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【ご相談内容】
近年発生することが多くなった集中豪雨や地震等の自然災害により、企業活動が甚大な影響を受けていることを踏まえると、当社としても何らかの対策を立てる必要があると考えています。しかし、実際のところ、目の前の仕事に追われており、いつ起きるか分からない不確定事象に対して準備することはどうしても後回しになり、なかなか準備のための時間を取ることができません。
不十分であることは承知しているのですが、とりあえず時間をかけずに今すぐにでもできる対応策に絞って、ポイントを教えてもらえないでしょうか。
【回答】
自然災害等に巻き込まれたとしても、企業活動への影響を最小限に抑えるべくBCP(事業継続計画)策定の必要性が叫ばれていること、既にご存知かと思います。
しかし、必要性を頭では理解できていても、特に中小企業の場合は、専属の担当者を割り当てるだけの人的資源が無いことはもちろんのこと、時間・費用・労力等のいずれの面でもBCPを策定するだけの余裕がないのが実情です。
そこで、本記事では、代表的な自然現象ごとに分類した上で、自社内で起こり得る課題に対し、先立って何を行うべきか整理しつつ、付加して法務視点で留意したい事項について解説を行います。
なお、BCP策定が難しいとはいえ、例えば大阪府では簡易版としてA3用紙1枚でまとめることが可能なツールを公開していますので、簡易版だけでも作成することをお勧めします。
(参考)
「超簡易版BCP『これだけは!』シート (主に自然災害対策版)」(大阪府)
【解説】
1.(ある程度)予測可能な自然災害
(1)台風
毎年7月から10月頃にかけて、複数の台風が接近しては被害を及ぼしています(ちなみに、気象庁のWEBによると鹿児島県、高知県、和歌山県の順に台風上陸が多いとされていますが、4位に静岡県、7位に愛知県、8位に千葉県と工場・事業所が多い都道府県も10位以内にランキングされています)。
残念ながら、台風の発生及び接近を止めることは不可能である以上、台風により何らかの影響が生じることを念頭に会社は対策を講じる必要があります。この点、科学技術の発達により、だいたい3日前であれば高確率での台風の進路予想ができるようになっていますので、気象庁のWEB等を確認しつつ、準備を進めていけばある程度の防災は可能となります。
(参考)
さて、台風による防災を検討する上で、法務視点で特に検討したいのは次の3点です。
・事前対策としての休業命令
出勤前であれば「会社には来るな、自宅待機しろ」と会社が指示すること、勤務時間途中であれば「今すぐ帰宅しろ」と会社が指示することを意味しますが、そもそもこのような指示命令を会社が一方的に出してよいのか疑問に思われるかもしれません。しかし、会社は従業員に対する安全配慮義務を負担していることを考慮すれば、従業員に対し何らかの危険が生ずる恐れがある場合に休業命令を出すことは法的に可能と考えられます。
問題は、休業中の賃金についてです。
会社としては、従業員の身の安全を考えてあえて休業した、従業員は業務に従事していない以上賃金をもらえなくて当たり前(ノーワークノーペイ)と考えたくなるかもしれません。しかし、上記のような事例の場合、会社が予防的にすなわち会社都合による休業命令と考えることになりますので、休業手当の支払い義務(平均賃金の60%)はどうしても発生することになります。
ちなみに、休業手当の支払いを回避したいのであれば、従業員に対し、「今日は会社に来ても来なくてもよいが、どうする?」と問い質したうえで、従業員より欠勤する旨の申出を行わせる、つまり会社都合による休業扱いにしないという方法が考えられるところです。ただ、台風下で無理に業務従事させることで従業員が怪我等した場合、会社は安全配慮義務違反を問われるリスクは高くなります。あえて金銭面だけで比較するのであれば、従業員が怪我等したことで安全配慮義務違反による損害賠償負担よりも、休業手当を支払った方が安価であることが通常と考えられること、知っておいても損はないかと思います。
・帰宅困難者への対応
台風が接近することにより公共交通機関がストップし、又は道路が封鎖された場合、帰宅したくても帰宅できないという場面も想定されます。
こういった場合、無理に帰宅させる(会社施設内から追い出す)ことで、従業員が怪我等した場合、かえって会社は安全配慮義務違反を問われることになりかねません。したがって、従業員が会社施設内に留まることを希望する場合、周囲の安全性が確認できるまでの間は認めるべきと考えられます。
なお、会社施設内に留まるとはいえ、業務従事させているわけではありませんので、その時間内は賃金支払い義務がありません。もっとも、念には念をと考えるのであれば、後日でもいいので、会社施設内に留まった時間は労働時間ではないことを従業員より申請(書面、メール、LINE等)させ、証拠として残しておいた方が安心かもしれません。
・無理にでも帰宅しようとする者への対応
外は暴風雨が吹き荒れている、天気予報を見ても終電までに暴風雨が収まる予報ではない、公共交通機関はストップし、道路も封鎖されており、どう考えても帰宅することは困難という状況下でも、徒歩で帰宅したいと申出てくる従業員も存在するかもしれません。
もちろん、従業員の意思で帰宅することを希望する以上、会社が無理やり止めるわけにはいきません。しかし、一方で会社は従業員に対する安全配慮義務を負っている以上、明らかに危険が予想されるのに従業員に対して何も対策せずに放置するという訳にもいきません。
非常に難しい問題になってしまうのですが、会社としては従業員に対して説得を行い、それでもなお従業員が帰宅することを希望するのであれば、説得したことの裏付け証拠を確保しつつ、最終的には従業員の判断に任せるほかないと思われます。
(2)洪水
ゲリラ豪雨といった短時間での集中豪雨や、線状降水帯といった長時間・同一場所での集中豪雨による洪水被害が最近では増改傾向にあるとされています。集中豪雨の原因となるような雨雲を除去することができればよいのですが、現在の科学技術では困難とされていますので、洪水による水害対策、特に夏場は意識的に行う必要があります。
洪水による水害対策を検討する場合、まずは会社の所在場所が水害リスクのある地域なのかを確認することが重要です。この点、国土交通省がハザードマップをWEB上で公開していますので、そこから危険度を認識することが可能です。
(参考)
さて、洪水による水害対策を法務視点で検討する場合、上記(1)にて解説した3点をそのまま当てはめることが可能です。さらに追加するとすれば次の2点です。
・労災事故の予防
ゲリラ豪雨によりあっという間に床下又は床上浸水したという話は毎年報告されているのですが、会社が従業員に対し、浸水対応を行うよう業務命令を行うこと自体は原則許されるものと考えられます。ただ、浸水対応が追い付かず、会社内まで浸水してしまった場合、対応業務は中断し、従業員を安全な場所に避難させるべきです。安全配慮義務の観点からは当然の措置なのですが、無理に浸水対応業務を行わせることで労災事故(転倒、感電など)が起こりやすくなるからです。
非常に言い方が悪いのですが、従業員に怪我等をさせて損害賠償義務を負うよりも、会社施設の清掃費や設備入替費の方が安上がりの場合が多いことを考慮すると、浸水が開始した時点で従業員には諦めてもらい、安全な場所への避難誘導することを徹底したほうが無難です。
・データ消失への予防
パソコン等の電子機器端末を用いて業務を行うことは、今では当たり前の職場環境となっています。この電子機器端末は水には非常に弱く、水に浸かってしまった場合はもちろんのこと少しでも機器内に水が浸入しただけで、保存されていたデータが消失してしまうことがあります。
浸水対策が功を奏さないと予想される場合は、会社内への物理的な浸水対策を行うよりも、電子機器端末を水に浸からないようにするといった対応を取ることを優先化したほうが賢明かもしれません。
(3)大雪
北海道や東北地方、日本海側では雪害対策を講じていることが通常ですが、太平洋側の都市部は、降雪を前提にした対応が一切講じられておらず、少しでも雪が積もるとたちまち都市機能がマヒする事態に陥ります。
ただ、都市部において、降雪による雪害対策で厄介なのが、降雪可能性については天気予報等で事前予測可能ではあるものの、都市機能がマヒする程度の積雪となるのかその予測が極めて難しいという点にあります。このため、降雪可能性があるとしても、事前に休業命令を出すことは稀ですし、勤務時間途中に帰宅命令を出すことも少ないのが実情です(都市部の場合、昼間時間帯で雪が積もる現象はほぼ皆無であり、積雪による影響が出るのは夜間帯であることがほとんどであるため)。
したがって、会社は臨機応変での現場対応が求められることになります。
さて、降雪による雪害対策を法務視点で検討する場合、上記(1)の内、「帰宅困難者への対応」と「無理にでも帰宅しようとする者への対応」については参照してよいかと思います。大雪に関する特有の問題としては次の3点が考えられます。
・転倒
都市部で暮らす場合、スノーシューズはもちろん雪・氷の上を歩くことを前提にした靴を持ち合わせていないことが通常です。このため、スリップ等の転倒事故が非常に起こりやすく、打ち所が悪ければ大きな障害が残ることにもなりかねません。
もちろん労災事故として対応することになりますが、悪天候の中、無理に外勤させたことで重大な障害が残る事故が発生した場合、労働者は会社に対し、労災保険では補償されない損害(慰謝料など)を請求してくる可能性があります。安全配慮義務の観点からすれば、例えば大雪の日に外勤させることは避けるといった対応が必要となります。
・交通事故
都市部で暮らす場合、スノータイヤはもちろんのこと、タイヤチェーンさえ準備していないということも有り得る話です。雪道や道路が凍結した状況で車を走行させた場合、通常タイヤではスリップしやすいことはもちろん、下手をすれば車が動かなくなるといった非常に危険な状態となります。転倒と同じく、やはり安全配慮義務の観点からすれば、雪道走行を伴う外勤は控える等の対応を取ったほうが無難です。
なお、雪道走行はかなり特殊な環境での走行スキルが必要となることから、過去に雪道走行を経験したことがない従業員がいる場合、そもそも運転させない方がよいかもしれません。
・物流遅延
例えばトラック輸送の場合、高速道路の閉鎖、主要幹線道路の渋滞、減速走行による移動等の影響で、運送・配送が予定通り行われないという事態が発生します。荷物を送る側であれば取引先よりクレームが入りますし、荷物を受け取る側であれば生産計画やその日の業務に支障を来すことになります。
よほどのことがない限り、荷受人が物流事業者に対して責任追及するということは考えにくいですし、荷受人が荷主に請求したところで、不可抗力を理由に免責を主張されることもあります。結論的には荷受人は泣き寝入りになると考えられますので、降雪シーズンは自主防衛(少し多めの在庫を抱える、降雪予定日前後の計画に余裕を持たせる等)を行った方がよいかもしれません。
2.予測困難な自然災害
(1)地震
日本国内にいる限り、回避不可能な自然災害として地震があります。残念ながら事前予測が不可能である以上、被害にあうことを前提に如何にして被害を軽減できるのかを念頭に対策を講じる必要があります。例えば、地震により従業員が会社に留まること(帰宅困難)を念頭に、水と食料の備蓄を行うことが考えられます。最低でも3日程度、できれば1週間程度が望ましいとされていますが、水であれば1人当たり、3日分として10リットルが目安になっていることからすると相当な量になると共に、保管場所確保が難しいという現実問題があったりします。とはいえ、この問題については、できないから諦めるのではなく、できるまで工夫するというスタンスで対処するほかありません。
さて、地震による防災について法務視点で検討する場合、次の3点が特に重要かと思います。
・利用している建物の建造日を確認する
端的には昭和56年(1985年)6月を基準に判断します。これは昭和56年(1985年)6月に建築基準法が改正され、耐震基準が大きく変わったからです。要は昭和56年6月以前の建造された建物は現在の耐震基準に合致していないため、どうしても危険性のある建物となります(もちろん昭和56年6月以前に建造された建物であっても耐震補強をしている場合もあります)。賃貸借契約書や不動産登記簿(法務局に行けば誰でも入手可能です)を見れば判別可能ですので、一度は確認し、現在利用している建物の危険度を認識することをお勧めします。
・地震保険に加入しているか確認する
よく勘違いされているのですが、地震保険という単独での保険商品は存在しません。法律上の規制もあり火災保険に付帯して地震保険に加入するという仕組みになっています。つまり、火災保険に加入していないのであればそもそも地震保険に加入していません。また、火災保険に加入していても、地震保険は自動的に付帯するものではありませんので、加入していない可能性があります。この点は保険契約の内容を確認したり、分からない場合は直接保険会社に確認すれば対処可能です。さらに、地震保険は居住用建物及び生活用動産に原則限定されています。事業用建物や資産を地震保険の対象としたい場合、別途特約が必要であること要注意です。
さて、なぜ地震保険への加入が望ましいのかについてですが、例えば地震により火災が発生し建物が全焼した場合、火災保険によりカバーされると判断する方もいるかもしれません。しかし、この場合は火災保険の適用はありません。要は火災という現象が発生しても、原因によって火災保険ではカバーされないものがあるということです。損害保険に関する典型的な誤解のあるパターンとなりますので、注意が必要です。
・従業員の安否確認方法を予め定める
大規模な地震が発生した場合、通信網が遮断する、あるいは特定地域への連絡が集中し通信制限が発生する等、一時的に連絡が取れない事態が生じます。過去地震が発生した際、一般電話回線はパンクしたがLINE通話は問題なく使えたといった話も聞き及びますが、たとえ通信自体は可能であっても、相手が応答できない状態であるといったことも想定するべきです。例えば、一般電話回線がダメならインターネット回線を用いる、インターネット回線がダメならNTTの伝言ダイアル171を使うといった、複数の方法をあらかじめ定めておくことも検討したほうが良いかもしれません。
(2)落雷
気象庁が公表しているデータを見る限り、落雷は特に8月に起こりやすい傾向があるようですが、季節を問わず落雷は発生するようです。
さて、落雷による災害というと、外出時に雷に打たれるといったものをイメージする方も多いかもしれません。たしかに、そのリスクも相当程度あるのですが、企業活動において留意するべき事項は、落雷による(一時的な)停電あるいは電圧変動による機械設備への被害です。これ以外に法務視点では次の点に留意したいところです。
・データ消失のリスク
電子機器内にあるデータは、コンセントを通じて電機の供給を受けて状況下で保存されていることが一般的です。このため、落雷が生じた場合、過電流等によって電子機器自体が破損したり、電子機器自体は作動してもデータが破損したりする現象が起こったりします。落雷を事前に予測することは困難とはいえ、落雷直前は特有の気象現象(遠くでゴロゴロ音が鳴る、空に稲妻が走る等)がありますので、この特有の気象現象を感知した場合、直ちにコンセントからプラグを抜く等して対処することが望ましいと言えます。なお、コンセントからプラグを抜くと直ちに電子機器が作動しなくなるという場合は、UPS(無停電電源装置)やSPD(サージ保護デバイス)を設置するといった事前予防策が重要となります。
ちなみに、電子データを、社内の電子機器に保存するだけではなく、遠隔地にてバックアップする(クラウド上で保存することを含む)ことも、今後は検討したほうがよいかもしれません。
ところで、落雷場所予測は極めて困難ですが、落雷可能性については、例えば気象庁が公表している「雷ナウキャスト」を利用すれば、ある程度把握することが可能です。こういった情報があることを従業員で共有し、怪しいと思ったら各人が確認するよう癖をつけておくことも防災対策としては有効です。
(参考)
(3)異常気象(天候不良など)
猛暑や長雨など色々なものが考えられますが、例えば、農業や農産物を原材料として製造加工する事業には甚大な影響を与えることがあります。また、事前対策不十分なまま猛暑の屋外でイベントを強行する等により熱中症が発生し、被害者対応のみならず風評被害が発生するということもあります。一方で、冷夏により飲料水等の売上減少といったこともあります。
いずれにせよ異常気象については予測が難しく、だからといって事前に対策を講じることも限られています(あえて事前対策を講じるとすれば、異常気象による影響を受けないビジネスモデルに転換することになりますが、現実的な対策ではありません)。したがって、リスクが発生することを前提に誰かにそのリスクを負担してもらう、という方法を検討することになりますが、法務視点では次の点に留意するべきです。
・天候デリバティブ(金融派生商品)
天候不順リスクによる損失埋め合わせを行うものとして、天候デリバティブと呼ばれる金融商品の購入を勧められることがあります。
契約者に生じた事故に基づき、現実に発生した損害に対して支払いが行われる損害保険とは異なり、予め契約上定められている一定条件を満たす異常気象が発生した場合に、現実損害の発生を問わず補償金を受け取ることができるという点で簡便さのある金融商品となります。ただ、一定条件を満たさなかった場合は支払った費用(オプション料)は戻ってきませんし、支払い損となります。また、かなり限定された期間内で異常気象が発生した場合を前提する契約条件になっており、やや博打的要素があるのも事実です。さらに、金融商品であるが故の商品設計の複雑さもあり、細かな支払条件やカバーする範囲を正確に認識していなかったことによるトラブルもあります。
当たり前のこととはなってしまいますが、事前に契約内容を確認することが重要です。
3.取引先が被災した場合の対応
上記1.及び2.では、自社が自然災害で何らかの被害が生じることを想定して、自社内で生じうる問題への対処法を解説しました。では、取引先が被災することで自社の業務体制に重大な支障が生じた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。以下では社内で起こり得る問題への対処法を解説します。
なお、取引先への対応については、次の記事をご参照ください。
不可抗力(に類する事由)による取引障害とその対処法について、弁護士が解説!
(1)労働条件の変更
例えば、製造業者において、原材料仕入先が被災したことで製品製造ができない、代替の仕入先も見つからないという場合、当該製造部門に従事する従業員を、他製品の製造部門に配置転換する(これに伴い業務内容の変更、就業場所の変更、賃金体系の変更などが生じる)ことが考えられます。
職務内容を限定した労働契約ではない限り、業務内容の変更を伴う配置転換は原則有効と考えられます。また、勤務地を限定した労働契約ではない限り、転勤を伴う配置転換も原則有効と考えられます。さらに、賃金体系が予め定められ周知されている限り、配置転換に伴う賃金体系の変更もまた原則有効と考えられます。もちろん、不当な動機・目的がある場合や従業員の不利益が通常の程度を著しく超える場合は配置転換が無効となるという場合もありますが、上記のような事例の場合、配置転換が無効となる例外事由に該当することはまずないと考えられます。
以上のことから、取引先の被災により、仕事がなくなってしまった従業員については、たとえ労働条件の変更が生じるとしても配置転換を行い、対処するというのが基本となります。
(2)解雇
上記(1)で解説した通り、取引先の被災により余剰人員が生じた場合、配置転換を行うことで対処するのが基本となりますが、配置転換先がない、例えばどの部署も人手が足りており人員補強する必要性がないということも有り得る話です。
この場合、従業員をそのまま置いていくわけにもいかないことから、いわゆるリストラ(整理解雇)を検討することになります。
まず、経営者において勘違いしてほしくない事項として、直接的な原因は取引先の被災であり自社の責任ではないといった被害者意識を持ってはいけないという点です。なぜならば、法的には、従業員に落ち度はなく、会社側の経営都合による解雇とならざるを得ないからです。つまり、会社に責任がないのだから、解雇も仕方がないと安易に考えてはいけないことになります。整理解雇の有効性については、①必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性の4要素を総合的考慮して判断されますが、高度な専門知識を必要とすることから、弁護士と相談しながら慎重に進めていくことが望ましいと考えます。
<2022年2月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。
弁護士 湯原伸一 |