従業員の肖像等を営業広告に使用する場合の注意点(ショート記事)

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企業・事業者様よりご相談を受けていると、ある程度似通ったご相談をお受けすることがあります。

このWEBサイトを訪問されている方におかれまして、ご参考までの情報共有として、以下記載します。

 

 

ご相談

会社のイメージアップ戦略の一環として、従業員が勤務している様子や氏名などをSNSにアップしようと考えています。

何か問題はあるでしょうか。

 

回答

従業員を被写体として撮影する場合、従業員個人の肖像権やプライバシー権の問題があります。したがって、従業員に無断で撮影した上でSNSにアップすることは違法行為と言われかねません。

また、従業員の氏名をSNSに公表することは、個人情報を不特定多数の第三者に提供することになるため、個人情報保護法の観点からも問題となり得ます。

 

理由

従業員を雇っているということは、会社は従業員に対して指揮命令権を行使できる立場にあります。このことから、会社のイメージアップ戦略という業務である以上、会社は従業員に対し、一方的にその肖像を利用してよいと考える事業者もいるようです。

しかし、これは誤りと言わざるを得ません。

なぜなら、雇用契約書や労働条件通知書における業務内容として、例えば、外回りの営業活動、工場での組立て作業、事業所内での経理作業などといったことを記載しているに留まり、被写体になって会社のマーケティング業務に従事するなど書いていないことが通常だからです。

なお、仮に、業務内容としてマーケティング業務といった記載があったとしても、一般的な社会常識として、従業員自らが被写体となって宣伝広告活動を行うことが業務内容であるという解釈にはならないと考えられます。

以上のことから、会社が従業員に対し、被写体となるよう指揮命令権を行使したとしても、その指揮命令自体が違法と言わざるを得ず、従業員がその指揮命令を拒否したとしても、マイナスの人事評価として取り扱うことはNGですし、懲戒処分を含む不利益な取扱いをすることもできません。

必ず、従業員より、被写体となること、その肖像等が会社のイメージアップ戦略として用いられること(対外的に公開されること)につき、明示の承諾をとる必要があります。

 

ところで、従業員が、肖像や氏名を会社のために用いることに承諾している場合、具体的にどのよう範囲で取るべきかが次に問題となります。

なぜなら、こういった利用方法は想定していなかった、肖像・氏名を利用することに対する金銭を支払って欲しい、会社を辞めるので利用しないで欲しい、といったトラブルが後で起こり得るからです。

もし、承諾書を作成するのであれば、次のような事項を定めておくことがポイントです。

  • どのような目的で利用するのか
  • いつからいつまで利用するのか
  • どの地域(範囲)で利用するのか
  • どのような媒体で利用するのか
  • どこまで肖像等の編集加工を行ってよいのか
  • お金は発生するのか

最近はタレント等を用いた広告ではなく、現場の一般人を前面に押し出し、会社の雰囲気を伝えるという手法が多くなっているようです。

この手法を用いること自体は問題ありませんが、従業員と揉めてしまっては本末転倒ですので、是非注意して欲しいところです。

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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