従業員・労働者が反社会的勢力に該当する場合、会社がとるべき対策を弁護士が解説!

【ご相談内容】

当社の従業員の中に「反社会的勢力」との関りがありとされる者がいるのですが、会社としてはどういった対応を行うべきなのでしょうか。

 

【回答】

従業員がどの時点で反社会的勢力との関係を有するに至ったのかにより対処法が異なってくると考えられます。以下では、次の3パターンに分けて検討を行います。

  • 入社時での対応
  • 入社時に見抜けなかった(入社後に判明した)場合の対応
  • 入社後に反社会的勢力と関係を持ってしまった場合の対応

【解説】

1.入社時での対策

「暴力団員などの反社会的勢力はお断り」という会社側の方針を明確にする意味で、内定通知書の内定取消事由及び労働条件通知書に労働契約解除事由(解雇事由)となる旨明記するのが、まずは分かりやすい対応かと思われます。なお、就業規則等の社内規程が存在する会社においては、「労働者にとって、就業規則より不利な労働条件であるから無効である」とされるリスク(労働契約法12条を参照)を回避するためにも、解雇事由に関する就業規則等の社内規程の変更を行ったほうが無難と考えられます。

また、入社時に徴収することが多い誓約書の中に、反社会的勢力ではないことの誓約文言と反社会的勢力であることが判明した場合には如何なる処分を受けても異議は無い旨の文言を加筆しておくのも一つの対応策ではないかと思われます。

(但し、実際にこの文言を根拠に懲戒解雇等の処分を行いうるかは別問題ですが…)

2.入社時に見抜けなったか(入社後に判明した)場合の対策

当該従業員が暴力団員等の反社会的勢力であったにもかかわらず、その点を秘匿して入社してきた場合、いわゆる「経歴詐称」の問題として処理することになると思われます。この点、上記1.で記述した通り、会社の方針として「反社会的勢力お断り」というのであれば、重要な経歴詐称として解雇その他懲戒処分の有効性を高めるものと思われます。

一方、上記1.のような対応を行っていなかった場合、単に暴力団員等の反社会的勢力であるという属性だけで解雇等の処分を行いうるかは非常に微妙な問題になると言わざるを得ません。特に、当該従業員の業務中の素行や業務遂行状況に特段の問題がなかった場合には、これまでの経歴詐称の裁判例から予想する限り、いきなり解雇することについては無効と判断される可能性が高いように思われます(おそらくは会社が当該従業員に対し、反社会的勢力より脱退するよう働きかけたにもかかわらず、それでもなお当該従業員が反社会的勢力に関わりを持ち続けた場合といった限定が付されるのではないでしょうか)。

3.入社時は暴力団員等ではなかったが、入社後に暴力団員等となった場合の対策

入社後に暴力団員等の反社会的勢力に加入するか否かは、業務外のことと言わざるを得ませんので、いわゆる「私生活上の非違行為」の問題として対処することになると考えられます。

ただ、私生活上の非違行為として懲戒処分が可能か否かについては、非常に曖昧であり予見可能性が乏しいのが実情です。抽象的には「会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合」には懲戒解雇等を含めた懲戒処分も有効と判断されることになります。しかし、例えば、昨今の飲酒運転に対する社会的非難の度合いが高まる中、業務外での飲酒運転による事故発生に対する懲戒解雇処分が有効とされたり無効とされたり、裁判所の判断は揺れ動いていることからもお分かりの通り、必ずしも社会の常識と法律の考え方は連動していません。

犯罪という違法性の強いものと暴力団員等の反社会的勢力に関係しているという属性の問題を並べて考えるわけにはいかないとはいえ、相当慎重な判断をせざるを得ないのが現実ではないかという気がしています。

4.暴力団員等の反社会的勢力該当性の調査

(1)調査方法について

結論から申し上げますと、一私人に過ぎない会社が完全な調査を行うことは不可能と言わざるを得ません。もっとも、取引先が反社会的勢力か否かの調査方法の例から考えると、現状で考え得る手段としては次のようなものになるかと思われます。

  • ・従前の勤務先の商業登記簿謄本の取得と当該登記簿における現任取締役・現任監査役の属性及び旧役員及び大株主の属性
  • ・兼任企業の把握(フロント企業の可能性)
  • ・情報検索(新聞等のメディア情報、警察などの行政当局からの提供情報、リサーチ会社が保有する情報など)

(2)調査する際に留意したい法令

従業員に関する情報収集で特に気を付けておきたい法令としては、職業安定法と個人情報保護法になります。非常に微妙な問題となるため問題点の指摘のみに止めておきます。

  • ・職業安定法5条の4では、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集」と定められているところ、「その業務の目的の達成」と反社会的勢力という問題がどの様に関連づけられるのか。
  • ・個人情報保護法17条では、「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」と定められているところ、暴力団排除条例が制定された状況下において、反社会的勢力か否かの調査と不正な手段とがどの様に関連づけられるのか。

5.結語

以上の他にも、「反社会的勢力」とはどこまで含むのか、具体的には過去暴力団員等であった者についても同様の考え方が妥当するのかなど、考えれば考えるほど、色々と難しい問題が出てくるかと思われます。

いずれも明確な基準があるわけではない以上、弁護士等の専門家とも協議の上、自社ルールを策定し周知することが、会社のコンプライアンス向上につながるものと思われます。

 

<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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