取引先が反社会的勢力と疑われる場合に対処するべき事項について、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

当社社長が、取引先代表者よりゴルフコンペに誘われ出向いたところ、参加者に多数の暴力団関係者が含まれていることが判明しました。取引先代表者が、ゴルフプレー中及び懇親会の席上、暴力団関係者と懇意にしていたことから、取引先は反社会的勢力と関係があるのではないかと疑っています。

取引先との取引を見直したいのですが、当社はどのような対策を講じていけばよいのでしょうか。また、意図せず反社会的勢力が参加するゴルフコンペに参加した当社への風評被害を防止するためには、どのようにすればよいのでしょうか。

 

 

【回答】

取引先が本当に反社会的勢力に該当するのであれば、直ちに取引を解消する必要があります。なぜなら、漫然と取引を継続していたことが後で明らかとなった場合、社会的非難はもちろんのこと、新規商談が進まなくなる、既存の別取引先との取引が中止に追い込まれる、金融機関が融資に応じてくれない等の事業活動に重大な支障が生じかねないからです。

もっとも、上記事例のようなゴルフコンペ当日の状況だけで、取引先を反社会的勢力に該当すると判断することはいささか性急ともいえます。

したがって、取引先が反社会的勢力と疑われる事象が生じた場合、①必要十分な調査を行うこと、②取引解消のための法的根拠を検証し実行すること、③取引解消後の社内体制を構築することがポイントとなりますが、これらの点につき、以下では解説を行います。

また、自社のレピュテーションリスクも生じていることから、この対処法についても簡単に解説を行います。

さらに、反社会的勢力と素早く取引関係を解消するために、予め講じておきたい方策についても最後に触れておきます。

本記事を読むことで、取引先に反社会的勢力の疑いがある場合の対処法の全体像を掴むことができると思います。

 

 

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【解説】

 

1.反社会的勢力の調査方法

 

(1)手軽な調査方法

無料で簡単に行うことができる調査方法としては、インターネット検索があります。

法人名、事業者名、屋号、代表者名、取締役等の役員名、株主名、本店や営業所のある住所地などのキーワード検索を行うことが考えられます(これらのキーワードと暴力団、反社、反グレ、逮捕、捜査、摘発、容疑、違反等のキーワードと組み合わせることも有用です)。

なお、可能であれば、Googleエンジンを用いる検索サイトとGoogleエンジン以外のものを用いる検索サイト(Bingなど)の2種類以上の検索サイトを用いて調査したほうが、より多くの情報収集ができると考えらえます。

 

(2)少し時間をかけて行う調査方法

行政機関が発注する公共事業の入札に対して除外措置、指名停止措置、指名排除措置等の処分が課された場合、多くの行政機関では、その管理運営するWEBページで公表を行っています。

そこで、取引先の活動範囲内にある行政機関(国、都道府県、市町村など)のWEBページ内にある処分された事業者を徹底的に調べるという方法があげられます。

なお、処分された事業者のリストはPDFデータで公開されていることが多く、上記(1)で記載したインターネット検索サイトでは検索結果として表示されないようです。したがって、インターネット検索とは別作業が必要であると認識して、対処する必要があります。

 

(3)第三者を通じて行う調査方法

この調査方法には様々なものがありますが、代表的なものは次の5つです。

・新聞記事検索サービスの利用

新聞社等のマスコミは、過去の犯罪や事件報道などをデータベース化し、有料での利用サービスを提供しています(日経テレコンなどが有名です)。

反社会的勢力に該当する場合、何らかの違法行為に関与し、報道されることが多いという特性を用いた調査方法となります。

 

・業界団体データベースの利用

金融系業界団体や不動産業界団体は、業界団体として反社会的勢力に関する情報を収集し、データベース化しています。

業界団体の構成員であれば、このデータベースを利用して調査することが可能となります。

 

・民間調査会社への依頼

民間調査会社の中には、反社会的勢力に関する情報収集を独自に行っているところがあります。また、いわゆる探偵依頼を行うことで、反社会的勢力と接触があるのか等の行動調査を行ってもらうことが可能です。

ただ、当然のことながら決して安くはない依頼費用が発生しますので、ある程度の確証をつかんでから、最後のもう一押しの調査という使い方が多いようです。

 

・暴力追放運動推進センターへの照会

都道府県ごとで設置されている公益財団法人であり、警察と連携して反社会的勢力のデータベースを構築、運用しています。

有料会員になった上で、一定の要件を充足する必要がありますが、反社会的勢力該当性に関する照会を行えば回答を行ってくれますので、調査方法の1つとして用いることが可能です。

 

・警察への照会

警察が現在進行形で把握している反社会的勢力に関する情報と照合し、該当の有無につき回答を得るという調査方法です。

ただ、かなり厳格な運用が行われていますので(つまり、回答を得るためのハードルが高いということです)、次に記載する警察庁の通達内容を十分に理解した上で、弁護士と相談しながら手続きを進めたほうが良いと考えられます。

(参考)

暴力団排除等のための部外への情報提供について(警察庁)

 

(4)経験則を用いた調査方法

この調査方法はあくまでも「反社会的勢力に該当するかもしれない…」という程度のものであり、確証度の高い調査方法とは言い難いところがあります。とはいえ、深堀調査の必要性などを判断する上での情報収集となることから、やっておいて損はないと考えられます。

・商業登記簿の分析

現在事項全部証明書のみならず、履歴事項全部証明書及び閉鎖事項全部証明書を入手し(法務局に行けば、1つの証明書当たり原則600円で誰でも入手可能です)、会社名(商号欄)、住所(本店欄)、事業内容(目的欄)、役員異動(役員に関する事項)などを見て、過去に複数回変更が行われていないかをチェックします。

なぜこのようなチェックを行うのかというと、一般的な中小企業であれば、これらの事項に変更が加えられることは稀だからです。すなわち、過去に幾度も変更が行われている場合、あるいは抜本的な変更が行われている場合、反社会的勢力に会社が乗っ取られた可能性を示唆する情報となりうるからです。

なお、短期間に資本金の増減が行われている、事業目的が不自然なほど多岐にわたる、設立当初の役員全員が入れ替わっている等の事情がみられる場合も、反社会的勢力が関与していることを示唆する情報となる場合があります。

 

・不動産登記簿の分析

会社住所の不動産(商業登記簿の住所と現実に活動している事業所の住所が異なる場合は両方とも)と、商業登記簿に記載されている代表者個人の住所にある不動産の登記簿をそれぞれ入手し、所有者名義人につき、上記(1)から(3)に記載した方法を用いて、反社会的勢力に該当しないかチェックすることになります。

また、不動産登記簿上の甲欄において、馴染みのない金融業者による差押えが行われていないか、乙欄において、やはり馴染みのない金融業者による抵当(担保)登記が付されていないかを確認し、場合によってはその金融業者について、反社会的勢力に該当しないかチェックすることも有用です。

なお、不動産登記簿を入手した際に、短期間に差押え(仮差押え)、競売開始決定、和議、破産などの経済的信用に関する情報を把握できる場合があります。一概に判断はできませんが、経済的に行き詰っている場合、反社会的勢力に付け込まれやすい傾向があることにも注意を要します。

 

・現地調査

取引先の本店や営業店舗の現地確認を行った際、外観調査として、例えば住宅用のマンションの一室に事業所がないか、会社の玄関扉に会社名の入った札・プレートが設置されていないか(あるいは別の事業者名が記載されていないか)、テナントビル入口の入居者掲示板に会社名が不記載となっていないか、防犯カメラが複数台設置されていないか、同一建物内のテナントとして反社会的勢力が入居していないか等々の事情をチェックすることになります。また、会社内に入ることができた場合は、例えば、内装や調度品が華美ではないか、会社内にいる人物の風体に特徴はないか、社長・代表者等の部下に対する言動が異常に高圧的ではないか、漏れ聞こえてくる会社内での電話応答に不自然な点はないか等々の事情もチェックすることになります。

もちろんこれらの事情のうち1個以上に該当することをもって、直ちに反社会的勢力に該当すると断定することはできませんが、注意を要する取引先であるとして更なる深堀調査が必要であると判断することはできるかと思われます。

ちなみに、取引先が、当方による取引先訪問を極端に嫌がる場合、合理的な説明がない限り、何らかの後ろめたい事情があるとして注意を払ったほうが良いかもしれません。

 

・同業他社からのヒアリング

もし取引先と同じ業界に属する同業他社がいるのであれば、その同業他社より取引先に関する情報をヒアリングし、チェックすることになります。

また、取引先と現実の取引を行っている事業者がいるのであれば、その事業者からもヒアリングを行うということも考えられます。ただ、その事業者が取引先に対し、ヒアリング調査を行っていることを伝えてしまう可能性がありますので、よほど信頼できる事業者ではない限り、安易に調査協力を求めるべきではないと考えられます。

 

 

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2.取引解消の方法

 

上記1.で記載した調査方法を駆使し、取引先が反社会的勢力に該当するとの確証を得た場合、取引関係解消に向けた対策を講じることになります。

一方、反社会的勢力に該当するとの確証が得られない場合、取引を継続するか否かを含めた経営判断を行うことになります。

 

(1)反社会的勢力であると断定できる場合

まずは、取引を解消する法的根拠を検討する必要があります。

この点、取引基本契約書に反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)が定められている、あるいは取引先より反社会的勢力に該当しない旨の表明保証書(誓約書)を提出させているのであれば、これらを用いて取引関係の解消を図ることになります。

一方、暴力団排除条項が定められていない、あるいは反社会的勢力に該当しない旨の表明保証書(誓約書)の提出を受けていない場合、他の法的根拠を探ることになります。

例えば、取引先が反社会的勢力に該当しないと勘違いしていたとして錯誤取消し(民法第95条)を根拠にする、取引先が反社会的勢力に該当しないと欺罔していたとして詐欺取消し(民法第96条)を根拠にした、取引先に与える刺激の強い方法もあれば、契約期間の満了をもって取引を解消するといった、少し時間をかけて軟着陸を図る方法も考えられるところです。軟着陸を図る方法については、次の記事もご参照ください。

(参考)

継続的な契約関係を解消する場合の注意点について、弁護士が解説!

 

ところで、特に取引先に対し反社会的勢力であることを名指しして契約解消を図る場合、取引先からの抵抗が大きく、不測の事態への備えが必要です。

契約解消の通知を行うに際しては、取引先に対して面談し口頭で伝えるよりも、配達証明付き内容証明郵便を用いて機械的に行ったほうが無難です。

また、通知後に取引先が当方に押しかけてくる場合を想定して、事業所出入口の施錠管理、万一事業所内に侵入してきた場合の別室の確保と誘導手順の確認、警察への事前相談と有事の際のホットラインの構築、弁護士に対応窓口を一元化するなどの準備を行っておきたいところです。

さらに、取引先がこれを機に不当要求を行ってくる可能性も否定できません。不当要求に対しては毅然としてNOということが基本中の基本ですが、色々と不安なところもあるかと思います。不当要求への対応については、次の記事もご参照ください。

(参考)

不当要求があった場合の対処法について、弁護士が解説!

 

なお、取引先が反社会的勢力に該当するとはいえ、当方にとって必要不可欠な原材料の仕入先となっている、あるいは当方商品の主たる販売先になっている等、取引を解消することで自社の経営継続に重大な悪影響を及ぼす事態が生じることも有り得る話です。

この場合、ビジネスという観点から悩みが生じるかもしれません。

しかし、暴力団及び反社会的勢力を排除することは社会的要請であること、万一取引先が反社会的勢力であることを認識していたにもかかわらず、漫然と取引を継続していた場合の社会的非難はすさまじく、かえって事業存続ができないことを十分に理解するべきです。

直ぐに代替取引先を見つけ出すことは難しいかもしれませんが、一刻も早く取引先との関係は切断するべきです。

 

(2)反社会的勢力と断定できない場合

反社会的勢力と断定できない場合、しかし、疑いが残る以上は取引を解消したいと考える場合、反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)や反社会的勢力に該当しない旨の表明保証書(誓約書)を根拠にすることはできない以上、上記(1)で記載した“軟着陸”を図る方法を駆使して対処するほかありません。

 

一方、取引解消を見送るという判断を行った場合、これにて一切の対応を終了させるという方法は得策ではありません。なぜなら、判断後に取引先が反社会的勢力に該当することが明らかとなったという場合も想定されるからです。

この場合、ステークホルダー等に対して、なぜ取引を継続していたのか説明する必要が生じますので、見送り判断後も次のような対処を行うことが無難です。

  • ①判断を行った時点までの調査内容及び検討過程を記録・証拠化すること
  • ②判断後も適宜モニタリングを行うこと(行っていたことの記録・証拠化も必須)
  • ③改めて取引先と暴力団排除条項を追加した契約書を締結すること、あるいは反社会的勢力に該当しない旨の表明保証書(誓約書)を提出させること

 

なお、念には念を入れるのであれば、上記③の対策が講じられるまでの間、取引先との取引は一時中断する(中断が難しい場合は取引量を一時的に減少する)といったことも検討に値します。

 

 

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3.レピュテーション対応

 

事例の場合、当社代表者が知らなかったとはいえ、ゴルフコンペの写真等が世間に出回れば、当社は反社会的勢力と関与している…と周囲から疑われることになります。そして、疑いの目を向けられた場合、新規商談が進まなくなる、既存の別取引先との取引が中止に追い込まれる、金融機関が非協力的になる(場合によっては新規融資の中止、融資の回収手続きに入る)等の、事業継続に重大な支障を及ぼすことも十分想定されるところです。

したがって、騒ぎになる前に、十分な調査(事実関係の確定、原因究明等)を行った上で、再発防止策を講じ(関係者の処分、社内体制の見直し等)、必要に応じて公表を行うという対応が必要となります。公表に際しての注意事項等については、次の記事をご参照ください。

(参考)

危機管理時の広報対応について、弁護士が解説!

 

また、SNSなどインターネット上で情報が流通している場合、サイト運営者への削除申請、悪質な投稿については開示請求及び損害賠償請求などの対策を講じることになります。これについては、次の記事をご参照ください。

(参考)

ネット炎上・風評被害が生じた際に会社がとるべき対応を弁護士が解説!

 

 

4.反社会的勢力との取引を素早く解消するための事前策

 

(1)契約書等の整備

事業活動において反社会的勢力と関わらないよう予防策を徹底することはもちろん必要です。しかし、どんなに予防策を講じても、知らない間に反社会的勢力と関わってしまうことはあり得ます。

したがって、反社会的勢力と判明した時点で、直ちに取引を打ち切ることができるよう準備を進める必要があります。一般的には次の3つの方法が考えられます。

 

①反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)を契約書に定めること

上記2.において取引解消方法を解説しましたが、反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)が無い場合、法的根拠を維持しつつかつ素早く取引を解消することは難しいというのが実情です。

したがって、取引関係解消のための法的根拠を整備するべく、全ての契約書において次のような条項を定めておくことが重要です。

 

【反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)の例】

1.甲及び乙は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。

2.甲及び乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。

(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき

(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき

(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき

(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき

(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき

(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき

3.甲及び乙は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

 

②誓約書を徴収すること

取引先によっては、わざわざ契約書を作成し、締結することまで行わないということもあります。この場合は、反社会的勢力に該当しないことを表明保証する誓約書に署名押印してもらい、提出を受けるという方法が考えられます。

内容としては、上記①のサンプル条項をベースに作成すればよいかと考えますが、ポイントは、反社会的勢力の範囲(人的属性と行為態様の2つの考慮要素を用いることが通常)、反社会的勢力に該当した場合の処理(無条件に解除可能、解除された側は損害賠償請求不可)を明記することがあげられます。

 

③利用規約に定めること

取引先とは契約書を締結せず、当方が制定した利用規約に基づいて取引を実行するということもあります。

この点、利用規約にあらかじめ反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)が定められていれば、それを用いて取引を打ち切ることができます。しかし、一昔前に制定した利用規約をそのまま用いている等の理由で反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)が定められていない場合もあります。

万一定められていない場合、利用規約の変更手続きを行い、反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)を制定することになりますが、問題は取引先の同意を得ることなく一方的に変更することが可能なのかという点です。

この点、利用規約が民法の定型約款に該当するのであれば、①契約をした目的に反しないこと、②変更が合理的であること、③周知手続きを行うことの3要件を充足する限り、一方的に変更することが可能です(民法第548条の4)。そして、現場実務では、反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)を追加(変更)することは、上記①及び②の要件を充足すると考えられているため、あとは粛々と③の手続きさえ実施すれば問題ありません。

利用規約の変更は、取引先の意向に関係なく実行できる以上、直ちに対処するべき予防策となります。

なお、利用規約の変更手続きについては、次の記事をご参照ください。

(参考)

利用規約を事後的に変更する方法はある?変更手順や注意点を解説

 

(2)契約締結上の過失

取引先が反社会的勢力であることが明らかとなった場合、直ちに取引を打ち切る必要があること、繰り返し記載した通りです。

ところで、取引実行の前段階、すなわち契約交渉を行っている最中に取引候補者が反社会的勢力に該当することが判明した場合、契約交渉を直ちに打ち切るのが望ましい対処法となります。

しかし、契約交渉段階である以上、契約書は未締結、誓約書の提出を受けていない、利用規約も適用されないという状況となります。このため、取引候補者より、契約締結に向けて時間・労力・お金をかけて準備を進めてきたにもかかわらず、一方的に反故にしたことは不法行為に当たるとして損害賠償請求を行ってくる可能性があり(いわゆる契約締結上の過失の問題)、この請求を完全に防止することが困難というのが実情です。

ちなみに、反社会的勢力に該当することを適切に証明できる限り、正当な契約交渉の打ち切りであるとして、不法行為は成立しないと考えられます。しかし、結局のところは、どこまで確証度の高い証拠資料を収集できるのかが勝負の分かれ目になるといえますので、上記1.を参考にしつつ、必要十分な調査が肝要となります。

 

 

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5.当事務所でサポートできること

 

取引先が反社会的勢力と疑われる場合、取引先に対して調査情報が漏洩しないよう細心の注意を払うことはもちろん、社内でも限られた担当者内で情報を共有しながら水面下で手続きを進めていく必要があります。

こういった手続きを社内人材だけで行うのは、特に中小企業の場合難しいことが多いので、弁護士に手伝ってもらった方が安心かつ確実といえます。

当事務所では、反社会的勢力との取引解消及び不当要求対応について複数の実績があり、知見とノウハウを保有しています。当事務所へご依頼いただいた場合、これらの知見とノウハウを駆使して、ご依頼者様において適切な成果が得られるよう尽力します。

 

 

 

 

<2023年9月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

 

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弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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