(改正民法対応)業務委託契約書をチェックする際に注意するべきポイントを弁護士が解説!

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【ご相談内容】

働き方改革への対応のためHRTechを利用したコンサルティングサービスを受けることになったのですが、業務委託契約書を検討する当たり、どういった点に注意すればよいのでしょうか。

【回答】

業務委託契約という契約類型は法律上の定めがありません。このため、そもそもどういった業務を委託し受託するのか業務内容を確定することがまずもってのポイントとなります。
その上で、業務の提供方法や免責事項などを意識的にチェックし不都合がないかを見極めることになります。

>>会社担当者が民法改正を考慮しつつ売買取引契約書を検討する際に注意するべきポイントとは?

【解説】

本件ではいわゆるHRtechによる人事制度改善コンサルティングという内容となっていますが、指導援助を含む無形財産を提供する業務委託契約を念頭に、以下解説します。

1.業務内容を確認する

業務委託契約を締結するに際して、まずポイントとなる事項は委託する業務(受託する業務)をできる限り具体的に明記することです。なぜなら、実際のトラブルの現場を見ていると、曖昧な内容しか契約書に記載しなかったがために、委託者が認識している業務範囲と受託者が認識している業務範囲との相違があることが大きな原因となっているからです。
次のサンプル条項例でも具体的かつ明確とは言い難いのですが、定めにくいのであれば、「業務範囲外である内容」をむしろ契約書上に明記するといった方法をとることもポイントとなってきます。
なお、場合によっては契約締結時後に、何をどこまで行うのか具体的な業務を詰めていくというパターンもありうるところです。この場合は、例えば「後日双方が確認した仕様書記載内容をもって業務内容を最終確定する」といった一文を入れておき、対応するということも検討するべきです。

(例)
第×条(業務内容)
本契約において、受託者は、次の各号に掲げる範囲内でサービスを提供する。
①データベース解析結果作成業務
②評価シート作成業務
③KPI作成業務
④人事組織上の課題抽出・問題解決のための提案業務
⑤その他関連する業務で委託者受託者合意したもの

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2.業務遂行方法について確認する

一番重要なのは業務範囲の確定であることは前述の通りですが、意外と盲点となりやすいのが業務遂行方法に関する規定です。例えば、委託者は情報漏洩リスクを想定して委託者指定の場所内のみで作業を行わせるつもりであったのに対し、受託者は自宅等で作業を行うつもりであったという行き違いが現実にあったりします(他にも一例として、システムの保守業務については、委託者は委託者事業所からのリモート作業、受託者は事業所内での現場作業を想定していた等があります)。そして、委託者からすると作業プロセスが見えてこないため、本当に業務を遂行しているのか、報酬を支払う価値があるのか等疑心暗鬼になり最後はトラブルになることもあります。
こういった実情を踏まえると、どういった形式で業務を遂行するのか、業務の途中経過の報告の仕方等について明記することがポイントとなってきます。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(実施方法)
1.受託者は、前項各号の業務を、電話・FAX・電子メール等の通信媒体を用いながら、受託者の事業所内で遂行するものとする。なお、受託者の事業所以外の場所にて当該業務を遂行する場合、日程や費用などを委託者受託者協議の上、決定するものとする。
2.受託者が委託者に対し、本件業務を遂行するために必要となる資料又は情報の開示を求めた場合、委託者はこれに応じるものとする。
3.受託者は、委託者より要請があった場合、遅滞なく委託者に対し本件業務の実施内容を報告しなければならない。

なお、特にIT業界では、建設業界と同じく多重下請け構造となっています。本件でも、受託者は業務の履行に当たり、当然に再委託することを想定している場合があります。しかし、委託者が再委託予定であることを当然に知っているわけではありませんし、契約上当然に再委託が認められるとは限りません。特に、本件のような準委任型の業務委託契約の場合は、改正民法により委託者の承諾を得ることが再委託の条件となる旨明文化されました(なお、「やむを得ない事由」がある場合も再委託可能である旨明記されましたが、業務の履行に関してやむを得ない事由というものは通常想定しづらいように思われます)。
したがって、受託者において再委託を予定しているのであれば、委託者より再委託の承認を契約締結時点でもらうことがポイントとなります。例えば次のような条項です。
第×条(再委託)
受託者は、本件業務の一部を第三者に委託することができるものとする。

3.できること、できないことを確認する。

業務委託契約の中でもコンサルティング業務のような成果が出るか否か保証ができないタイプのものの場合、特に受託者としてはこの範囲までなら責任を負えるが、これ以上は責任を負えないということを明確にしておく必要があります。
次の例示条項では、そもそもの前提となる委託者開示の情報に誤りがあった場合は業務の正確性を担保できないことを明記しています。また、分析・解析結果も絶対的に客観的なものとは言い切れず、何らかの形で主観的要素が混じる可能性も否定できないことを明記しています。さらに、現在時の情報分析・解析までは行えても、当該情報を用いて完全な将来予測することは不可能ということも明記しています。ケースバイケースにはなってしまいますが、リスクヘッジの観点からはできる限り明記したいところです。
なお、受託者側からすれば、営業政策的には「できないこと」をいうのは難しいと感じるかもしれません。しかし、トラブルを回避するためには必要なことですし、委託者としても「できないのであれば始めから言ってほしい」という要望をもっています。そして、「できることできないこと」をはっきり言う方がかえって委託者より信頼を得られることもあります。
したがって、受託者の立場からすれば、恐れずに、できないことはできないと契約書に具体的に明記することがポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(免責)
1.委託者は、委託者が本件業務を遂行するために開示要請した資料又は情報が開示されない場合、受託者において本件業務の遂行が困難又は不可能となることを予め了承する。
2.委託者は、受託者による本件業務の遂行によっても人件費の適正化、人事評価制度の効率化及び生産性向上率の上昇が得られない場合があること、将来的にも人件費の適正化、人事評価制度の効率化及び生産性向上率の上昇を保証することができないこと、その他委託者が主観的に期待する効果が得られない場合があることを予め承認する。
3.委託者は、受託者が委託者に提示する提案内容について、当該提案時点における有効かつ正確なものとして提示するものであって、将来において有効かつ正確なものとして保証するものではないことを予め承認する。

4.報酬の支払い方法について確認する

お金をめぐるトラブルは契約の性質を問わずつきものですが、特にトラブルになりやすいのが何らかの事情で契約が途中で終了した場合です。委託者からすれば成果が得られていないので報酬支払いを拒絶したいところである一方、受託者からすれば業務遂行に相応の労力・時間をかけていますので、何らかの清算を行いたいところです。
これから契約を締結して一緒にやっていきましょう!という段階であるにもかかわらず、破局となった場合のことを想定して契約書に対処内容を明記することにつき、一種の矛盾を感じられるかもしれません。ただ、契約書が効力を発揮するのは、イレギュラーな事態が生じた場合です。このような事態が生じた場合、契約書に記載されている内容が解決指針でありルールブックとなります。
なお、契約途中で終了した場合、受託者が委託者に対して、たとえ受託者に帰責事由があってもその履行割合に応じて報酬請求ができることが改正民法によって明文化されました。委託者からすれば、契約書に明記していない以上は報酬なしとは言いづらくなりますので、中途解約の場合の処理については今後は意識的にチェックする必要があると考えられます。
上記のような点を意識しながら報酬の支払い方法に関する条項をチェックするのがポイントとなります。例えば、次のような条項です。

(例)
第×条(報酬)
1.委託者が受託者に支払う報酬は、×円とする。
2.受託者は委託者に対し、×年×月×日までに、受託者の指定する金融機関口座に振り込んで支払うものとする。なお、振込手数料は委託者の負担とする。
3.本契約が何らの事由により途中で終了した場合の報酬の精算方法は次の通りとする。
・本契約開始から1ヶ月以内に終了した場合…報酬額に10%を乗じた額
・本契約開始から1ヶ月を超え3ヶ月以内に終了した場合…報酬額に50%を乗じた額

5.損害賠償の範囲について確認する

前述の免責条項と重複する部分はあるのですが、そもそも契約違反にはならない事項を宣言した条項であるのに対し、ここで述べる損害賠償の範囲に関するものは契約違反があったことを前提に、どこまで責任を問えるのか(負うのか)を定めた条項となります。
当然のことながら、委託者としては法律上認められる損害賠償の範囲より狭くなっていないか、受託者としては損害賠償の範囲が事実上無制限にならないよう一定の範囲に収めることができないかがポイントとなり、双方の利害が対立する場面となります。
具体的には損害賠償の内訳として逸失利益等の特別損害・間接損害まで含めるのか、具体的な損害賠償額として一定の上限を設けるのかがチェックポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(損害賠償)
委託者及び受託者は、本契約の履行に関し、相手方の責に帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対して、逸失利益等の間接損害を除く、直接かつ通常の範囲の損害につき賠償請求することができる。

6.権利帰属について確認する

業務内容によって検討するべき事項が異なってくるのですが、本件のようなコンサルティングサービスの場合、受託者としては、他の顧客に対しても同様のコンサルティングサービスの提供を行う以上、ノウハウを流用されることは何としてでも避けたいところです。そこで、受託者としては、ノウハウ流用防止に関する規定や権利は受託者に留保される旨の規定を設けたいところです。
もっとも、分析・解析結果を記載した媒体物の著作権については、当事者の力関係如何によっては受託者に帰属させざるを得ない場合も想定されます。この場合、①著作権譲渡の時期を支払い時期まで引き延ばす、②著作権譲渡の範囲を本契約により新たに発生した著作物に限る、③著作権自体は受託者に留保したまま、委託者に支障とならい範囲でライセンスを付与する、といった工夫を施すべきでしょう。
以上の要点がチェックポイントとなりますが、具体的には次のような条項です。

(例)
第×条(権利の取扱い)
1.受託者が委託者に対して提示する提案書の著作権その他法的権利は受託者に帰属するものとし、受託者は委託者に対し、委託者自らの業務改善を実行する範囲内にて使用を許諾する。
2.委託者は、受託者が委託者に対して開示するデータ分析のためのノウハウ・技法・手法等の一切情報について、機密情報に該当することを予め確認する。

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<2020年4月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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