これって労働時間なの!? 勘違いしやすい事例3選について解説(ショート記事)

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企業からの相談を受けていると、労働時間に該当するか否かについて、勘違いしている方が多い印象を受けます。

労働時間に該当するにもかかわらず、労働時間扱いとしない場合は賃金未払い問題が生じるなど、後で大きなトラブルになることも多いので、適切に理解しておく必要がらいます。

そこで、このWEBサイトを訪問されている方におかれまして、ご参考までの労働時間の該当性について勘違いしやすい事例3選を情報共有として、以下記載します。

 

 

ご相談

大手の組立家具販売店で勤務する従業員のユニフォーム着替え時間が労働時間に該当する(=賃金支払いの必要がある)というニュースを見たのですが、そもそも労働時間とは何なのでしょうか。

また、次の①から③の事例は労働時間に該当するのでしょうか。

①労働者が早出し、デスク周りの掃除を行っている時間

②営業時間終了後に、社内で行われている英会話研修への参加時間

③接客業において、お客がいない間の手待ち時間

 

回答

①労働者の任意で早出し掃除を行っているにすぎないのであれば、労働時間に該当しないと考えられます。

②英会話研修への参加が任意であり、かつ参加の有無が人事評価に影響しないのであれば、労働時間に該当しないと考えられます。

③お客さんが来たらすぐに接客対応しなければならない状況と考えられるため、労働時間に該当すると考えられます。

 

解説

労働時間とは、会社の指揮命令下にある時間と定義されます。

この「指揮命令」とは何を意味するのかについては、複雑な解釈論があるのですが、とりあえずここでは、逆説的に会社の干渉なく、労働者が自由に時間を過ごせる状態であれば指揮命令下ではないとイメージしてください。

このように考えた場合、①から③については、次のように考えることになります。

 

①について

設問でいう「任意」とは、例えば、朝は清掃しないことには仕事をする気分にならないといって掃除をするために早出をしているといった状況のことです。

一方で、明示的には早出して掃除するよう会社が命令していなくても、周囲の者が当然のように早出し掃除を行っており、自らもそれに合わせなければならない状況であれば、もはや「任意」ではありません。

この場合は、早出して掃除をすることが社内の暗黙のルールになっており、そのルールを会社が積極的に禁止しなかった以上、法的には会社は黙示の業務指示を出していたとして取り扱われます。

この結果、早出した時間は労働者が自由に過ごせる時間ではなく、会社の指揮命令下にあるとして、労働時間に該当すると判断されることになりますので、注意が必要です。

 

②について

勤務時間終了後に行われる研修について、研修受講が完全任意とされているのであれば労働時間として取り扱われることは有りません。

しかし、研修受講を義務付けられている場合はもちろんのこと、任意と言いながら研修受講をしない場合は人事評価に悪影響を及ぼすといった場合は事実上強制されていることと同視できます。

この場合、受講時間は労働者が自由に過ごせる時間ではない以上、労働時間に該当することになります。

 

③について

お客さんがいないときはぼんやりしているし、適当にしゃべったりしてダラダラしていることもあるので労務を提供しているは言えず、労働時間に該当しないのではという疑問をお持ちかもしれません。

たしかに、言わんとしていることは分かるのですが、このような手待ち時間や仮眠時間の場合、お客さんが来た=使用者よりお客さん対応を行うよう即座に対応できるよう指示を受けている時間となりますので、残念ながら指揮命令下にある時間と言うほかありません。

したがって、労働時間に該当することになります。

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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