継続的な契約関係を解消する場合の注意点について、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

10年以上にわたって取引を行ってきた事業者がいるのですが、当社の経営方針の変更もあり、取引打切りを通知したいと考えています。

トラブルにならないよう慎重に手続きを進めたいと考えているのですが、法的にどのような契約解消方法があるのか、契約解消に際して確認しておくべき事項などについて教えてください。

 

 

【回答】

継続的な契約関係がある場合、相手事業者は、取引が今後も継続することを前提に事業計画を立て、事業運営を行っていることが通常です。このため、突然取引を打ち切るとなると、相手事業者から強い反発を招き、思うように事が進まないという事態になりかねません。

継続的な契約関係を解消する場合、相手事業者への配慮は行いつつ、法的根拠を示せば相手事業者への説得も容易となります。また、思い切って取引を打ち切ったとしても、その正当性を示しやすいと言えます。

以下では、継続的な契約関係を解消するに際して検討可能な法的根拠を5つあげて解説します。また、解消した後の事後処理として気を付けておきたい事項(できれば契約解消時に取り決めておきたい事項)につき、各種契約類型ごとでポイントを指摘します。

 

 

【解説】

 

1.契約解消の方法

 

継続的な契約関係を解消しようとする場合、主に次の5つの手段が考えられます。

 

(1)期間満了

契約書を締結している場合、契約期間を定めていることが通常です。したがって、契約期間の満了をもって契約関係を解消するという方法が考えられます。

もっとも、多くの契約書の場合、例えば次のような自動更新条項が定められていることが通常です。

この場合、更新拒絶の意思表示を別途行わない限り、契約が終了しないことになります。

期間満了の3ヶ月前までに、いずれの当事者から更新しない旨の意思表示が無い限り、本契約は契約期間に関する内容を除き同一条件にて1年間延長されるものとし、以後も同様とする。

上記が原則論となりますが、実際には、単純に更新拒絶の意思表示を事前に行い、契約期間満了で取引解消となるわけではありません。

例えば、賃貸借契約では、賃貸人が更新拒絶する場合、借地借家法で正当事由が必要とされています(借地借家法第6条、第28条)。また、雇用・労働契約では、使用者が更新拒絶する場合、いわゆる雇止め制限が課せられます(労働契約法第19条)。

上記のような特別法が存在しない場合、例えば継続的な売買契約(商品供給契約)において、形式的には更新拒絶の要件を充足したとしても、「やむを得ない事由」が必要であるとして更新拒絶を認めなかった裁判例が存在します(但し、やむを得ない事由を問わない裁判例、損害賠償の問題として処理する裁判例も存在します)。

ケースバイケースというほかないのですが、継続的な契約において、更新を拒絶することで取引の解消を行う場合、形式的な要件を満たすだけではなく、実質的な理由(例えば、相手方に契約違反がある、信頼関係を破壊するような事情がある、相手方に信用不安がある等)を準備しておいた方が無難です。

 

ところで、期間満了による契約関係の解消の亜種として、そもそも契約期間の定めのない場合はどうなるのか、という疑問が生じます。

この場合、期間の定めがない以上、いつでも解約可能というのが原則論となります。

もっとも、賃貸借契約や雇用・労働契約の場合は特別法による制限があることはもちろん、それ以外の継続的な契約の場合、やはり「やむを得ない事由」を必要とする裁判例が存在します(一方で、相当な猶予期間を設けて解約申入れを行えば足りるとする裁判例も存在します)。上記と同じく、契約関係の解消を主張する側において、実質的な理由を準備しておいた方が無難と言えます。

 

(2)中途解約権の行使

契約期間を定めている場合において、相手方の都合を問うことなく、契約期間の途中で契約関係の解消を行おうとする場合、まずは法令や契約書等において中途解約する根拠が存在するのかを確認する必要があります。

例えば、請負契約の場合、注文者はいつでも契約を解消することができると定められています(民法第641条)。また、委任契約の場合、双方当事者がいつでも契約を解消することができると定められています(民法第651条第1項)。

上記のような法律上の根拠ない場合、例えば継続的な売買契約(商品供給契約)であれば、契約書に中途解約に関する条項が定められているのかを確認する必要があります。例えば次のような条項です。

甲及び乙は、本契約の有効期間中であっても、3ヶ月前に予告することで、本契約を解約することができる。

もし中途解約に関する条項が存在しない場合、中途解約したい側の一方的都合による契約関係の解消は困難と言わざるを得ません。一方、当該条項が存在する場合、原則的には中途解約が可能となります。もっとも、裁判例の中には、「やむを得ない事由」が必要と判断しているものもあります。上記(1)でも記述した通り、契約関係の解消を主張する側において、実質的な理由を準備しておくことをお勧めします。

 

(3)解除(法定解除、約定解除)

相手方に一定の事由が存在することを前提に契約の解除を行う場合、民法等が定めている法定解除(民法第540条から第548条など)と約定解除(契約書に定めている解除事由)のどちらを用いるのか意識する必要があります。

 

まず法定解除については、民法等が定める要件に該当する必要があります。ただ、民法等の定める要件は次に引用する通り非常に抽象的であり、該当性の有無については専門的な判断が必要となります。

第541条(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

第542条(催告によらない解除)

1 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

①債務の全部の履行が不能であるとき。

②債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

③債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

④契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

⑤前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。

①債務の一部の履行が不能であるとき。

②債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

 

第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)

債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

一方約定解除については、契約書において定めている解除事由に該当する必要があります。

ただ、形式的には解除事由に該当するとしても、やはり背景事情によっては「やむを得ない事由」や「信頼関係の破壊」等の要件を付加する裁判例も存在します。

現場実務的には、たとえ無催告解除事由に該当するとしても、①一定期間内に契約違反状態を是正するよう催告通知を行うこと、②是正期間経過後もなお契約違反状態となっている場合は解除もあり得る旨の警告通知を行うこと、③警告を無視する場合は契約解除の通知を行うこと、といった手順を踏んだほうがよいかもしれません(なお、②と③を兼ねて1回の通知にまとめる場合もあります)。

なお、約定解除事由にはいわゆるバスケット条項(例「その他本契約を継続しがたい事由が生じたとき」など)もありますが、これのみを根拠に契約解除に踏み切ることはあまりお勧めできません。なぜなら、特に訴訟の場面となった場合、このようなバスケット条項は制限解釈されるのが通例であり、該当するか否かにつき予測することが極めて難しいからです。契約書の不備等の理由でどうしてもバスケット条項を用いて契約解除を行う場合、弁護士と相談しながら、契約解除に至るまでの経過や背景事情につき適切に整理し裏付け証拠を揃えることはもちろん、先行して合意解除交渉を行いつつ、合意解除が難しい場合に契約解除手続きを行うといった戦略面でも検討を練る必要があります。

 

(4)合意解約

合意解約は文字通り、双方当事者が交渉し、契約関係を終了させることに関する合意を行うことです。

合意解約のメリットは、契約関係の終了につき双方が合意しているので、後で終了の有効性につき争いが生じづらいこと、後述する2.で触れる通り、契約関係終了後の権利義務関係について一緒に整理を図ることができる(合意内容としてこの点についても定めておく)という点になります。

一方でデメリットとしては、交渉を必要とする以上、時間がかかることはもちろん、合意するために一定の譲歩を余儀なくされることがあげられます。

 

なお、上記(1)から(3)のような、契約関係を終了させるための根拠がない場合、合意契約を目指すほかないのですが、そもそも相手が交渉に応じてこない場合、解約に向けた協議すら行うことができません。

これは交渉論になってしまいますが、合意解約を行いたいと考える側の都合や相手の問題点の指摘に留まらず、合意解約に応じることによるメリットを如何に相手方に提案できるかが重要となります。

 

(5)発注等の停止

例えば、継続的な売買契約(商品供給契約)において、個別契約が成立しない限り契約上の義務が発生しないのであれば、買主はあえて注文せず、売主はあえて受注しないという対応を取ることで、事実上契約関係を終了させることが可能となります。

 

この対処法は、上記(1)から(4)までとは異なり、契約は存続させたままでの対処法となります。

ただ、この対処法を用いる場合、①契約上、受発注義務が課せられていないか(みなし受注を含む)、②契約書には明記されていないものの、従前までのやり取り等で受発注することが当然の前提になっていないか、③受発注を拒絶することで、相手に損害・損失が生じないか、④契約が存続することで、売買以外の他の契約上の義務が残ったままにならないか(例えば、売主であれば競業他社への商品供給が制限される、買主であれば類似商品の取扱いが禁止される等)、⑤不当な取引拒絶に該当するリスクは無いか(独占禁止法第2条第9項第6号イ、一般指定第2項)、など検討事項が多岐にわたります。

安易に発注等を停止すればよいと考えるのは禁物です。

 

 

2.契約解消に際して押さえておくべき視点

 

継続的な契約関係を解消するには一筋縄ではいかない場合があること、上記1.で解説した通りです。

また、現場実務では、継続的な契約関係を解消した後の「事後処理」を意識しなければならない場面が多々生じます。例えば…

  • 秘密保持条項や競業禁止条項は取引解消後も効力を有するのか
  • 契約不適合責任、製造物責任、品質保証責任は取引解消後も追及可能か
  • 知的財産権はどちらに帰属しているのか、取引終了後も利用継続が可能か
  • 違約金、損害賠償制限条項は取引解消後も適用されるのか
  • 裁判管轄条項は取引解消後も効力を有するのか

等々です。

上記以外にも、継続的な契約関係の取引類型によっては押さえるべき事後処理に特有の内容があります。

以下では、取引類型に応じて検討しておきたい事後処理のポイントを解説します。

 

(1)継続的商品売買・供給契約(代理店契約等を含む)

継続的な商品売買・商品供給契約の場合、在庫品の処理をどうするのかがまずは重要な問題となります。また、取引関係が解消されることで、ライバル企業との取引を行う可能性を考慮した対策をどこまで講じるのかも課題となります。さらに、顧客・エンドユーザとの関係で引継ぎが必要とならないかも検討対象となります。

 

【売主視点】

  • 買主に引渡し済みの商品を買取るのか、それとも在庫品に限り引き続き買主に販売させるのか決める必要あり。
  • 引き続き買主に販売させる場合、当該販売分に限り契約内容が効力を有すること(残存効)を約束させる必要あり。
  • 引き続き買主に販売させる場合、一定条件にて商標や販売マニュアル等の使用継続を認めることを約束させる必要あり。
  • 買主より金型その他秘密情報の提供を受けた上で商品制作し、当該商品を買主に提供している場合、同種・類似商品の取扱いが今後禁止されていないか(競業禁止)確認する必要あり。
  • 買主が顧客に対して独自に提供していたサービス(例えばメンテナンス等のアフターサービス)につき、顧客との契約関係を承継するのか、サービスを打ち切るのか決める必要あり。

 

【買主視点】

  • 在庫品につき適正価格にて引き取ってもらえるのか、引き続き販売可能なのか確認する必要あり。
  • 商談中の案件がある場合、引き続き買主が商談を継続するのか、売主が引継いで商談を行うのか協議し決めておく必要あり。
  • 売主より提供を受けていたマニュアル等の返還・破棄方法につき確認する必要あり。
  • 同種、類似商品の今後の取扱いにつき禁止されていないか確認する必要あり。
  • 独自に顧客に提供しているサービス等について、売主に承継するのか、承継する場合にどこまで協力義務を負担するのか確認する必要あり。

 

(2)システム等の運用保守契約

最近ではシステム開発を行ったらそれで取引終了とはならず、引き続きシステムの運用保守まで行うという取引形式が増えてきています。

この運用保守契約が終了する場合、当該システムは引き続き利用できるのかが委託者(ユーザ)にとっては重要な関心事となります。一方、受託者(開発者)は引き続き利用させるか否かの判断と共に、仮に利用継続させるにしても終了後に生じた不具合等に対して責任を負わないといった免責の有無が重大な関心事となります。

 

【委託者(ユーザ)視点】

  • 別の事業者に運用保守を任せる場合、後任業者との引継の可否・内容につき協議する必要あり。
  • 運用保守契約終了後に発生したバグ等に対し、補修依頼ができるのか、できるとしてその条件はどうなるのか等につき決めておく必要あり。
  • ソースコード開示の可否につき確認する必要あり。
  • プログラム、画面構成・表示その他コンテンツに係る著作権の帰属及びライセンス内容につき決めておく必要あり。
  • システムを継続利用するための周辺環境(レンタルサーバやプログラムライセンス等の第三者が関係する権利関係の処理など)の整理と承継の可否・条件につき確認する必要あり。

 

【受託者(開発者)視点】

  • ノウハウや秘密情報漏洩防止の観点から、取引終了後のシステム利用を禁止することができるのか検討する必要あり。
  • 後任業者との引継ぎに際し、過度な業務負担が生じないか、重要な機密情報の開示につながらないか確認する必要あり。
  • 取引終了後に発生したバグその他不具合に対し、補修義務を負わない、損害賠償責任の免責又は一部免除につき約束させる必要あり。
  • システムの継続利用のために必要な第三者との権利関係の処理に要する費用負担につき、確認する必要あり。
  • (取引終了後のシステム利用を認めない場合)システムを通じて処理されたデータのバックアップ義務の免除、データの抽出・移行への協力義務なし、及びデータ削除につき告知する必要あり。

 

(3)ライセンス契約

ライセンス契約が終了する場合、ライセンスされたことで生じた成果物の取扱いをどうするのかにつき、双方当事者において強い利害関係が生じます。また、ライセンスされたことで派生した権利やノウハウ等の取扱いについても決めておく必要があります。さらに、ライセンサーはライセンス内容の秘匿性・優位性を維持するためにライセンシーに引き続き制限・義務を課そうとするのに対し、ライセンシーは取引が終了した以上は自由に活動したいと考え、当事者間で対立が生じやすくなります。

 

【ライセンサー視点】

  • ライセンスに係る成果物の破棄又は引き上げ要求を行うのか検討する必要あり。
  • ライセンスに際して提供したノウハウ等の情報の返還又は破棄が確実に実行されるよう監視する必要あり。
  • ライセンスに関連して発生した改良発明その他派生物の権利の帰属、及び出願禁止その他権利化防止措置につき協議する必要あり。
  • ライセンスに関する情報について取引終了後も秘密保持義務を課すことが可能か、ライセンスの不当使用防止の観点から競業禁止義務を課すことが可能か確認する必要あり。
  • ライセンス対象となった権利につき、ライセンシーにおいて、取引終了後に権利の無効主張を行わない、権利の実効性を減殺するような出願手続きを行わない等の防御措置につき協議する必要あり。

 

【ライセンシー視点】

  • ライセンスに係る成果物(完成品)の取扱い(ライセンサーが適切な価格で買取りを行うのか、完成品に限りライセンシーが引き続き取り扱うのか等)につき取り決める必要あり。
  • ライセンスに伴い生産途中であった半製品・仕掛品の処理につき、協議する必要あり(ライセンサーによる廃棄費用の負担の有無、半製品・仕掛品に限りライセンシー負担で完成させ、ライセンサーが買取る等)。
  • ライセンスに関連して発生した改良発明その他派生物の権利の帰属、強制的な使用許諾権設定の有無、及び権利化の実施可否につき確認する必要あり。
  • ライセンサーがライセンシーの技術部員・担当者等の人材を引き抜かないよう取り決める必要あり。
  • 秘密保持の対象範囲が不当に拡大されていないか、競業禁止が課せられていないか、課せられているとしても一定の合理的範囲に留まっているか確認する必要あり。

 

(4)共同研究開発

共同研究開発の場合、当事者間の役割分担にもよりますが、原則的には双方が情報を開示・提供し、各当事者が保有するノウハウや技術等を持ち寄って何らかの成果を達成しようとすることが通常です。

したがって、一方当事者が何らかの属性を持つということが考えにくいため、属性に応じた視点での解説とはなっていないことにご留意ください。

 

  • 開示した情報につき相手方に秘密保持義務を課し続けることができるのか、一方で受領した情報につき不必要な範囲まで秘密保持義務を課されていないかにつき確認する必要あり。
  • 開示したノウハウ等を用いて相手方が競業行為を行い、当方のビジネス上の障害とならないか、一方で相手方が開示したノウハウ等と当方がもともと保有するノウハウ等が混濁し、相手方に競業禁止義務違反を疑わせるような事態が生じないか検証を行う必要あり。
  • 研究成果である成果物につき、どちらに権利帰属するのか、権利が帰属しない場合にライセンスを義務付けることができるか、ライセンスの条件・内容は適切か、第三者への開示・使用許諾可能性の有無など今後の取扱いにつき協議を行う必要あり。
  • 研究に付随して生じた成果、改良発明などの権利帰属、ライセンス条件、一方当事者による権利化(出願等)の禁止につき協議の上合意する必要あり。
  • 研究に伴い生じた費用、成果物の維持に要する費用、権利化に要する費用等の負担割合その他清算方法につき協議する必要あり。

 

(5)フランチャイズ契約

フランチャイズ契約は、商標やノウハウの使用許諾、商品供給契約、指導・コンサルティング契約など様々な契約内容を包含する複合的な契約となります。このため、上記(1)から(3)までで指摘したポイント(なお、実際に事業運営をしながら、本部と特定の加盟者とで商品等の共同研究開発することが有りますので、上記(4)も当てはまる場合があります)が全て当てはまることになります。ここでは、取引終了後に特にトラブルになりやすい点を意識して、属性に応じたポイントを解説します。

 

【本部視点】

  • フランチャイズ契約書に定めている契約終了後の措置(店舗運営の中止、看板撤去、マニュアル等の返却、什器備品の廃棄など)について、本部にて実施状況につき検証可能か、実効性を担保できる取り決めがあるのか確認する必要あり。
  • ノウハウ等の不正使用及び漏洩防止の観点から、競業禁止義務及び秘密保持義務を課しているか、当該義務の実効性を担保できる取り決めがあるのか確認する必要あり。
  • フランチャイズ契約が終了することで、関連する契約関係についても終了措置を講じることができるのか確認する必要あり(例えば、本部が転貸人、加盟者が転借人になっている不動産賃貸借の解消など)。
  • フランチャイズ契約終了に伴う清算(未払いロイヤルティの支払い、違約金の支払い、保証金返還など)の進め方につき確認する必要あり。
  • 説明義務違反や経営指導義務違反などを理由とした加盟者からの損害賠償請求に対し、防止措置を講じることができるのか協議する必要あり。

 

【加盟者視点】

  • フランチャイズ契約終了後も同種・類似事業を継続できるのか、競業禁止及び秘密保持義務の有無・内容につき確認する必要あり。
  • フランチャイズ契約終了に伴い必要となる費用の清算(負担額、支払時期、支払方法等)につき確認する必要あり。
  • フランチャイズ契約終了後も引き続き義務を負う内容(いわゆる残存効。競業禁止や秘密保持義務以外にも什器備品の売却禁止や、店舗の先買権などが定められている場合あり)につき確認する必要あり。
  • 本部へ返却する物が不必要に拡大されていないか確認する必要あり(マニュアル等は返却対象となることは理解できるものの、契約書や勧誘時の説明資料まで返却対象となっている場合もあり一考の余地あり)。
  • 顧客情報の取扱いにつき確認する必要あり(顧客情報を加盟者が引き続き利用することができるのか、本部に提供するに際して個人情報保護法の対策は講じているのか等)。

 

(6)継続的役務提供契約

継続的な役務(=サービス)の提供契約は様々なものが想定されますが、ここではデジタルプラットフォーム運営者とユーザを想定しています。

大きな視点としては、プラットフォーム上のデータの処理方法、金銭の清算方法、取引終了後のユーザ情報の取扱いとなります。

 

【ユーザ視点】

  • プラットフォーム上に蓄積されたデータを抽出できるのか、代替サービスにデータを移行できるのか確認する必要あり(例えば、会計処理サービスであれば、過去の会計情報を抽出・移行できないことには、帳簿保存義務、融資交渉、税務調査対応等で支障が生じる可能性あり)。
  • プラットフォーム上のユーザ成果物の権利帰属及び取引終了後の使用の可否につき確認する必要あり(例えば、投稿記事や画像等につきプラットフォーム運営者に権利帰属する場合、ユーザは利用不可になるなど)
  • プラットフォーム上でしか用いることができないポイント・デジタルマネー、その他特典等の清算内容につき確認する必要あり(例えば、返金措置があるのか、一切使用不可になるのか等)
  • 前払い等で割引適用を受けていた場合の清算方法につき確認する必要あり(例えば、長期利用を前提に割引を受けていた場合、中途解約することで割引する前の利用料支払い義務が生じる可能性、残存期間相当分の利用料支払い義務が生じる可能性など)
  • プラットフォーム上に登録した情報の利用停止措置を講じることが可能か確認する必要あり(例えば、取引終了後もプラットフォーム運営者より広告配信が行われないか、利用実績として広告掲載され続けないかなど)

 

【運営者視点】

  • プラットフォームを用いて生成されたユーザデータを削除すること(保存義務がないこと)及びデータ削除に伴う責任は負わないことにつき、適切に告知されているか確認する必要あり。
  • プラットフォーム上のコンテンツ(特に課金していた場合など)につき利用不可(プラットフォーム外での利用も不可)となることにつき、適切に告知されているか確認する必要あり。
  • ユーザがプラットフォームを利用することで残した様々なデータにつき、プラットフォーム運営者において分析・編集その他再利用することが可能であることにつき、適切に告知されているのか確認する必要あり。
  • 取引終了に伴う清算処理につき、実効性が確保できる体制となっているのか確認する必要あり
  • ユーザ情報をプラットフォーム運営者以外の第三者が利用できることにつき、適切に告知されているか確認する必要あり。

 

 

 

 

<2022年11月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

 

リスク管理・危機管理のご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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