電子契約に切り替える場合の注意点とは?(ショート記事)

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事業者よりご相談を受けている中で、似たようなご質問を受けることがあります。

情報共有できればと思い、本記事を公開します。

 

ご相談内容

紙媒体での契約管理が面倒であることから、電子契約に切り替えようと考えています。何か注意するべき事項はありますか。

 

 

回答

電子契約(=クラウドサイン等のインターネット上のプラットフォームを用いて、契約締結手続き)を行うことで、瞬時に契約締結手続きを完了させることができたり、契約書の紛失を防止できたり、印紙税を節約できたりする等のメリットがあります。

電子契約にて契約管理を行う場合の注意点としては、次のようなものが考えられます。

 

①契約書の末尾(後文)を見直すこと

一般的な契約書であれば、末尾に「本契約の成立を証するため本契約書を2通作成し, 甲乙各署名押印の上, 各1通を保有する。」と書いていることが通常です。

しかし、電子契約の場合、署名押印を行わない以上(システムによっては画面上に印鑑を押印するような作業をする場合がありますが、これは法的な意味での押印には該当しません)、この末尾の文章は実態に合致しません。

したがって、例えば、次のような文章に変更する必要があります。

「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲及び乙が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」

 

②契約条項における「書面or文書による承諾」を見直すこと

タイトルは一例なのですが、よくある契約文言として、例えば「乙は甲より受託した業務を第三者に再委託してはならない。但し、甲の書面による承諾がある場合はこの限りではない。」といった記載がされているかと思います。

もちろん、契約自体は電子契約で行いつつ、上記のような承諾については紙媒体で引き続き行うという運用も法的には問題ありません。ただ、これでは電子契約化したメリットが低減します。

したがって、承諾について書面以外の方法、具体的には電子メール・チャットツール・LINE等の電磁的方法でもOKといったことを契約上明記することも一案です。

 

③紙媒体での契約よりも信用性が低いこと

紙媒体で契約した場合、会社の代表印が押印されることが通常です。この場合、法律上、会社が紙媒体上の記載内容を理解し承諾した上で、契約手続きを有効に完了させたと推認されます。

一方、電子契約の場合、上記のような法律上の推認効果はありません。このため、例えばなりすましにより電子署名が行われた等の主張がなされた場合、契約の有効性について厄介な問題が生じることになります。

もちろん、電子契約サービスを提供するプラットフォーマーも、技術的ななりすまし対策を行ってはいるものの、100%回避できる技術的手段はありません。

この観点からすると、比較的低額の日常取引や信頼関係のある当事者と契約手続きを行う場合は電子契約を、取引額が大きい、内容的に重要性が高い、初めての取引先である等の後で揉めた場合の影響度が大きいと考えられる契約については、従前どおり紙媒体での契約手続きを行う、といった使い分けが必要と考えられます。

 

④法律上要求される「書面」の要件を満たさない場合があること

新型コロナ期における対面交渉回避の観点から、例えば、法律が事業者に対して発行義務を課している書面について、紙媒体ではなく電子媒体でもOKという取扱いが拡充してきました。

しかし、まだ一部の書面については、電子媒体はNGというものがあります。

何がOKで何がNGという一律の基準が無いため、必要に応じて行政機関に確認するといった対応が求められます。

 

⑤取引相手の都合を考える

意外と抜けている視点だと感じるのですが、自社で電子契約を導入することを決めても、取引相手が電子契約を受入れないという判断を行う場合もあり得ます。

特に、取引相手があまりIT知識を有していないといった場合や、電子契約のために新たに負担を強いられるといった場合には、抵抗が強いと思われます。

当然のことながら、取引相手に対して、電子契約を強制づけることは不可能ですし、あまりに一方的に行った場合、独占禁止法違反などの問題にもなりかねないことに注意を要します。

 

 

 

契約書についてのご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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