ポイント発行事業を行う場合の注意点について、弁護士が解説!

 

 

【ご相談内容】

販促活動を行うことを目的として、当社が運営する実店舗及びネットショップで利用可能な電子ポイントを発行しようと考えています。無償で発行するポイント及び有償で付与するポイントの2種類を想定しているのですが、どういった法律問題を意識すればよいのでしょうか。

なお、将来的に電子ポイントの利用を当社以外の事業者でも利用可能とする場合の法務課題についても教えてください。

 

 

【回答】

家電量販店やネットショップで商品を購入することで自動的にポイントが付与され、次回以降の買い物時に用いることができるといった、販促行為目的でのポイント付与は今や当たり前のように行われています。また、最近では、ゲーム内通貨が代表ですが、お金を支払って一定のポイントを取得し、当該ゲーム内外で現金に代わる決済手段として利用するといったことも行われています。

このようなポイントサービスを事業者が提供する場合、まず確認しなければならないのが「対価の支払いを条件としてポイントを付与するのか」という点です。この相違によって次のような法規制に服することになります。

  • 有償(ユーザがポイントを購入する)…資金決済法の適用あり
  • 無償(支払いを受けずに事業者のサービスとして付与)…原則として法規制なし

上記整理に基づき、以下では解説を行います。

 

 

【解説】

 

1.有償(ユーザがポイントを購入する)にてポイントを付与する場合

 

(1)前払式支払手段

資金決済法という法律自体は既に施行されて10年以上経過していますが、この法律名を指摘しても「?」という担当者は意外と多かったりします。一昔前でいうところのプリペイドカード法といえばイメージできるかもしれません。

さて、ユーザが代金を支払い、現金代替物であるポイントを取得し、当該ポイントを利用可能な場所・環境で使用する場合、ユーザは事業者に対して先にお金を支払っていることになります。この先払いで現金代替物を取得することを「前払式支払手段」と法律上は呼んでいるのですが、正確には資金決済法第3条第1項に定義があります。

資金決済法第3条第1項

この章において「前払式支払手段」とは、次に掲げるものをいう。

(1)証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの

(2)証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの

 

資金決済法上第3条第1項は一文が長く読みづらいのですが、次の3要件を充足した場合、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当することになります。

  • 価値の保存(1号は商品券やギフト券などで金額が記録されたもの、2号はビール券などに数量が記録されたもの)
  • 対価発行(対価の支払いによって金銭に変わるものが発行されること)
  • 権利行使(支払いに充てることができること)

ユーザに対して金銭支払いを条件にポイントを発行する場合、「前払式支払手段」に該当し、資金決済法の適用を受けると認識する必要があります。

 

(2)資金決済法が適用されることによる事業者の責務

資金決済法に基づき課せられる事業者の責務を検討するに当たり、「自家式前払支払手段」と「第三者型前払式支払手段」の区別を理解する必要があります。大まかなイメージで言うと次の通りです。

  • 自家式前払支払手段…ポイント発行者が提供する商品・サービスに対してのみ利用可能なポイントのこと
  • 第三者型前払式支払手段…ポイント発行者のみならず、ポイント発行者が定めた第三者が提供する商品・サービスに対して利用可能なポイントのこと

 

第三者型前払式支払手段の場合、利用可能な店舗が拡大する以上、利用するユーザの数も増加するものと考えられますので、第三者型前払式支払手段は自家式前払支払手段よりも厳しい法規制に服することになります。主だった規制内容は次の通りです。

【自家式前払支払手段】

・参入規制は原則なし。但し、ポイントの未使用残高が1000万円を超えることとなった場合は届出が必要。

・未使用残高の2分の1以上の供託義務

・利用可能額等の情報提供義務

【第三者型前払式支払手段】

・事前に登録が必要(参入規制あり)。

・未使用残高の2分の1以上の供託義務

・利用可能額等の情報提供義務

 

(3)ポイント発行事業の現場実務(資金決済法の適用除外)

上記(2)で記載した通り、ポイント発行事業を行うに際してネックになるのが行政への届出又は登録と供託義務となります。特に供託義務は事業を拡大すればするほど納める金額が増額するため、事業者にとってはかえって資金繰りが苦しくなるという自己矛盾を抱えることになります。このため、ポイント発行事業を行う場合、資金決済法の適用除外となるようなビジネスモデルを構築することがむしろ通常です。

具体的には、資金決済法第4条第2号に定められている、ポイントの「利用期間が一定期間内に制限される」ようにビジネスモデルを構築し、資金決済法の適用除外を図ることになります。この一定期間ですが、現時点では6ヶ月と定められています。つまり、6ヶ月以内にポイントを使い切ってもらうようなサービス提供ができるのかが重要となります。

ちなみに、資金決済法の適用除外となる一定期間について、最長利用期間は上記の通り6ヶ月ですが、最短利用期間については特段の定めはありません。したがって、資金決済法上の理屈だけではいえば、利用期間を1日とか1時間とすることも有効です。ただ、あまり短期にしすぎると、ユーザ(通常は消費者)にとって著しく不利益となりますので、消費者契約法の観点からは問題が生じることになること注意が必要です。

なお、ユーザの利益になるからといって、一度発行したポイントに対して現金で払い戻すといった制度設計を行うこともNGとなります。なぜなら、出資法違反になる可能性が生じるからです(資金決済法が定める払戻に関する限定列挙事由に該当するのであれば、出資法違反にはならないと考えられます)。

 

(4)小括

前払式支払手段を用いてポイントを発行する場合(実質的には電子マネーや仮想通貨も同様の考え方となります)、上記の資金決済法はもちろんのこと、資金移動業の該当性、出資法や銀行法との関係性、金融商品取引法に基づく規制の有無など様々な法規制を検討する必要があります。

また、ユーザとの権利義務関係については、消費者契約法や改正民法(特に定型約款)などを意識して利用規約を定める必要があります。

さらに、ユーザの個人情報を取得するのであれば個人情報保護法の遵守はもちろんのこと、ユーザ本人のプライバシー情報の利用に対する懸念を解消するため、法律以上の事業者による自発的な対応策も検討する必要があります。

ビジネス開始後にビジネスの適法性・妥当性につきケチを付けられてしまうと、その後のビジネス展開に支障が生じますし、場合によってはビジネスの継続自体ができなくなることもあり得ます。前払式支払手段を用いたポイント等の発行事業を行う場合、必ず弁護士に相談の上、ビジネススキームの構築を行うべきです。

 

 

2.無償(事業者のサービス)でポイントを付与する場合

 

(1)対価の支払いを伴わないポイント発行と景品表示法

大手の家電量販店や広告会社などをはじめ、ポイント付与は現代社会では当たり前になってきている感もありますが、上述の資金決済法に該当しない(前払による対価の支払いがない)場合、直接的な法的規制は存在しないのが実情です。

もっとも、ポイントの付与を「おまけ」と捉えた場合、景品表示法の「景品類」に関する規制の適用が問題となってきます。

景品表示法第3条

内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

 

景品表示法だけを見ても、具体的にどういった規制が及ぼされるのかがよく分かりませんが、ポイントの発行という観点からは、次の「一般懸賞」と「総付景品」を意識しておけばよいでしょう。

【一般懸賞】

一般懸賞は、商品・サービスの利用者に対し、くじ等(例:抽選やジャンケン)の偶然性、特定行為(例:クイズやゲーム)の優劣等によって景品類を提供することをいいます。

・懸賞による取引価額5,000円未満

(景品類限度額の最高額)取引価額の20倍

(景品類限度額の総額)懸賞に係る売上予定総額の2%

・懸賞による取引価額5,000円以上

(景品類限度額の最高額)10万円

(景品類限度額の総額)懸賞に係る売上予定総額の2%

 

【総付景品】

総付景品は、「懸賞」によらずに提供される景品類のことをいいます。例えば、先着100名様にプレゼントといったものが該当します。

・取引価額1,000円未満…景品類の最高額は200円

・取引価額1,000円以上…景品類の最高額は取引価額の10分の2

 

なお、ポイントについて、発行者のみならず発行者以外の第三者に対しても利用可能という制度設計とする場合、共同懸賞(景品類の限度額について、最高額は取引価額にかかわらず30万円、総額は懸賞に係る売り上げ予定総額の3%)に関する規制を意識する必要があります。

 

いずれにしても景品表示法の規制対象となった場合、提供する景品類に対して限度額が生じてしまう点に注意する必要があります。限度額が出るということは、マーケティング上での訴求に制限がかかってしまいますので、できれば回避したいというのが事業者の本音と考えられるからです。

それでは、自社発行のポイントについて、どの様に考えるべきでしょうか。事業者が展開するサービス内のみで利用可能なポイントを前提に考えてみます。

まず、ポイントの付与方法が「懸賞」の場合は、一般懸賞に該当しますので、上記規制に従ってポイントを発行する必要があります。一方、「懸賞」によらない場合、公正取引委員会のガイドライン(景品類等の指定の告示の運用基準)に従う限り、付与されたポイントの利用目的の制限の有無によって場合分けをする必要があります。

すなわち、付与されたポイントは値引きのみで利用可能であっても、値引きとして利用可能な対象商品等が限定されている場合には「総付景品」として取り扱う必要があります。逆に値引き利用の対象商品等が限定されていないのであれば、「値引き」として取り扱われますので景品表示法の規制対象外となります。一方、付与されたポイントについて、値引きとしても使用可能、他の景品類の交換にも使用可能という選択肢があった場合には、「総付景品」として取扱う必要があります。要は、景品表示法の規制対象外となるポイントは、「懸賞」によらず付与し、かつ代金決済(値引き)のみに使用可能という制度設計にする必要があるということになります。

 

(2)個人情報保護法

事業者がサービスでポイントを発行する場合、通常は何らかの販促行為に用いることを目的としています。典型的には、次回来店の動機づけにする(リピーター客になってもらう)といったことが考えられますが、連絡先(電子メール、LINEのアカウント等)等を入手することで宣伝広告を適宜行えるようにするという目的の場合もあります。

こういった宣伝広告を行う目的で連絡先等の個人情報を取得する場合、当然のことながら個人情報保護法を意識する必要があります。利用目的の事前明示方法はもちろんのこと、宣伝広告で個人情報を取得することにつき利用目的に明示されているのか、第三者提供を予定しているのであればユーザにとって分かりやすい同意取得方法になっているのか等の検証が必要になります。

なお、最近の傾向として、個人情報保護法上は問題がなかったとしても、個人情報を含むプライバシー情報が本人の見えないところで利用されることへの不安・懸念への対応が必要と考えられます(いわゆる炎上騒ぎとなった事例の中には、厳密には法律違反とまでは言い切れない事例が存在します)。プライバシー概念の拡張問題などと呼ばれたりしますが、トラブルの根本的原因は本人が関知しない使用態様への不安です。個人情報保護法の遵守はもちろんのことですが、プライバシー情報の使用方法について、ユーザに事前に説明し了解を得るというスタンスが求められていることを理解する必要があります。

 

(3)消費者契約法

対価性を伴わないポイント発行の場合、上記(1)(2)のような法律は意識する必要はあるものの、資金決済法のようなポイント発行者に対して直接的な規制を及ぼす法律は存在しません。また、ポイントの発行条件・使用方法・使用期間・使用対象・使用場所等のユーザとの権利関係を規制する直接的な法律も存在しません。したがって、ポイントの発行条件等については、原則としてポイント発行者が自由に定めることができることが可能です。

もっとも、例えば、ポイント発行者の裁量により現金還元率を途中で変更する、ポイントを利用した取引後の取引自体をキャンセルした場合であってもポイントの返還を行わないといった制度設計を行っている場合、消費者契約法違反の問題が生じる可能性があります。

また、法規制がない以上、ポイントの発行条件・使用方法・使用期間・使用対象・使用場所等のユーザとの権利関係についてはあらかじめ定めておくこと、定めた内容をユーザの確認しやすい方法で通知し了解を取り付けることが重要となります(ルールを定めないと、ある意味での無法地帯となり、トラブルが生じた場合に適切な対応ができないことになります)。

 

(4)小括

ユーザから支払いを受けることなく、事業者が任意でポイントを発行する場合、前払式支払手段とは異なり直接的な法規制はありません。しかし、実質的に資金決済法の潜脱とならないかという視点での検証が必要となる場合もあります。

また、ユーザとの権利義務関係についても、上記でも記載したような消費者契約法はもちろんのこと、現在では定型約款に関する民法についても意識しながら利用規約を作成する必要があります。

さらに、ユーザの個人情報を取得するのであれば個人情報保護法の遵守はもちろん、ユーザ本人のプライバシー情報の利用に対する懸念を解消するための方策が必要となること前述の通りです。

対価を得ることなくポイントを発行する場合、先行投資を行いつつ、近い将来に当該投資分を回収し、その後は利益を獲得するというビジネスモデルを構築することが通常です。しかし、ビジネス開始後にビジネスの適法性・妥当性に問題が生じてしまうと、利益の獲得はおろか先行投資分さえ回収ができなくなり、結果的には損失が生じただけとなりかねません。対価性を伴わないポイント発行事業を行う場合、事前に弁護士に相談し、ビジネススキームの構築を行うことが重要です。

 

 

<2021年8月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

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弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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