ワクチン接種の有無による労務管理のポイントについて、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

ワクチン接種がある程度浸透し、社内でもワクチン接種済が多数派になってきました。

もっとも、社内的には、ワクチン接種の有無を原因とした従業員同士の軋轢が生じており、人事処遇・配置上の悩みがあります。

一方で、対外的には、当社の経営戦略の一環として、ワクチン接種済従業員がいることを全面的に押し出してアピールするべきではないか、という意見も出てくるようになりました。

ワクチン接種を踏まえたアフターコロナ戦略として、上記のような人事労務上の問題につき、どういった対処方針を組み立てればよいのか、教えてください。

 

 

【回答】

ワクチン接種を希望する人については、ワクチン接種が可能な状況となり、既に2回の接種を終えたという人も出てきました。一方で、何らかの事情でワクチン接種をあえて希望しないという人も一定数存在します。この結果、会社内にはワクチン接種済従業員とワクチン非接種従業員が混在することとなります。

そこで、会社としては、従業員に対する安全配慮義務(新型コロナに罹患させないよう業務従事させる義務)を負担している関係上、ワクチン非接種従業員の処遇について検討を行う必要があります(解説1.)。

また、ワクチン接種済み従業員とワクチン非接種従業員がそれぞれ有している不平・不満への対応につき、対策を練る必要があります(解説2.)。

さらに、顧客との接触の多い業態で、従業員のワクチン接種状況を対外的にアピールし安心感を与えたいと考えるのであれば、その可否について検討を行う必要があります。

公的な見解がありませんので、あくまでも執筆者の私見にすぎませんが、以下、上記3点について解説を行います。

 

 

【解説】

 

1.会社が負担する安全配慮義務との関係

 

(1)コロナワクチン非接種者を解雇することは可能か

会社としては、新型コロナ罹患者が出ないよう細心の注意を払う必要があるところ、いくら個人の自由とは言え、コロナワクチンを接種しない従業員に対して、色々と思うところがあるかもしれません。

しかし、どこまで行っても理屈としては、コロナワクチンを接種しなかったことを理由に、当該従業員を解雇することは法的に不可能です(ちなみに、厚生労働省が公表しているQA集でも解雇、雇止めはNGであることが明言されています)。

なお、コロナワクチンを接種しなかった者が新型コロナに罹患し、他の従業員も感染した(感染に至らなくても濃厚接触者となった)場合、会社としては、非接種の従業員に対する怒りが爆発し、解雇その他不利益処分を行いたいと考えるかもしれません。しかし、この場合も、法律上解雇その他不利益処分は無効になると言わざるを得ません。それどころか、ハラスメントであるとして、当該従業員より訴えられるなどして、さらに会社は苦境に立たされることも想定されます。

せっかくワクチンを接種したのであれば、ワクチン接種済従業員だけでも何とかしたい、安全配慮義務を履行したいと考える会社からすれば、非常に悩ましい問題なのですが、ワクチンを接種したから100%罹患を防止できるわけではないと発想を切り替え、他の対処方針を検討するほかないと考えられます。

 

ちなみに、上記解説は、ワクチンを接種すること自体は公衆衛生の観点から望ましいという前提に立ったものですが、世の中にはワクチンを接種することを悪と考える人(いわゆる反ワクチン派)も一定数存在します。

経営者が反ワクチン派である場合、従業員によるワクチン接種が許される行為ではないとして、解雇その他不利益処分を行うという問題も一応想定されます。しかし、ワクチンを接種したことで公衆衛生に何ら悪影響を与えることはない以上、上記の非接種者の処遇以上に有効性を基礎づける事情はなく、ワクチン接種を理由に解雇その他不利益処分を行うことは当然に無効と考えるほかありません。

 

(2)コロナワクチン接種を義務付けることは可能か

上記(1)で解説した通り、ワクチンを接種しないことを理由とする解雇その他不利益処分を行うことができない以上、では、ワクチンを接種するよう業務命令を出すことができないか、会社としては考えることになります。

しかし、これについても法律上は不可となります。

ところで、コロナワクチン接種の義務付けに関連し、予防接種法第9条を指摘される方がいますが、同法第9条は努力義務を課しているにすぎません。努力義務という考え方自体分かりづらいのですが、厳密には法的義務ではないとイメージしておけば十分かと思います。いずれにせよ、予防接種法第9条に基づきコロナワクチン接種を義務付けることは困難です。

なお、業務命令として義務付けることが困難であっても、会社としてコロナワクチン接種を勧奨することは当然可能です。ただし、勧奨に留まること、すなわち勧奨に対して従業員が拒否した場合、会社としてはこれ以上の対策を講じることができません(当然のことながら、勧奨拒否に対して不利益処分を課すことは不可です)。また、勧奨というのは名ばかりで、事実上の強制を伴うような言動となってしまった場合、パワハラその他ハラスメントであるとして別のトラブルを招来しかねません。

したがって、会社としては、コロナワクチンの接種を従業員にお願いできるのみで、それ以上の有効策は無いと考えるほかないのが実情です。

 

ちなみに、反ワクチン派の経営者が従業員に対し、コロナワクチンの接種を禁止する業務命令を出すという事例も想定されますが、当然このような業務命令は無効です。また、当該業務命令違反に対して不利益処分を課すことも無効です。

 

(3)非接種者に対してリモートワーク(出社禁止)を命じることは可能か

コロナワクチンを接種しない従業員を会社から追い出すこと(解雇)ができない、接種するよう業務命令を出すことができない、接種することを促すような処分を課すことができないとなると、会社としても当該従業員の処遇に困ることになります(会社が困るというよりは、接種済みの従業員から不平不満が出て、会社が板挟みになることが多いのが実情ですが)。

そこで、会社としては、苦渋の策として、非接種の従業員は出勤させない(リモート、テレワークに従事させる)といった人事処遇・配置転換を行えないか検討することになります。

たしかに、就業規則等に根拠があれば、特段の事情がない限り、配置転換は会社の裁量により行うことが可能とされています。この特段の事情ですが、例えば、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などのことを指します。ワクチンを接種しない従業員に対してリモートワークを命じる場合、上記に記載した「特段の事情」がないかを検討することになりますが、業種・業態や従事する業務内容等で考慮するべき事情が異なるため、一律に結論は出さないと考えられます。この点については、会社側で労働問題を取扱っている弁護士に相談するのが無難です。

 

ちなみに、反ワクチン派の経営者において、ワクチンを接種したことを理由としてリモートワークを命じた場合(なお、非接種の従業員は出社している場合)、正当性を見出しがたく、特段の事情のいずれかに該当するとして配置転換は無効になると考えられます。

 

 

2.社内での不平・不満への対応

 

(1)非接種者からの配置転換要望(顧客対応業務は行いたくない)に応える必要はあるか

安全配慮義務との関係は?

そもそも論として、従業員は、会社に対して配置転換を義務付ける権利を有していません。したがって、ワクチン非接種の従業員からの要望に応える必要がないというのが結論になりそうなのですが、問題は安全配慮義務の観点から、この結論が修正されるのではないかという点です。

非常に悩ましい問題であり、今後の議論の推移を見守る必要があるのですが、本記事執筆時点(2021年11月)では、安全配慮義務の観点を考慮するにしても、ワクチン非接種の従業員からの配置転換要望に会社が応じる義務はないと考えられます。なぜならば、会社に求められているのは、ワクチン開発前後を問わず感染予防策を講じることに主眼が置かれていること(安全配慮義務の内容に変遷がないこと)、ワクチンを接種したから完全に感染を防止できるわけではないこと(ワクチン効果が不完全であること)、接種・非接種の従業員間で不公平な処遇につながりかねないこと(処遇格差が生じてしまうこと)等が考えられるからです。

ただし、接種したくても接種できない従業員(基礎疾患を有している、妊娠しているなど)がいる可能性もあります。したがって、会社としては、一律にワクチン非接種の従業員からの配置転換要望に応じる必要はないと結論付けるのではなく、なぜ要望するのかその理由を問い質すというスタンスが必要になると考えられます。

ちなみに、ワクチン非接種の理由として病歴等の話が出てきた場合、会社としては当該情報の取扱いに注意を払う必要があります。なぜなら、病歴等の情報は個人情報保護法に定める「要配慮個人情報」に該当するものであり、通常の個人情報と比較するとその取扱いにつき更なる制限が課せられているからです。やむを得ずワクチン非接種従業員からの配置転換要望に応じる場合、他の従業員に対して何らかの説明が必要となる場面が出てくるものと思われますが、病歴等の要配慮個人情報を従業員に開示することは、個人情報保護法でいうところの第三者提供に該当します。要配慮個人情報の場合、オプトアウト手手続きが使えない等の制限がありますので、会社はワクチン非接種従業員より、①他の従業員向けに説明するために病歴等の要配慮個人情報を取得することへの同意、②他の従業員に公表することの同意、を事前に得る必要があることを意識する必要があります。

 

従業員ワクチン接種状況につき確認義務があるのか?

なお、上記のような検討を行った場合、関連して「会社は、従業員がワクチン接種を行っているか否かの確認を行う必要があるのか」という問い合わせを受けます。この点については、確認する義務はないと考えて差し支えありません。安全配慮義務の履行の観点からは取得したほうが望ましいかもしれませんが、上記1.(2)で従業員に対するワクチン接種義務付けが不可であることとパラレルに考えた場合、接種の有無に関する情報取得を義務付けること自体が困難といえるからです。

 

(2)接種者からの要望(非接種者とは一緒に仕事をしたくない)に応える必要はあるか

上記(1)で、従業員は、会社に対して配置転換を義務付ける権利を有していないことを指摘しましたが、自らの処遇についてさえ配置転換を要求する権利がないにもかかわらず、他人の処遇についてまで口をはさむ権利など生じる余地はありません。したがって、会社は、ワクチン接種者からの要望に応える義務はありません。

そして、ワクチン接種者へ説得する場合、正論で説得するのであれば、ワクチン接種は本人の自由意思であり、ワクチン非接種者をあえて排除することは差別に該当すると指摘し、考え方を改めるよう要請することになると考えられます。ただ、この言い方はどうしても非難めいた言い方にならざるを得ず、人間関係の維持・構築という観点からはストレスの多いものとなります。言い方の問題とはなってしまいますが、例えば「本人(ワクチン非接種者)が打ちたくても打てない何らかの事情があるかもしれないので、配慮してもらえないだろうか」といった説得の仕方が無難なのかもしれません。

 

ちなみに、これに関連して、取引先より「ワクチン接種済みの担当者を配置してほしい」と要望を受けることも有り得る話です。

一般論としては、「従業員のワクチン接種の有無について、強制的に聞き出すことができないので…」と要望に応えることは事実上難しいことにつき理解を求めつつ、どうしても取引先より強く求められる場合、これに代わる手段、例えば、担当者に対するPCR検査の結果が陰性であることを説明しつつ対処するといったことも必要になるかもしれません(もっとも、社内的には、担当者にPCR検査を義務付けることができるのか、PCR検査の費用は会社が負担する必要があるのではないか等の新たな問題が生じることにも注意が必要です)。

なお、一般論としては上記の通りなのですが、取引先が医療・介護事業といった、ワクチン接種の必要性が高い業種である場合、法律論からは離れてしまうのですが、公衆衛生その他社会的要請を踏まえると、むしろ取引先からのこういった要望はできる限り応じるべきではないかと、執筆者個人は考えるところです。

 

(3)人材採用に際し、コロナワクチン接種を条件とすることは可能か

採用の自由との関係

会社に課せられる安全配慮義務の履行の観点からすると、新たに従業員を採用する場合、少しでもリスクを低減するべく、ワクチン接種済を採用条件としたいと考えてもおかしくはありません。そして、会社に認められている「採用の自由」からすると、むしろワクチン接種済であることを採用条件とすることは当然に禁止されるものではないと考えられます。

こういった点も踏まえ、厚生労働省が公表しているQA集においても、ワクチン接種済であることを採用条件とすることを禁止する法令は無いと明言されているところです。

もっとも、(厚生労働省の立場上)ワクチン接種済を採用条件とすることが合理的なのか求人会社側も配慮してほしい、ワクチン接種済を採用条件とすることにつき、その理由を含め求人募集の際に明示することが望ましい、と留保が付されています。もちろん、これらの留保は法律上の根拠があるわけではありませんので、必ずしも会社において守る必要はない事項となります。ただ、非常にナーバスな問題であるがゆえに、執筆者個人としては、会社の本音を事前に公表しておいた方が世間的にも受け入れられやすく、トラブル回避にもつながるので、あえて隠す必要はないのではないかと考えるところです。

 

ワクチン未接種であることが採用後に判明した場合

ところで、ワクチン接種済を採用条件とする場合、関連して、①ワクチン接種済を証する書面の提出を求めることが可能か、②入社後にワクチン未接種であることが判明した場合、解雇することは可能か、という問題が生じえます。

①については、個人情報保護法との関係性も意識する必要があるものの、当然に禁止されるわけではないと考えられます。もっとも、例えばワクチンパスポートの使用に関し、行政は海外渡航以外の目的で使用させることは想定していないという見解を示していますので、法律上当然に禁止されているわけではないとはいえ、証明書の提出を要求することは望ましい態様ではないといえるかもしれません。提出を要請するのであれば、何らかの合理的理由(例えば医療・介護事業である、同事業との取引がある等)を示しつつ、運用として提出のお願いに留めるといったところに落ち着けるのが無難なのかもしれません。

②については、ワクチン接種に関する経歴詐称の問題になると考えられます。従前までの裁判例を踏まえると「業務に重大な影響を及ぼし得る詐称か」という点が問われますので、医療・介護職である場合や海外渡航を前提にした業務であれば、業務に重大な影響を及ぼし得るものとして解雇の正当性を満たしやすいものと思われます。しかし、これ以外の業種・業務の場合、当然に解雇しても問題ないとするのは理屈の上では難しいのではないかと考えられます。

 

 

3.対外的な安心感をアピールするための施策との関係

 

(1)非接種者に対して非顧客対応業務への配置転換を行うことは可能か

配置転換の可否

例えば、外食産業など不特定多数への接客が予定されている業務に従事する従業員が存在する場合、当該従業員のうち、ワクチン非接種の従業員については接客業務から外すことは可能か、という形で問題となってきます。

まず、上記1.(3)でも触れましたが、就業規則等に根拠がある限り、配置転換は会社の裁量により自由に行うことができるのが原則とされています(業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的が認められる場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などの例外事由がある場合は配置転換不可です)。

この点、顧客対応業務に従事するワクチン非接種従業員が不特定多数の顧客と接触することとなり、安全配慮義務の観点から問題があると会社は考え、一方で当該従業員も会社の考えに納得しているというのであれば、配置転換は問題となることはありません。

しかし、本件のように、ワクチン非接種の従業員への配慮ではなく、営業戦略上の観点から顧客対応するスタッフはワクチン接種済み従業員のみを配置したいという目的だけでは、執筆者個人としては、配置転換の有効性に疑義が生じるのではないかと考えます。なぜなら、このような目的での配置転換を正当化してしまうと、結局のところ会社は従業員に対して、事実上ワクチン接種を義務付けることになってしまうからです。また、現時点ではワクチンを接種したから新型コロナに感染しないという医学的保証もないことからすると、ワクチン接種済み従業員のみで顧客対応スタッフを構成する必要性も乏しいものと言わざるを得ないところがあります。さらに、このような会社の対応は、ワクチン非接種従業員に対する差別に加担するものと言われても仕方がないところがあります。

なお、基本的な考え方は上記の通りですが、医療・介護事業の場合は顧客の属性、事前予防の重要性が特に重視されていることからすると、対外的な安心感を理由とする配置転換の有効性は認められやすいかもしれません。

 

休業手当の有無

ところで、仮に配置転換が認められるとして、この影響によりワクチン非接種の従業員を休業・シフト減という取扱いが認められるかという問題も検討しておく必要があります。というのも、接客対応に従事していた従業員を事務職等の非接客業務に配置することは事実上困難という事態も想定されるからです。

この点については、結論として会社都合による休業・シフト減と言わざるを得ませんので、休業手当の支払いが必要と考えられます。休業手当を支払うことなく休業・シフト減の対応を取った場合、違法な出勤停止措置と考えざるを得ません。なお、いわいる休職制度の適用を検討する会社もあるようですが、就業規則での定め方にもよるものの、通常はワクチン非接種を理由に休職制度を適用することは困難と考えられます。

 

(2)接種者と非接種者とで、顧客対応業務に差異を設けることは可能か

例えば、営業業務に従事する従業員のうち、ワクチン接種済従業員は顧客との面談協議を可とするが、ワクチン非接種従業員については顧客との面談協議は不可(オンライン等の非接触型の商談は可能)とすることの是非という形で、問題となってきます。

この点、上記(1)と異なり、ワクチン非接種従業員を配置転換するわけではなく、あくまでも業務遂行手段の一部を制限するに留まることを踏まえると、上記のような会社の措置は、基本的には認められるものと考えられます(もちろん、ワクチン非接種従業員と顧客との接触を減らすことによる当該従業員への配慮、一方で顧客に対する社会的要請という観点も付加して正当性を基礎づける事情になると考えられます)。

ところで、上記のような措置を講じた場合、特にワクチン接種済従業員から、顧客との接触が必要な業務を優先的に割り当てられること(感染リスクが高まる業務に従事させること)への不平・不満を言われることはありうる話です。会社としては、ワクチン接種以外の感染対策を講じることや、顧客が了解する限りオンライン等の非接触型面談も可とするといった方針を示すことで説得を図るほかないように思われます。なお、当然のことながら、ワクチン接種済従業員であっても、基礎疾患を有する場合や妊娠している場合など健康管理上の措置が求められる場合、本人の意向を踏まえつつ、面談協議による顧客対応業務から外すといった対策を講じる必要があります。

 

(3)ワクチン接種状況を公表することは可能か

例えば、対外的な営業戦略として、①従業員の接種状況を顧客に公表すること(A従業員は接種済み、B従業員は非接種など)、あるいは②従業員の接種率を公表すること(従業員の接種率は○%である等)は可能か、という形で問題となってきます。

まず、会社が従業員のワクチン接種有無に関する情報を、強制的に取得することは不可能ですが、従業員本人から同意を得て取得した場合、個人情報(病歴などの情報も付随して取得する場合は要配慮個人情報)に該当することになります。この個人情報又は要配慮個人情報を取得する場合、目的を明示して取得する必要があるところ、果たして対外的に公表することを目的として取得しているのかをまずは確認する必要があります。

この点、通常は各人の接種状況を対外的に公表する目的で取得することは考えにくいことから、①のような形で用いた場合、個人情報保護法違反になると考えざるを得ません。一方、②については、接種の有無につき従業員個人が特定されない限りであれば原則問題ないと一応は考えられます。しかし、100%接種済みor非接種となると事実上特定されることはもちろん、100or0以外の割合であっても、従業員数が少ない場合は事実上特定されることもあり得ます。

なお、①については法的にクリアーしたとしても、世間一般はそこまで情報を求めているわけではないことから、“やりすぎ”等の非難を受けるリスクは相当程度あると思われます。したがって、執筆者個人としては、お勧めしうるものではないと考えています。

 

 

<2021年11月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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