サブスクリプションビジネスを始めるに際して注意するべき法的事項を弁護士が解説!

【ご相談内容】

インターネット上で利用者(消費者)向けに、商品・サービスの定期継続販売(いわゆるサブスクリプション方式)を行うことを検討しています。何か法的に注意するべき事項はあるのでしょうか。

 

【回答】

サブスクリプション方式のビジネスを対象とした直接的な法律は存在しません。したがって、通常のインターネット通販における問題(例えば、景品表示法、資金決済法、未成年者による利用など)と同じ事項を検討することになります。例えば、次の記事をご参照ください。

◆ネット通販事業者が知っておきたいネット通販に関する法規制とは?

◆ネット通販事業者が法的に有効な利用規約・約款を作成するためのポイントとは?

◆インターネット上でのプロモーション活動で注意するべき事項とは?

 

もっとも、サブスクリプション方式のビジネスの特徴は、利用者(消費者)と一定期間又はある程度長期的な利用を前提しています。この利用期間が長期化すること、すなわち利用者(消費者)による契約関係からの離脱を防止することにより特有の問題が生じます。以下では「利用者に長期利用してもらうための利用期間の設定方法」を中心に、留意したい法的事項について解説を行います。

 

【解説】

 

1.はじめに(利用者に長期間利用してもらうための方法)

サブスクリプション方式によるビジネスを運用する場合、できる限り利用者に長期間利用してもらわないと、事業者には利益がでないことになります。このため、事業者は、利用者との利用期間について様々な工夫を凝らすことになります。

 

2.利用期間の設定

 

(1)利用期間をあえて定めない(無制限にする)

日常的なイメージとして、利用期間をあえて定めないとなると半永久的に契約が継続するのではないか、つまり契約を解消することが事実上不可能になってしまうのではないかと考えられる方もいるようです。しかし、法律上の考え方はむしろ逆です。利用期間を定めない場合、法律上は「期間の定めのない」契約と考えることになります。この「期間の定めのない」契約の場合、解約はいつでも可能というのが法律上の考え方です。

したがって、事業者にとっては、利用期間を定めないという形式にするのは、いつ利用者に解約されるのか分からないので、ビジネス的にはリスクを伴います。このため、一定期間を定めた有期契約にすることを念頭にビジネスモデルを構築したほうが無難です。

なお、利用期間について定めがない(期間の定めのない契約)ことを前提に、利用者による解約は一切禁止する旨の特約を設けることで対処すればよいのではないか、と考えられる事業者もいるかもしれません。しかし、期間の定めのない契約であるにもかかわらず、途中解約は一切不可とした場合、利用者が消費者である場合は消費者契約法を根拠に無効とされてしまう可能性が高いと考えられます。また、利用者が商人(事業者)であっても、不合理な契約内容であるとして公序良俗違反等を理由に無効と判断される可能性は十分ありうると考えられます。したがって、期間の定めのない契約であることを前提に、途中解約を一切認めないとするビジネスモデルは採用しないほうが無難と考えられます。

 

(2)一定の利用期間の設定と自動更新

利用期間をあえて定めないこと=法律上は利用者がいつでも解約可能となることを踏まえると、利用者による長期利用を前提にしたい事業者にとってはかえって悪手の方法となります。

したがって、一定の利用期間を設けたうえで、ビジネスモデルの構築を行うことになります。もっとも、一律に期間(年月など)を設定することはできませんが、あまりに長期な契約期間(例えば100年といった人の一生涯を縛ってしまうような契約期間など)を設定して利用者を縛り付けることは、法律上無効とされるリスクを伴います。また、事業者にとっても、ビジネスの動向によっては事業者自らが契約の打ち切りを望む場合もありえます。

上記のような事情を踏まえると、一定の利用期間(有期)を前提に、契約期間の更新を行うことでできる限り長期の利用を行ってもらうというのが穏当なやり方となります。

では、契約期間の更新について、利用者より特段の申出がない限り更新の意思表示を行ったものとみなすという方法、いわゆる自動更新条項を設けることは可能なのでしょうか。

まず一般論として、自動更新条項を設けることが当然に違法とされているわけではありません。しかし、例外なく適法かと問われると、そう単純な話ではないのも事実です。特に利用者が消費者の場合、やはり消費者契約法を意識する必要があります。具体的には消費者契約法第10条になるのですが、次のように定められています。

 

『消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項…(省略)…であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。』

 

端的に説明すると、自動更新条項を定めても、それが信義則(民法第1条第2項)に反するような消費者の利益を一方的に害するものである場合には無効となる、と定められています。

定量的な判断基準が定められているわけではありませんので、結局のところケースバイケースで判断するほかないのですが、例えば、経済産業省が公表している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、実質的に契約を更新しないという意思表示をする機会が与えられていたかという判断基準を示しています。具体的には次のような事情を考慮要素としています。

・当初の申込み時点(契約締結時点)において購入する契約が自動継続することが購入者にとって見やすい位置に必ず表示されていること(例えば、購入ボタンの直近に大きな文字で表示されている場合などは見やすい位置に表示されている等)

・これに同意する旨のチェックを入れると申込みが完了する仕組みとなっており、継続購入に対する消費者の認識可能性が担保されていること

・自動継続を停止する連絡手段や期間が不合理に限定されていないこと

上記のような考慮要素は、画面構成・画面遷移の工夫によって対処可能と考えられます。また、事業者にとって非常に困難な対処法とも通常は考えにくいので、積極的に取り入れることをお勧めします。

 

(3)単発契約と見せかけた自動継続条項の存在

昨今問題となっている事例は、例えば「今ならお試し価格×円で購入可能です」という宣伝文句だけが書いてあり、この宣伝文句を見て消費者が購入申込みを行ったところ、以後定期的に商品とその代金請求書(本来価格と称する高額な支払を要求する書面)が届くようになった、というものです。

事業者が確信犯的に自動継続条項を隠している場合もありますが、トラブルの根本的な原因は、上記「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の言葉を借りれば、実質的に自動継続にはしないという意思表示をする機会が与えられていた、かという点にあると考えられます。例えば、

・当初の申込画面に、購入者からの連絡がない限り、1ヶ月後に正規料金で商品を継続的に購入する契約が自動的に成立することになっていることの表示がない

・上記のような自動的に成立することを記載した利用規約はWEBサイト上には存在するものの、申込画面からリンクされていない

といった場合は、機会が与えられていないと言われても仕方がないと考えられます。

なお、このような機会を与えることなく商売を行った場合、後で詐欺商法と言われたりするなど深刻な風評被害が生じる可能性が高いと考えられます。また、後述する特定商取引法違反に基づく行政処分等の問題も出てきます。こういった問題を抱えてしまうと、事業を継続すること自体が困難になると言わざるを得ません。事業者としては、お試し申込みを行った場合は原則契約が自動継続すること、自動継続を希望しない場合は別途措置が必要であることを、分かりやすく表示するというスタンスが求められます。

 

3.特定商取引法(通信販売規制)

サブスクリプション方式のビジネスを運営する場合、事業者視点に立つと、利用者にいかに長期利用してもらうかがポイントになります。ただ、長期利用してもらうという目的を実現するために、利用者をやや欺くようなWEBサイトの構造が見受けられるため問題化しているという実情があります。

このような問題への対策として特定商取引法が改正され、通信販売における表示(いわゆる「特定商取引法に基づく表示」と呼ばれるものです)として、「商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件」を必ず明記しなければならないと規定されるに至りました。

この表示義務について、消費者庁は次のような解説を公表しています。

 

【引用開始】

例えば、「初回お試し価格」等と称して安価な価格で商品を販売する旨が表示されているが、当該価格で商品を購入するためには、その後通常価格で×回分の定期的な購入が条件とされている等、申込者が商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要がある場合の表示義務事項である。

「その他の販売条件」には、それぞれの商品の引渡時期や代金の支払時期等が含まれる。 期間の定めを設けていない定期購入契約(購入者から解約の申入れがない限り契約が継続されるもの)の場合は、表示事項のうち「金額」は、例えば、半年分や1年分など、まとまった単位での購入価格を目安として表示するなどして、当該契約に基づく商品の引渡しや代金の支払が1回限りではないことを消費者が容易に認識できるようにすることが望ましい。また、「契約期間」については、当該契約が消費者から解約通知がない限り契約が継続する無期限の契約である旨を示す必要がある。なお、1回の契約で複数回の商品の引渡しや代金の支払を約することとなる場合は、法第11条第1号から第3号までの規定により、買い手が支払うこととなる代金の総額等の条件を全て正確に記載しなければならない。

【引用終了】

 

特定商取引法の改正内容があまり事業者に周知されていないせいか、上記表示義務を適切に履行している通信販売事業者は意外と少ないと執筆者個人は感じています。しかし、特定商取引法に違反した場合、最悪の事態として営業停止や刑事罰の処分もありうる非常に厳しい制裁が待っています。また、特定商取引法に違反したものとして公表が行われた場合、利用者を含めた世間一般からの非難は免れません。このような事態に陥ると、残念ながらビジネスを継続することが困難な事態に陥ることが多いと考えられます。

したがって、利用者(消費者)に誤解を与えないよう、説明するべき事項は説明するというスタンスで、事業運営を行う必要があります。

 

4.特定商取引法に基づく表示と契約合意

サブスクリプション方式のビジネスに限定されるわけではありませんが、時々「特定商取引法に基づく表示として記載した内容は、当然に契約内容となっていると考えてよいですよね」という問い合わせを事業者サイドから受けることがあります。

結論から申し上げると、(少なくとも事業者にとって有利な内容については)契約内容となっていないと考えるほかありません。なぜならば、特定商取引法に基づく表示は、行政が事業者に対し、通販を利用する利用者(消費者)に注意喚起情報を明記することを義務付けていること、つまり行政と事業者間の規律を定めているだけにすぎないからです。契約、すなわち当事者間(利用者と事業者の二当事者間)で合意したというためには、どこかの段階で利用者の承諾が必要となります。この点、「特定商取引法に基づく表示」を事業者が一方的に表示したことと、当該表示を閲覧するかどうかさえ分からない利用者との一般的な関係を考慮すると、利用者の承諾があったと直接的に結び付けることは不可能と言わざるを得ません。

したがって、特定商取引法に基づく表示として事業者にとって有利な事項が記載されていたとしても、これだけを根拠に事業者が利用者(消費者)に当該事項を遵守させるということは困難と言わざるを得ません。

一方、特定商取引法に基づく表示として利用者(消費者)にとって有利な事項が記載されていた場合、事業者がこれを否定することは自己矛盾となりますので、利用者(消費者)が当該記載事項を根拠に順守を求めてきた場合、事業者は従わざるを得なくなると考えられます。

 

 

<2020年8月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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