債権回収担当者が訴訟手続きを利用する場合のポイントを弁護士が解説!

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【ご相談内容】

代金を支払わない取引先と協議を重ねましたが決裂しました。そこで訴訟による回収手続きを検討しているのですが、弁護士等の専門家に依頼せずに手続きを進めることができるのでしょうか。

>>売上金の回収手続きを行うに当たり、債権回収担当者が事前に準備するべき事項とは?

【回答】

理屈上の話だけで申し上げれば、訴訟手続きは弁護士等の専門家に依頼しなくても自ら進めることが可能です(本人訴訟と呼んだりします)。ただ、訴訟手続きは極めて専門的でありかつ独特の用語が出てきたりしますので、残念ながら知識がないと進めることは難しいのも実情です。

とはいえ、何らかの事情で弁護士等の専門家に依頼ができない事例も存在すると思われますので、以下の【解説】では訴状の作成の仕方を中心に、訴訟手続きの進め方のポイントを記載します。

>>債権回収担当者が強制執行手続きを利用する場合に注意するべき事項とは?

【解説】

1.はじめに

法的手続きに則った回収方法といえば、「訴訟」となります。ところで、訴訟だ!裁判だ!と意気込んだものの、「何をどうやって書けば分からない」、「どうやって手続きを進めればよいか分からない」という不安が先走ってしまって、どうしても一歩を踏み出すことができないのではないでしょうか。そこで、訴状のサンプルを見ながら、ポイントを解説していきたいと思います。

なお、ここ記事では、次のような架空事例を前提にしています。

<架空事例>

売主(大阪在中)が商品を200万円で売渡したが、買主(東京在中)が支払ってくれない。

 

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2.訴状の作成の仕方

(1)表紙(訴状1ページ目)

訴状のサンプルは裁判所でも配布していることも有りますが、別に配布されているものを使わなければならないという義務はありません(弁護士の場合、裁判所配布のサンプルを使うことはまずありません)。そこで、以下では裁判所配布のサンプルとは異なることにご注意ください。

さて、次のようなサンプルを見てください。なお、【番号】は解説の便宜を図るために記述しただけであり、実際の訴状には記載しませんのでご注意ください(以下同じ)。

訴状

 

当事者の表示、請求の趣旨及び請求の原因は別紙のとおり。

売買代金請求事件…【①】

訴訟物の価額    金200万0000円…【②】

貼用印紙額       金1万5000円…【③】

予納郵券          金4800円…【④】

 

×年×月×日

大阪地方裁判所 御中…【⑤】

 

原告××株式会社

代表取締役×× 印

 

証拠方法…【⑥】

1 甲第1号証  発注書

2 甲第2号証  納品書

 

添付書類

1 甲号証写し1通…【⑦】

2 資格証明書2通…【⑧】

【①】ですが、売買代金を支払ってもらえないというのであれば「売買代金請求事件」、貸したお金を返してもらえないというのであれば「貸金返還請求事件」としておけば問題ありません。お金を支払ってもらうけど、事件名がよく分からないというときは、事件名を一切書かないか、書くとしても「金員支払い請求事件」とでもしておけば、後は裁判所が勝手に事件名はつけておきます。

【②】は、支払ってもらいたい金額(元本)を記載すればOKです。利息は含める必要はありません。

【③】は、貼用(チョウヨウ)印紙額といって、要は裁判所に納める手数料のことです。この印紙代は決まっており、「裁判所 印紙代」というキーワードで検索したりすれば必要な情報が得られます。なお、印紙は大きな裁判所であれば裁判所内で販売しています。また、郵便局でも販売しています。次の【④】に記載する通り、切手を納付する必要がありますので、郵便局でまとめて購入する方が二度手間にならないかと思います。

【④】は、実は各裁判所によって異なってきます。したがって、訴状を提出する裁判所に電話して問い合わせるのが確実です。また、問い合わせに際しては、必ず「郵便切手の種類・内訳」も確認して下さい。というのも、「500円切手、200円切手、100円切手、80円切手、50円切手、20円切手、10円切手」という切手の額面ごとで枚数の指定があるからです。したがって、訴訟提起予定の裁判所に対し、①印紙代の合計は幾らか、②内訳はどうすればよいのか、この2点を聞くように注意して下さい。

【⑤】は、訴訟提起先の裁判所の名前を書きます。ところで、どの裁判所に提起すればよいのかという問題を「管轄裁判所」の問題といったりします。お金の支払いに限って言えば、自分の会社が存在する場所(商業登記簿に登録されている住所)を管轄する裁判所ですので、基本的には一番近くの裁判所に提起することができます(但し、契約書で裁判所の場所が指定されている場合は、契約書に記載の裁判所を選択したほうが無難です)。したがって、本件のように相手方が東京であっても大阪で訴訟提起することは可能です。なお、自分の住所地を管轄する裁判所がどこかを調査したいのであれば、「裁判所 管轄」で検索をかければ必要な情報が得られるかと思います。ちなみに、請求額が140万円以内のお金の請求の場合は地方裁判所ではなく、簡易裁判所が提出先となりますので、ご留意下さい。

【⑥】にある「証拠方法」とは、要はペーパー(紙)上の証拠のことです。例えば、売買契約の場合、売買契約書が存在するのであればそのコピー3部を裁判所に提出します。本件では契約書はありませんが、発注書と納品書がありますので、それらのコピー3部を証拠提出しています(※証拠の原本は裁判当日に持参すればOKです。コピーを3部用意する理由は、1通は裁判所用、1通は相手方送付用、もう1通は自分保管用です)。

【⑦】は、上記【⑥】の証拠のことです。ある意味決まり文句ですので、このまま書けばOKです。

【⑧】は、資格証明書とは法人の場合に添付しなければならない書類です。訴訟を提起する自分(原告)自身が法人の場合は、自分が法人であることを証する資料として1通必要です。また、相手方(被告)が法人の場合は、やはり相手方が法人であることを称する資料として1通が必要です。資格証明書については、最寄りの法務局で「現在事項全部証明書」を入手し、この原本を裁判所に提出することになります。本件では、原告、被告の双方が法人であるため、資格証明書は2通となっています。

(2)当事者目録(訴状2ページ目)

訴状の2頁目ですが、当事者目録と呼ばれる原告と被告の氏名(名称)・連絡先を記載します。

当事者の表示

 

〒×××-×××× 大阪市×区×町×-×

原告 ××××××株式会社

代表取締役×××××【⑨】

電話06-××××―××××

FAX06-××××―××××

 

〒×××-×××× 東京都××区×××

被告 株式会社××××××

代表取締役×××××【⑩】

電話03-××××―××××

FAX03-××××―××××

当事者目録には、訴える人(原告)と訴えられる人(被告)を特定するために、郵便番号、住所、名称、電話番号、FAX番号を記載します。

【⑨】は、当事者が法人の場合、商業登記簿(現在事項証明書)に登録されている住所と法人名、代表者名を記載し、連絡先として電話番号とFAX番号を記載します。

【⑩】は、相手方当事者が法人の場合、同じく商業登記簿(現在事項証明書)に登録されている住所と法人名、代表者名を記載し、分かるのであれば、連絡先として電話番号とFAX番号を記載します。一方、相手方当事者が個人事業主の場合、「(屋号)こと(氏名)」という表記を行います。

(3)請求の趣旨、請求の原因(訴状3ページ目以降)

請求の趣旨

1 被告は、原告に対し、金200万円及びこれに対する×年×月×日から支払い済みまで年×%の割合による金員を支払え。【⑪】

2 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。【⑫】

 

請求の原因

第1 当事者【⑬】

1 原告は××を業とする法人である。

2 被告は××という屋号にて××を業とする商人(個人事業主)である。

第2 売買契約の成立と履行【⑭】

原告は被告に対し、×年×月×日、弁済期を×年×月×日とする約定にて、××を金200万円で売り渡す契約を締結し、被告への引き渡しを同日完了させた。

ところが、×年×月×日を経過したものの、被告は原告に対し、一切の金員を支払わない。

 

第3 結語【⑮】

よって、売買契約に基づき請求の趣旨記載の通りの判決を求めて本訴訟を提起する。

以上

まず、大きな項目として「請求の趣旨」と「請求の原因」に分かれます。イメージとして、「請求の趣旨」とは判決して欲しい内容、「請求の原因」は判決をもらうための根拠に関する主張と考えれば良いかと思います。

【⑪】お金を支払って欲しいという場合の決まり文句的な表現となります。補足ですが、仮に遅延損害金まで請求しないというのであれば、単純に「被告は、原告に対し、金200万円を支払え。」と記載すれば足ります。また、本件では支払期日の約束がありましたが、約束がなされていない場合は、「…これに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで…」という表現方法を用います(訴状を受け取った日の翌日から遅延損害金が発生するという意味になります)。さらに、本件では、遅延損害金の利率が約束されていませんが、この場合は法律上の利率を記載すればOKです(なお、2020年4月1日施行の民法改正により変動利率となります。商法514条に基づく年6%は廃止されますので要注意です)。

【⑫】「2 訴訟費用は被告の負担とする。との判決並びに仮執行の宣言を求める。」という文言も決まり文句ですので、そのまま丸写しでよいかと思います。なお、ここでいう「訴訟費用」とは、裁判所に納付した印紙代や郵券のことであって、裁判所に出廷するための弁護士費用などは含まれません。

【⑬】から【⑮】については、若干筆者の好みのようなところもあるのですが、執筆者は「当事者」「契約の成立と履行」「結語」という形にわけて、必要事項を記入するようにしています。

【⑬】については、原告と被告の紹介です。

【⑭】は、メイン事項になるのですが、売買契約の場合、いつ売買契約が成立したか、売買の対象となった商品は何か、売買金額はいくらか、商品をいつ引き渡したか、売買代金の支払期日はいつかという点を記載していきます。なお、サンプルでは文章形式にしましたが、項目毎で箇条列挙する方法でも構いません。ちなみに、本件では売買ですが、お金の貸し借りの場合は、お金の貸し借りに関する契約(金銭消費貸借契約)の成立日、金銭の授受を行った日、返済期、返済期の経過に関する事実を記載します。例えば、「原告は被告に対し、×年×月×日、弁済期を×年×月×日とする約定にて、同日金200万円を貸し付けた。ところが、×年×月×日を経過したものの、被告は原告に対し、一切の金員を返済しない。」といった表現になります。

【⑮】法曹業界では「よって書き」なんていう言い方をしますが、要はまとめです。どういった契約関係に基づいて請求を行うのか記載することになります。

3.訴状作成後の行動

(1)訴状の提出までの動き

訴状を作成したら、いよいよ裁判所に訴状を提出することになります。どの裁判所で訴状を提出するか=訴訟提起するのかは「管轄」という問題になりますが、これは上記2.(1)の解説をご参照ください。

さて、訴状の提出方法ですが、管轄の裁判所に自分で持っていく方法と郵送で訴状を裁判所に送付する方法とがあります。どちらでもよいのですが、遠方の裁判所に提出しなければならない、どうしても時間の都合がつかないなどといった理由がない限りは、裁判所に訴状を提出しにいった方が無難だと思います。なぜならば、訴状を受領した裁判所がまず行うことは、訴状の記載に不備がないか審査を行うことになります。そして、もし不備があった場合、提出したその場で裁判所の職員の指示を受けながら修正したほうがスムーズに手続きが進むからです。なお、万が一の訴状の修正のためにも印鑑は持参したほうがよいでしょう。

さて、裁判所に訴状を持参にて提出する場合、裁判所という慣れない場所であるためか色々と構えてしまう方もいるようです。が、服格好は私服で問題ありませんし、裁判所の建物出入りは自由ですので、特別な対応は不要です(ただし、最近各地の裁判所では安全確保のため、入口で手荷物検査をやっています)。そして、大きな裁判所であれば入口付近に守衛さんや案内役の人がいますので、その人に「訴状を出しに来たのですが、どこに行けばいいですか」と尋ねれば教えてくれます(小さな裁判所であれば、入口付近に受付カウンターのある部屋がありますので、そこに入って職員に尋ねれば教えてくれます)。

訴状の受付係にいくと、カウンター越しに誰かいますので、「訴状を出しに来ました」といえば、誰かが対応してくれるはずです。そして、その担当者に訴状(証拠があるのでれあれば証拠書類)3部と、必要となる印紙及び郵券を渡せば、訴状審査を開始するので待つように言われるはずです(混み合っているときは時間がかかるので、待つかどうか聞かれると思います)。しばらく待っていると呼び出されますので、裁判所の受付印のある訴状1通が返却されますので、これで訴訟審査は終了となります(修正事項がある場合、この呼び出し時に修正内容を指示されます)。

(2)訴状提出後(第1回裁判期日の調整)の動き

おそらく訴状審査の段階では、第1回の裁判期日については指示がないはずです(ただ小さな裁判所であれば、訴状審査完了の段階で期日調整を行います)。おそらく訴状審査の担当者より説明があるはずですが、例えば大阪地裁の場合であれば、第1回の裁判期日については、だいたい10日くらいしないと裁判所から連絡がありませんので、第1回裁判期日の調整については少し待つことになります。

裁判所より第1回裁判期日の連絡があった際、一緒に「×号法廷に来てください」と言われるはずです。それをメモして当日は5分くらい前に出廷すればよいかと思います(あまり早く行き過ぎても、法廷が開いていなかったりします)。

(3)第1回裁判期日以降の動き

法廷に入ったら、大阪の場合は事務官と呼ばれる出欠対応をする人がいますので、その人に「×時の事件の××です」と裁判の時間と自分の名前を伝えてください。出欠確認後、傍聴席で待っているように言われるはずですので、原告(=訴訟提起を行った者)であれば、なるべく左側に座って待っていればよいでしょう(原告席は左側になるためです)。同じ時間帯に複数の裁判が行われますので、他の裁判を傍聴しながら、自分の名前が呼ばれるのを待ってください。自分の名前が呼ばれたら、いよいよ原告席に移動し、裁判が開始となります。

原告席に着席後、裁判官より「訴状のとおり陳述しますね」といったことを聞かれるかと思いますので、「はい」と回答してください。もし、提出した訴状の内容について裁判官が疑問を持っている場合、その際に「この点はどういう意味ですか」と尋ねられるはずですので、自分の認識を説明すればよいでしょう。

次に、被告が出頭している場合、裁判官が被告に対して、訴状記載内容に対する認識を訪ねるはずですので、まずは裁判官と被告とのやり取りを聞いてください。このやり取りが終了したのち、裁判官より何らかの指示があるはずですので、裁判官の指示に従ってやり取りをすればよいかと思います。

ちなみに、被告席には誰も着席していない場合があります。

可能性としては、①答弁書という書面が提出されているので欠席している場合、②答弁書すら提出せず欠席している場合の2パターンが考えられます。①のパターンの場合、裁判官からは「被告の答弁書に記載してある内容について反論があれば、次回までに準備書面を提出してください。では、次回期日ですが…」と反論書面の作成指示と第2回裁判期日の日程調整が行われます。日程調整終了後、1回目の裁判は終了となります(スムーズに進めば3分くらいで終了するはずです)。

一方、②のパターンの場合、裁判官より「何か被告より連絡がありましたか」と聞かれることもありますが、「特に連絡はない」と回答すれば、裁判官は「本日で弁論を集結します。判決言い渡しは×月×日×時×分、当法廷で行います。」と宣言しますので、これで裁判は終了となります(いわゆる欠席判決と呼ばれるものであり、通常は原告の請求内容を認めた判決が言い渡されます)。ちなみに、裁判が終結となった場合、あとは判決言い渡し期日しかありませんが、判決言い渡し期日にあえて裁判所に出廷する必要はありません。というのも、判決言い渡し期日の時間経過後に裁判所に電話すれば結論は教えてくれますし、後日、判決書と呼ばれるものが郵送されてくるからです。

そして、この判決書において、原告の勝訴判決が記載されていた場合、いよいよ強制執行という手続きを行うことができることになります。

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<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

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弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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