【ご相談内容】
当社代表者はメディアに積極的に出演し、自ら商品・サービスの宣伝広告塔として活動していたところ、いつの間にか世間では相応の知名度を有するようになってきました。そこで、顧客の囲い込み戦略の1つとして、当社代表者が運営するオンラインサロンを開設し、サロン参加者をいわゆるロイヤルカスタマーに育成するというプロジェクトを現在進めています。
オンラインサロン事業を始めるうえで、どういった法的課題に注意すればよいのか、教えてください。
【回答】
一口でオンラインサロンといっても、カリスマ的人気を誇る運営者がクローズドな場での情報発信(社会事象に対する本音トーク等)を行うためのものもあれば、運営者が講師を務めることでスクール事業を行う、あるいは共通の趣味を持つ者による情報交換の場を設置するといったものまで様々です。
このため、オンラインサロンでどのような事業展開を行うのかを整理し、必要な許認可手続きが無いかを確認することが初動対応となります。
次に、サロン参加者を募るために宣伝広告を行うことになりますが、景品表示法をはじめとした広告関連法規に注意することはもちろん、WEB上で申し込み手続きを完結させるという特性を有する以上、ユーザにとって必要な情報が分かりやすく表記されているかという視点での画面遷移・構成に注意を払う必要があります。
さらに、オンラインサロンへの入会手続きに際しての注意事項(例えば、利用規約の制定と承諾の取付けなど)、オンラインサロン運営上の注意事項(例えば、サロン参加者同士のトラブルへの関与の仕方など)についても、オンラインサロンならではの特有の問題があります。
以下では上記のような事項につき、法的視点からのポイントを解説します。
【解説】
1.ビジネスモデルと許認可等
(1)通信販売
オンラインサロンに対して、全般的に取り締まる法律は存在しません。したがって、オンラインサロンを事業として開始するに際しては、原則的には特段の許認可は不要です。
ただし、参加手続き等をWEB上で行い、オンラインサロン参加者より何らかの金銭を徴収する場合、通信販売に該当することになります。
したがって、特定商取引法に定める通信販売規制を遵守する必要があります。
なお、通信販売規制の詳細については、次の記事をご参照ください。
ネット通販事業者が知っておきたいネット通販に関する法規制とは?弁護士が徹底解説!
(2)業態別の注意事項
オンラインサロン事業を行う場合、単にサロン参加者とのコミュニケーションをとるだけではなく、サロン加入特典として、様々なサービスを展開することが通常です。
ここではよく問題となり得るいくつかの例を解説します。
サロン加入を条件として仕事を提供する場合
典型的には、サロンに加入する特典として、サロン運営者がサロン参加者のみに仕事を発注し、受注したサロン参加者が報酬を得るというパターンです。
この場合、特定商取引法に定める「業務提供誘引販売取引」に該当しないか確認する必要があります。世間的には内職商法やモニター商法と言われたりします。
業務提供誘引販売取引に該当した場合、サロン運営者にとって一番悩ましい問題がクーリングオフへの対応となるのですが、その他にも色々な規制が課せられます。
大まかには次のサイトに記載されている事項を確認しつつ、詳しくは弁護士にご相談ください。
(参考)
ところで、サロン運営者がサロン参加者に仕事を直接発注せず、サロン運営者が仕事発注者を見つけ出し、その第三者とサロン参加者とをマッチングさせる、すなわちサロン運営者が仲介するにすぎない場合、事例にもよりますが、
・人材紹介業として職業安定法に基づく規制
・人材派遣業として労働者派遣法に基づく規制
にそれぞれ注意する必要があります。
サロン加入を条件として、特別な支援を受けられる場合
例えば、サロンに加入することでエステサービスを受けることができる、語学の勉強を行うことができるといったパターンです。
この場合、特定商取引法に定める「特定継続的役務提供」に該当する恐れがありますので、十分に確認する必要があります。
特定継続的役務提供に該当する場合、クーリングオフへの対応、中途解約における清算方法の制限、違約金請求の上限などの規制が課せられるため、サロン運営者としても頭を悩ませることになります。
なお、特定継続的役務提供に該当する取引は7事業に限定されていますので、この点は次のサイトに記載されている事項を確認しつつ、詳しくは弁護士にご相談ください。
(参考)
サロン加入を条件として、特定商品等を販売する権利を付与される場合
例えば、オンラインサロンに加入することで、オンラインサロンでしか取り扱っていない商品を仕入れることができ、それをオンラインサロンに加入していない第三者に対して販売することが可能となる、その結果、サロン参加者は仕入費と販売額との差益を得られるといったパターンです。
おそらく上記のように書くと感の良い人なら気付いていると思うのですが、いわゆるマルチ商法・ネットワークビジネスと呼ばれるもの、特定商取引法で定める「連鎖販売取引」に該当する可能性が高くなります。
まず誤解の無いよう指摘しておきますが、連鎖販売取引を行うこと自体は原則合法です。ただし、特定商取引法に基づく規制がかなり厳しいため、この規制をすべてクリアーすることが難しいというのが実情です。
連鎖販売取引の概要については次のサイトに記載されている内容をご参照いただきつつ、できれば連鎖販売に該当しないようなビジネスモデルを構築するべく弁護士と相談していただければと思います。
(参考)
2.サロン参加者の募集
オンラインサロン事業を運営していくためには、サロン参加者を増やす必要があります。このため、オンラインサロン参加者募集のための宣伝広告を行うことになるのですが、宣伝広告に際して気を付けておきたい法律問題として、次の3点をあげておきます。
(1)景品表示法
「景品表示法」という名称について、事業者であればどこかで聞いたことがあるかと思います。あえて誤解を恐れずに指摘するとすれば、景品表示法は、広告法領域の憲法といってもよいくらい重要な法律です。
ただ、景品表示法は非常に抽象的な法律であり、景品表示法の文言だけで読んでも判断基準が分からないという厄介な法律でもあります。例えば次のようなものです。
・優良誤認表示(5条1号)
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
端的には、商品・サービスの品質、規格その他の内容に関する不当表示を優良誤認と呼んでいます。消費者庁のWEBでは次のような例が掲載されています。
(1)内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
例 カシミヤ混用率が80%程度のセーターに「カシミヤ100%」と表示した場合
(2)内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
例 「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた。
・有利誤認表示(5条2号)
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
こちらは、商品・サービスの価格その他取引条件に関する不当表示を有利誤認と呼んでいます。優良誤認は品質・企画等の内容面での不当表示を対象としているのに対し、有利誤認では価格等を中心として取引条件での不当表示を対象としておりこの点で区別がされます。消費者庁のWEBでは次のような例が掲載されています。
(1)取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
例 当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合
(2)取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
例 「他社商品の2倍の内容量です」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった。
抽象的な規制であることから、消費者庁も様々なガイドライン等を公表していますので、次のサイトを参照しつつ、イメージを掴んでいただければと思います。
ちなみに、オンラインサロン事業を行うことを念頭に置いた場合、例えば…
・魅力的な人間に100%生まれ変わることができる
・絶対に人間関係が上手くいくようになる
・間違いなく儲けることができる
といった表現を用いたくなるのですが、上記表現はすべて優良誤認表示として問題となると考えるべきです。
また、例えば…
・今だけ入会金90%オフ
・気に入らなかったら無条件で全額返金
・お試し期間中は無料
といった表現も、適用条件が存在し、その適用条件がユーザに分かりづらいところに書いてあるといった場合は、すべて有利誤認表示として問題になると考えるべきです。
なお、景品表示法違反となる宣伝広告は、自社内での検討だけでは気が付きにくいことが多いという実情があります。必ず弁護士等の専門家に相談し、訴求力を確保しつつ、景品表示法違反とならない表現を探っていくことをお勧めします。
(参考)
(2)特定商取引法に基づく表示規制
オンラインサロンは特定商取引法に定める通信販売に該当する場合が多いこと、上記1.(1)で解説した通りです。
さて、通信販売に該当する以上、オンラインサロンのいわゆる「特定商取引法に基づく表示」と呼ばれる15項目の記載(特定商取引法第11条)はもちろん、誇大広告の禁止(特定商取引法第12条)が課せられることになります。
(参考)
(※“広告”という表現になっていますが、特商法により表示義務付けられる15項目に関する内容です)
また、オンラインサロン事業を行う場合、サブスクリプション形態をとることが多いと考えられるところ、このサブスクリプション形態は近時消費者トラブルが増加していることを踏まえ、2022年6月に改正特定商取引法による規制強化が行われています。ポイントとしては、次の2点となります。
- サロンへの参加申込みを行うに当たり、WEB上での最終確認画面に記載するべき事項を従前より追加し、明確に記載すること
- 違反した場合、ユーザは注文取消が可能であること
詳しくは次の記事をご参照ください。
サブスクリプションビジネスを始めるに際して注意するべき法的事項を弁護士が解説!
ネット通販における最終確認画面の重要性について、弁護士が解説!
(3)連鎖販売取引該当性?
オンラインサロンへの参加者を増大させる施策として、いわゆる口コミによる勧誘というものが行われます。
この点、サロン参加者が自発的にユーザに参加を働きかけること自体は何ら問題ありません。しかし、オンラインサロン運営者が組織的にサロン参加者にユーザ獲得をお願いした場合はもちろん、サロン参加者が公然・継続的にユーザへの参加働きかけを行っているにもかかわらず黙認していた場合、特定商取引法に定める連鎖販売取引に該当する恐れが生じてきます(特にユーザを獲得することで何らかの謝金等の対価支払いがあった場合)。
連鎖販売取引に該当すると、オンラインサロンに対する風評リスクがあることはもちろん、厳しい法規制に従う必要がありますので、実際のところオンラインサロンの運営を継続することが困難となります。
オンラインサロン運営者が直接ユーザ獲得に関与しないからといって、一切法律上の問題が生じないという態度をとることは厳禁です(なお、連鎖販売に該当しなかったとしても、サロン参加者が違法な勧誘行為を行っていた場合、オンラインサロン運営者が使用者責任(民法第715条)を負うリスクも想定されるところです)
3.オンラインサロンへの入会手続き
(1)利用規約、約款に定める内容の合理性
オンラインサロンへ入会に際しては、オンラインサロン運営者が定める利用規約をユーザに提示し、ユーザの了解を取り付けることが通常です。
オンラインサロン内で実施される内容によって、利用規約の内容は様々なものとなりますが、共通要素を抽出すれば次のような内容が含まれると考えられます。
・入会審査に関する条項
・契約期間・更新に関する条項
・退会に関する条項
・禁止事項に関する条項
・サービス内容の追加・変更に関する条項
・支払いに関する条項
・損害賠償・免責に関する条項
・規約変更手続きに関する条項
ところで、オンラインサロン運営者が利用規約を作成する場合、どうしても運営者有利な内容を作成しがちです。たしかに、運営者有利な内容であったとしても、ユーザが当該内容に同意すれば、原則として法的に有効となります。しかし、あまりにも一方的な内容である場合、消費者契約法等によりその規定の有効性が否定される場合もあります。
【消費者契約法との関係】
・事業者が負担する債務不履行、不法行為及び瑕疵担保等に基づく損害賠償責任を全部免責する条項は無効。
・事業者が負担する債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償責任のうち、故意・重過失がある場合にまで責任を一部免責する条項は無効(なお、単なる過失の場合に一部の損害賠償責任を免れる条項については有効ですが、過失の有無の判断権を事業者に委ねるような内容となっていた場合は無効となること要注意)。
・消費者によるキャンセルに伴うキャンセル料(違約金)について、あまりに高額すぎるキャンセル料は無効(高額か否かは、当該事業者に生ずべき平均的な損害額を超えるか否かで判断されます。要は、キャンセル料で利益を稼ぐなということです)。
・消費者の利益を一方的に害する条項も無効(但し、ケースバイケースの判断になります。例えば、法律上解除することが認められているにかかわらず、消費者の解除権を法律以上に制限するのは無効と判断されやすくなるでしょう)。
【民法(2020年4月1日施行の約款に関する規定)】
消費者契約法はある程度浸透しつつあるのですが、2020年4月施行の改正民法では、不当な内容を定めた条項及び不意打ち的な内容を定めた条項については、そもそも合意内容としないと定められました(民法第548条の2第2項)。
これについては現場実務では十分に浸透していないように思われますので、要注意です。
(2)契約締結の仕方
ネット通販のようにWEB上で入会手続きを済ませる場合、画面遷移・内容について、ユーザの誤解を招かないようその表示方法につき注意する必要があります。
その中でも最終確認画面については、2022年6月より特定商取引法が改正されることで、とりわけ重要になることは、上記2.(2)で解説した通りです。
一方、WEB上で画一的に契約手続きを進めずに、あえてユーザと個別の契約書を取り交わすという方法も行われているようです。この場合、通常の契約手続きを行えばよいのですが、最近では電子契約サービスを用いて契約手続きを行う場合もあるようです。
電子契約の場合、物理的な意味での署名押印が行われないため、どうしても契約の成立を主張する場合に一定のデメリット(例えばユーザがなりすましの主張を行ってきた場合に対処が難しい等)が生じてしまうことに注意が必要です。
なお、契約書への署名押印が法的にどういった意味を有するのかについては、次の記事をご参照ください。
(3)決済方法
オンラインサロン運営者は、サロン参加者より何らかの対価を徴収することが通常です。
この支払い方法については、クレジットカードを利用する、電子マネーを利用する、現金で指定口座に振り込んでもらう等々様々な方法が考えられるところですが、前払いで対価を徴収する場合、オンラインサロン運営者は、次の事項に注意する必要があります。
- (通信販売に該当することを前提に)特定商取引法に基づき、サロン参加者に対して一定事項を通知する義務が生じること(特定商取引法第13条)。
- 対価に対してオンラインサロン内で利用可能な独自通貨・ポイント等を発行する場合、資金決済法に従う必要があること(中でも一番厄介なのが供託義務です)
独自通貨・ポイントを発行する場合への対処法については、次の記事をご参照ください。
ところで、後払いによる支払いに際し、オンラインサロン運営者と提携するクレジットカード会社とユーザとの間でクレジット契約を締結するよう斡旋する場合、オンラインサロン運営者は割賦販売法に基づく規制を受けることになります。
思った以上に厳しい規制となりますので、注意が必要です。
(4)個人情報の利活用
オンラインサロンへの入会手続きに際し、サロン参加者の個人情報の取扱いについても何らかの規定を定めることが一般的です。
オンラインサロン運営者としては、プライバシーポリシーの作成はもちろんのこと、利用目的の告知と承諾はもちろん、第三者提供する場合には別途同意を得るといった対策を講じることが望まれます。
詳しくは次の記事をご参照ください。
プライバシーポリシー作成に際して注意するべき事項につき、弁護士が解説!
4.入会後のアフターフォロー
(1)返品特約
特定商取引法上の通信販売に該当する場合、商品引渡し日から8日間以内であれば、ユーザは無条件で契約を解消することができます(特定商取引法第15条の3)。
もっとも、役務(サービス)については適用がありませんので、オンラインサロンの場合、原則的には特定商取引法に基づく無条件返品について気にする必要はありません。
ただし、オンラインサロンへの参加に際し、何らかの物品購入が条件となっている場合、物品購入が主たる目的の契約と判断された場合は、特定商取引法に基づく無条件返品の適用があることになります。オンラインサロン事業者において、この無条件返品特約を認めたくないのであれば、特定商取引法に基づく表示・利用規約等において無条件返品を認めない旨定めておくと共に、最終確認画面で無条件返品を認めない旨の注意喚起表示をユーザにとって分かりやすいところに表記する等の対策が必要となります。
(2)いわゆる返金保証との関係
ユーザへの安心感を与え、参加率を高めるための営業施策として、例えば「満足がいかない場合は全額返金します」といった返金保証を謳うことがあります。
返金保証を宣伝文句とすること自体は法律上禁止されているわけではありません。したがって、返金保証を行うこと自体はオンラインサロン事業者の自由裁量となります。
もっとも、返金保証を大々的に宣伝しながら、実は返金保証が適用される場面は相当限定されており、適用条件についてユーザに明示してない又は明示していても分かりにくいところに記載しているにすぎないという場合、法律上問題となる可能性があります。
2022年6月施行の改正特定商取引法に基づき、消費者庁はガイドラインを公表し、特にサブスクリプション形態のサービスを念頭に、例えば有料サービスへの切り替え時期、有料サービスを中止する方法、中途解約のルール等をユーザに分かりやすく表記するよう求めています。このような動向を踏まえると、オンラインサロン事業において、返金保証の適用場面に関し何らかの条件を設定するのであれば、分かりやすい表記が求められると考えるべきです。
次の記事などをご参照いただきつつ、適切な表記について弁護士に相談することが望ましいといえます。
ネット通販における最終確認画面の重要性について、弁護士が解説!
(3)いわゆる成果保証との関係
技術指導・支援をサービスメニューの中心に添えるオンラインサロンにおいて、ユーザへの訴求力を高めるために、例えば「成果が出ない場合(××に達成しない)場合は全額返金します」といった宣伝広告を行うことがあります。
これについても特に法律上の制限はなく、成果保証を謳うこと自体は問題ありません。
しかし、成果保証を行う場合、どうしても同業他社との比較になりやすい宣伝広告となることから、景品表示法に定める有利誤認に該当しないか十分な検証が必要となります。また、何をもって成果達成とするのか、その条件について定めるのであれば、上記(2)でも記載した通り、ユーザに理解可能な方法で表記することが特定商取引法の観点から必要となります。
5.オンラインサロン運営上の留意事項
(1)サロン入会者同士のトラブル
オンラインサロン事業を行う場合、例えば、サロン参加者がサロン運営者に対して直接メッセージを発信できる機能を実装したり、サロン参加者のみ利用可能な電子掲示板(SNS)を実装したり、サロン参加者同士による直接の連絡を可能とするDM機能を実装したりすることで、オンラインサロン内でのコミュニティを盛り上げようとします。
ただ、コミュニティ内を盛り上げることで人間関係が緊密になるのに比例して、人間関係の軋轢が生まれやすくなります。そして、サロン参加者同士でトラブルが生じた場合、トラブル当事者の一方又は双方からオンラインサロン運営者に対し、何らかの措置を講じるよう要求され、オンラインサロン運営者は対処に苦慮するという事態になりがちです。
このような事態に備え、オンラインサロン運営者は、サロン参加者同士による直接のやり取りについては関知せずプラットフォーマーとしての立ち位置に徹するということも1つの考え方となります。その場合、
- 利用規約等にトラブルに関知しないことを定める。
- とはいえ、トラブル内容を知ってしまった以上、全く放置するという訳にはいかないことから(他のサロン参加者への悪影響防止といった事実上の観点以外にも、知った以上は対応するべきとする事故措置義務違反の回避といった法律上の観点も考慮)、トラブル当事者同士の直接のDMはできないようにする等の措置を講じることが望ましい。なお、DM機能の停止については利用規約上明記する。
- トラブル解決には直接関与しないとしても、利用規約上の禁止事項に該当するとして何らの処分を行うことは別途検討する(サロンの風紀を乱したことによる一時的な利用停止措置など)
等々の対応が必要になると考えられます。
事前に対応ルールを決め、そのルールをサロン参加者に公表することが極めて重要となりますので、利用規約の作成や運用方法について是非弁護士に相談してほしいところです。
(2)風評被害
オンラインサロン事業を行う場合、サロンに参加していない部外者や元サロン参加者等より誹謗中傷を受けるリスクを覚悟する必要があります。
誹謗中傷を受けた場合、実際のところ何処まで時間・労力・お金を負担して対処するべきなのか悩ましい問題があるのですが、次の記事をご参照いただきつつ、どのような手段・方針を講じるべきかについては弁護士に相談してください。
ネット炎上・風評被害が生じた際に会社がとるべき対応を弁護士が解説!
<2022年6月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。
弁護士 湯原伸一 |