企業が知っておくべきマーケティング活動にまつわる法律を弁護士が解説!

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【ご相談内容】

商品・サービスを知ってもらうために広告を行う場合、景品表示法を知っておけば事足りるのでしょうか。

 

【回答】

結論からいうと、景品表示法を知る必要性はあっても、それだけでは不十分です。

法律上の視点で考えた場合、広告法という総括的な法律が存在しませんし、景品表示法が総括的な法律に位置づけられるわけではありません(あえて言えば総括的な法律は独占禁止法です)。このため、各種法規制を横断的に知る必要があります。この点、【解説】では横断的に検討するに際して、どういった視点を持てばよいのか記載しています。

なお、直ちに違法とはいえないものの、嫌悪感を抱くような不当な広告(性差別、民族・人種差別、社会的少数者を揶揄するものなど)については、ここでは検討除外としています。

 

【解説】

1.はじめに

広告というと、「どうやって自分の商品・サービスを認知・訴求させるのか?」、いわゆる販売促進活動orマーケティングという観点から語られることが多いと思います。これ自体はある意味当然のことです。もっとも、最近、賞味期限の改ざんや産地偽装問題、見た目と実物との乖離など「広告の仕方、表示のあり方」について、法律が顔を出す場面が増えてきています(一部の事例では刑事事件にまで発展したことは記憶に新しいと思います)。また、マスコミ等は「偽装」という言葉を用いて、必要以上に不安を煽る傾向があり、一度問題が発生すると事業存亡の危機にまで瀕する重大な局面にまで至ることがあります。

したがって、広告・表示のあり方は、今まで以上に気を遣う必要があります。

 

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2.どのようなルールがあるのか?

「ルール」と記載したのは、実は、ちょっとした意味があります。 これは、広告・表示に関する法律はあることはあるのですが、業界団体による自主規制に委ねられている部分も多く、法的な規制だけではカバーしきれない実情があるためです。広告・表示に関する法律・ルールの概略としては、次のようなものが考えられます。

(1)広告表示の対象者による分類

消費者向け広告なのか、事業者のみを対象とした広告かによって適用される法律が異なってきます。

∇BtoCの場合は景品表示法。

品質等の優良誤認表示の禁止(4条1項1号)、取引条件等の有利誤認表示の禁止(4条1項2号)、指定制による表示規制(原産国告示、おとり広告など)、ガイドライン(不実証ガイドライン、比較広告ガイドライン、二重価格ガイドラインなど)

∇BtoBの場合は独占禁止法(景品表示法の適用がないBtoC取引を含む)。

特に、不当な顧客誘因行為の禁止(2条9項6号)、ぎまん的顧客誘因行為の禁止(一般

指定8項)、不当な利益による顧客誘因の禁止(一般指定9項)

(2)取扱商品による分類

一例としては次のようなものがあげられます。

∇食品の場合は食品表示法。

∇酒の場合は酒税法

∇化粧品、健康食品の場合は薬機法

∇繊維、合成樹脂、電気器具、雑貨の場合は家庭用品品質表示法

∇金融商品であれば金融商品取引法

∇不動産であれば宅地建物取引業法

∇旅行サービスであれば旅行業法

(3)取引形態による分類

例えば次のようなものがあります。

∇訪問販売、訪問購入、電話勧誘販売、通信販売、特定継続的役務提供、業務提供誘因販売、連鎖販売の場合は特定商取引法

∇消費者信用取引(クレジット、分割払い)の場合は割賦販売法

(4)業界団体による自主規制

公正競争規約と呼ばれる行政と業界団体とが締結した協定に基づく規制もあれば、業界団体による内部的な自主規制もあります。

∇景品表示法11条に基づく公正競争規約。なお、詳細は一般社団法人全国公正取引協議会連合会のWEB等を参照。

∇業界団体が定めた任意のガイドライン。例えば、新聞・テレビ塔の媒体社が定める自主規制など。

(5)地域独自の規制

都道府県や市町村が制定する条例による別規制も存在します。

∇いわゆる消費生活条例

3.独占禁止法と広告表示の関係は?

(1)独占禁止法の適用範囲

実は、表示関係の問題で独占禁止法が適用されることは多くありません。これは、独占禁止法の特別法として「景品表示法」という法律があり、これが表示の問題をカバーしているからです。ところで、景品表示法は、消費者に対する表示(※但し一景品表示法の「表示」に該当しない場合は独占禁止法の適用対象となります)について適用されます。したがって、独占禁止法が適用されるのは、基本的には、

  • 事業者に対する表示に問題がある場合
  • 景品表示法の適用対象とならない消費者に対する表示の問題がある場合

となります。

(2)「ぎまん的顧客誘引」と「不当な利益による顧客誘引」

独占禁止法は、一部の内容の具現化を公正取引委員会に委ねています。これを受け、公正取引委員会は「一般指定」と呼ばれるものを定めているのですが、広告表示で問題となるのは次の2つとなります。

∇一般指定8項

一般指定8項とは、「ぎまん的顧客誘引」と呼ばれるものです。要は、虚偽・誇大な表示は独禁法違反になるということです。

これの具体例としてはネットワークビジネスにおける勧誘方法が問題となった「ベルギーダイアモンド事件」があります。ネットワークビジネスについてはご存じの通り、自らが利益を得るためには傘下会員を新規に獲得しなければならないのですが、これが非常に難しいのは周知の事実かと思われます。しかし、会員の勧誘に当たり、あたかも簡単に、努力次第では誰でも高額収入可能と説明していたことが、「ぎまん的顧客誘引」に当たるとされました(ちなみに、ネットワークビジネスの場合、建前上BtoB取引になりますので、消費者保護を前提とする景品表示法等の適用が難しかったのではないかと推測されます)。

∇一般指定9項

一般指定9項とは、「不当な利益による顧客誘引」と呼ばれるものです。要は、ありもしない又は度を超したニンジン(=利益)をぶらさげて、顧客を釣ろうとすることは独禁法に違反するということです。

この具体例についても上記ベルギーダイアモンド事件が代表的ですが、ピラミッド型組織の上位会員となれば、傘下の下位会員の販売活動によるマージンも得られるので、誰でも高額所得が得られるとして会員勧誘を行っていたことが、「不当な利益による顧客誘引」に該当するとされています。また、上記例以外にも、証券会社が特定顧客に対して損失補填を行うことで顧客離れを食い止めようとした例(ちなみに今では損失補填は金融商品取引法で禁止されています)、顧客に対して過剰なまでの景品を付けて商品を販売する販促活動の結果、他社の販売活動に影響が出た例があげられます(なお、この問題は、景品表示法の問題と重複してきます)。

 

<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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