ベンダー(受託者であるIT企業とイメージしてください)が企画支援業務を遂行することで、ベンダーが設計書を作成するのであれば請負契約であり、2号課税文書として処理するほかありません。一方、ユーザー(委託者)が最終的に設計書を作成するというのであれば請負契約ではありませんし、他の課税文書にも該当しないことから、結論として非課税文書となります。

一般的にはユーザーに設計書を作成するだけの力量がないので、ベンダーが設計書を作成します。ただ、ユーザーが大手企業の場合や、IT業界内における下請業務にあたる場合は、委託者側が設計書を作成という形に持って行くことも可能ですので、賢く使い分けることで節税を図ることも一案かもしれません。

(3) さらに、システム等のサポート業務に関する契約書や保守契約書についてはどうでしょうか。これもややこしいところがあるのですが、質問・問い合わせに対する回答業務に留まるのであれば準委任契約にすぎませんので、請負契約ではない=2号課税文書ではない、結果的に非課税文書になります。

一方、障害に基づくプログラムの復旧作業まで行う場合、復旧したプログラムが成果物に該当し、これを完成させる目的に契約と判断される結果、請負契約=2号課税文書に該当することになります。

ポイントとしては、どこまでのサポート業務を行うのかによって印紙税納付の有無が変わってしまうことになります。

(4) 最後に、IT技術者の派遣に関する契約です。大規模なシステム開発の場合、委託者の現場に技術者を派遣するということがあるのですが、システム開発という請負契約に関連して派遣されるものである以上、課税文書になってしまうのではという疑問が生じえます。

しかし、派遣契約はもちろん出向契約であっても非課税文書と考えて間違いありません。法務的にはやや意味合いが異なるのですが、印紙税法上は準委任契約に該当するためです。

 

<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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