インターネット上でのプロモーション活動で注意するべき事項を弁護士が解説!

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【ご相談内容】

商品・サービス認知度の向上、企業のイメージアップ、売上増加などを狙いとした、WEB上でのプロモーション活動を行おうと次のようなことを考えているのですが、どういった点に注意するべきでしょうか。
(1)フリーミアム戦略
(2)口コミサイトの利用
(3)バズマーケティングの利用
(4)企業アカウントSNSによる情報拡散
(5)アフィリエイト利用による広告宣伝
(6)フラッシュマーケティング
(7)ドロップシッピング

【回答】

(1)フリーミアム戦略

フリーミアム戦略をとること自体は何ら違法ではありません。ただ、どこまでが無料で利用でき、どこから有料となるのかその区分・基準を明確にしない場合、景品表示法違反ということにもなります。また、いわゆる炎上騒ぎを将来し、商品・サービスや企業そのものに深刻な風評被害を及ぼす場合があります。有料サービスへの移行に際し、騙し討ち的な手法をとらないことが肝要です。

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(2)口コミサイトの利用

口コミサイトを通じた自社商品・サービスの認識・評価向上を図ることは何ら問題ありません。ただ、自ら口コミ投稿するなどの自作自演、口コミ投稿代行業者に高評価の口コミのみ投稿させるヤラセ行為などを行った場合、広告主として景品表示法違反として処断される場合があります。また、自作自演やヤラセ行為に対する利用者の目は思った以上に厳しく、企業価値が大きく損なわれる風評被害が生じる場合もあるので要注意です。

(3)バズマーケティングの利用

バズマーケティングを実施するべくインフルエンサー等に対して、自社の商品・サービスの評価に関する口コミを掲載・投稿するよう依頼すること自体は何ら違法ではありません。ただ、自然発生的な口コミではなく、企業が作為的に発生させる口コミである以上、インフルエンサーが投稿する口コミについて広告主として責任を負うこと、特にインフルエンサーが当該商品・サービスを利用していないにもかかわらず、あたかも体験談用に企業にとって都合のより記事を掲載・投稿させた場合は、消費者を誤認させるものとして景品表示法に基づく処分を受けるリスクがあります。

(4)企業アカウントSNSによる情報拡散

企業自らが行う自社商品・サービスの記事掲載・投稿が景品表示法の適用があることは当然のことです。競業他社の商品・サービスと比較する記事掲載・投稿は比較広告として取り扱われる可能性がありますので、行政が公表しているガイドラインを意識しながら掲載・投稿する必要があります。
一方、インフルエンサー等の第三者投稿を引用するなどして自社アカウントSNSに掲載することも宣伝広告に該当し景品表示法の適用対象となります。インフルエンサー等の第三者投稿については、企業からの依頼に基づき投稿されたものなのかを明示することが炎上対策としては望ましいものと考えられます。

(5)アフィリエイト利用による広告宣伝

アフィリエイトを利用すること自体は違法ではありません。ただ、アフィリエイターが勝手に広告内容を修正した場合であっても、商品・サービスの提供者である企業が広告主として景品表示法に基づく処分を受けることになりますので、注意が必要です。

(6)フラッシュマーケティング

フラッシュマーケティングを利用することは違法ではありません。商品・サービスを提供する者としては二重価格表示などに留意する必要があります。

(7)ドロップシッピング

ドロップシッピングという方法自体は違法ではありません。商品・サービスを自社以外の第三者に販売してもらうことで商流拡大を目指すといういみでは通常の特約店・代理店形式と何ら変わりません。ただ、このドロップダウンの特徴は、特約店・代理店となる者が商売人ではなく単なる消費者である場合が非常に多いという点です。消費者被害の事例として世間的認知されていますので、今から行う営業手法としてはお勧めできるものではありません。

【解説】

1.フリーミアム戦略について

(1)フリーミアムとは、Free(「無料」の意)にPremium(「上質な」の意)を組み合わせた造語で、基本的なサービスを無料で提供し、付加的なサービスを有料で提供して収益を得るビジネスモデルを指す、とされています。インターネットマーケティングでよく用いられる、フロントエンド商品を無料にすることで集客し、有料のバックエンド商品で収益を得るという営業手法もこのフリーミアム戦略の1つと考えてよいでしょう。

(2)フリーミアムのビジネスモデルの特徴は、たくさんの顧客を集客するために、「無料(フリー)」を大々的に謳うことにあります。ただ、当然のことながら、事業者は、無料のままでは収益を上げることができませんので、集客された顧客を有料サービスに移行させるために、「色々な方策」を講じることとなります。
この「色々な方策」の中で、例えば、「ここから先のサービス提供を受けるためには有料ですよ」という注意喚起があり、顧客が了解の上でサービス提供を受けるのであれば、何ら問題はありません。しかし、どこまでが無料でどこからが有料かが分からないまま、ある日突然高額のサービス提供料の請求を受けた、もっと言ってしまえば「騙し討ち」的に、後から有料サービスであると言われてしまいサービス提供料の請求を受けた等の問題が最近多発しています。したがって、「フリーミアムのビジネスモデルを採用する場合には、事業者は、無料で利用できるサービスの具体的内容・範囲を正確かつ明瞭に表示する必要がある」というのがポイントとなります。
例えば、次のような事例は景品表示法上問題があると考えられます。
・ゲームをプレイできるサービスにおいて、実際にはゲーム上で使用するアイテムを購入しないとゲームを一定のレベルから先に進めることができないにもかかわらず、「完全無料でプレイ可能」と表示すること。
・動画を視聴できるサービスにおいて、実際には動画をあらゆる時間帯にわたって視聴するためには月額使用料を支払う必要があるにもかかわらず、「完全無料で動画が見放題」と表示すること。
・インターネット上に文書ファイルや写真などの電子データを保存できるストレージサービスと称するサービスにおいて、実際には無料で保存できるデータ量やデータの種類が限られているにもかかわらず、「無料で全てのデータを保存して、どこからでもアクセスできます。」と表示すること。

(3)フリーミアム戦略それ自体は何ら違法ではありません。ただ、フリーミアムと隣り合わせにありながら似て非なるもの(というか悪用したもの)としてワンクリック詐欺があります。このため、「無料」と謳いながら、利用者の分からないうちに課金するとなると、下手をすればワンクリック詐欺と同じような悪徳商法であるとして、法的な問題が生じることはもちろん、事業者に対する悪評がインターネットを通じてあっという間に拡散してしまうリスクもあり得ます。
したがって、フリーミアムは正しく使い、「無料/有料」の境界をはっきりさせることが大事です。一方、サービス利用者側において、昔から言われている通り「ただほど怖いものは無い」という意識を今一度持つ必要があるように思います。

2.口コミサイトの利用

(1)口コミサイトとは、人物、企業、商品・サービス等に関する評判や噂といった、いわゆる「口コミ」情報を掲載するインターネット上のサイトのことをいいます。口コミサイトは、もともと個人が持つ感想を書き込み、当該書き込みを他人が閲覧して書き込む、その繰り返しによる「情報の交換」という形からスタートしたようです。この様なWEBサイトができた背景には、商品の購入やサービスの提供を受けるに際し、自分では判断が付かないので、「他人の声や評判を知りたい」、「他人が薦めるのであれば間違いないだろう…」という人間心理があるからと言われているようです。
そこで、最近では、この「口コミ」力とでも言うべきものを商業的に利用しようとする動きが活発化しています。例えば、集客力のあるメディアサイト(単純な口コミ投稿サイトもあれば、インターネットモール、おまとめサイトのようなものもあり、様々な形態があります)を作り、そのコンテンツとして旅行情報、グルメ情報、商品情報等を掲載することで、旅館、飲食店、商品等に関する利用者同士の口コミ情報を交換するサービスを提供し、一方で旅館、飲食店等の事業者は当該サイトに広告掲載してもらうために費用を支払うというビジネスが存在します(食べログ等がその代表例です)。

(2)自然発生的に出てきた口コミについては、利用者(消費者)の感想に過ぎない以上、景品表示法上は何ら問題がありません。つまり、事業者(広告主)の意とは全く関係のないところで発生した「口コミ」である以上、事業者(広告主)が主体的に広告宣伝を行ったとは言えません。もっとも、最近は「口コミ」を発生させるべく、事業者(広告主)が積極的に働きかけることが多くなっています。そして、事業者(広告主)によって作為的に作られた情報・コントロール下にある情報を拡散させているだけであれば、実質的には、事業者(広告主)自らが、口コミ提供者を通じて広告宣伝活動を行っていることに他ならない以上、当該口コミ内容については、景品表示法上の規制が及ぶことになります。例えば、「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」と消費者庁は指摘しているところです。

(3)例えば、次のような事例は景品表示法上の問題があると考えられます。
・グルメサイトの口コミ情報コーナーにおいて、飲食店を経営する事業者が、自らの飲食店で提供している料理について、実際には地鶏を使用していないにもかかわらず、「このお店は××地鶏を使っているとか。さすが××地鶏、とても美味でした。オススメです!!」と、自らの飲食店についての「口コミ」情報として、料理にあたかも地鶏を使用しているかのように表示すること。
・商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。
上記事例はいわゆる「自作自演」「やらせ」と呼ばれるものであり、利用者に非常に嫌われる行動の1つです。これが明るみになった場合は、事業者が期待している効果とは真逆の効果、すなわちマイナスの評価(悪評価の拡散による風評被害)が行われることとなり、しかもインターネットの特性上、半永久的にこのマイナス評価が残ってしまうことになります。事業者としては、口コミサイトを通じたマーケティング、特に口コミを作為的に誘導しようとすることは慎重になる必要があります。

(4)なお、ヤフー知恵袋やOKWaveといったQ&Aサイト(昔はやった言い方ではWEB2.0型の集合知サイトと呼ばれるものです)で、Q&Aの名を借りた自社の広告宣伝を行っていると判断せざるを得ないものも散見されます。これも「口コミサイト」と同じ問題があると考えられますので、今後は監視の目が及ぶのではないかと予想します。
あと、口コミサイトに名を借りた非常に危ういマーケティングも一部見受けられます。例えば、健康食品の販売において、薬機法・健康増進法違反の広告表現を口コミサイトに記載する例です(お客様の声という形で口コミ情報が記載されることもあります)。仮に、口コミ情報が真実であったとしても、これらの口コミは薬機法・健康増進法などの他の法令によって違法と判断される場合がありますので、十分な注意が必要です(善意で投稿した利用者が処罰されるかはともかく、このような口コミを積極的に用いる事業者は処罰対象になる可能性が十分にあります)。

3.バズマーケティングの利用

(1)上記の口コミサイトと似通っているのですが、ここではバズマーケティングとは、インフルエンサーと呼ばれる情報拡散・影響力を有する者を通じて、商品・サービスに関する有意な情報(企業にとって都合の良い高評価情報など)を流通させる営業戦略と一応は定義しておきます。口コミサイトとの相違点は、口コミサイトは特定のメディアサイト上での情報投稿・閲覧を通じた交流型であるのに対し、バズマーケティングは、インフルエンサーを通じて、いわばネズミ算式に商品・サービス情報が流通するものであり一方通行型とイメージしていただければと思います。

(2)バズマーケティングの場合、インフルエンサーによる「口コミ」を契機として商品・サービスの情報拡散を図るわけですが、これについては大まかに2パターンがあります。
・インフルエンサーと呼ばれるインターネット上での情報拡散力を保有する者が、商品・サービス事業者からの依頼に基づき、実際に当該商品・サービスを利用している状況や利用後の感想をSNS(blog、Facebook、Twitter、YouTube、Instagram、TikTokなどの媒体)に投稿し、当該インフルエンサーとつながりのある閲覧者の口コミを発生させることで、当該商品・サービスの伝播を図るもの(TV番組で商品・サービスを取り上げてもらい、出演者に利用してもらうなどして高評価してもらうことで実質的に宣伝してもらうことと同じとイメージすれば分かりやすいと思います)
・商品・サービスの広告宣伝を依頼する事業者より依頼を受けた広告代理店が、芸能人等の著名人に対し、当該著名人が管理するSNS上に当該商品・サービスに関する投稿を行うよう依頼し、当該SNS上の投稿されたコンテンツを見た当該芸能人のファンによる口コミを通じて、当該商品・サービスの伝播を図るもの
上記の相違点は、インフルエンサーによる当該商品・サービス体験の有無となります。

(3)まず間違えてほしくない点ですが、事業者(広告主)がインフルエンサーに対し、口コミ情報を掲載・投稿するよう依頼すること自体は禁止されていません。
また、若干語弊のある言い方になってしまいますが、インフルエンサーが事業者(広告主)の意図・希望に配慮することを認識しつつ、事業者がインフルエンサーに対し、口コミ情報を掲載・投稿してもらうことを要請することも直ちに違法とまでは言い切れないように思われます。なぜなら、消費者庁が公表している口コミサイトに関する見解、すなわち、口コミ情報の内容について「実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合」は問題になると指摘しているにすぎない以上、実際にインフルエンサーが「良い商品・サービスである」と評価した上で口コミの掲載・投稿を行っている限り、一般消費者に誤認を与えたことにはならないからです。
上記のように考えた場合、景品表示法上問題になるのは、インフルエンサーが実際に体験していないにもかかわらず、事業者にとって都合の良い作為的な情報をインフルエンサーに掲載・投稿させた場合になりそうです。その観点からすると、上記(2)に記載した後者の事例は問題があると考えられます。ちなみに、消費者庁は口コミサイトに関するものですが、「事業者が口コミ投稿代行業者に依頼することで、高評価(好意的評価)に作為的に変更させることについては問題がある」と指摘しています。
なお、上記2.(4)でも記載しましたが、インフルエンサーが体験し真に思ったことをSNS上に掲載・投稿を行った内容を事業者が積極的に引用するなどしてマーケティング活動に用いた場合、景品表示法上は問題がないにしても他の法令(薬機法、健康増進法、食品表示法など広告表示については様々な法規制があります)に違反する場合があること、注意が必要です。

4.企業アカウントSNSによる情報拡散

(1)最近は企業の広報担当者がTwitter等のアカウントを開設し、自社の商品・サービスのアピールを図ったり、世間で話題になっている事項について一般利用者とやり取りをするなどが行われています。
当然のことながら、その企業が提供している商品・サービスについてSNS上に投稿することは宣伝広告の一種となるため、景品表示法などの法令が適用されることになります。また、第三者が自社の商品・サービスについて掲載・投稿を行っている記事等を引用したりすること(例えば、Twitterであればリツイートなど)ことも、企業が管理するアカウント上に表示する以上、企業自らが行う宣伝広告活動の1つとなりますので、やはり景品表示法などの法令が適用されることになります(紙媒体広告でお客様の声を掲載するのと同じとイメージすればよいかと思います)。
ところで、第三者が自社の商品・サービスについて掲載・投稿している場合ですが、企業が当該第三者に依頼等することなく自然発生的に記事が掲載・投稿されている場合と、企業が何らかの形で記事を掲載・投稿するよう依頼している場合との2パターンがあります。どちらも利用する場合は景品表示法などの法令を意識しなければならないことはもちろんなのですが、企業の風評対策という観点から見た場合、特に後者については注意が必要です。なぜなら、企業からの依頼を受けて第三者が記事を掲載・投稿した場合、利用者はどうしても「やらせ」ではないのかという疑いの目を持つからです。このような利用者の意識を考慮せずに、あたかも芸能人等のインフルエンサーが自発的に商品・サービスについてこう評価をしてくれたかのように仕向けた場合、利用者は激しい嫌悪感を示します。そして、場合によっては風評被害等が生じ、商品・サービスそれ自体の悪評も出てきますが、企業それ自体の信用にも悪影響が出てくる場合があります。近年は企業の名誉・信用を含むレピュテーションを法的リスクと捉える傾向があります。企業としては騙すつもりがなかったと考えていても、騙そうとしていたかを判断・評価するのは利用者(ユーザー)です。情報の受け手の感じ方を想定して、SNSを利用することが肝要です。

(2)あと、企業アカウントの場合、どうしても競業他社の商品・サービスについて意識しながらの投稿になることが多いかと思います。投稿内容いかんによっては、いわゆる比較広告になる場合もありますので、ここで簡単に触れておきます。
まず、間違ってはいけないのが、比較広告が法律上当然に禁止されているわけではありません。ただ、虚偽の内容で比較することはダメですし、恣意的な内容で比較を行うこともNGです。こういった場合は景品表示法違反の問題が生じます。また、欧米と比較すると、日本人はあまり他社を誹謗中傷することは好まない性格といわれています。このため、内容が真実であるとしても過度な比較広告はむしろ嫌悪感を抱かせ、かえって悪評を招くことにもなりかねないので、細心の注意が必要と思われます。なお、公正取引委員会が公表している「比較広告に関する景品表示法の考え方」というガイドラインによれば、次の3要件を満たすものでなければ、不当表示となる可能性があると指摘されています。
・比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
・実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
・比較の方法が公正であること
企業の広報担当者は、安易に記事を掲載・投稿するのではなく、内部的に検証し確認を行ったうえで、他社商品・サービスとの比較を行うことをお勧めします。

5.アフィリエイト

(1)一時期と比較すると広告手法としての流行は過ぎ去ったように思われますが、まだまだ利用されていますので、触れておきます。
まずアフィリエイト広告とは、ブログその他のWEBサイトの運営者(=アフィリエイター)が当該サイトに、当該運営者以外の者(=広告主)が供給する商品・サービスのバナー広告等を掲載し、当該サイトを閲覧した者がバナー広告等をクリックしたり、バナー広告等を通じて広告主のサイトにアクセスして広告主の商品・サービスを購入したり、購入の申し込みを行ったりした場合など、あらかじめ定められた条件に従って、アフィリエイターに対して、広告主から(アフィリエイトサービスプロバイダーを通じて)成功報酬が支払われる形式の広告のことを言います。カタカナ言葉に対するアレルギーがあるかもしれませんが、要は広告主以外の第三者(ここではアフィリエイター)が運営するWEBサイト(媒体)に対して広告を掲載すること、広告費の発生条件が掲載したことではなく、バナー広告を通じて商品・サービスを購入したことを条件として発生することに特徴があるものとイメージすれば分かりやすいかと思います。
そして、広告掲載である以上、当該バナー広告等に記載された商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される場合には、「広告主」に対して、景品表示法上の不当表示に関する責任が生じます。

(2)ちなみに、アフィリエイターは、広告主が指定したバナー広告等を掲載するに過ぎない以上、自ら商品・サービスを供給する主体ではないので、景品表示法上の責任主体として処断されることはありません。
ただ、アフィリエイターが景品表示法による処分を受けないことが、アフィリエイターによる暴走気味な広告内容につながっているとして問題視されつつあります。例えば、アフィリエイターが利益を確保することを目的として、バナー広告のクリック率を少しでも上昇させるべく、単なるバナー広告を掲載するのではなく、アフィリエイターなりに「商品・サービスの使用に関する感想」や「独自の広告文言」等の顧客誘引文言を入れる場合が見受けられます。この結果、アフィリエイターによって、広告主が想定しない広告表現が行われたがために、広告主が景品表示法による処分を受けたり、広告を見たユーザー等から責任追及を受けるというリスクが増大していることに注意が必要です。広告主としては、アフィリエイターによる勝手な広告表現が行われないよう、常に監視する必要があるかと思います。

(3)上記(2)では、アフィリエイターは景品表示法による処分を受けないとは書きましたが、一切の法令違反リスクがないということではありません。
例えば、消費者被害が拡大した悪徳商法について、実質的にはその広告塔になっていた有名芸能人に対して損害賠償請求訴訟が提起されたり、パチンコ必勝法などの広告を掲載していた広告媒体(新聞・雑誌など)への責任追及を認めた裁判例が存在したりします(但し、原則論としては広告媒体に広告内容の調査義務は無いと言われています。責任が認められた事例は事案の特殊性が影響しているのではないかと思われます)。したがって、一定の影響力のあるアフィリエイター(アルファブロガー等のインフルエンサー)が、当該広告内容について虚偽であることを認識しながら広告を掲載していたとなると、何らかの責任追及が行われるなど紛争に巻き込まれるリスクは否定できません。
また、業法による広告規制が及ぶ場合もあります。例えば、健康食品を取り扱う場合、アフィリエイターと言えども、医薬品的な効能効果を標榜することを禁止した薬機法68条、健康の保持増進効果に関する虚偽・誇大広告を禁止した健康増進法32条の2が適用され、処分を受けることになりますので注意が必要です(これらの法律は、景品表示法と異なる、違反行為を行った主体を広告主に限定していません)。
アフィリエイターは商品・サービスの販売主体ではないとはいえ、正確かつ適切な広告を行う一般的な義務はあるものと思われます。この義務にあえて違反するような行動をとると責任追及を受けやすくなってしまうのではないかと思われます。

6.フラッシュマーケティングとは

(1)大まかなイメージとしては、商品・サービスに関する割引価格や特典がついたクーポンを、期間限定で販売するマーケティング方法のことを言います。ちなみに、ここでいう「フラッシュ」とは点滅の意味では無く、株式取引などで用いられるフラッシュオーダー、すなわち短期とか素早くという意味合いになります。
ところで、消費者庁が公表した「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」では、次のような解説が行われています。
・フラッシュマーケティングとは、商品・サービスの価格を割り引くなどの特典付きのクーポンを、一定数量、期間限定で販売するビジネスモデルのこと。
・クーポンの発行を希望する店舗等の事業者は、クーポン発行会社との間でクーポン販売に関する契約を締結し、クーポン発行会社は自らのサイト(以下「クーポンサイト」という。)においてクーポンの販売を行うこと。
・消費者は、クーポンサイトにアクセスし、希望する商品・サービスに係るクーポンを購入すること
・クーポン発行会社と消費者との間のクーポン発行に係る契約は、①購入の申込みがあったクーポンの数があらかじめ設定された最低販売数を超え、かつ当該クーポンの販売期間が終了した場合、又は② 購入の申込みがあったクーポンの数があらかじめ設定した上限販売数に達した場合に成立すること。
・クーポン発行に係る契約が成立した場合、クーポンを購入した消費者は、当該クーポンが例えば店舗への来店時に割引サービスを受けられるものであれば、当該店舗に来店してクーポンを提示することで、割引サービスを受けられること。

(2)フラッシュマーケティングについては、平成23年の新年早々に話題となった「スカスカおせち料理」事件で世間に認知された感がありますが、あの事件では、広告画面上に掲載されていたおせち料理の中身(構成品目)と、実際に届いたものとのギャップが一目瞭然の状態でした。この様な「実際のものより著しく優良であると誤認」を与えた場合には、景品表示法上の優良誤認の問題として処理されることとなります。
また、フラッシュマーケティングの特徴は、何と言ってもその割引率にあるのですが、この割引率、すなわち通常価格と割引価格という二重の値段表記は「二重価格表示」に該当します。二重価格表示それ自体は禁止されていませんが、もともと存在しない通常価格をでっち上げ、あたかも割引率が大きいように見せかける広告手法をとった場合、「実際のものよりも著しく有利との誤認」を与えることになりますので、景品表示法上の有利誤認として処理されることとなります。なお、どの様な「二重価格」が景品表示法上問題となるのかについては、公正取引委員会(※現在は消費者庁が所管)が公表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」というガイドラインがありますので、そちらを参照して下さい。

(3)景品表示法以外にも商品・サービス提供事業者(広告主)が注意するべき事項があります。
まず、フラッシュマーケティングの魅力は一定程度の顧客を呼び込めることです。ただ、割引チケット・クーポンを発行することによる集客ですので、典型的なボリュームディスカウントになります。商品・サービスの存在を知ってもらうアピール手段として有用であることは間違いないかと思いますが、利益が出るのか、安売り狙いの顧客ばかり集めることが中長期的戦略として吉と出るのかについては、よくよく考えるべきかと思います。クーポン発行会社の担当者からは、メリットばかり強調された資料や説明を受けることが多いと思われますが、「後で話が違う」と言っても、法的に救済することは難しいのが実情ですので、この点はよく留意して欲しいと思います(中小零細企業や個人事業主はあくまでも事業者であり、消費者救済のための消費者契約法のような救済のための法律は存在しません)。
次に、悪質なクーポン発行会社が存在するようであり、割引チケット・クーポンを発行するための条件である最低販売数を水増し操作するところがあるようです。あるいはそこまで「あからさま」ではありませんが、クーポン発行会社の裁量により最低販売数を途中で変更できる旨の規定が置かれているところもあるようです。これらの目的は、割引チケット・クーポン発行を成功させることによって、商品・サービス提供事業者(広告主)より広告費等を徴収することにありますが、当然のことながら来客数・利用者数は伸び悩みますし、費用対効果が見込めないこととなります。割引チケット・クーポン発行数=来客数・利用者数とはなりませんので、その点の経営判断を行いつつ、フラッシュマーケティングの利用を検討する必要があるのではないかと思われます。

(4)ちなみに、上記の消費者庁が公表したガイドラインでは非常に微妙な言い回しとなっていますが、いわゆるフラッシュマーケティングを実施するためのクーポン発行会社(WEB管理会社)は、直ちに景品表示法違反として処理されるわけではないと考えられます。なぜならば、クーポン発行会社は直接商品・サービスを供給する事業者では無い以上、景品表示法でいう「表示」を行ったとは言えないからです。
もっとも、当該ガイドラインは、「クーポン発行会社は、自らのクーポンサイトに店舗等の商品・サービスを掲載するに際して当該商品・サービスの自らのクーポンサイト以外における販売の有無等を確認し、販売されていないなどの場合には掲載を取りやめるなど、景品表示法違反を惹起する二重価格表示が行われないようにすることが求められる」と指摘しており、優良誤認・有利誤認表示に主導的に関与していた場合には、商品・サービス提供事業者一心同体であるとし処断される可能性もあることから、注意が必要です。

(5)最後に、利用者(消費者)が注意するべき事項を記載します。
事例としてはあまり多くはありませんが、割引チケット・クーポンを購入するという性質があることから、クーポン発行会社より先に代金を支払うような形態になっているところもあるようです。この様な形態は直ちに違法と言うわけではありませんが、割引チケット・クーポンは資金決済法上の前払式支払手段(昔のプリペイドカード法でいう前払式証票)に該当します。このため、クーポン発行会社は資金決済法に基づく行政への届出や供託義務があるのですが、一部遵守していないクーポン発行会社も存在するようです。前払でお金を支払ったにもかかわらず、割引チケット・クーポンが利用できなかった…という被害を避けるためにも、当該業者の評判を探るのはもちろん、必ず資金決済法上の対処が行われているかチェックするのが無難と思われます。

7.ドロップシッピング

(1)最近はあまり耳にしなくなりましたが、また復活するかもしれませんし、類似する商法が出てい来るかもしれませんので、一応記載しておきます。
さて、ドロップシッピングとは、ネットショップのオーナーは商品の在庫を持たず、ネットショップで注文が入った時点で、メーカーや卸売り業者から商品を直送させるネットショップの運営方法の一形態のことを言います。消費者庁が公表した「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を参照すると、次のような解説が行われています。
・ドロップシッピングショップに消費者からの注文があった場合、注文情報がドロップシッピングショップから注文された商品の製造元・卸元に送信され、注文情報を受けた製造元・卸元は、注文を行った消費者にドロップシッピングサイト名義で商品を発送する(ドロップシッピングサービスプロバイダーの名義で発送される場合などもある。)。
・また、ドロップシッパーと商品の製造元・卸元との間を仲介してドロップシッピングを実現する各種サービス(ドロップシッピングショップの開設に必要なショッピングカート機能、決済機能、口コミ機能や商品データベース等)を提供する事業者(ドロップシッピングサービスプロバイダー。以下「DSP」という。)が存在する。それらDSPが提供するサービスにより、ドロップシッピングショップを構築する技術力や商品の仕入ルートを持たない個人等も容易にドロップシッピングショップを開設することが可能となっている。
・DSPが仲介する場合の物流、商流を例示すると、
①ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで販売する商品を自ら選択し、当該商品の価格を自ら決定した上で、消費者からの注文を受ける。
②消費者がドロップシッピングショップで商品を購入した際の注文情報はDSPを通じて商品の製造元・卸元に伝送される。
③注文情報を受けた商品の製造元・卸元は、ドロップシッピングショップの名義で商品を消費者に発送する。
④DSPは、自らが提供する決裁システムを通じて消費者から商品の代金を受け取り、当該代金とDSPがドロップシッピングサイトに商品を提供する価格(ドロップシッピングサイトにとっての仕入れ値に相当)との差額を報酬としてドロップシッパーに支払う。
⑤DSPは商品の製造元・卸元に商品の代金を支払う。

(2)ドロップシッピングは平成20年に東京都が特定商取引法に基づく行政処分を行ったことで、一種の消費者被害のようなイメージがつきまとっています。そして、消費者保護のための法律である特定商取引法が適用されたことで、ネットショップのオーナー=ドロップシッパーは事業者としての意識が薄いかもしれません。しかし、ネットショップの運営者、すなわち商品・役務の販売者には変わりありませんので、当該ネットショップを利用する者から見れば「事業者」となります。従って、景品表示法上の適用があることになります。
上記ガイドラインによれば、次のような留意事項が記載されています。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで商品を供給するに際しては、当該商品の内容について、客観的事実に基づき正確かつ明瞭に表示する必要がある。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで商品の効能・効果を標ぼうする場合には、十分な根拠なく効能・効果があるかのように一般消費者に誤認される表示を行ってはならない。
・ドロップシッパーは、ドロップシッピングショップで二重価格表示を行う場合には、最近相当期間に販売された実績のある同一商品・サービスの価格を比較対照価格に用いるか、比較対照価格がどのような価格であるかを具体的に表示する必要がある。
・製造元・卸元、又はDSPのうち製造元・卸元の機能を兼ねる者は、ドロップシッパーに対して商品を供給する場合であって、販売促進のためのノウハウ等の情報を提供すること等により、ドロップシッパーが一般消費者に示す表示内容の決定に関与するときには、十分な根拠無く効能・効果があるかのように一般消費者に誤認される表示など、景品表示法に違反する表示が行われないようにしなければならない。

(3)上記でも記載した通り、ドロップシッパーは、対利用者との関係ではどこまで行っても売主(販売業者)となります。したがって、①特定商取引法上の「通信販売」の規制が適用されること(特商法上の表記や誇大広告の禁止、迷惑メール規制など)、②商品・サービスに不具合があった場合のクレーム処理対応はドロップシッパーが行う義務があること、③ 返品対応についてもドロップシッパーが負担すること、④何らかの事情で販売取引が取消・無効となった場合のリスク(代金返還や商品取り戻しなど)はドロップシッパーが負担すること等の法的責任を負うことになります。
また、ドロップシッパーは販売業者であり広告主でもある以上、取扱商品に関する各種の業法が適用されることとなります。例えば、いわゆる健康食品に関係する薬事法や健康増進法、中古品に関係する古物営業法などの適用があり得ますので、この点についても留意する必要があります。

<2020年4月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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