資金繰り改善のための弁護士活用法10選(資金調達5選、経費削減5選)!

この記事を読むのにかかるおよその時間  約 2

 

 

 

【ご相談内容】

積極的な営業政策が功を奏し、増収を達成しているのですが、増収すればするほど資金繰りが苦しくなってきています。

決算書の内容が悪いわけではないので気にする必要はないのでは…と経営者仲間からは言われたものの、危機感を持っています。

弁護士視点で、何か資金繰りを改善するための方策を提案してもらえないでしょうか。

 

 

【回答】

「弁護士が資金繰り改善指導を行うの?」と思われる方もいるかもしれません。

たしかに、資金繰り改善指導を行う弁護士は決して多くはありません。

しかし、当事務所では、経営者の方から直接ご相談をいただき、簡易なキャッシュフロー計算書を作成しつつご提案することはもちろん、資金繰り改善を実施している税理士・中小企業診断士・コンサルタントのご紹介を受けて、資金繰り改善のお手伝いをさせて頂く事例が近年増加しています。

そこで、これまでの経験例を踏まえ、資金繰り改善に効果的と思われる弁護士の活用法を、本記事では10選取り上げてみました。

本記事をお読みいただくことで、資金繰り改善のために練った計画を、弁護士が実行部隊として動くことで実現できるということがお分かりいただけるかと思います。

なお、当事務所では、ご面識がない税理士・中小企業診断士・コンサルタントの方々からのご相談も受け付けておりますので、ご遠慮なくお声掛けください。

 

 

【解説】

 

1.はじめに

 

皆様ご承知の通り、資金繰りを改善するためには、①多くの現金を得られるようにすること、②支出を減らすことの2つを実践することです。

これらを実践するために、まずは手始めに、資金繰り表を作成したり、今後のシミュレーションを立案したりすることが多いと思います。これ自体は何ら間違いではありません。

問題なのは、計画を立てたものの、誰がどのようにして実行するのかが決まっておらず、結局のところ計画が絵に描いた餅となるという事態です。

弁護士が資金繰り改善に関与するのは、このような事態を回避すること、すなわち、事業者・経営者に代わって「実行」することで、計画実現のお手伝いを行う場面となります。

 

 

2.資金調達における弁護士の活用法

 

(1)債権回収代行

債権回収代行とは、取引先が何らかの理由で売掛金や報酬金等を支払わない場合、弁護士が事業者に代わって、売掛金や報酬金等の回収手続きを進めることをいいます。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

当たり前のことですが、帳面上に売掛金や報酬金等が計上されていたとしても、現金化できないことには資金繰りに充てることができません。

ただ、例えば、営業先行型の事業者などに多く見られるのですが、売上が計上されているにもかかわらず、回収が滞っているため、資金繰りを圧迫するという現象をよく見かけます。

事業者としては、「回収し、現金化すること」が絶対的正義であると考えるべきです。

 

・弁護士を関与させるメリット

取引先が理由もなく支払いを渋っている場合、弁護士名義の通知書(配達証明付き内容証明郵便など)を送付することで、取引先が即座に支払ってくるということがあります。なお、事業者名義で通知書を送付する場合であっても、通知書で弁護士が関与していることに触れるだけでも、取引先からの支払い確率が上がるようです。

また、取引先が支払いを拒絶する理由があると認識していたとしても、弁護士より当該認識に誤りがあることを指摘し、支払うよう説得することでスムーズに回収できることもあります。

さらに、どうしても取引先が支払ってこない場合、自らでは面倒で分かりづらい裁判手続きを弁護士に代行してもらい、多少時間はかかりますが回収を実現できる場合もあります。

 

取引先に対して支払い圧力をかけることができるのが弁護士の強みです。事業活動により得た売掛金や報酬金等の現金化手続きに、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(2)VC等からの出資

出資とは、株式等と引き換えにお金を出してもらうことをいいます。融資とは異なり、基本的には返済義務が無いという点で魅力的なのですが、一方で出資に際しては様々な条件が課せられ、経営の自由度が制約される場合があります。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

融資の場合、将来的に返済義務があるため、一時的に資金が潤うだけに過ぎません。

しかし、出資の場合、基本的には出資金を出資者に返済する必要がありません。この結果、キャッシュフローの観点からは純粋にお金だけが増加したことになり、その増加分を資金需要に充てることが可能となります。

 

・弁護士を関与させるメリット

出資金の返済義務はありませんが、出資者はその代わりとなるメリットを享受しようとします。例えば、事業者が将来的にIPO(株式公開)することで、その株式の売買差益をメリットとして得ようとする(株式公開前に安価で株式を取得し、株式公開後に高値で株式を売却する)といったものが典型的ですが、他にも様々なメリットを想定して出資します。

そして、出資者はこれらのメリットを実現するべく、出資するに際し、事業者に対して色々な条件や注文を付けてくるのですが、この条件や注文内容につき、適切な判断ができない事業者が多いようです。例えば、株式等を出資者に持たせる以上、現経営者の経営支配権(取締役等の役員選解任権など)に大きな影響を及ぼす場合があります。あるいは、事業者に株式買取義務を負担させることで、将来的に出資金の返済を迫られるのと同様の事象が発生することもあります。

以上のような、事業者にとっては“落とし穴”というべき条件や注文内容につき、弁護士が関与することで、事業者は気付くことができる、場合によっては条件や注文内容の変更を出資者に求めるといったことが可能となります。

 

VC等からの出資を受けることで、目先の資金需要を満たすことができたとしても、将来的に事業者の自由な事業活動が保証されるのか等、事業者が気付かない問題点を指摘し、修正できるのが弁護士の強みです。必要以上に縛られない経営を実現するために、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(3)M&A(子会社化・グループ所属)

M&Aとは、企業や事業の合併・買収のことを指します。ただ、資金繰り改善の視点でのM&Aは、例えば、異業種の大手企業に買収(自社の株式を大手企業に譲渡する)されることで、その大手企業の一部門(子会社)になる、あるいは同業種の大手企業と業務提携することで、その大手企業より支援を受ける、といった意味で用いられることが多いようです。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

子会社化することを受入れたとしても、当然のことながら、親会社と会計を分離した上で独立採算を要請されます。しかし、それでも資金繰りに窮した場合、親会社より救済措置として融資を受けることができるなどの資金融通が期待できます。

また、業務提携を行った場合、業務効率の改善による経費削減効果も大きいのですが、著名企業のグループに属したという事実が与信向上に役立ち、金融機関より有利な条件で融資を受けやすくなるといった効果も期待できます。

要は、第三者の保護下で、資金需要を賄うことができるようになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

買収等を行う側からすれば、何らかの経営上のメリットを受けることを狙ってM&Aを実施することになります。このため、上記の「出資」の場合と同様に、M&A実施者は経営上のメリットを実現するべく、事業者に対して色々な条件や注文を付けてきます。特に、出資の場合は必ずしも事業運営に明るくないことから、逐一経営に口を出さないことが通常であるのに対し、M&A実施者(親会社等)は、事細かな経営指示を出すことが多いという点で、出資の場合以上に事業者の経営の自由が制約されることになります。

ただ、これらの制約、場合によっては経営権まで剥奪されかねない条件や注文が付されているにもかかわらず、気が付かない事業者が多く存在します。

以上のような、事業者にとって“生殺与奪”権を与えてしまいかねない、条件や注文内容につき、弁護士が関与することで、事業者は認識し又は覚悟することができ、事業者の考え方によってはより緩和された条件や注文内容への変更を申出て交渉するといったことが可能となります。

 

M&Aを受入れることで、第三者の支援による資金需要達成が適うとしても、事業者の独立性と継続性等がどこまで保証されるのか、事業者が気付かない問題点を発見し、修正できるのが弁護士の強みです。M&A後の状況を見据えて事業活動に専念できるようにするためにも、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(4)クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、誤解を恐れず非常に簡単にいえば、インターネット上で不特定多数の者に宣伝し、資金調達を行うことをいいます。

クラウドファンディングには様々なタイプがあり、例えば、寄付を募る場合もあれば、出資を募集する場合もあります。あるいは、開発を手掛けようとしている商品・サービスの先行販売権をオプションとして付与するものもあります。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

クラウドファンディングに様々なタイプがあること上記の通りですが、いずれにせよ不特定多数の者からお金を集めることができるので、その集めたお金を資金需要に充てることが可能となります。

ただ、社会的に認知度が高くかつ常日頃より広報戦略を駆使している事業者であればともかく、事業規模の大小を問わず、一般的な事業者において、一からクラウドファンディングを開始したとしても、お金が集まることは困難と言わざるを得ません。多くの場合、クラウドファンディングの仲介業者を通じて実施することになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

例えば、出資を募るクラウドファンディングを実施する場合、金融商品取引法等の法規制を強く意識する必要があるのですが、同法に留意することなく実施した場合、警察沙汰になりかねず要注意です。

また、融資型又は貸付型と呼ばれるクラウドファンディングもありますが、日本ではソーシャルレンディングと言う方が主流かもしれません。この場合、貸付人は誰になり、どのような条件で借り受けることになるのか注意する必要があります。

おそらく現在日本で主流なのは新商品・新サービスの先行販売権を付与するタイプです。このタイプの場合、集めたお金の使途、新商品・新サービスの提供時期、新商品・新サービスの開発に失敗した場合の処理などの条件を明示しておかないことには、複数の資金提供者とトラブルが勃発します。このような事態になると風評被害等が生じ、その対策費用や信用力低下等でかえって資金繰り悪化の要因になりますのでやはり要注意です。

ところで、上記でも記載した通り、クラウドファンディングの仲介業者を通じて実施することが多いところ、手数料の計算方法(目標額の達成如何を問わず発生するのか)、事業者に課される義務はもちろん、事業者が現実にお金を入手できるタイミング等について留意する必要があります(一般的には、事業者が資金を事業投下したいと思っているタイミングよりも、後になることが多いようです)。

 

専門用語や独特の表現等が書き綴られた複雑怪奇な契約書を読み解き、いつどのようにして現金が入手できるのか正確に把握できるのが弁護士の強みとなります。クラウドファンディングは法的枠組みもはっきりせず、募集を行う事業者と参加者あるいは募集を行う事業者と仲介業者との契約内容の理解が非常に重要であるからこそ、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(5)価格改定

資金繰り改善目的で行う価格改定とは、端的に商品・サービスの値上げを意味します。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

もはや説明の必要が無いと思われますが、資金繰りは、入ってくるお金と出ていくお金のバランスを考慮しながら行います。この点、商品・サービスの提供価格を値上げすることができれば、当然入ってくるお金が多くなる以上、資金繰りの改善につながることになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

価格改定(値上げ)が実行できれば、苦労しないと思う事業者も多いと思われます。

たしかに、価格改定を取引先に強制させる法律など存在しないため、取引先との交渉が重要となるところ、取引先とのパワーバランスや取引打切りへの恐怖等もあり、そもそも交渉自体ができないということもあるかもしれません。

しかし、直接的な法律は存在しないとしても、値上げ交渉に間接的に役立つ法律はいくつも存在します。また、昨今では政府が積極的に価格改定を後押しする政策を取っており、これを利用しない手はありません。すなわち、事業者において、価格改定に使えそうな武器を如何に組み合わせて利用するのかが求められているところ、弁護士はこの武器の使い方を熟知しており、取引先に対して効果的に圧力をかけることが可能です。

また、価格改定交渉に弁護士が関与していることを取引先に示すことで、取引先としても報復的措置(不合理な取引打ち切りなど)など下手な行動はとれないと自制心が働きやすくなります。

 

価格改定交渉に弁護士が関与する場面が少ないからこそ、関与が分かった場合、取引先は安直な対応を取れなくなることが弁護士の強みとなります。取引先と交渉の場を設定し、実りある価格改定を実現したいのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

 

 

3.経費削減における弁護士の活用法

 

(1)中間経費の削減・取引先の変更

中間経費の削減とは、商品等を仕入れる際に、流通過程にある問屋等を排除し、直接メーカーと取引することでコストを削減することをいいます。

取引先の変更とは、文字通り、同一商品・サービスを安く扱っている取引先に変更することでコストを削減することを言います。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

資金繰りは、入ってくるお金と出ていくお金のバランスを考慮しながら行うところ、商品・サービスの仕入費を削減できれば、当然出ていくお金が減りますので、資金繰りの改善につながることになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

メーカーとの直接取引を禁止する旨の条項を定めた契約書が存在し、これを盾に中間業者より不当な対応である旨の指摘を受けることがあります。また、取引先より、継続的な取引契約である以上、取引先の期待に反して一方的に取引を打ち切ることができないと指摘されることもあります。

こういった指摘を受けた場合、事業者も思考停止状態となり、せっかくの資金繰り改善策の実施がストップしてしまうという現象が起こるようです。

しかし、弁護士が関与することで、直接取引を禁止した条項が本当に法的に有効なのか、事実として長期の取引関係があったとしても果たして法的な意味で継続的契約が成立していたといえるのか等、そもそも論に疑義を挟むことが可能となります。これにより、取引先に対して有効な反論を行うことができ、資金繰り改善策を引き続き実施することが可能となります。

 

上記のような場合を含め、弁護士は、どのような打開策があるのかを発見し、できる限りトラブルにならないよう道筋をつけることができるのが強みです。資金繰り改善策を力強く推進したいのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(2)家賃削減

家賃削減とは、文字通り、オフィスや工場など賃借物件の賃料を削減することをいいます。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

これも上記(1)で記載した通り、家賃を削減できれば、当然出ていくお金が減りますので、資金繰りの改善につながることになります。特に家賃は固定費であり、毎月必然的に発生しますので、その改善効果は大きいものとなります。

 

・弁護士を関与させるメリット

賃貸借契約書上、賃料減額を申し出ることを禁止する条項があると家主から説明を受け、諦めてしまう事業者が多くいます。また、賃料を一定期間ごとで自動的に増額させる条項が定められていることを理由に、賃料減額交渉ができないと思い込んでしまう事業者も多くいます。

しかし、弁護士からすれば、賃料減額禁止条項及び賃料自動スライド条項があったとしても、そもそもこれらの条項は無効ではないか、仮に賃料自動スライド条項が有効であったとしても、賃料減額の申出を行うこと自体は矛盾しないのではないかと気が付くことができます。これにより、家主に対し、賃料減額に関する交渉の場を設けるよう正々堂々と主張することが可能となります。

 

弁護士は、契約条項の有効性に気が付くことができ、賃料減額申出の法的妥当性を判断できるのが強みです。家賃削減による資金繰り改善を何としてでも実現したいのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

なお、家賃改善コンサルタント等と称する者が、家主と直接交渉に当たる、あるいは一時的に事業者の従業員等に仮装して家主と直接交渉をするといったことが横行しているようですが、いずれも弁護士法違反の問題が出てきます。家主がこの問題に気が付いた場合、家賃削減交渉どころではなくなりますので(弁護士法違反は刑事罰を伴う重い犯罪です)、十分ご注意ください。

 

(3)給料・賃金削減

給料・賃金削減とは、従業員の給料など人件費カットをいいます。

人件費カットは聖域と言われるくらい、最後の最後に手を付けるべき領域とされていますが、これは事実上のものに過ぎず、コストカットの順番が法的に定められているわけではありません。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

固定費でありかつ経費の大部分を占める給料・賃金を削減できれば、出ていくお金が劇的に減り、資金繰りの改善に大きな効果をもたらすことになります。

なお、給料・賃金削減の方法としては、全従業員を対象に一律に給料・賃金カットを行う方法、一部従業員のみ給料・賃金カットを行う方法、一部従業員との労働契約を終了させることで給料・賃金カットを行う方法、一時帰休をすることで給料・賃金カットを行う方法などが考えられます。

 

・弁護士を関与させるメリット

上記において、人件費カットは最後の聖域と言われるが、法的にコストカットの順番が定められているわけではないと記載しました。

しかし、一度定めた給料・賃金を合法的に減額することは並大抵のことではなく、残念ながら素人知識で対処すると、後で痛いしっぺ返しをくらうことになります。また、希望退職の募集、退職勧奨、整理解雇などは判例法と呼ばれる法律上明記されていないルールが確立しており、やはり素人知識で対処すると、後で高額な損害賠償負担等を強いられることも少なくありません。

ただ逆に言えば、正確な法的知識を前提に論理矛盾なく淡々粛々と手続きを進めつつ、しかし一方で対象となる従業員と誠実に協議を行い説得する…という対処ができるのであれば、人件費カットは実現可能です。

 

弁護士は、正確な法的知識はもちろん、数多くの交渉案件を取扱い経験豊富であることから、淡々粛々と手続きを進めつつ、誠実に協議するといった相矛盾するような対処を行いうることが強みです。また、裁判になった場合、事業者はどれくらいの金銭負担を強いられるのかを理解していますので、どこで交渉を妥結するべきかの判断も適切に行うことができます。コストカットの中でも難問に分類される給料・賃金削減とはいえ、背に腹は代えられないのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(4)支払い期日の先送り(リスケジュール)

支払い期日の先送りとは、当初の約束していた支払い日を後ろにずらすことをいいます。

リスケジュールとは、当初約束していた分割支払い額を減額し、支払期間を延ばすことをいいます。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

支払期日の先送り、リスケジュールを実行した場合、本来支払いに充てるべきお金が一時的とはいえ事業者の手元に残ることになります。この結果、そのお金を、タイミングよく利益が生じる事業活動に充てることが可能となりますので、資金繰り改善に役立つことになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

支払期日の先送り、リスケジュールとも、事業者が一方的に実施できるものではなく、必ず取引先の同意が必要となります。同意を得るためには、取引先に対して状況を説明し、説得することが必要となりますが、たいていの場合、事業者は自らの苦境を説明するのみであるため、取引先より好反応が得られません。

取引先を説得するのであれば、支払期日の先送り、リスケジュールに同意することによって取引先が得られるメリットを提案する必要があり、これができれば取引先の同意も得られやすくなります。

 

弁護士は、このメリットを見つけ出すことはもちろん、このメリットが決して事業者の独りよがりではない客観的裏付けを担保すると共に、交渉術としてどのタイミングで取引先へ切り出せば効果的なのか等々の戦略を練ることができるのが強みです。支払期日の先送り、リスケジュールを検討する段階は、かなり事業者として追い込まれている状況であることが多いですが、本気で資金繰りの改善に取り組みたいのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

 

(5)私的整理(債務免除)

私的整理とは、破産や民事再生など法的手続きではなく、取引先等の債権者との協議により事業者の再生を実現するための手続きをいいます。

この私的整理が上手くいった場合、事業者が取引先に対して負担している債務を免除してもらえることが通常です。

 

・なぜ資金繰り改善に役立つのか

本来支払うべき必要があったにもかかわらず、支払い義務が免除される以上、その分のお金を事業活動に充てることができますので、資金繰りの改善に劇的な効果が生じることになります。

 

・弁護士を関与させるメリット

「私的整理に関するガイドライン」等、私的整理を実施する上での環境整備は整いつつあるものの、事業者のみで実行することは不可能(まず取引先等の債権者が協議に応じない)というのが実情です。したがって、私的整理を実施するのであれば、弁護士に関与させることが事実上必須と言っても過言ではありません(弁護士以外の専門家も関与させる必要があります)。

 

弁護士は、取引先に対して私的整理に応じたほうが大きなメリットが得られることを、理路整然と説明できることが強みとなります。したがって、私的整理を行ってでも資金繰りの改善を図ると腹をくくったのであれば、弁護士を活用することをお勧めします。

なお、私的整理を実行するのであれば、できる限り早期にご相談いただくことが望ましいことは言うまでもありません。ただ、執筆者が知る限りの実情としては、私的整理を実行するのは既に手遅れであり、破産しか手段が残されていないということが多いので、この点は是非とも事業者の皆様にご理解いただきたいところです。

 

 

4.当事務所におけるサポート内容

 

当事務所では、事業者より直接相談を受けて資金繰り改善のお手伝いをすることもありますが、税理士・中小企業診断士・コンサルタントからのご紹介を受けて、資金繰り改善に関与する事例が多いという傾向があります。

税理士・中小企業診断士・コンサルタントと協同して実施することで、弁護士視点だけに留まらず、様々な視点で資金繰り改善業務に携わり、得られた知見とノウハウは相当なものになると自負しています。

ところで、税理士・中小企業診断士・コンサルタントの方々と直接のご面識がない場合であっても、お声掛けいただければ、できる限り協力するというスタンスで臨んでいます。

事業者の資金繰り改善に役に立ちたいという思いは同じですので、経営者の方はもちろん、面識のない税理士・中小企業診断士・コンサルタントの方々も、弁護士が必要な場面では是非ご相談ください。

 

 

 

<2023年11月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

 

 

 

リスク管理・危機管理のご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

弁護士へのご相談・お問い合わせ

当サイトの記事をお読みいただいても問題が解決しない場合は
弁護士にご相談いただいた方がよい可能性がございます。

下の電話番号もしくはメールにてリーガルブレスD法律事務所までお問い合わせください。

06-4708-7988メールでのご相談

運営事務所

当事務所は大阪で中小企業の法務に特化したリーガルサービスを提供しています。一貫して中小企業法務に力を入れてきたため、高い専門性とノウハウを取得することができました。結果として大阪を中心に多くの企業様から支持を受けています。企業の法務問題で顧問弁護士をお探しの方は、リーガルブレスD法律事務所にご相談ください。

アクセスランキング


人気記事ランキング

MAIL MAGAZINEメールマガジン

法律や話題のニュースを弁護士の視点で解説。
無料で読めるメルマガの登録はこちらから。
プライバシーポリシーに同意の上、登録してください。

メールマガジン登録