不当要求があった場合の対処法について、弁護士が解説!

 

 

【ご相談内容】

当社のお客様センターには様々な要望や問合せがあるのですが、中には、理不尽な要求を突きつけ何時間も担当者を拘束する者、要求が認められない限り毎日連絡するといって同じ要求を日々繰り返す者、脅迫・威圧的な言葉を用いながら要求を認めさせようとする者など、悪質な事例も散見されます。

いわゆる不当要求があった場合の対処法としてはどのようなものが考えられるのか、教えてください。

 

 

【回答】

そもそも何をもって「不当要求」と分類するのか、極めてナーバスな問題であることを押さえておく必要があります。例えば、労使問題で外部のユニオン(労働組合)からの介入があった場合、不当要求と位置付けて対処する経営者もいるのですが、多くの場合は問題解決を遠ざけ、事態を悪化させるだけとなります。

不当要求について明確な定義や基準はありませんが、本記事では次のような行為類型に該当するものを不当要求と位置づけ、解説を行います。

・特定の者に対してのみ、著しく有利な取扱いを行うことを繰り返し要求する行為

・当方の正当な権利行使や業務遂行を繰り返し妨害する行為

・法律上義務がない行為を当方に繰り返し要求する行為

・身体へ危害を及ぼすことを明言する行為

・反社会的勢力との関係を明言する行為

なお、単なる不満申告(通常のクレーム)か不当要求(違法性の強いもの)かの判断は、当事者のみで判断することは危険です。必ず弁護士に相談して判断することが肝要です。

また、判断以前のクレームがあった場合の初期対応については、以下の記事もご参照ください。

 

クレームを受けた場合の初期対応のポイントを弁護士が解説!

 

 

【解説】

 

不当要求と判断した場合、巷で言うところの「安易に妥協せず、毅然とした態度で立ち向かう」ことが必要となります。ただ、あまりにも抽象的な言葉ですので、具体的にどういった対策が必要なのか、以下、交渉開始時、交渉中、交渉打ち切りの段階に分るうの上、解説します。

 

1.交渉開始・準備時の対応

 

(1)相手の確認・特定を行う

相手の迫力に圧倒されてしまい、誰から要求されているのか未確認であるといった事例を散見しますが、相手の確認・特定を行うべき理由は次の通りです。

  • 相手が自らの名前や所属先等を名乗らない場合、「名前を教えて頂けない以上、交渉致しかねます」と交渉打切りの根拠を掴むことができる
  • 関係者又は代理人であると名乗ってきた場合、直接の権利者・被害者ではない又は非弁行為であるとして交渉を打ち切る根拠を掴むことができる
  • 相手が自らの名前や所属先等を名乗ってきた場合、相手の属性を調査することができる

ところで、相手からは「まずは自らが名前を名乗れ!」等と迫ってくる場合があります。しかし、もともと要求を行ってきているのは相手である以上、「まずはそちら様より教えてください」と対処した上で、たとえ押し問答になったとしても相手から名前を名乗らせるべきです。この押し問答を続けるだけでも、相手に対して一筋縄ではいかないと思わせる点で効果があります。なお、相手が名乗ってきた場合、当方も筋論として名前は名乗るべきです。但し、内部的に応対担当者が決まっていない場合は、「本日は私××がお話をお伺いします」とあくまでも本日限りであることを明言し、将来的に担当窓口の変更はありうる旨のニュアンスは残しておいた方が無難です。

 

(2)対応可能時間を告知する

不当要求の場合、一般的には事前約束無く不規則に連絡等を入れてきては、有利な回答を導き出せるまで何時間でも引っ張ろうとする傾向があります。

したがって、交渉を開始するに先立ち、必ず最初に「本日は私の都合もありますので、×分以内に限らせていただきます」と一方的に宣言するべきです。このように一方的に宣言した場合、相手より難癖をつけられる可能性がありますが、きっぱり「先ほどお伝えした通りです」とだけ回答し、交渉時間については一切譲歩しないという態度を示すべきです(なお、逆に難癖をつけてもらうことで、要求内容に関する実質交渉の時間を減らすという効果もあります)。

ちなみに、こちらが設定した時間を無視して、ひたすら交渉を続けようとした場合、「時間が来ましたので、打ち切らせていただきます」と言って、相手の話を遮るべきです。おそらく相手は色々と言ってくるはずですが、3回程度同じやり取りを繰り返せば通常は打ち切れるはずです。3回程度やり取りを繰り返してもなお執拗に交渉を続けようとする場合は、やむを得ませんが「申し訳ありませんが、都合がありますのでこれで失礼します」と宣言し、その場を去る(電話を切る等)といった強引な行動をとるべきです。もちろん、これが新たなクレームにつながる可能性もありますが、相手の時間に合わせて交渉を行う義務は存在しない以上、一切の問題なしとして押し切ることも重要となります。

ところで、何分以内に制限するのが合理的かという質問を受けることがあるのですが、ケースバイケースというほかありません。ただ、一般論としては30分程度、長くても1時間以内と設定するのが一応の目安になるのではないかと考えられます。

 

(3)対面交渉における面会場所はこだわりを持つ

鉄則中の鉄則となりますが、相手の指定場所にて対面交渉を行うことは絶対に回避するべきです。これは、交渉担当者が事実上監禁状態になるリスクがあるためです。

一方で、当方が管理占有する施設を面会場所として設定することも原則回避したほうが良いと考えられます。これは、相手が当方施設内にいつまでも留まり続け、かえって不都合が生じる可能性があるからです。

対面交渉の場合、可能な限り、パブリックスペース(例えばホテルの喫茶店等)を利用することが無難と考えられます。なぜなら、パブリックスペースの場合、第三者が管理するスペースであるため使用時間の制限が当然ありますし、パブリックスペースであるが故、衆人環視状態ですので相手も下手な行動をとれないという抑制効果が働きやすいからです。なお、パブリックスペースを利用するに際して生じる費用(喫茶店であれば飲食代等)については、必要経費として相手分も含めて当方負担とした方が無難です。間違っても、相手に当方分まで負担させてはなりません(不当要求者は、こういった小さなことでも後で言いがかりをつけてくるため)。

 

(4)対面交渉における人数にこだわりを持つ

人数については、当方で立会う人数確保の問題と相手の立会人数の制限の問題とを分けて検討する必要があります。

まず、当方で立会う人数ですが、1人は絶対にNG、2~3人が妥当、4人以上だと逆にNGというのが基本的考え方になると思われます。なぜなら、1人の場合、交渉中に不測の事態が生じた場合に対処しきれないことがあるからです。一方4人以上の場合、相手の立会人数にもよりますが、当方側が過剰人数で対応したという状況になりやすく、相手より後で言いがかり(威圧された等)を付けられる可能性もありますので、注意が必要です。

したがって、当方の立会人数としては、基本的には2名、多くても3名に留めるのが無難です。また、内部的な役割分担として、誰が話をし、誰がメモ役になるのか等も決めておいた方がよいものと考えられます。

次に相手の立会人数ですが、原則的には2名以内に留めるべきです。人数が多くなければなるほど集団的示威行動が発生しやすく、どうしても圧力に屈しやすい環境となりがちだからです。一方で相手側が1名のみで交渉に臨むことが事前に判明していた場合、場合によっては相手側にとって都合の良い立会人1名を追加してもよいことを提案することも検討に値します。なぜならば、当方複数名、相手1名の場合、相手より交渉時に圧力を受けた等の言いがかりをつけられる可能性があるからです。ただし、あくまでも提案すれば足り、相手が立会不要というのであれば、それ以上に相手の立会人同席を強いる必要はありません。あくまでも機会均等を事前に要請したという形さえ残すことができれば事足ります。

なお、相手が1名のみの出席なので、当方出席者も1名にして欲しいと要求してくる場合もありますが、こういった要求は拒絶するべきです。当方は複数名で対応することをルールとしていることを説明すれば足りますし、それ以上の議論を行う必要性もありません。

 

(5)録音していることをあえて告知する

録音等を行い交渉内容の記録化を図ることは極めて有効な対策となります。なぜなら、口頭のやり取りだけでは、正確な内容を後日再現することが困難となり、いわゆる言った言わない論争が発生してしまうからです。不当要求の対応の場合も当然この点は重要となります。

そして、不当要求の場合、何より録音すること=後で再現することが可能であることを明示的に告知することで、相手に心理的プレッシャーを与えるという効果がある点も見過ごせません。この点を嫌ってか、録音等の記録化を図ることにつき抵抗する相手もいるかもしれませんが、「本日の交渉内容を正確に記録化することであって、何ら違法性はありません」と言い切り、正々堂々と録音等を行うという態度に出るべきです。

なお、対面交渉の場合、録音機を強引に取り上げようとする相手もいるかもしれません。その場合は返還請求を行いつつ、返還されるまでは交渉には一切応じないというスタンスで臨み、相手が返還してこないようであれば、「交渉は打ち切らせていただきます。なお、録音機については別途警察に相談させていただきます」として、その場から立ち去るようにするのも一案です(いわゆる警察沙汰にすることで、不当要求が収まる可能性が出てくるため)。

 

(6)要求内容の特定(絞り込み)を行う

ややテクニカルな話となってしまうのですが、不当要求の場合、とにかくいえることは何でも言ってくるという傾向があり、要求内容が多岐にわたることが多いのが特徴です。この多岐にわたる要求について、当方なりに要求事項を整理し、「あなたの言いたいことは××ですね」という積極的な問いかけをしながら、内容の絞り込みを行うことが極めて重要となります。

この絞り込みを行うことで、相手が違う切り口で攻め込んできたとしても、「話をすり替えないでください」と返答したり、「先ほどお話した通りです」と返すことで、相手のペースに乗ることなく、交渉を進めることが可能となるからです。

特に、不当要求者と後日時間を取って協議を行う場合、事前に議題の設定・絞り込みを行うことで、当日の協議の進め方につき、当方が主導権を握ることが可能となります。是非とも押さえておきたいところです。

ちなみに、本来であれば、要求内容について相手に語らせるようにする方が望ましいです。ただ、不当要求を行う者は、あえて抽象的な言葉を選んで要求することが多く、なかなか相手に具体的な要求を語らせることが難しいという実情があります。相手の話も聞かずに無理に要求内容の特定・絞り込みを行うことはNGですが、ある程度話を聞いて、具体的な要求内容を語ろうとしない場合、積極的な問いかけを行うことで要求内容の特定・絞り込みを行うとイメージしていただければと思います。

 

 

2.交渉中の対応

 

(1)担当者の役割分担を決める

上記1.(4)で少し触れましたが、面会協議を行うに際し、当方が複数名で同席する場合は、各人がどういった役回りとなるのかあらかじめ決めておいた方が無難です。これは、交渉の場で各人が異なる発言を行った場合、相手に付入る隙を与えてしまうことを防止するためです。また、相手に当方側の発言者について選択権を与えてしまい、相手に交渉ペースを握られてしまうこともあるからです(当方の担当者が発言しようとしても「あなたには聞いてない」として制止されてしまう等)。

原則的には発言者は1名に絞り、もう1名は例えば速記役で一切発言しないといった役割分担を決めておくことで、交渉の場が荒らされることを防止することが可能となります。

 

(2)社長(決済権者)は参加させない

交渉ノウハウとしては必ず語られている事項であり、執筆者も同様に考えています。これは、相手は社長(決済権者)を集中的に攻撃し、混乱に乗じて出てきた言葉尻を捉えて更に追い込もうとすることが多いこと、また、社長(決済権者)に十分な検討時間を与えることなく、その場で(相手にとって有利な)言質を取ろうとすることが多いことが理由となります。

ただ、ケースにもよるのですが、あえて社長(決済権者)に交渉の場に出てもらう事例も存在します。例えば、相手の要求内容につき明らかに法的根拠がなく、かつ社会的妥当性もない、したがって、当方として譲歩の余地がなく一切要求に応じないという結論が出てしまっているのであれば、あえて社長(決済権者)が相手に対し、要求には応じない旨最後通告し、交渉の打切りを相手に分からせるという場合です。とはいえ、相手も必死ですので、あの手この手を使って社長(決済権者)を引き留めようと行動を起こしてきますので、これに対して社長(決済権者)が無下にあしらうくらいの覚悟がないことには、かえって交渉の場が混乱するリスクもあります。

したがって、よほどのことがない限り社長(決済権者)は交渉の場には参加させないほうが良いと考えます。

 

(3)服装はラフな格好にしない

電話等であれば相手に姿・格好が見えるわけではありませんので、この点は気にする必要はありませんが、面談協議する場合や映像等を通じて協議する場合、服格好については、ある程度こだわりを持った方が良いかと思います。なぜならば、あまりにもラフな格好の場合、「服格好がなっていない」、「こんな服で俺と会いやがって馬鹿にしているのか」等々の難癖をつけられる可能性があるからです。

たしかに、交渉の場における服格好についてルールがあるわけではありませんし、難癖をつけてくる者は、何をしても難癖をつけてきます。しかし、難癖をつけられないよう事前に対策を講じたほうが交渉は捗りますし、何より相手に対して付入る隙を与えないことにもつながります。ちなみに、執筆者の場合、季節に関係なくスーツ上下着用、ネクタイを締め、革靴(ビジネスシューズ)で立会います。そこまで固い格好しなくてもと思う方もいるかと思いますが、難癖をつけられることで話の内容が分散させられてしまうと、当方も防戦一方となりやすく、交渉の主導権を相手に握らせることになってしまいかねません。

不当要求の場合、相手はとにかく当方への攻撃材料を探し、そこを突破口に要求を認めさせてやろうとしてくる傾向があります。こういったことを防止するために自ら対策を講じることができるのであれば、是非実践したいところです。

 

(4)録音は必須、録画はできれば行う

上記1.(5)で触れましたが、言った言わない論争の防止、相手の態度や言動などを証拠化するためには、録音は必須と考えるべきです。なお、上記1.(5)では威嚇効果を狙って録音している旨相手に告知するべきと書きましたが、何らかの事情により告知することが難しい場合は隠し録音でも問題ありません。隠し録音をすると、後で盗聴している等と難癖をつけられると考えてしまう方もいるようですが、盗聴とは本来聞いてはいけない会話を無断で盗み聞くことを意味します。相手が当方に対して話をしている内容である以上、本来聞いてはいけない会話ではありませんし、何より無断で聞いているわけでもありません。したがって、盗聴と言われる心配はありませんし、言われたところで「会話内容を記録しただけであり、一切問題ありません」として相手にしないことがポイントです。

なお、タイトルでは、できれば録画を行うことも記載しました。録音よりも相手の態度・言動が視覚化される点で非常に有力な証拠資料となります。しかし、録画の場合肖像権との関係もあること、交渉記録の正確性を担保するために録音を超えて録画までしなければならない必要性が常にあるとは言い切れないことを踏まえると、無断録画は原則回避したほうが無難と考えられます。一方で、録画することを申出た場合、相手も当方の態度等を録画したい旨申出てくることがあります。現場で交渉を行っている方であれば分かると思うのですが、実際にカメラを向けられてしまうと圧迫感を受け、なぜか心理的に交渉が進めづらいことがあります。こういった点も考慮すると、録画は可能であれば行うという程度で考えたほうがよいものと思われます。

 

(5)必要最小限の言動に留める

不当要求の場合、相手の傾向として、当方の不用意な発言を言質にとって攻撃するということが多くあります。したがって、話すべきことは端的に、相手から聞かれたことに対しては聞かれたことのみ発言するというのが鉄則となります。

とはいえ、例えば「なぜですか」等のオープンクエスチョンを繰り返し受けた場合、何か理由を述べなくてはならないと心理になりがちであり、色々としゃべってしまうこともあります。また、相手が扇情的な言動を行ってきた場合、どうしても感情的な発言が出てしまう場合もあります。交渉の場に当方側の他の立会人がいるのであれば、当該立会人が発言を制止する等の対策を講じることもできますが、電話交渉など1人で対処する場合、自らの判断で対処するほかありません。

やや交渉経験がモノ言うところがありますが、発言前に常に一呼吸置くなど意識をしながら、なるべく冷静になった上で必要かつ端的な発言に留めるということを意識していただければと思います。なお、執筆者個人の感覚にすぎませんが、少し意識的にゆっくり発言すると、比較的落ち着いた状態で話すことができるのではないかと思います。

 

(6)相手の話は最後まで聞く

特に初回の交渉時に当てはまりますが、上記1.(6)でも記載した相手の要求事項を整理・絞り込みができるまでは、一応相手の話を最後まで聞く(話を遮らない)というスタンスで臨んだほうがよいものと考えられます。これは、相手が話している最中に当方が発言をしてしまうと、「話を聞かないとは何事だ」等と難癖をつけ、当方側を非難する口実を与えてしまうことになるからです。

ただ、こういった相手の話を最後まで聞くという対応は常に続ける必要はありません。特に、相手の要求内容に対し、当方が2回以上回答を行っているのであれば、単なる堂々巡りにすぎませんので、「先ほどご回答した通りであり、これ以上の協議に応じることはできません」ときっぱり言い切ってしまうことがポイントとなります。それでもなお執拗に同じ要求を繰り返してくる場合、状況にもよりますが、「同じ話の繰り返しですので、交渉を終了させていただきます」と一方的に宣言し、交渉を強引に打ち切ることも念頭においてよいと思われます。

ちなみに、当方が発言している最中に、相手が被せて発言をしてくる場合があります。この場合は、相手の話を最後まで聞く必要などなく、むしろ間髪入れずに「今私が話をしていますので、最後までお聞きください」と申入れを行うことが重要です。この申入れを行ったにもかかわらず、相手が発言を続けるようであれば、「当方のお話を聞いて頂けない以上、協議をすることが難しいと判断しますので、交渉を終了させていただきます」と宣言し、交渉を打ち切るといった対応も検討してよいものと思われます。

 

(7)書類作成には応じない

執筆者が知る限りではあまり多い事例ではないのですが、例えば「今日の議事録なので確認のサインをくれ」等と言って、何らかの書類にサインさせようとする相手も存在します。そもそも論として、相手が一方的に作成した資料に対してサインする義務などありませんので、その点は十分に意識しつつ、仮に内容的に問題がないと判断しても、絶対にその場ではサインしないことが重要です。原則的には、このような書類にサインすることはできないとして拒絶し、書類自体を受領しないようにすることが無難です。書類を受領したとしても、「会社に報告する」といった発言に留め、それ以上の発言は行わないほうがよいと考えられます(持ち帰って検討する、と言った言い回しをすると、相手より検討結果はどうなった等の後日指摘を受けることになり、余計な難癖をつけられるきっかけになりかねません)。

なお、暴行・脅迫を受け、書類にサインせざるを得ない状況であった場合、交渉終了後直ちに、暴行・脅迫によってサインしたものであり法的効果はない旨の内容証明郵便を送付するといった事後対応を行うべきです。

 

(8)即断即決はしない

上記(2)とも重複するのですが、不当要求者に対する交渉は独特のものがあり、担当者も感情が高ぶる等して冷静な判断ができないことも多いように思われます。したがって、事前の当方側の想定問答等で回答予定であった内容であれば問題はありませんが、検討が必要と思われる内容であれば、担当者レベルでの断定的回答は避けるべきです。

相手は即断即決ができないことにつき、非難や罵声を浴びせてくることもありますが、「会社に報告します」とだけ回答するのがベストです。なお、上記(7)とは異なり、回答保留にしている事項については、後日何らかの形で回答することを想定したほうが良いと考えられます。

 

 

3.交渉終了(打ち切り)時の対応

 

(1)交渉打ち切りのタイミング

不当要求を行う者の特徴として、当方が要求内容を認めるまで執拗に繰り返し要求してくるという点があります。したがって、要求事項に対して当方が確定的な回答を行っており、堂々巡りとなってきたときが交渉打ち切りのタイミングと言えます。ちなみに、執筆者は、当方が確定回答を最低でも2回以上(基本的には3回)行った場合は打ち切ってよいという方針をとることが多いです。

また、不当要求を行う者の特徴として、難癖を含めありとあらゆることをとにかく言い放ってくるという点もあります。本来的には1つ1つ回答し潰していくことが理想ではあるのですが、次々新たなことを言ってきて埒が明かないときもありますので、「○○と××と△△の点は、要するに●●という事項となりますので、当方としては…」といった、個々の要求事項を1つにまとめた上で回答を行うといった方法を使うことも有効かと思います。こういったまとめる方法を使うと、いろいろ言っては来るものの「従前回答した通りです」と返しやすくなり、要求内容が堂々巡りの状態に陥りますので、交渉のタイミングを見極めることができるようになります。

 

(2)事後対応的な約束はしない(次回も継続するような言動を行わない)

交渉を打ち切る際の注意点ですが、「持ち帰って検討します」等の次回も交渉が継続することを伺わせるような言い回しは禁句です。これは頭では理解しているものの、意外と相手に対してどこか遠慮して、「要求には一切応じられず、交渉の余地はない」といった言い切りができないことが多いようです。

もちろん、交渉打ち切り宣言を行うことによって、相手が激怒する等の反応もあり得ますが、これを恐れてズルズル交渉を引き延ばすというのは、相手の思う壺と言わざるを得ません。要求事項に対する確定回答を複数回行い、交渉打ち切りのタイミングに突入している以上、明確に打ち切り宣言を行うべきです。

 

(3)交渉を求められても、書面で提出するよう要請する

交渉打ち切り告知を行った後でも、しつこく連絡を取ろうとする相手もいますが、その場合は「先日来より回答している通りであり、お話することはありません」と言い切る等して、協議を行わないという方針を貫くことが重要となります。

なお、相手によっては、状況が変わった、新たな証拠が出てきた等と言い張って、改めて交渉のテーブルにつかせようとする場合もあります。ただ、本当に状況が変わったのか、新たな証拠が出てきたのか疑わしいといわざるを得ないところがあります。こういった場合、「正確性を期すため、ご指摘の事項を書面にてご送付ください」として、直接協議を避けるといった作戦を立てることも検討に値します。当然のことながら、本当に状況が変化した、新たな証拠が示されたのであれば、交渉を再開する必要があります。しかし、たいていの場合、書面に書かれた内容は従前の要求内容の繰り返しであり、むしろ交渉を再開させる必要性がないことを裏付けるものとなることが通常です。

 

(4)会社全体での情報共有(連絡があった場合の応答統一)

交渉打ち切りを告知した場合、担当者以外の者と協議を行おうと試みる相手も存在します。これに対しては、社内で情報共有し、担当者以外の者は「本件は××が担当しているので、お話することはありません」等と回答し、相手の思い通りにさせないよう対処することがポイントとなります。

 

(5)弁護士に交渉窓口を変更する

要求事項に対する確定回答を繰り返し行った、交渉打ち切り宣言も行った、しかし執拗に要求を続けてくる場合、もはや会社組織だけで対処することは難しい状況となります。この場合は、弁護士に依頼し、弁護士に交渉窓口を一本化すること及び弁護士が示す対処方針に従った行動をとることが重要となります。

 

(6)警察との連携

不当要求者より連絡を受けていること、これ自体で警察に相談をしても、警察は動いてくれないのが通常です。したがって、不当要求問題の解決を警察に委ねるという方針をとることは誤りと言わざるを得ません。

もっとも、警察と相談することで、話を聞いてくれた警察の担当者が「何かあった場合はこちらへ連絡してください」といって名刺をくれることもあります。この名刺をもらってくるだけでも、社内に安心感を与えることがありますので、警察との連携を探ろうとする動き自体は決して無駄にはならないと考えられます。

 

 

 

<2021年10月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

リスク管理・危機管理のご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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