会社による献金(寄附)・選挙運動との関係について、弁護士が解説!

 

【ご相談内容】

当社が所属する業界団体の役員が議員選挙に立候補するらしく、業界団体が活動の一環として、当該役員への支援・協力要請を行ってきています。ただ、政治絡みとなると、当社内ではナーバスになるところがあり、協力に二の足を踏む状態です。会社が政治活動に関与する際、どういった点に気を付けておけばよいのでしょうか。

 

 

【回答】

政治活動にはどうしてもお金が関係してくるところ、会社が政治活動に対する資金提供を行う場合、政治資金規正法の内容を熟知する必要があります。

また、会社が立候補者の選挙運動に関与する場合、公職選挙法を意識する必要があります。

政治活動・選挙運動は人間関係も絡んでくるため、どうしても政治資金規正法や公職選挙法の問題は後回しにしがちですが、違反した場合、企業の規模を問わず法律違反として刑事罰を含めた責任追及がなされることが多い類型です。

政治活動・選挙運動が会社の事業活動に必要であるというのであれば、政治資金規正法及び公職選挙法については概略だけでも押させておく必要があります。以下ではポイントを解説します。

 

 

【解説】

 

1.会社による政治献金(寄附)

 

会社による政治献金(寄附)の可否について検討するに際しては、政治資金規正法第21条第1項を読み解く必要があります。

会社…(省略)…は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。

 

(1)主体

政治資金規正法第21条第1項は、会社(なお、省略している部分は労働組合等の団体のことが書いてあります)を規制対象の主体としています。

ところで、会社ではなく個人事業主の場合、政治資金規正法第21条の会社ではないと考えられます。個人事業主の場合、個人として政治献金(寄附)を行う場合の規制対象となります。

 

さて、政治資金規正法第21条第1項だけを見ると、会社は同条に従う限り政治献金(寄附)を行うことができそうなのですが、重大な例外があります。

①一定の補助金等を受けている会社その他の法人がする寄附(政治資金規正法第22条の3)

②赤字会社がする寄附(政治資金規正法第22条の4)

③外国人・外国法人等からの寄附(政治資金規正法第22条の5)

④他人名義・匿名による寄附(政治資金規正法第22条の6)

 

①については、例えば、国から補助金等の給付金の交付決定を受けている会社は、決定通知を受けた日から1年を経過するまでの間、政治献金(寄附)を行ってはならないと定められています(地方公共団体から補助金等の給付金の交付決定を受けている場合も準用あり)。また、国から資本金等の出資等を受けている場合、受けている期間中は政治献金(寄附)を行うことができないと定められています(地方公共団体から出資等を受けている場合も準用あり)。

意外と国等から補助金を受けている会社は多いので(特に特定部門が補助金を受けており、他の部門は補助金を受けていることを知らなかったというパターンが多くあるようです)、政治献金を行う場合、事前に部署横断的に補助金等の有無について確認する必要があります。

 

②については、3事業年度以上にわたり継続して欠損を生じている会社は、その欠損が埋められるまでの間、政治献金(寄附)は行ってはならないと定められています。

税金対策等の関係でわざと赤字会社にしていることがあるかと思うのですが、そのような赤字会社が政治献金(寄附)を行う場合は注意が必要となります。

 

③については、外国法に基づいて設立された会社、又は日本法に基づいて設立された会社であっても、株式の過半数を外国人または外国法人が保有している会社による政治献金(寄附)は行えないというものです。

グローバル化が進み、主要株主が外国人または外国法人という日本企業も増加してきていますので、注意が必要です。

 

④については、時々起こりうる事例として、親子会社や関連会社による政治献金(寄付)がここに該当しないか、という問題があります。すなわち、上記①~③については会社・法人単位で規制の有無を判断しますので、例えば、親会社が補助金等を受けていたとしても、子会社は補助金等を受けていないのであれば、子会社は政治献金(寄附)を行うことは可能です。もっとも、子会社とは名ばかりで、実体のないペーパーカンパニーの場合は他人名義による政治献金(寄附)と判断されてしまう可能性があります。時々、休眠していた会社やオーナー等を含む親族の資産管理会社を用いて政治献金(寄附)を行いたいとするご相談を受けることがあるのですが、他人名義による政治献金(寄附)の問題が生じうることに注意を払うべきです。

 

(2)政治献金(寄附)の対象先

会社の場合、政治献金(寄附)の対象先が限定されていることが特に注意すべき点となります。すなわち、政治資金規正法第21条第1項に定められている通り、対象先は「政党及び政治資金団体」に限定されており、立候補者や現職議員等の個人はもちろん、単なる政治団体への政治献金(寄附)は禁止されています。

また、「政党」については、政治資金規正法第3条第2項でかなり絞りがかけられており、次のいずれかに該当しない政党への政治献金(寄附)は禁止されています。

  • 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの
  • 直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙若しくは当該参議院議員の通常選挙の直近において行われた参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの

 

さらに、「政治資金団体」についても、政治資金規正法第5条第1項第2号を満たす団体に限定されており、これを充足しない場合はやはり政治献金(寄附)は禁止されることになります。

 

(3)政治献金(寄附)の名目

会社が政治献金(寄附)を行う場合、政治資金規正法に従って対処する必要があることは当然なのですが、意外とややこしいのが「党費」や「会費」の取扱いについてです。実は会社の場合、政治資金規正法第5条第2項により党費や会費についても政治献金(寄附)扱いになる旨定められています(政治資金規正法第4条第3項と混同しないよう要注意)。後述する政治献金(寄附)の限度額を算出するに当たり、党費や会費も含めて算出する必要があることに要注意です。一方、党費や会費が政治資金規正法上の寄付に該当するとされる以上、会社は政治資金規正法上の政党や政治資金団体以外に党費や会費を支払ってはならないことにも注意を払う必要があります。

ところで、大規模災害等が発生した場合に政党が義援金を募る場合がありますが、こういった義援金を会社が拠出する場合についても政治献金(寄附)に該当するものと考えられます。結局のところ、会社が政治団体に対して資金を拠出する場合、名目如何に関わらず、政治資金規正法上の適格団体に該当するのか、寄付金限度枠に収まるのか、常に意識することになります。

なお、政治資金団体へ政治献金(寄附)を行う場合、銀行口座による送金のみ認められており、現金手渡しは禁じられています(1000円以下は除く。政治資金規正法第22条の6の2第1項)。

 

(4)政治献金(寄附)の限度額

会社が政治献金(寄附)を行う場合、1年間当たりの限度額が設けられています。そして政治献金(寄附)の限度額は、会社の資本金の額を23区分(10億円未満から1050円億以上)にした上で、各区分に応じて750万円から1億円までの幅が設けられています(資本金が大きければ、寄附限度額も大きくなるという関係)。

なお、個人(個人事業主も含む)の場合、同一の受領者に対する個別の上限規制が別途設けられていますが、会社の場合は個別の上限規制はありません。

 

(5)注意事例

よくあるパターンとして、元議員(次の選挙に出馬予定)を会社の顧問として迎え入れ、会社が元議員に対して一定額の報酬を支払っている場合、政治資金規正法第21条第1項違反にならないかという問題があります。もちろん、元議員が会社のための業務遂行を行っており、当該業務遂行の対価として相当性があるというのであれば、政治資金規正法違反の問題は生じません。

しかし、顧問とは名ばかりで会社へ出社しておらず、会社のための業務遂行も行っていないとなると、実質的には寄附を行っていることと同視されます。そして、会社が政治献金(寄附)を行いうるのは、政党及び政治資金団体に限定されていることからすると、個人(元議員)への寄付であり、政治資金規正法違反ということになってしまいます。

元議員の面倒を会社が見るにしても、業務遂行の有無と対価の均衡がとれているのか、よく確認する必要があります。

 

また、立候補者に対して会社の敷地や建物を選挙運動のために無償で利用させた場合、立候補者を応援するために会社従業員を無償で派遣・動員させる場合なども、寄附(利益の供与。なお、政治資金規正法第4条第3項参照)に該当し、政治資金規正法第21条第1項違反となりますので要注意です。

 

 

(参考)

政治資金規正法のあらまし(総務省)

 

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2.会社による選挙運動

 

(1)選挙運動とは

選挙運動を取り締まる法律といえば公職選挙法というのは、直ぐにイメージができるかと思います。ただ、公職選挙法をはじめ法令上、選挙運動を定義した規定は存在しません。判例・実務上は「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と解釈されていますが、包括的な定義であり、具体的な判断基準が明確とは言い難いです。

例えば、よく国政報告会と銘打って政治活動を行っている現職議員を見たことはないでしょうか。一見すると国政の報告会なので選挙運動とは関係がない政治活動と考えることもできるのですが、一方で選挙が近付いてきたときに突如国政報告会という名の下で支持者を動員し、現職議員の宣伝が行われるとなると、事前の選挙活動と言われても仕方がないところがあります(なお、事前の選挙運動は公職選挙法第129条違反です)。そして、こういった国政報告会において、会社の社長等が挨拶・スピーチを行い、近々予定されている選挙への投票を呼び掛ける等の発言を行った場合、会社(社長)自身が事前運動の禁止に該当することになります。

結局のところは実態を見て判断するほかないのですが、会社が特定の候補者に肩入れして活動する場合、公職選挙法違反とならないか注意深く行動する必要があります。

 

(2)注意事例

ご相談事例のような会社が所属する業界団体の役員が選挙に立候補した場合において、会社の従業員に選挙運動の手伝いをするよう命じた場合、次の2点に注意を行う必要があります。

  • 労働時間中であるにもかかわらず従業員に選挙運動を手伝わせ、当該手伝いの業務中も賃金を支給した場合、買収罪の可能性が生じること(公職選挙法第221条第1項第1号)
  • 労働時間外(有給取得によって休暇中とした場合も同じ)に従業員に選挙運動を手伝わせ、当該手伝いの内容等を人事考課の一材料として用いた場合、利益誘導罪の可能性が生じること(公職選挙法第221条第1項第2号)

 

 

3.(参考)従業員の政治活動への対応

 

上記1.及び2.では、会社による政治活動・選挙運動について検討を行いましたが、現場実務では従業員による政治活動が会社にとって悩みの種になっていることも結構あります。以下では簡単ですが、参考解説を行います。

 

(1)職場内での政治活動を禁止することの可否

結論からいうと、会社が従業員に対し、職場内で政治活動を禁止することは可能です(就業規則の服務規律等で定めることも多いかと思います)。これは、就業時間中であれば職務専念義務違反の問題が生じえますし、就業時間外(休憩中など)であっても、他の従業員とトラブルになる等の職場秩序を乱すという問題があるからです。

 

(2)懲戒処分の可否

形式的には、就業規則の服務規律違反を根拠に懲戒処分を行うことが可能と考えることができそうです。しかし、政治活動の内容や態様、経緯、目的等を考慮し、職場秩序を乱したと言えるのか厳密に考えるというのが裁判所の考え方です。したがって、数分だけ静穏に政治活動を行い、他の従業員は問題視していない、業務に特段の支障が生じていないというのであれば、注意指導に留め、懲戒処分は課さないといった対応も必要になります。

 

 

 

<2021年5月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

コンプライアンスのご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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