EC(eコマース)事業者が注意したい法務のポイントについて弁護士が解説!

 

【ご相談内容】

当社は実店舗での物販業を営んでいるのですが、さらなる販路拡大のため、インターネット通販事業を行うことになりました。

いわゆるEC(eコマース)事業を行うに際して法務視点で注意するべき事項は何か教えてください。

 

 

【回答】

EC(eコマース)事業の場合、対利用者との関係では非対面という性質上、やり取りが画面上の文字情報が原則となるため、何をどこまで文字情報として適示するのかが重要なポイントとなってきます。また、非対面による本人確認が難しいことを原因とした、なりすまし問題への対応も意識する必要があります。

次に、EC(eコマース)事業は通信販売に該当することが多いことから、業法として特定商取引法を意識する必要があります。また、受発注のやり取りはWEB上で完結することが多いものの、物販の場合であれば現実世界での物の引渡しが必要となります。したがって、EC(eコマース)事業だからヴァーチャルの世界だけで物事が完結しないことも理解しておく必要があります。

さらに、現実の物販とは異なり、EC(eコマース)事業者は利用者の個人情報を取得する場面が多くなることから、個人情報保護法を含めた顧客情報の管理や利活用のあり方について意識する必要があります。

以下では、いくつかのEC(eコマース)業の顧問弁護士を務めるなどして、日常的にEC(eコマース)事業者とお付き合いさせて頂いている執筆者の経験事例を踏まえながら、注意してほしい法律問題について解説を行います。

なお、本記事では、原則的には事業者自らがネット通販を行うことを前提にしています。EC(eコマース)事業者がプラットフォームビジネスを手掛ける場合、次の記事をご参照ください。

 

ネット上でプラットフォームビジネスを行う際に留意したい法的事項を弁護士が解説!

 

 

【解説】

 

1.概観

 

EC(eコマース)事業特有の法律問題の概観は、上記回答でも記載した通りです。いわゆる経営四資源の考え方をベースに、「人に関する法律問題」、「物に関する法律問題」、「金に関する法律問題」、「情報に関する法律問題」に分類して、その特徴的な問題点を記載します。

 

 

2.人に関する問題

 

(1)通販責任者の明示

EC(eコマース)のうち、いわゆるBtoC向けネットショップは特定商取引法上の通信販売に該当します。したがって、多くのEC(eコマース)事業者は「特定商取引法上に基づく表示」と呼ばれる一定の記載を行っているはずです。

さて、この「特定商取引法上に基づく表示」の一項目として、EC(eコマース)事業者の名称以外に責任者の氏名を開示する必要があるとされています。もちろん、EC(eコマース)事業者を運営する代表者自身の氏名を出して対処することも可能ですが、ある程度の規模の事業者となった場合、代表者個人がEC(eコマース)事業の全てを掌握できないため、担当者(部門長など)に業務を任せるということが起こったりします。この場合、当該担当者(部門長など)の氏名を特定商取引法に基づく表示として記載する必要があるのですが、会社としては法律順守で氏名を表記したところ、当該担当者よりプライバシー侵害だとクレームが入るといったことが実はあったりします。

ネット上に自分の名前が自分の意思以外で表示されることは、思った以上に抵抗を受けます。特定商取引法に基づき責任者の氏名開示が必要になることを事前説明の上、了解を取り付けるといった対策を行う必要があります。

なお、当該担当者がネット上での氏名表示を拒否する場合、業務命令違反として取扱えるのか、懲戒処分の対象とできるのか等の付随する問題が生じることも有ります。かなりややこしい問題となりがちであるため、早めに弁護士に相談するのが無難のように思います。

 

(2)利用客の本人確認・年齢確認

消費者をターゲットとしたEC(eコマース)事業を行う場合、非対面取引であるが故に本人確認が不十分による契約の有効性に疑義が生じるリスク(なりすましの問題)、未成年と取引することによって、後で一方的に契約取消を余儀なくされるリスク等があります。

したがって、本人確認や年齢確認の方法は色々と策を練る必要があるものの、実は古くから議論されている問題であるにもかかわらず、抜本的な解決方法が見いだせない分野でもあります。

本人確認及び年齢確認を重視すると、EC(eコマース)の売りである取引の簡易迅速性を欠くことになる、一方で本人確認及び年齢確認を軽視すると、代金返還や代金未回収リスクを伴うことになり、かなり悩ましい問題となります。

ある程度のリスクを覚悟しつつ、リスクを最小限に押さえるバランス感覚をどのように取ればよいのか、弁護士に相談しながら判断したほうが良い事例も多くあります。

 

(3)カスハラ対応

カスハラ(カスタマーハラスメント、顧客・利用者による嫌がらせ)は、厚生労働省が事業者に対処を促す指針を定めたこともあり、近年重大な経営課題として認識されています。“お客様は神様です”という考えを完全に否定することはできないものの、お客様にモノ申してはいけないと考えるのは過剰対応と言わざるを得ません。

カスハラを含めたクレーム対応は、担当者1人に全てを任せるのではなく、組織としてどう対処するのか方針の明確化が必要であると共に、何といっても初動対応が重要となります。クレーム対策は弁護士の専門領域ですので、弁護士に相談することをお勧めします。なお、初動対応については次の記事もご参照ください。

 

クレームを受けた場合の初期対応のポイントを弁護士が解説!

 

(4)コールセンター(電話代行サービス)との契約

最近、コールセンター業務を自社では行わず、代行業者にお任せするEC(eコマース)事業者が増加しているようです。この代行業者に依頼する際、何らかの契約を締結することになりますが、トラブルになりやすいのが契約期間、特に契約期間中の中途解約の可否と条件についてです。

EC(eコマース)事業者からすれば、無条件でいつでも中途解約というのが理想的だと考えられますが、通常はそのような取引内容にはなっていません。また、意外と見落としがちなのが代行業者からの中途解約の可否です。EC(eコマース)事業者としては契約を継続させたいにもかかわらず、代行業者が中途解約を申入れ可能であり、現実に中途解約が行われた場合、EC(eコマース)事業者は、コースセンター業務を誰がどのように今後対応するのか、限られた時間で対処しなければなりません。また、他の代行業者に依頼する場合、新たな初期投資が必要となり、費用負担も大きくなってしまいます。

代行業者に依頼する場合の契約書の内容については、事前に弁護士等の専門家にチェックしてもらい、リスクの洗い出しと対策を講じておきたいところです。

 

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3.物に関する問題

 

(1)通信販売に対する法規制

EC(eコマース)事業は、今となっては誰でも気軽に起業できるためか、法規制があることを知ることなく事業を開始してしまうことが多いようです。取扱う商品やサービスによってはさらに法規制が増えますが、最低限次の法規制だけでも押させておく必要があります。

 

①許認可に関係する業法

例えば中古品を取扱う場合は古物営業法に基づく許可等が必要となりますし、人材紹介の場合は職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可が必要となります。必要な許認可を取得することなく事業を行っている場合、ある日突然に事業停止を命令されると共に警察沙汰になるということもあり得ます(残念ながら法規制があることを知らなかったでは済まされません)。

EC(eコマース)事業を行うに際しては、事前に許認可が必要となるか弁護士等の専門家に相談し確認を取るべきです。

 

②特定商取引法

上記2.(1)でも触れましたが、BtoC取引の場合、特定商取引法に定める通信販売に該当します。この結果、様々な法規制が及ぶことになります。例えば、次のようなものです。

・電子メール広告の規制

・誇大広告の規制

・広告表示の強制(いわゆる特商法に基づく表示)

・注文画面に関する要請

・無条件返品(クーリングオフとは異なる制度)

かなり細かなところまで特定商取引法に基づく規制が行われています。そして、特定商取引法違反が発生した場合、最悪のケースとして業務停止の行政処分が行われるリスクもあります。事前に特定商取引法を順守できているのか確認することが望ましいですが、既に事業を開始している場合であれば、とにかく早急に弁護士に相談して、特定商取引法違反がないかのチェックと、違反がある場合は改善措置を即座に講じることをお勧めします。

 

③消費者契約法(改正民法による定型約款規制含む)

EC(eコマース)事業を行う場合、利用約款・サービス利用規約等の名称で、利用者向けのルールを定めることが通常です。この利用約款・サービス利用規約等ですが、EC(eコマース)事業者の都合で一方的な内容を定め、当該内容について形式的に利用者の承諾を得たとしても、後で法律上無効とされてしまうリスクがあります。よく問題となる内容は次のようなものです。

・事業者が負担する損害賠償責任を制限する条項

・利用者に対し過度な損害賠償責任を負わせる条項

・利用者による契約解除を制限する条項

・利用者の利益を一方的に害する条項

・利用約款・サービス利用規約等を事業者都合で一方的に変更可能とする条項

上記のような問題へ対応するためには、消費者契約法の正確な知識が必要となります。しかし、消費者契約法は頻繁に改正が行われます。また2020年4月1日に改正された民法で新たに定型約款という概念が設けられ、EC(eコマース)事業者が定める利用約款・サービス利用規約等の大部分は、改正民法に定める規制に服するものと考えられます。従前問題の無かった利用約款・サービス利用規約等であっても、現在では問題ありとなっている可能性があります。早めに弁護士に相談するのが無難と考えられます。

 

ネット通販事業者が知っておきたいネット通販に関する法規制とは?弁護士が徹底解説!

 

(2)宣伝広告・マーケティングに関する法規制

EC(eコマース)事業を行う場合、宣伝広告を含むプロモーション活動は必要不可欠となります。宣伝広告の内容面に関しては、景品表示法に基づく法規制がある(景品表示法以外にも、例えば医薬品的な効能効果をうたう場合は薬機法が問題になる等)があることは認知されてはいるのですが、しかし判断基準、すなわちどこまで突っ込んだ(インパクト等を含めた利用者に響く)表現内容であれば違法性なしと言いうるのかは明確になっていないのが実情です。

また、ある時まではOKの表現内容であっても、今ではNGといった表現内容もあったりします(例えば、アンチエイジングという用語であれば、昔はOK、今はNGです。今では代用語としてエイジングケアという表現が用いられています)。

どこまでが限界なのか等の基準は、過去の違反事例等を検証しながら推測する作業を行う必要があるところ、こういった作業は営業・広報部門のみならず、弁護士等の法律の専門家の意見も聞きながら進めたほうが無難です。

 

ところで、上記のような表現内容に関する問題以外にも、近時トラブルが目立ってきているのは、第三者に宣伝広告の運用を任せた場合の事例です。

例えば、アフィリエイト広告に代表される第三者が運営するWEB等に広告を掲載するに際し、広告主であるEC(eコマース)事業者が想定していなかったような広告表現が行われていたことにより、行政(警察を含む)から注意指導等を受けたりするといったトラブルです。また、検索連動型広告などの運用を第三者に委託する場合、運用結果をめぐるトラブル(必要以上に広告費が使われた等)や当該第三者との委託契約が終了するに際しての引継ぎ問題(キーワードの入札内容や管理アカウント情報が承継されない等)などです。

結局のところ、契約期間中の広告業者に対する管理方法や契約終了後の事後措置をどこまで意識して契約書等のチェックを行うのかという問題になってくるのですが、この辺りについては、実情を知る弁護士に相談しながら対処することが望ましいと考えられます。

 

(3)運営代行業者との契約

実店舗で物販を行っている事業者が、インターネットでも商品販売を行いたいと考えるも、自社内でネット通販を扱える人材がいない、そこで第三者に通販サイトの運営代行を依頼する、といったことは結構あるようです。

この運営代行に関する契約を締結するに際しては、双方の役割分担や担当業務を明確にするというのがポイントです。この点をはっきりさせないまま運営代行を依頼した場合、双方の認識違いによるトラブルがどうしても起こってしまいます。また、上記(2)でも記載しましたが、運営代行を終了させた場合の通販サイトの取扱い・引継ぎについてもトラブルになりがちです。

なお、一時期レベニューシャアと呼ばれる運営代行が流行しましたが(もちろん今でも存在します)、この方法を用いた場合、EC(eコマース)事業者における初期負担は軽減されるものの、ネット通販事業が軌道に乗ってきた場合、今度はランニング費用の高さが目立ってくるようになります。しかし、ネット通販に用いているWEBサイトやシステムに関する権利は通常代行業者に帰属していますので、運営代行契約を簡単に終了させるわけにはいきません。

リスクの拾い出しはもちろんのこと、そのリスクをどこまで甘受するべきなのかも含めて、弁護士とも相談しながら運営代行業者の選定や契約管理を行う必要があります。

 

(4)配送センターとの契約

商品を販売するためのWEBとシステムについては自社で運用できる、しかし販売する商品の保管倉庫は別の場所を借りる必要がある、そして商品の個別包装作業や倉庫からの引出し業務、及び運送業務は第三者に委託する必要がある、というのが大多数のEC(eコマース)事業者の実情と思われます。

最近では3PLと称する、在庫管理、倉庫での荷受け・荷出し業務等をまとめて第三者が受託するという取引が多くなってきていますが、結局のところ、EC(eコマース)事業者と配送センターとの契約において、どういった役割分担や担当業務となるのかを明確にするということがポイントとなります。また、配送センターとの契約において特に意識したいのが、保管中の商品にキズ等が生じた場合における損害賠償責任の制限条項となります。この点は、なかなか修正要請に応じてもらえないことも多いことから、どこまで譲歩・妥協できるのか(他にリスク転嫁できるのか等)を検討する必要があります。

物流業務の要となる配送センター業者の選任は、EC(eコマース)事業を成功させるうえで極めて重要な取り組みとなります。そして、配送センター業者との契約に際しては、契約内容の精査が必須です。弁護士にリスクの洗い出し作業を行ってもらうと共に、リスク転嫁策に関するアドバイス等を受けながら進めていくことが重要と考えるべきです。

 

(5)モール等へ出店する場合の契約(競業禁止、最恵国待遇などの各条項)

EC(eコマース)事業者が自ら運営管理するWEB上での販売のみならず、第三者が運営管理する電子モール等へ出店しながら販路拡大を行うということは、今やネット通販の世界では当たり前の状態となっています。

もっとも、電子モール運営者とEC(eコマース)事業を営む出店者との力関係は歴然としたものがあります。典型的には、出店に際しては、電子モール運営者が提示する契約内容に、契約後は電子モール運営者の裁量判断に従わざるを得ないという実情があります。具体的には、契約内容について独占禁止法上疑義があると言わざるを得ないもの(モール上で販売する商品を他のモールを含むWEBページ上で販売禁止とする、値引き販売を強制するなど)といったものもあれば、契約上の根拠が見当たらないにもかかわらず、モール運営事業者が一方的な義務負担を強制してくるもの(事後的に協力金等の名目で一方的な金員控除を行うなど)、モール運営者側のアドバイスという名の下での契約条件変更を迫るもの(配送料を例外なく出店者負担にするよう圧力をかけるなど)等いろいろあるようです。

もちろん、実際の現場の実情として、電子モール運営者からの提案に対して応じるか応じないかの二者択一の選択しか無い場合もあります。しかし、電子モールに出店するに際して事前に契約内容を弁護士と確認しておくことで、予めリスクを認識した上で店舗運営をできる場合もありますし、モール運営者からの事後的な変更要求に対して、弁護士が異議を唱えることで交渉可能な状況を作り出すことが可能となったりします。

電子モール等へ出店することは、経営戦略としては間違っているわけではありませんが、色々な制約が付きまとってしまうこと、この制約を知り賢く対処するためにも、弁護士に相談を行うことがポイントとなります。

 

 

4.金に関する問題

 

(1)後払い(掛売)と未回収リスク

商品・サービスを利用する顧客層や商品の特性、販売方針など様々な事情が関係してきますが、EC(eコマース)事業者の選択として、商品を先に引渡し、後日振込用紙等を用いて利用者に支払ってもらうという決済方法を採用することがあります。

ただ、後払いを選択した場合、当然のことながら未回収リスクが付きまとうことになります。特にネット通販の場合、利用者を特定しきれないことを悪用して、代金を支払う気もないのに商品だけを受取り、代金支払いを免れるという事件が一定数存在します。

執筆者もこういった事例の債権回収案件を担当することがあるのですが、商品購入時の利用者登録情報が虚偽である等の理由で、結局のところ利用者を特定することができずに債権回収を断念するということがあったりします。

後払いを選択する場合、利用者を特定するための情報取得と技術的対策をどうやって講じるのかを検討しないことには、表面上は商品等が売れたことになっていても、現実のキャッシュが入ってきませんので商売として成り立たないことになります。利用者の利便性追求による取引活性化と未回収リスク対策とのバランス論について、弁護士と相談しながら決めることが望ましいと考えられます。

 

(2)決済業者との契約

後払いによる未回収リスクを軽減するためには、支払いを確実に行ってくれる第三者を介在させる方法が有効です。そこで、多くのEC(eコマース)事業者は何らかの決済業者を利用するのが通常です。

典型的にはクレジットカードの加盟契約を行うことですが、最近では電子マネーの発行会社又は決済代行会社と契約をする、運送業者との間で代引き契約を締結する、ファクタリング会社と契約する等の様々な手段を複数組み合わせることが多くなってきているようです。

いずれの決済業者を利用するかは経営判断になるかと思いますが、まず最初に確認しなければならないのが決済業者に支払う手数料です。この点を考慮せずにEC(eコマース)事業を行う人もたまにいますが、かなり大きな経費になってくることは覚悟しておいたほうが良いかと思われます。また、クレジットカードの場合であればチャージバック問題に代表されるように、決済後に何らかの事情が発生した場合に一度支払われた金銭を返還する旨の特約条項が定められています。この条項を探し出すだけでも一苦労なのですが、探し出せても何を書いてあるのかイメージがつかめないということもあるようです。時々、EC(eコマース)事業者が行っている取引それ自体が、当該特約条項に引っかかりかねないといった危うい事例も散見しますので、可能であれば、自社の取引内容と決済業者の契約との整合性やリスク等につき弁護士の見解を求めたほうが無難と考えられます。

 

(3)ポイント発行・前払い(資金決済法、特商法)

ポイントに関するご相談を受ける場合、次の2つの話が混在していることが多いようです。

  • 先にお金を支払ってもらい、WEBサイト内で使用可能なポイントを発行する
  • WEBサイト内で商品・サービスを購入してもらった場合に特典としてポイントを付与する。

 

前者については資金決済法を意識する必要があります。仮に資金決済法の適用があるとなると行政への届出又は登録、及び一定額の供託が必要となります。特にこの一定額の供託が必要となると、たちまち事業者の資金繰りが…という問題が起こりがちであるため、資金決済法の適用対象外となるポイントサービスを構築できないか等を含め、弁護士とも相談しながら綿密にスキームを組む必要があります。

一方後者は資金決済法の適用はなく、他の法律上の規制も原則及ばないと考えられますが、ポイント付与条件によっては景品表示法に留意する必要があります。やはり弁護士と相談しながらポイント付与条件スキームを組んだほうが無難と考えられます。

 

 

5.情報に関する問題

 

(1)顧客情報の管理と利活用

EC(eコマース)事業は、不特定多数の利用者を想定していることが多く、事業を継続すれば継続するほど大量の顧客情報を取得することになります。当該顧客情報の漏洩防止策をどのように講じるのかは、EC(eコマース)事業者にとっては切っても切り離せない問題となってきます。

また、最近では、大量の顧客情報を既存事業以外に利活用した新たなビジネス展開の可否についても議論されることが多くなっています。とはいえ、昨今の利用者による権利意識の向上を踏まえると、顧客情報=個人情報の利活用には慎重にならざるを得ない部分があるのも事実です。

個人情報保護法が施行されて15年以上が経過していますが、未だに個人情報保護法の内容については理解不十分と言わざるを得ない事業者がいる一方、逆に過剰に意識しすぎて機会喪失を招いている事業者もいます。個人情報保護法については近年改正が相次ぎ、ビジネス上の利活用と本人保護とのバランスが強く意識されています。正しい知識に基づき、効果的に個人情報を利活用するためにも、弁護士に相談することは非常に重要と言えます。

 

(2)顧客への再アプローチ

顧客情報を取得した場合、ネット通販を再度利用してもらうべく、電子メールを送信するなどして誘引を図るといった用い方をする場合があります。こういった用い方を可能とするためには、個人情報保護法に定める利用目的との関係を意識して対処する必要があります。

また、個人情報保護法以外にも、特定商取引法や特定電子メール法に基づく電子メール広告規制への対応や、法律上明確な定めはないものの個人情報を提供する本人(利用者)の期待・予見可能性を考慮した対応が求められることも有ります。一種の倫理(ネットリテラシー)の問題にもなってしまいますが、最近の炎上騒動などを見ていると、実は法律上の規制よりもこの倫理(ネットリテラシー)対策の方が重要ではないかと考えられます。倫理(ネットリテラシー)問題は自社内だけでの検討では不十分であり、弁護士を含めた外部の第三者の意見も考慮することが必要不可欠です。

 

(3)風評管理

EC(eコマース)事業を行う場合、これまで以上に風評(特にインターネット上での風評に気を配る必要があるとされています。

この風評を決定づける一要素として、口コミサイト(比較サイトなども含む)が存在するのですが、EC(eコマース)事業者にとって都合の良い口コミを集めるべく、あえてサクラを利用するといったことが行われたりすることがあるようです。サクラを直接禁止するような法律は存在しないのですが(但し、場合によっては不正競争防止法違反の問題が生じえます)、口コミサイトの利用規約に違反することはまず間違いない事実だと考えられます。また、サクラを使ったという事実が発覚した場合、インターネット利用者の期待に反するものとなるため、倫理違反として非難の対象となり、かえって悪評を立てることにもなってしまいます。

一方、真実ではない口コミ投稿等により風評被害が生じている場合は、口コミ内容の削除請求等の手続きを早急に行う必要があります。もっとも、誰に対して削除申請するべきなのか、申請理由はどういった内容とするのか等については、専門的な判断を要する場合もあります。

経営に影響を及ぼしかねない風評管理についても、弁護士に相談して対処するべきです。

 

 

 

<2021年5月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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