プライバシーポリシー作成に際して注意するべき事項につき、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

令和2年、令和3年に改正された個人情報保護法が、2022年(令和4年)4月1日より施行されると聞き及び、プライバシーポリシーの見直しを行っています。

どういった点に注意しながらプライバシーポリシーの改訂作業を進めていけばよいのか、教えてください。

 

 

【回答】

令和2年及び令和3年の個人情報保護法の改正は、ビッグデータ・パーソナルデータを取扱う事業者にとってインパクトが大きいものがあるものの、取扱い予定の無い事業者からすれば大きな関心事になっていないようです。

もっとも、改正事項が複数存在し、それを受けたガイドラインの見直しも多岐にわたるため、ほぼすべての事業者が影響を受けるものと思われます。

本記事では全事業者にとって見直しが必要となるプライバシーポリシーについて、個人情報を取得する主体は誰か、個人情報のうち具体的にどのような情報を取得するのか、利用目的は何か、求められる安全管理措置は何か、開示請求への対応はどうするのか、といった点につき改めて検討すると共に、サンプル条項を示しながら解説を行います。

なお、本記事では、Pマーク取得事業者を念頭に置いていないこと(Pマーク独自の公表事項があります)、及び上場企業ではない中小企業を対象として解説を試みていること、予めご容赦願います。

また、より深く個人情報保護法を知りたい場合は、次のサイトにある各種資料をご参照ください。

 

(参考)

法令・ガイドライン等(個人情報保護委員会)

 

 

【解説】

 

1.個人情報保護法上公表が義務付けられている事項

 

せっかくプライバシーポリシーを作成するのであれば、単なる事業者の個人情報に対する宣言だけではなく、個人情報保護法が定める公表事項を盛り込みたいところです。この点、個人情報保護法では、次のような事項を公表するよう義務付けています。

  • 事業者の氏名・名称、住所、代表者名(なお、法人以外の団体であれば団体で定められている代表者または管理者)
  • 利用目的
  • 開示・訂正等、利用停止等、第三者提供の禁止の請求に応じる手続き(手数料額を含む)
  • 第三者提供記録の開示請求に応じる手続き(手数料額を含む)
  • 苦情の申出先
  • 安全管理措置

 

なお、個人情報保護法上、「苦情の申出先」以外の公表事項については、保有個人データを取扱う場合に義務付けられる事項となります。したがって、保有個人データを取扱わない場合は公表する必要がないのですが、現状では保有個人データの該当性にかかわらず、個人情報を取扱う場合は公表するという運用が定着していますので、プライバシーポリシーを作成するのであれば、いずれも盛り込みたい事項となります。

以下では、プライバシーポリシーを作成するに際して検討するべき事項と条項例を記載します。

 

 

2.宣言

 

一般的には、事業者の個人情報保護に対するスタンスを冒頭に明記します。例えば、次のようなものです。

当社は個人情報について、個人情報保護法等の法令、個人情報保護委員会が定めるガイドライン、その他規範の定めるところに従い、当社において業務従事する全ての者に対してその周知・徹底を図り、適正な取扱いを行います。

 

正直なところ、言い回しは何でもよく、要は「法令・ガイドランを遵守して。適切に取り扱います!」という趣旨が伝われば問題ありません。

 

 

3.取得した情報を誰が保有するするのか(取得主体)

 

個人情報を提供する本人からすれば、誰が当該個人情報を取得・保有するのかが重要な関心事となります。したがって、プライバシーポリシーを作成するに際しても、誰が個人情報を取得・保有するのかを明確に記載することがポイントとなります。

 

(1)事業者本人の情報

個人情報を保有する本人より直接提供を受ける事業者は、自らの名称等を名乗る必要があります。例えば、次のような条項です。

お客様より、お客様の個人情報を取得する当社の情報は次の通りです。

名称:●●株式会社

住所:▲県▲市・・・

代表者名:●●

 

なお、2022年4月1日より施行される改正個人情報保護法により、住所及び代表者の氏名の明記が必須となったことに注意が必要です。

 

(2)共同利用

個人情報を取得した事業者が、例えばその子会社に対して当該個人情報を利用させたいと考えた場合であっても、事業者は個人情報を提供した本人から同意を得ない限り、当該個人情報をその子会社に提供することは原則できません。ただ、例えば、親会社が商品の販売会社、子会社が商品のメンテナンス会社である場合、法人格が別とはいえ、個人情報を共有したほうが色々と便利な場合があります。

そこで、個人情報保護法は、例外的に「共同利用」という類型を設け、この共同利用に該当する場合であれば、個人情報を提供する本人から同意を得なくても、当該個人情報を提供することが可能としました。

以上のことから、個人情報を取得する主体として、個人情報を提供する本人から直接提供を受けた事業者以外の第三者として、共同利用者という主体が登場することになります。この共同利用による提供を行う場合、法律上一定の公表事項が定められており、それに従う必要があります。例えば次のような条項を定めることになります。

当社は●●グループに所属しております。当社はお客様に対し、●●グループにて一体的に行われる××サービスの提供を目的として、お客様の個人情報を共同して利用させていただく場合があります。

(1)個人情報の項目

お客様の氏名、住所、電話番号、メールアドレスその他申込フォームに登録された情報

(2)共同利用するグループ企業の範囲

■株式会社、株式会社▲など、●●グループに所属する会社

(3)利用目的

×××××

(4)個人情報の管理責任者

共同利用する個人情報の管理責任者は次の通りです。

(名称)株式会社▲

代表取締役 ××

(住所)×××××

(連絡先)×××××

 

なお、「共同利用するグループ企業の範囲」ですが、“事業者の名称等を個別にすべて列挙する必要はないが、本人がどの事業者まで利用されるか判断できるようにしなければならない”とガイドラインでは定められています。執筆者個人としては、個人情報を提供する本人の納得感を得るためにも、判明している共同利用者については予め全て列挙したほうが良いのではないかと考えています。

また、「利用目的」ですが、ガイドラインの趣旨を踏まえると、取得した各個人情報と各利用目的が異なる場合、個人情報ごとで利用目的を区別して記載したほうが望ましいと考えられます。

 

(3)外部委託

例えば、商品を配送する場合、事業者は配送業者に購入者の氏名・住所・連絡先等の個人情報を当該配送業者に提供することになります。これについても、事業者以外の第三者(配送業者)に個人情報を提供する以上、個人情報を提供する本人から同意を得るのが本来の筋論です。しかし、これでは業務の煩雑化を招くことから、個人情報保護法では、事業者による利用目的を達成する範囲内において外部業者に委託するに過ぎない場合、例外として、個人情報を提供する本人からの同意を得ずして、委託先である第三者に提供してもよいと規定しています。

以上のことから、個人情報を取得する主体として、外部委託先という主体が登場することになります。

ところで、法律が当然に同意不要としていること、及び外部委託に関する公表義務が定められていない以上、外部委託による個人情報の提供について、プライバシーポリシーに定める必要性は乏しいと考えるかもしれません。このため、あえて外部委託に関する記載をしないプライバシーポリシーもあります。しかし、個人情報を提供する本人からの納得感を得るのであれば、あえて明記することも一案です。例えば、次のようなものが考えられます。

1.当社は、業務を円滑に進めお客様により良いサービスを提供するため、お客様の個人情報の取扱いを協力会社に委託する場合があります。

2.協力会社に対しては、利用目的の達成に必要な範囲内での情報のみを開示し、委託業務遂行以外での個人情報の利用を禁止しています。

3.当社は、個人情報の取り扱いを委託するにあたっては、協力会社での個人情報の安全管理が図られるよう、必要かつ適切な監督を行います。

 

ちなみに、第3項を実現するためには協力会社(委託先)との契約締結が必須となります。秘密保持契約・NDAを締結しておけば必要十分と考える事業者もいるようですが、一般的な秘密保持契約・NDAでは、個人情報の安全管理・監督のために取り決める事項を包含していない場合があります。この点は要注意であり、包含しているか否か分からない場合は弁護士に相談し、包含していない場合は別途個人情報の取扱いに関する合意書面を作成してもらうなどして、対策を講じるべきです。

 

(4)オプトアウト

オプトアウトとは、個人情報を提供する本人からの同意を得ずに、事業者が第三者に対して自由に当該個人情報を提供することができる制度です。このオプトアウトを用いた場合、個人情報を取得する主体は、理論上無制限となることになります。

もっとも、個人情報を第三者に提供するには、個人情報を提供した本人からの同意を得ることが大原則となっている以上、このオプトアウトは重大な例外という位置づけになります。このため、個人情報保護法上、オプトアウトを認めるための要件は非常に厳しく定められています。具体的には、個人情報保護法が定める事項を個人情報保護委員会に届出ることが必要です。なお、届出後、個人情報保護委員会において、届出を行った事業者はオプトアウトを利用していることが公表されることになります。

上記のような手続き以外に、事業者はオプトアウトを用いることについて、個人情報保護法が定める事項を予め公表等しておく必要があります。例えば、次のような条項が考えられます。

なお、要配慮個人情報、不正な手段により取得された個人データ、及びオプトアウトにより他から取得した個人データの3種については、そもそもオプトアウトにて第三者提供を行うことが個人情報保護法上禁止されていること、注意が必要です。

当社は、お客様より提供を受けた個人情報について、オプトアウト方式による第三者への提供を行います。詳細については次の通りです。

(1)オプトアウトを利用する事業者情報

(名称)株式会社▲

代表取締役 ××

(住所)×××××

(2)第三者に提供される個人情報の項目と取得方法

(項目)氏名、住所、性別、年齢

(取得方法)お客様が申込フォームに登録し、当社に送信することによって取得

(3)提供開始予定日

×年×月×日開始予定

(4)提供データの更新方法

1年に1回行う顧客名簿改定時に更新

(5)第三者への提供方法

顧客データとして販売

(6)第三者への提供停止を要請される場合

当社は、個人情報を提供されたご本人様より要請があった場合、第三者提供を停止します。提供停止を要請される場合は、次の連絡先まで郵送にてお問い合わせください。

(問合せ先)株式会社▲ 総務課 個人情報担当窓口

(住所)×××××

 

プライバシーを含む権利意識の高まりや、誰が個人情報を取得するのか分からない気持ち悪さ等を考慮すると、個人情報保護法にてオプトアウト方式による第三者提供が認められているとはいえ、現場実務ではなかなか導入することは難しいと考えられます。なぜ第三者提供を行うのか、その必要性と相当性を個人情報の提供を行う本人に合理的に説明できない限り、オプトアウト方式を導入するのは控えた方が良いかもしれません。

 

(5)第三者提供

上記(2)から(4)において、個人情報を提供する本人の同意なく、当該個人情報を第三者に提供することが可能な法制度が存在すること、この結果、当該第三者が個人情報の取得主体となることを解説しました。これらに該当しない場合、原則論に戻って、当該個人情報を第三者に提供するに際しては、個人情報を提供する本人の同意が必要ということになります。

この同意の取得方法について、個人情報保護法では特別な条件は設けられていませんが、ガイドライン等を考慮する限り、例えば次のような規定を定めておくことが必要ではないかと考えられます。

当社は、次の条件に従い、お客様の個人情報を提供するものとし、お客様はこれに同意するものとします。

(提供先)株式会社●●

(提供される個人情報の内容)お客様の氏名・年齢・性別・居住地、並びにお客様におけるウェブサイトの閲覧履歴及び購買履歴

(提供手段・方法)電子管理媒体に記録された個人情報を提供先に自動送信する方法

(提供先における利用目的)お客様に対する行動ターゲティング広告その他広告の配信

 

なお、第三者提供を行う場合の同意取得に関連し、次の3点も意識しておきたいところです。

・プライバシーポリシーに第三者提供の同意に関する規定を設けるだけでは不十分と考えられます(たとえプライバシーポリシー自体の同意を取得する場合であっても)。第三者提供の同意取得については、別途個別にユーザに分かりやすい方法にて取得する方が無難です。

・第三者が日本国外にある場合、別の規制があります(後述9.参照)

・Cookie等のそれ自体は個人データの提供に該当しないものであっても、提供先において個人データとして取得する場合は、提供元が提供先に対し、本人同意を取得しているのか確認する必要があります(個人関連情報に関する規制。後述4.(4)参照)。

 

また、個人情報の第三者取得の場面には厳密には該当しませんが、例えば、Google Analyticsを利用する場合、Google社は、Google社が定める規約内容をプライバシーポリシー等に定めるよう要請しています。執筆者個人の感覚としては、きちんとGoogle社が定める規約内容を掲載している事業者は少ないように思うのですが、一応参考情報として記載しておきます。

 

 

4.どのような情報を取得し、保有するのか

 

個人情報を提供する本人からすれば、当該個人情報のうち、どういった情報を事業者に提供することになるのかが重要な関心事となります。したがって、プライバシーポリシーを作成するに際しても、どのような個人情報を事業者が取得・保有するのかを明確に記載することがポイントとなります。

 

(1)取得する個人情報の具体的内容

個人情報の定義については、個人情報保護法第2条第1項に定められている通りです。もっとも、プライバシーポリシーを定める場合、個人情報保護法上の個人情報という枠組みにとらわれず、プライバシー情報(他人にみだりに知られたくない情報)を包含することが通常です。

この結果、事業者が取得することになる具体的な個人情報の内容・内訳(例えば氏名、携帯電話番号、メルアド等)をプライバシーポリシーに全て個別列挙することが困難というのが実情です。そこで、取得する情報については抽象的に「個人情報」とだけ書くというのも一案です。また、個人情報を提供する本人への分かりやすさを追求し、個人情報を取得する態様を示すという書き方も考えられます。例えば次のような条項です。

当社は、個人情報を取得する際には、適正な手段で取得するものとし、法令により例外とされる場合を除き、利用目的をあらかじめ公表するか、取得後速やかに利用者ご本人に通知または公表します。但し、利用者ご本人から書面(電磁的記録を含みます。)で直接取得する場合には、あらかじめ明示します。

なお、当社は、例えば次のような方法で個人情報を取得する場合があります。

・お客様において、当社が運営するWEB上のフォームに打ち込んだ情報を通じて取得する場合

・お客様が、当社運営のサービスを通じて自動配信メールの受信登録を行うことで取得する場合

・お客様において、当社が提供するサービス又は商品に関するご質問・お問い合わせ・アンケートへの返信等を行うことで取得する場合

・その他当社がお客様に対するサービス等を提供する場合に取得する場合

 

(2)匿名加工情報

匿名加工情報とは、個人情報保護法が定める措置を講じることで、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにした情報のことをいいます。

この匿名加工情報なる概念が定められたのは、事業者が保有する情報を第三者に提供することによりビッグデータビジネスを展開したいが、いちいち個人情報を提供する本人より同意を得る必要がありビジネスに支障をきたしていること、一方で、仮に個人識別不能な形に加工した情報であっても不安を覚える者も多いことから、その調整を図ることを目的としています。

事業者が保有する個人情報を、匿名加工情報を第三者に提供しようとする場合、当該事業者には様々な義務が課せられます。この点については、ガイドライン等を参照していただくとして、プライバシーポリシーに記載する内容としては次のようなものが考えられます。

当社は、次の内容にて匿名加工情報の作成及び提供を行います。

(匿名加工情報に含まれる項目)性別、年齢、購買履歴

(匿名加工情報の提供方法)当社が管理するサーバにアップロードし、当社が許諾した第三者のみ当該サーバにアクセスできる措置を講じた上で提供

 

(3)仮名加工情報

仮名加工情報とは、個人情報保護法が定める措置を講じることで、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報のことをいいます。

この仮名加工情報なる概念が設けられたのは、予め定めておいた利用目的外であっても、事業者が保有する情報を一定の加工を行うことを条件に利用可能にすることで、パーソナルデータの利活用促進を図るという目的のためです。なお、目的外利用が当然に可能となるわけではなく、事業者が事前に利用目的を変更することで実質的に目的外利用が可能になるという意味であることに注意が必要です(通常の個人情報と異なり、仮名加工情報の場合、本人同意なくして利用目的の変更が可能となります)。

ところで、前述(2)と概念が混乱しそうになるのですが、匿名加工情報は第三者提供を前提とした法制度であるのに対し、仮名加工情報は事業者内部での利用に留まる法制度という相違があります。その他にも相違点がたくさんありますが、上記点を押さえておけば一応の区別はできるかと思います。

また、従前より行っていた統計目的での個人情報の取扱いと加盟加工情報との相違が気になる方もいるようなのですが、統計情報は特定の個人との関係性が排斥されており、あくまでも複数人の情報から共通要素に係る項目を抽出して同じ分類ごとに集計して得られるデータにすぎません。照合することにより個人の特定が可能な否かによって、統計情報と加盟加工情報は区別されることになります。

 

さて、事業者が保有する情報を仮名加工情報として利用する場合、様々な規制に服することになりますが、その1つとして個人情報保護法が定める事項を公表する必要があります。この公表事項をプライバシーポリシーに記載する場合、次のようなものが考えられます。

当社は、当社がWEB上で提供するサービスに対するお客様の利用履歴情報のうち、氏名・住所・連絡先・クレジットカード情報を削除し、仮名加工情報として次の目的にて利用します。

(利用目的)AIの機械学習のため

 

(4)個人関連情報

個人関連情報とは、生存する個人に関する情報であって、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないもの、というのが個人情報保護法上の定義となりますが、やや分かりづらいかと思います。具体例としては、次のようなものが想定されています。

・Cookie 等の端末識別子を通じて収集された、ある個人のウェブサイトの閲覧履歴

・メールアドレスに結び付いた、ある個人の年齢・性別・家族構成等

・ある個人の商品購買履歴・サービス利用履歴

・ある個人の位置情報

・ある個人の興味・関心を示す情報

上記例からも分かるように、その情報だけでは個人を識別することができないのですが、他の情報と紐づけると簡単に個人の識別ができてしまう情報を意味することになります。

 

さて、個人関連情報については、次の2つの場面で検討を行う必要があります。

①事業者が個人関連情報を第三者に提供する場合

②事業者が個人関連情報の提供を受ける場合

 

①ですが、提供先が個人関連情報を個人データ(=個人として識別可能なデータのこと)として取扱うことが想定される場合、事業者は提供先に対し、本人同意を得ているか確認しない限り、個人関連情報を提供することができません。この点については、プライバシーポリシーで特に反映させる事項ではないと考えられます。

②ですが、個人関連情報の提供を受けた事業者が個人データとして利用することをプライバシーポリシーに明記することで、本人同意を得るということが考えられます。しかし、様々なことが書いてあるプライバシーポリシーの一部分に個人関連情報に関する同意事項を紛れ込ませるのは不適切な取扱いと考えられます。本人からの同意については別途取り付けるという運用を実行するべきです。

以上のことから、②についてはプライバシーポリシーに記載することが考えられますが、別途本人同意を取り付けるというルールを設定するのであれば、あえてプライバシーポリシーに記載する必要はないものと思われます。

 

(5)要配慮個人情報

要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして法令が定めている情報となります。例えば、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴などが該当します。

この要配慮個人情報については、そもそも取得に際して個人情報を提供する本人より同意を得る必要があります。したがって、別途個別に同意を取り付けるべきであり、様々なことが書かれているプライバシーポリシーの一部分に要配慮個人情報に関する同意事項を紛れ込ませるのは不適切な取扱いと考えられます。

以上のことから、要配慮個人情報の取扱いについては、別途本人同意を取り付けるというルールを設定する限り、プライバシーポリシーにあえて記載する必要はないものと思われます。

 

 

5.どういった目的で利用するのか(利用目的の特定)

 

利用目的をできる限り特定する必要があることは、既に世間で認知されていることと考えられます。どの程度のことまで書けばよいのかについてはガイドライン等をご参照いただければと思うのですが、令和4年(2022年)4月1日の改正を踏まえたガイドラインでは、

  • 情報分析目的について詳細な記述を要求していること(単に「情報分析により得られた結果を事業活動に用いるため」といった記載に留まるのではNGということ)
  • 第三者提供することを利用目的として記載することを要求していること

が特徴となっていると考えられます。

ガイドラインの要求事項を踏まえると、例えば次のような記述が考えられます。

当社は、利用目的をできる限り特定したうえ、あらかじめ利用者ご本人の同意を得た場合、および法令により例外とされる場合を除き、次の利用目的の範囲内でのみ、個人情報を取り扱います。

①××

②××

③取得した閲覧履歴や購買履歴等の情報を分析し、趣味・嗜好に応じた新商品・サービスに関する広告を配信するため

④取得した行動履歴等の情報を分析し、信用スコアを算出した上で、当該スコアを第三者へ提供するため

⑤××

 

 

6.安全管理措置

 

令和4年(2022年)4月1日より改正個人情報保護法が施行されますが、その改正事項の中でも、事業者が保有する個人情報(厳密には個人データ)について「どのような安全管理措置を講じているのか公表する必要性が生じたこと」が、プライバシーポリシー作成に関連して影響の大きい事項と考えられます。というのも、おそらくは多くの会社のプライバシーポリシーにおいて、安全管理措置に関する事項を定めていないのが実情と思われるからです。

さて、安全管理措置に関し、具体的に何をどこまで行えばよいのかについてはガイドランをご参照いただくのが一番手っ取り早いと思われますので、本記事では安全管理措置に関する条項の骨子部分のみサンプルとして掲載しておきます。なお、個人情報保護方針その他の規程の作成や、安全管理措置をどこまで明記するのか(なお、セキュリティとの関係で書きすぎない点も重要な視点となります)については、弁護士と相談しながら進めたほうが無難と思われます。

当社は、当社が保有する個人情報への不正アクセス、漏洩、滅失又は毀損等を予防し、適切な管理を行うために、次のような安全管理措置を講じます。

(1)個人情報保護方針その他個人情報取扱いに関する規律の整備

××

(2)組織的安全管理措置

××

(3)人的安全管理措置

××

(4)物理的安全管理措置

××

(5)技術的安全管理措置

××

 

 

7.開示等請求への対応

 

個人情報保護法では、個人情報を提供した本人が事業者に対し、保有個人データの開示、訂正(追加・削除を含む)、利用停止(消去を含む)を請求できる旨定められています。また、事業者が保有個人データの第三者提供を行っている場合、個人情報を提供した本人は事業者に対し、第三者提供の停止、第三者提供記録の開示を請求できる旨定められています。

この権利の実効性を確保するため、事業者はこれらの請求に対する対応ルール(手数料等の費用を含む)を整備し、公表する必要があるところ、プライバシーポリシーにこれらの事項を記載することが一般的です。例えば、次のようなものが考えられます。

当社が保有する個人情報の開示、訂正(追加もしくは削除を含みます)、利用停止をご希望される場合、次の連絡先にお問い合わせください。

また、当社が個人情報を第三者に提供している場合において、第三者への提供停止、第三者提供記録の開示をご希望される場合も、次の連絡先にお問い合わせください。

当社所定の手続きにてご本人様であることを確認の上、原則として2週間以内に対応します。

(名称)××株式会社 総務部 個人情報担当窓口

(住所)××県××市××

(電話番号)××

(受付時間)月曜から金曜(但し、祝日、年末年始等の当社非営業日は除きます)、10時から16時まで

 

8.苦情処理

 

上記1.でも記載した個人情報保護法が定める公表事項として、苦情処理窓口についてプライバシーポリシーに記載するのが適当です。例えば次のようなものです。

なお、上記7.記載の開示等請求への対応窓口と同一にすることも可能です(本来的には担当窓口を分離したほうが望ましいと考えられます)。

 

当社における個人情報の取扱いに関するご質問(苦情を含みます)については、次の連絡先にお問い合わせください。

(名称)××株式会社 総務部 個人情報担当窓口

(住所)××県××市××

(電話番号)××

(受付時間)月曜から金曜(但し、祝日、年末年始等の当社非営業日は除きます)、10時から16時まで

 

 

9.外国に対して個人情報を提供する場合の特則

 

個人情報保護法は、外国にある第三者へ個人データを提供する場合について様々な特則を設けています。ただ、一方で数多くの例外も定められています。

事業者の実情を把握した上で、個人情報保護法に定める例外に該当するのかを検証し、その上でプライバシーポリシーに反映させないことには、事業者が混乱することはもちろん、個人情報を提供している本人を含めたユーザ(お客様)にも不安を与えることになります。

ケースバイケースの判断が求められるため、本記事ではサンプル条項を記述しませんが、必要に応じて弁護士に相談し、プライバシーポリシーの作成を行ってください。

 

 

10.(参考)当事務所のプライバシーポリシー

 

上記までの解説を踏まえ、どういったプライバシーポリシーを作成すればよいのかイメージしていただくべく、当事務所のプライバシーポリシーをご参考までに掲載しておきます。

なお、当事務所は、外部委託を除き個人情報を第三者提供することはないこと、匿名加工情報・仮名加工情報を作成し利用する予定が現時点ではないこと、中小規模事業者に該当するため安全管理措置については緩和された内容を記載していることにご注意ください。

 

(参考)

プライバシーポリシー(リーガルブレスD法律事務所)

 

 

 

<2022年3月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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