内部通報(公益通報)に関する社内規程作成のポイントについて、弁護士が解説!

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【ご相談内容】

令和4年6月に施行される改正公益通報者保護法へ対応するべく、社内規程の見直しを行っています。

ただ、社内規程を見ていると、公益通報者保護法が成立した当初に作成したものが現在も用いられている状況であり、ほぼ全面的な見直しが必要になるのではないかと考えています。

社内規程見直しのポイントについて、教えてください。

 

 

【回答】

まず確認する必要がある事項として、令和4年6月に施行される改正公益通報者保護法の目玉ともいえる「通報体制整備義務」(公益通報者保護法第11条第1項、同条第2項)は、中小事業者(常時使用する労働者の数が300人以下の事業者のこと)に対して努力義務を課しているに留まるということです。したがって、中小事業者は通報体制整備を法律上義務付けられるわけではなく、従前のまま運用してもよいと一応考えることも可能です。

ただ、中小事業者について、いつまで努力義務に留めるのかは分かりません。また、事業者における自浄作用を働かし、不祥事をできる限り内部で処理するという観点からすれば、できる限り内部通報を利用してもらった方が良いと考えることもできます。

そこで、本記事では、努力義務に留まる中小事業者を念頭に置きつつ、公益通報者保護法が制定された当時に公表されていた社内規程のサンプルと、改正公益通報者保護法を受け考え得る修正案を比較する形式で、そのポイントを解説することにします。

なお、ポイントをピックアップするために、一部省略している内容もあります。したがって、このサンプル条項だけで必要十分とは言い難いことにご注意ください。

 

(参考)

公益通報者保護法と制度の概要(消費者庁)

 

 

【解説】

 

(現行)

第一条(目的)

本規程は、労働者等からの組織的又は個人的な法令違反行為等に関する相談又は通報の適正な処理の仕組みを定めることにより、不正行為等の早期発見と是正を図り、もって、コンプライアンス経営の強化に資することを目的とする。

 

(修正案)

第1条(目的)

本規程は、労働者(正社員、契約社員、嘱託社員、パート、アルバイト及び派遣労働者を含む)、労働者であった者、及び役員等(以下、まとめて「利用者」という)からの組織的又は個人的な法令等の違反行為に関する相談又は通報の適正な処理の仕組みを定めることにより、不正行為等の早期発見と是正を図り、もって、コンプライアンス経営の強化に資することを目的とする。

 

改正前の内容でも問題ないと考えられるのですが、令和4年6月施行の公益通報者保護法では、通報者の範囲として、元従業員(但し、退職後1年以内)と取締役等の役員を保護の対象とする改正を行っています。そこで、通報対象者の明確化を図る趣旨で修正を行っています。なお、法律上は元従業員の範囲は退職後1年以内としていますが、事業者における自浄作用を働かし、不祥事をできる限り内部で処理するという観点からすれば、元従業員の範囲を絞る必要がないと考えることも可能であるため、修正案では退職年数による限定を行わずに「労働者であった者」と表現しています。

また、やはり事業者における自浄作用を働かし、不祥事をできる限り内部で処理するという観点からすれば、法令違反行為のみを内部通報対象とするといった限定を行う必要性も乏しいと考えられますので、事業者内で定めるルール違反を包含する趣旨で「法令等の違反行為」という表現に修正しています。

 

(現行)

第二条(窓口)

労働者等からの通報を受け付ける窓口をXXXに設置する。また、法令違反行為に該当するかを確認する等の相談に応じる窓口をXXXに設置する。

 

(修正案)

第2条(窓口)

1 利用者から相談又は通報を受ける窓口は次の通りとする。

内部窓口:××部

外部窓口:××法律事務所

2 利用者は、前項に定める窓口のいずれかを選択して相談又は通報ができる。なお、匿名による相談又は通報も可能とする。

 

第3条(窓口以外への社内部門への通報)

前条に定める窓口以外の社内窓口(例えば、所属部署の上司、同僚など)への相談又は通報が行われた場合、正当な事由がある場合を除き、前条に定める相談又は通報に準じて取扱う。

 

一従業員が役員等の不正行為を認識した場合、なかなか会社内の窓口に相談しづらいこと、また令和4年6月施行の公益通報者保護法では、取締役等の役員が内部通報者として保護対象となったことからすると、外部の通報窓口を設置することが望ましいと考えられます。この外部窓口の代表例として弁護士が考えられますが、顧問弁護士が外部窓口を兼ねることは直ちに禁止されるわけではないものの、あまり望ましいものとはいえないと考えられます(利益相反の問題等が生じるため)。したがって、可能であれば顧問弁護士以外の弁護士に外部窓口になってもらった方がよいと考えられます。

次に、令和4年6月施行の公益通報者保護法を踏まえると、匿名による内部通報も受け付ける必要があります。そこで、修正案では匿名による相談又は通報も可であることを明記しています。

さらに、事業者が設置した窓口以外に相談又は通報があった場合への対処についても検討する必要があることから、新たに条項を追加する形で明記しました。

 

(現行)

第三条(通報の方法)

通報窓口及び相談窓口の利用方法は電話・電子メール・FAX・書面・面会とする。

 

(修正案)

第4条(通報の方法)

第2条に定める窓口の利用方法は、次の通りとする。

内部窓口: 電子メール・電話・面談

外部窓口: 電子メール・郵送・FAX

 

現行規定に定める利用方法で特に問題はありませんが、内部窓口と外部窓口を設けた場合、利用方法に差異が生じる可能性があります。この点を考慮して、修正案では内部窓口と外部窓口とで分けて規定しています。

なお、当然のことながら、修正案以外の方法で内部通報を受付けることも可能です。事業者の実情に応じて適宜記載すればよいかと思います。

また、事業者における自浄作用を働かし、不祥事をできる限り内部で処理するという観点から、社内規程に定める方法以外で相談又は通報が行われた場合であっても、事業者は窓口への相談又は通報があった者として取り扱う旨、念のため定めることも検討に値します。

 

(現行)

第四条(通報者及び相談者)

通報窓口及び相談窓口の利用者は当社の労働者(社員・契約社員・パート・アルバイト・派遣労働者・退職者)及び当社の取引事業者の労働者とする。

 

(修正案)

第5条(相談者又は通報者)

第2条に定める窓口へ相談又は通報ができる利用者は次の通りとする。

(1)労働者(正社員、契約社員、嘱託社員、パート、アルバイト等の名称を問わず、当社と雇用契約を締結している者)

(2)派遣労働者

(3)労働者であった者

(4)執行役員

(5)取締役、監査役

 

修正案の内容に関する解説は、上記「第1条(目的)」で記載した通りです。すなわち、令和4年6月施行の公益通報者保護法では、退職後1年以内の労働者及び役員(取締役・監査役等)を保護対象としていることから、確認的に明記したものとなります。

なお、現行の規定では「当社の取引事業者の労働者」を内部通報対象者に含めています。

たしかに、令和4年6月施行の公益通報者保護法において「当社の取引事業者の労働者」を除外していないため、引き続き明記してもよいと考えられます。ただ、「当社の取引事業者の労働者」から通報があった場合のその後の処理については、どうしても事業者が雇用する労働者からの内部通報とは異なる手順になる可能性があることから、修正案ではあえて明記していません(例えば、公益通報者保護法にいう「公益通報」に該当しない場合などの処理手順など)。

「当社の取引事業者の労働者」から通報があった場合の処理手順については、別規程を定めたほうが整理しやすいものと考えられます。

 

(現行)

第五条(調査)

1.通報された事項に関する事実関係の調査はXXXが行う。

2.責任者は、調査する内容によって、関連する部署のメンバーからなる調査チームを設置することができる。

 

第六条(協力義務)

各部署は、通報された内容の事実関係の調査に際して協力を求められた場合には、調査チームに協力しなければならない。

 

(修正案)

第6条(調査)

1 第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査は、××が行う。

2 ××は、相談又は通報された事項に関する十分な調査を行うために必要と判断した場合、当該事項に関連する部門の責任者や当該事項に対する権限を所管する部門等にも調査を行わせることができる。

3 前2項に定める調査を受けた労働者及び役員は、調査に協力しなければならず、調査を妨害してはならない。

4 前項に基づき調査を行った者は、速やかに調査の上、××に報告する。

 

第7条(従事者の指定)

1 ××は、公益通報者保護法に定める従事者として指定される。また、前条第2項に基づき、××より調査依頼を受けた者も同法に定める従事者として指定される。

2 当社は、前項に従事者として指定された者に対し、従事者の地位に就くことが明らかとなる方法により伝達する。

3 ××は、第2条に定める窓口に相談又は通報された事項につき対応及び調査を担当させる者、並びに第9条に定める是正措置を講じる者に対し、当該窓口の利用者を特定させる事項を伝達する場合には、従事者の地位に就くことが当該者に明らかとなる方法により、当該者を従事者として指定する。

 

第8条(利益相反の回避)

1 利用者より、(1)法令等の違反行為を行った、行っている又は行おうとしていると指摘された者、(2)相談又は通報を受けて行われた調査に基づき、法令等の違反行為の発覚する又は発覚する恐れのある者、(3)相談又は通報を受けて行われた調査に基づき、実質的に不利益を受け又は受ける恐れのある者は、相談又は通報された事項に関する対応及び調査、並びに第9条に定める是正措置の検討に関与することはできない。

2 当社労働者及び役員は、第2条に定める窓口に相談又は通報された事項につき対応及び調査に関与する時点において、自らが前項に定める者に該当するか否か確認を行うものし、該当する場合は××に報告しなければならない。

3 前項の報告を受けた場合、××は、直ちに当該報告者による関与の可否を判断する。

4 第2条に定める窓口に相談又は通報された事項につき対応及び調査を行う者について、事後的に本条第1項に該当することが判明した場合、××は直ちに当該者を対応及び調査から外さなければならない。

 

令和4年6月施行の公益通報者保護法の中で、一番のメインであり、社内規程として修正が必要となる部分と考えられます。

まず、現行規定の第5条(調査)及び第6条(協力義務)ですが、これ自体はそのまま用いても良いかと思います(修正案では趣旨はそのままにしつつ言い回しを変更しています)。

問題は、公益通報者保護法に基づき調査を行う者は、新たに「従事者」というカテゴリーが設けられたことです。そして、この従事者は守秘義務を負うこと、守秘義務に違反した場合は刑事罰を受けることが新たに規定されました。また、従事者に課せられた義務負担を認識してもらうために、事業者は従事者に対し、従事者であることが明らかとなる方法により定める義務も合わせて規定されました。現行規定ではこの「従事者」に関する規定が存在しないことから、修正案第7条で新たに定めるという手当を行っています。

次に、これは従前からも当然認識されていたことなのですが、通報に基づき調査を担当する者が、違法行為等に関与している可能性がある場合、揉み消しその他不適切な処理を行う恐れがあります。このような利益相反を回避することは、内部通報に対する適正な運用を図るうえで必須であることから、修正案では新たに明記しています。

なお、調査を行うに際しては独立性が確保されている必要があるところ、上長・幹部の関与が疑われる通報の場合、事実上調査に支障が生じる恐れがあります。このような場合に備え、何らかの独立性確保に関する措置を講じる必要があるのですが、例えば、社外取締役がいる場合は、社外取締役に報告し、社外取締役が独自に調査することが可能である旨定めておくことも検討に値します。例えば、修正案第6条に次のような条項を追加することが考えられます。

「××は、相談又は通報された事項を確認後、遅滞なく社外取締役に報告を行う。報告を受けた社外取締役は必要があると判断した場合、自ら又は第三者をして、独に調査を行うことができる。

 

(現行)

第七条(是正措置)

調査の結果、不正行為が明らかになった場合には、会社は速やかに是正措置及び再発防止措置を講じなければならない。

 

(修正案)

第9条(是正措置)

1 調査の結果、法令等の違反行為がある又はその恐れがあることが明らかとなった場合、代表取締役社長は、速やかに適切な是正措置を講じなければならない。

2 代表取締役社長は、前項により実施された是正措置及び再発防止措置が適切に機能しているか検証し、適切に機能していないと判断した場合は、必要な追加措置を講じる。

 

調査結果に基づき問題点が明らかとなった場合、問題点の解消及び今後問題が発生しないよう予防策を講じること、この2点が是正措置の主な内容となります。したがって、現行規定の通りでもよいのですが、責任者を特定すること及び是正措置が功を奏しなかった場合の事後措置を明確にするという観点から、修正案の作成を行っています。

 

(現行)

第八条(社内処分)

調査の結果、不正行為が明らかになった場合には、会社は当該行為に関与した者に対し、就業規則に従って、処分を課すことができる。

 

(修正案)

第10条(社内処分)

1 当社は、調査により法令等の違反行為が明らかとなった場合、当該行為を行った労働者及び役員に対して適切な処分を課す。

2 当社は、本規程に違反する行為を行った労働者及び役員に対し、必要な処分を課す。

 

現行の内容に追加して、社内規程に違反した場合も処置をとることを修正案では追加しています。

社内規程違反に対して制裁措置を講じることは、就業規則等から明らかではあるかと思うのですが、公益通報者保護法の改正に伴い、通報体制整備義務が新たに課せられたことからすると、事業者としてもルールの徹底を図る必要があります。したがって、あえて2項を明記し注意喚起することは相応の意義があると考えられます。

 

(現行)

第九条(通報者等の保護)

1.会社は、通報者等が相談又は通報したことを理由として、通報者等に対して解雇その他いかなる不利益取扱いも行ってはならない。

2.会社は、通報者等が相談又は通報したことを理由として、通報者等の職場環境が悪化することのないように、適切な措置を執らなければならない。また、通報者等に対して不利益取扱いや嫌がらせ等を行った者(通報者の上司、同僚等を含む。)がいた場合には、就業規則に従って処分を課すことができる。

 

(修正案)

第11条(利用者の保護)

1 当社並びに当社労働者及び役員は、利用者に対し、相談又は通報を行ったことを理由として解雇その他いかなる不利益な取扱いを行ってはならない。

2 当社並びに当社労働者及び役員は、調査協力者に対して、相談又は通報された事項に関する調査に協力したことを理由として、不利益な取扱いを行ってはならない。

3 ××は、調査・是正措置を講じた後、適切な時期において、利用者に対し、相談又は通報を行ったことを理由とした不利益な取扱いが行われていないか確認を行う。

4 利用者に対する不利益な取扱いが判明した場合、当社は直ちに適切な救済・回復措置を講じると共に、不利益な取扱いを行った者に対して必要な処分を行う。

 

第12条(探索の禁止)

当社労働者及び役員は、利用者及び調査協力者について探索してはならない。

 

従前から通報者に対する保護対策を行う必要性があったため、その点では大きな変更はありません。しかし、通報者保護のためには更に一歩踏み込んで、通報者を探索すること自体を禁止することも重要となります。そこで、修正案では第12条として新たに探索の禁止の条項を設けてみました。また、内部通報による調査過程において、調査協力者に不当な圧力をかけられてしまうと、調査結果が不当に歪められてしまう恐れがあります。そこで、探索禁止の対象として、通報者のみならず調査協力者についても含める内容としています。

ところで、利用者の保護に関連するものとして、利用者が窓口への内部通報を行わずに、行政機関等へ外部通報する場合も当然想定されます。公益通報者保護法は一定の自由を満たす限り外部通報であっても保護される旨定めていますので、確認的に外部通報であっても通報者は保護されることを規定するのも一案かもしれません。例えば次のような条項です。

 

第×条(当社以外に公益通報を行った者の保護等)

1 当社労働者及び役員は、利用者が第2条に定める窓口以外の外部窓口に相談又は通報を行った場合であっても、公益通報者保護法が定める要件(同法第3条第2号及び第3号、同法第6条第2号及び第3号を参照)を満たす限り、当該相談又は通報を行ったことを理由として、不利益な取扱いを行ってはならない。

2 当社労働者及び役員は、前項に定める利用者を探索してはならない。

 

(現行)

第十条(個人情報の保護)

会社及び本規程に定める業務に携わる者は、通報された内容及び調査で得られた個人情報を開示してはならない。会社は正当な理由なく個人情報を開示した者に対し、就業規則に従って、処分を課すことができる。

 

(修正案)

第13条(範囲外共有の禁止)

1 第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者は、利用者を特定させる情報を、必要最小限の範囲を超えて他の対応及び調査を行う者に共有してはならない。また、利用者が予め明示的に同意した場合又はその他の正当な理由がある場合を除き、利用者を特定させる情報を第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者以外に共有してはならない。

2 第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者は、調査協力者を特定させる情報を、必要最小限の範囲を超えて他の対応及び調査を行う者に共有してはならない。また、調査協力者が予め明示的に同意した場合又はその他の正当な理由がある場合を除き、調査協力者を特定させる情報を第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者以外に共有してはならない。

3 利用者を特定させる情報及び調査協力者を特定させる情報を除き、第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査により得られた情報は、是正措置等の検討に関与する当社労働者及び役員、取締役会の構成員及び事務局並びに必要に応じて行政機関に限り共有する。

 

第14条(守秘義務)

1 第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者は、当該対応及び調査を行う過程において知りえた一切の情報について、法令に基づく場合等の正当な理由がない限り、開示及び漏洩してはならない。

2 前項に定める義務は、第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する対応及び調査を行う者が、当該対応及び調査を行わなくなった場合であっても、同様とする。

 

現行の規定では個人情報の保護となっているところ、個人情報のみを対象として守秘義務を課すのは必ずしも十分とは言えません。なぜなら、通報に基づき発覚した事実内容はもちろんのこと、調査過程で関与が疑われた個人、関与が判明した個人等についても、やはり濫りに公開するわけにはいかないからです。

そこで、修正案ではまとめて守秘義務・秘密保持義務に関する条項を整理し定めてみました。

 

(現行)

第十一条(通知)

会社は、通報者に対して、調査結果及び是正結果について、被通報者(その者が不正を行った、行っている又は行おうとしていると通報された者をいう。)のプライバシーに配慮しつつ、遅滞なく通知しなければならない。

 

(修正案)

第15条(通知)

1 ××は、第2条に定める窓口に相談又は通報された事項に関する調査開始の有無について、当該相談又は通報を受けた日から20日以内に通知しなければならない。

2 ××は、利用者に対し、当該相談又は通報された事項に関する調査の結果及び是正措置等について、通報対象となった者及び調査協力者の信用、名誉、プライバシー等に配慮しつつ、速やかに通知しなければならない。

3 利用者が匿名である場合又は利用者の連絡先が分からない場合、前2項に定める通知を行うことを要しない。

 

調査開始の有無、調査結果の内容については従前より通報者に通知しなければならないとされていたことから、大幅な修正を行う必要はないと考えられます。

ただ、外部通報が保護される要件の1つとして、内部通報を行ったが20日を経過しても調査開始の通知がない場合というものがあることを考慮し、修正案1項ではその点を意識したものに変更しています。

また、匿名の通報の場合、連絡のしようが無いことも想定されることから、予め通知不要であることを明記しました。

 

(現行)

第十二条(不正の目的)

通報者等は、虚偽の通報や、他人を誹謗中傷する通報その他の不正の目的の通報を行ってはならない。会社は、そのような通報を行った者に対し、就業規則に従って、処分を課すことができる。

 

第十三条(相談又は通報を受けた者の責務)

通報処理担当者に限らず、相談又は通報を受けた者(通報者等の管理者、同僚等を含む。)は、本規程に準じて誠実に対応するよう努めなければならない。

 

第十四条(所管)

本規程の所管はXXX部(課)とする。

 

第十五条(改廃等)

本規程の改廃は、取締役会が決定する。また、本規程の運用に際しては、社長を責任者とする。

 

第十六条(施行)

本規程は平成XX年X月XX日より施行する。

 

(修正案)

第16条(不正の目的)

利用者は、虚偽の相談又は通報や、他人を誹謗中傷する相談又は通報、その他の不正の目的の相談又は通報を行ってはならない。当社はそのような通報を行った者に対し、社内規程に従って処分を課すことができる。

 

第17条(相談又は通報を受けた者の責務)

××に限らず、第3条に基づく相談又は通報を受けた者は、本規程に準じて誠実に対応するよう努めなければならない。

 

第18条(記録の作成・保管)

1 ××は、第2条に定める窓口へ相談又は通報への対応に関する記録をその都度作成する。

2 当社は前項に定める記録を×年間保管する。

 

第19条(周知・教育)

1 ××は、本規程に基づく内部通報制度及び公益通報者保護法の内容について、労働者及び労働者であった者に対し、○○を用いるなどして周知を行うと共に、定期的な社内研修を実施する。

2 ××は、労働者及び労働者であった者より、本規程に基づく内部通報制度及び公益通報者保護法の内容について問い合わせがあった場合、適切に対応しなければならない。

3 ××は、第7条に定める従事者及び従事者となり得るものに対し、本規程の適切な運用を行うための教育を行わなければならない。

 

第20条(所管)

本規程の所管はXXX部(課)とする。

 

第21条(改廃等)

本規程の改廃は、取締役会が決定する。また、本規程の運用に際しては、代表取締役社長を責任者とする。

 

第22条(施行)

本規程はXX年X月XX日より施行する。

 

現行の規定はそのまま用いることができると考えられますので、修正案では用語例を合わせる形式的な修正に留めています。

なお、現行規定にはない、「記録の作成・保管」と「周知・教育」については、改正公益通報者保護法への対応に必要と考えられることから、修正案では条項を追加する形で記載しました。

 

 

 

<2022年4月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。コンプライアンスのご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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