フランチャイズ本部として事業展開する場合の注意ポイントを弁護士が解説!

【ご相談内容】

フランチャイズ本部として事業展開しようと考えているのですが、どういった点に注意すればよいのでしょうか。

 

【回答】

フランチャイズ本部として事業運営するということは、他人資本を借りながら、同一看板でチェーン展開を図るということになります。加盟者がチェーンに加盟する動機は様々ですが、あくまでも加盟者は他人である以上、事業運営に関するルールを明確にする必要があります。もちろん財務面や人材面、情報管理など検討するべき事項は多方面にわたるのですが、ここでは執筆者のトラブル経験事例から逆算した、トラブル回避のために先に検討しておきたい26のチェック事項としてポイント整理しました。

 

【解説】

1.はじめに

フランチャイズ本部の立ち上げ方については、費用をどうやって捻出するのか、フランチャイズ事業に充てる人員配置をどうするのか、研修・教育指導体制をどうやって構築するのかなど様々な事項に注意を払う必要があります。これらの事項について各専門家にお任せするとして、ここではフランチャイズ特有の問題点から逆算して、あらかじめどういった対策を講じるべきなのかを解説します。

なお、チェック事項の中には明記していませんが、フランチャイズ事業を行う場合、実は「チェーン名(店舗の名称、屋号など)」を意識しておく必要があります。通常は直営店で用いている名称を使うため検討は後回しになることが多いのですが、①第三者がすでに利用していないか、②商標権の取得は可能か、③チェーン名と会社の名称(商号)は異なっているかについても、できれば事前に確認を行いたいところです。

2.加盟募集するに際してのチェック事項

【チェック事項1:加盟者が負担する金額と対価内容について説明ができるか?】

フランチャイズに加盟しようとする人は、当然のことながら加盟することによって経済的な利益を得たいと考えています。また、フランチャイズ本部としても、加盟者より金銭を得ることで経済的利益を得ようと考えていることは否定できない事実です。お金の問題は最大の関心事となりますので、「対価の名目」、「対価の内容」、「具体的金額」については明確にし、母集団間で適切に説明できるようにするべきです。

ちなみに、フランチャイズ契約による一連の取引を想定した場合、加盟者にとって必要となる費用については、ステージと誰に対して支払うのかを区分しながら検討すると抜け漏れを防止しやすいと思われます。例えば、次のようなものが考えられます。

本部に支払う 本部以外に支払う
契約締結時の段階 加盟金、加盟保証金、立地診断料など
開業準備の段階 初期研修費、(本部から直接購入する)商品や什器備品等の購入費など 【物件】仲介手数料、敷金・礼金、家賃など

【工事】設計費、内外装費など

【物品】商品仕入費、什器備品購入費、レジ導入費など

【その他】人件費(採用募集費を含む)、水道光熱費、システム導入費など

開店後の段階 ロイヤルティ、(本部から直接購入する)商品や消耗品等の購入費、広告宣伝費など 商品や消耗品の購入費、人件費、水道光熱費、機材の保守料、リース代、販促費など

なお、本部が加盟者より直接受け取る対価については思いつきやすいのですが、加盟者が本部以外に負担する必要のある対価費目については意外と見落としがちです。もちろん、本部が受領する金銭ではないということで、この点の開示は省略するということも考えられますが、加盟者はフランチャイズに加盟して経済的利益を欲しているわけですので、収支勘定の前提となる経費については情報開示したほうが適切と思われます。したがって、直営店で負担している対価費目を洗い出し、どういった費用負担が加盟者に生じるのかを検証することが望ましいといえます。

 

【チェック事項2:セールストークの妥当性、特に売上予測は情報提供するのか?】

加盟店とトラブルに一番なりやすいのが、加盟勧誘時のセールストーク、特に売上予測を含む収支モデルに関する事項です。

まず、誤解のないよう先に説明しておきますと、いわゆる売上予測を行い、本部が情報開示する義務はどこにもありません。したがって、売上予測について一切情報を開示しないとする対応は法律上全く問題ありません。

ただ、加盟店はフランチャイズに加盟する目的は経済的利益を得ることにあります。この目的を達成できるか否かの判断として、フランチャイズに加盟し事業運営することによってどれくらいの利益が得られるのか、数字が見えないことには判断ができず、最終的にはフランチャイズ加盟を見送ることになります。このような実情を踏まえると、売上予測を行う、売上予測が難しいのであれば、本部の直営店舗による収支実績を公開する、全店舗平均の収支実績を公開するといった、具体的な数字を見せることが事実上必須となります。売上予測を行うのであれば、前提となる基礎資料に妥当性があること、基礎資料から予測額を導き出すプロセスに合理性があることを意識する必要があります。また、実際の事業収支を公開するのであれば、当然のことながら虚偽ではない情報を公開する必要があります。

上記の通り、売上予測を含む収支情報に関する説明が一番のポイントとなりますが、その他事業の優位性・メリットを強調したいがために実際には実施困難なセールストークを行うこと(よくある例としては経営指導の頻度や損失が出た場合の救済策など)は厳に慎む必要があります。

 

【チェック事項3:初期投資と事業リスクについて説明ができるか?】

チェック事項1.と重複する内容とはなるのですが、フランチャイズ加盟時に必要となる費目については、加盟者に対して一括払いを求めることが多いかと思われます。このため、加盟者において一括払いができるだけの資金を有しているか確認することが重要です。

ところで、加盟者の手元資金に余裕がない場合、金融機関からの借入を検討することになるのですが、この際、金融機関に提出する事業計画書を作成することになります。本来借入を行う加盟候補者が作成しなければならないものなのですが、実際のところ収支の見通しに関する情報を持っているのは本部です。このため、事実上本部が事業計画書を作成し、それを金融機関に提出するのが実情です。これ自体はやむを得ないところがあるのですが、問題はこの事業計画書の中身です。対金融機関用ということで、盛った数字(根拠の乏しい過大な売上額の算定など)を記載した事業計画書になりがちです。この事業計画書が後々問題なるのが、実際にフランチャイズ加盟し開業したものの思うような利益が出ないことで加盟者とトラブルになった場合です。加盟者からはこの盛った数字の事業計画書が売上予測として本部より説明されたと言ってくるのです。実際に本部が作成したものである以上、本部としても真正面から反論しづらいところがあります。こうしたトラブルを回避するためには、本部が事業計画書を作成するに際しては、適切なリスクを織り込んだ控えめの数字にするといった対策を講じる必要があります。

あと、事業リスクとして、どうしても開業当初は売上げが伸び悩むという事態がありうるところです。加盟者は開業資金等で全財産を使い果たしており、日々の生活資金がないというのでは事業運営が困難となりますので、必要となる対価費目以外に、最低でも半年程度の生活資金を確保するようアドバイスしておくこともポイントではないかと考えられます。

3.立地選定作業に関してのチェック事項

【チェック事項4:出店・営業活動可能な地域の限定を行うのか?】

リアル世界で店舗開店する場合、立地をどうするのかという問題が出てきます(インターネット上では立地についてはあまり問題になりません。一昔前に話題になったセカンドライフ等であればバーチャル上の立地は問題になるかもしれませんが)。立地については、当然のことながら駅前等の人通りが多い場所、幹線道路に面した場所、集客施設に隣接する場所など色々とあるのですが、本部としては加盟者の好き勝手に開店場所(立地)を決められてしまうと、他の加盟者の立地選定にも支障を来すなど多店舗展開に悪影響を及ぼすことからある程度制限をかける必要があります。

そこで、開店場所(立地)については一定の地域内に限定されること、開店場所(立地)の選定期間は一定期間内に行うといったルールがあるのであれば、加盟者に説明し理解してもらう必要があります。

 

【チェック事項5:近隣で第三者による出店の可能性があるのか?】

チェック事項4では、加盟者において出店可能な地域を限定するのかという点を解説しましたが、ここでは加盟者以外の第三者(他の加盟者の場合もあれば本部自らという場合もあります)が、その出店可能な地域にて出店できるのかというチェック事項です。

コンビニエンスストア業界では、ドミナント戦略と呼ばれる方法により、近隣(店舗の商圏内)に同一ブランドの複数店舗が出店するという現象がありますが、これは一定の地域については、当該加盟者唯一であるという限定を付していないことに由来します(限定がある場合は、テリトリー権あるいは地域独占権などと呼ばれたりします)。

本部による自由な多店舗展開を図るのであれば、加盟者に対してテリトリー権等を付さないということになります。ただ、加盟者からすれば、同一商圏内に同一ブランドの店舗が開業となると顧客を奪われるのではないか、売上が落ちるのではないか等の不安が生じトラブルになりやすい項目です。この点についてもあらかじめ十分な説明を行う必要があります。

なお、トラブルパターンとして、フランチャイズ契約書上はテリトリー権等を付与しないと定めているにもかかわらず、加盟勧誘時のセールストークでは「商圏内に出店しない」という説明を受けたと主張されてしまう場合があります。本部としては、こういった矛盾が生じないように営業担当者の教育指導を常日頃から行う必要があります。

 

【チェック事項6:不動産物件の紹介は行うのか?】

フランチャイズ契約を締結する前に開業用物件を発掘し決めるのか、締結後に物件の発掘・決定を行うのか、どちらのパターンもあるかと思われますが、加盟者のみで立地選定を行うことは難しいのが通常です。そこで、加盟者が探し出してきた物件について、本部が立地診断を行い開業の適否を判断する形で支援する場合もあれば、本部が加盟者に代わって物件を探し出し、加盟者に物件を紹介するという形で支援する場合もあります。

物件が決まらないことには事業を開始することができませんし、やはり加盟者とトラブルの元となります。特に、加盟勧誘時のセールストークでは本部が適切な物件を紹介すると言っていたにもかかわらず、いざ加盟したら本部からの物件紹介がなかった、あるいは物件の紹介自体はあったが素人目に見ても立地が悪い、といったトラブルが発生しがちです。本部としては、①そもそも物件の探索責任はどちらにあるのか、②本部は物件選定に対しどこまで介入するのか(なお、本部がお勧め物件として紹介した場合は実質的に利益が出る物件として立地診断したものと加盟者に受け止められてしまう恐れがあるので要注意)、③物件選定に関して本部に対し何らかの費用を支払う必要があるのか、を整理した上で、加盟者に説明し承諾してもらう必要があります。

なお、本部が物件紹介を行う場合ですが、具体的な賃貸借条件の交渉等にまで介入すると宅建業法違反になる可能性が出てきます。適切な仲介業者をあらかじめ確保しておく等の対策が必要となります。

また、何らかの事情で、本部が賃借人(兼転貸人)、加盟者が転借人とならざるを得ない場合があります。この場合、本部は事実上、不動産物件について連帯保証人になるのと同じですので、フランチャイズ契約以外の加盟者との権利関係について整理を図る必要があります。

4.開店前準備段階でのチェック事項

【チェック事項7:初期研修は行うのか、その場合の費用負担はどうなるのか?】

フランチャイズに加盟した加盟者がうまく事業運営ができるか否かは、初期研修の充実度にかかっていると言っても過言ではありません。したがって、よほどのことがない限り(例えば既に1店舗目を開業・運営しており、後で複数店舗の開業・運営に乗り出そうとしている加盟者などは初期研修不要かもしれません)、本部は初期研修を実施するはずです。ただ、この初期研修については何をどこまで行うのか、本部と加盟者との間で認識の齟齬が生まれやすく、後でトラブルになった場合は必ず加盟者より初期研修では何も教えてくれなかったと主張されることになります。

初期研修については、加盟者の事業運営に対する不安を取り除くためにも重要なものです。本部としては、いつ、どこで、誰が、誰に対し、どういった形式で行うのか等の詳細を説明できるようあらかじめ準備するべきです。

また、初期研修それ自体に別途費用が発生するのか(加盟金には含まれていないのか)、初期研修の受講者にかかる人件費や交通費等については誰が負担するのか(原則的には加盟者ですが、本部が一部費用の支援を行うのか等)についても説明できるよう準備するべきです。

 

【チェック事項8:店舗の設計・建築について決まりごとはあるのか?】

フランチャイズは統一イメージに基づく需要者へ訴求するという業態ですので、本部としては需要者の目に入ることになる店舗設計や内外装につき指定したいところです(もちろん、店舗設計や内外装について加盟者の自由裁量に委ねるという方針の本部もあるかと思いますが、一般的ではないように思います)。

ところで、店舗設計の作成作業や内外装工事については、本部自らが行うことは通常ありません。また、加盟者自身が工務店等の施工業者であればともかく、やはり加盟者自らが内外装工事等を行うことも有りません。このため、設計作業や内外装工事については第三者に実施依頼することになるのですが、店舗設計や内外装も一種のノウハウであり、本部としてはできる限り開示したくありません。また、既に施工実績がある業者に依頼した方が本部との意思疎通も図りやすく作業がスムーズに進むという側面もあります。このため、本部としては、施工業者を本部が指定する業者にしたいという意識が働きます。

当然のことながら、加盟者が、本部の指定する業者に依頼することを承諾するのであれば問題ありません。しかし、加盟者が本部指定業者以外の施工業者に作業実施を依頼したいという意向を示した場合、この点は調整する必要があります。したがって、本部指定業者以外の施工業者による作業を認めるのか、認めるのであればどういった基準を設けるのか等、あらかじめ本部は準備しておく必要があります。

ところで、本部そのものを施工業者として指定し、本部が下請業者に実際の施工作業を依頼するという形式があります。この形式は当然に違法というわけではありませんが、契約の形式上、本部が建設工事を請負うことになる以上、建設業法上の許認可を原則取得する必要がありますので、注意が必要です。

なお、店舗設計や内外装工事は初期投資の中でもかなり重い負担割合になることが多いので、本部は加盟者に対し、必ず店舗設計や内外装工事の概算等を加盟契約締結前に示し、加盟者の資金準備・資金繰りに問題が生じないか、一緒に検討したほうが無難です。

 

【チェック事項9:什器備品の指定はあるのか?】

上記チェック事項8でも記載しましたが、フランチャイズは統一イメージに基づく需要者へ訴求するという業態ですので、本部としては需要者の目に入る(使用する)什器備品等についても、指定したいところです。

この点、什器備品等が形状・材質・品質等に特異性がある特注品であり、一般市場で流通していないというのであれば、加盟者は本部が指定する業者より購入する必要がありますので、あまり問題にはなってきません。問題は、什器備品等について、一般市場で流通している既製品と同じであり、本部指定業者より購入するよりも一般市場で購入したほうが安価であるという場合です。こういった場合にまで、加盟者に対し、什器備品等について本部指定業者より購入させることを義務付けるのは相当難しいと考えられます(法的には独占禁止法上の問題が、事実上も加盟者の納得が得られないという問題があります)。

以上の通り、什器備品等について本部指定業者より購入することを加盟者に義務付けるのであれば、本部はそれ相応の理由を示す必要がありますので、あらかじめ検討しておくべきです。また、場合によっては、一般市場で流通している什器備品等による調達も認めることも検討するべきでしょう。

ところで、最近では、什器備品等の全部または一部について、本部があらかじめ準備し加盟者に賃貸するという方法をとる場合もあるようです。ただ、通常の賃貸借とは異なり、一定期間の経過(例えば償却期間の経過)によって什器備品等の返還は不要としたり、加盟者に譲渡されるといった形態になることが多いようです。やや特殊な賃貸借契約となりますので、この点は注意が必要です。

最後に、什器備品等を加盟者が購入する場合、まとまったお金が必要となりますので、本部としては忘れずに初期投資として必要となる什器備品等の概算額を示し、加盟者の資金順や資金繰りへの影響を一緒に検討したほうが無難です。

 

【チェック事項10:リース導入の必要性はあるのか?】

上記チェック事項8及び9で記載した、内外装工事の実施や什器備品等の購入については多額の資金を必要とします。加盟者によってはこの資金が準備できず(加盟者自らが準備した資金と金融機関のからの借入資金を合計しても不足する)、フランチャイズの加盟をあきらめてしまうという問題が生じたりします。こういった事態に備えて、本部がリース業者と提携し、加盟者にリース業者の紹介を行うことで問題解決を図るということもあるようです。

このようなリース業者を紹介し、フランチャイズへの加盟を促進すること自体は何ら違法ではありません。ただ、本部は、このようなリース業者と業務提携する場合は色々と注意を払う必要があります。特に注意しなければならないのは、上記の例のような加盟者はどうしても与信不足であるため、リース業者より本部が連帯保証人になるよう要求される場合あるということです。もちろん、本部の経営方針として、フランチャイズ加盟者の増加を図ることを優先し、連帯保証人となるリスクを劣後させるという判断を行うこともありうるかと思います。ただ、連帯保証人になるということは、潜在的に債務を負担していることと同じです。そして、何より加盟者が事業を失敗させた場合、本部も責任を負うことになります。要は、本部と加盟者が運命共同体のような形になってしまうのですが、果たしてそこまでしてフランチャイズに加盟させるべき加盟者なのか、よくよく検討したほうがよいのではないかと考えます。

なお、リース業者を加盟者に紹介する場合、原則的には加盟者とリース業者との交渉に委ねたいものの、事業計画書の作成や場合によって交渉の同席を求められる等、本部の関与がどうしても必要となります。チェック事項3でも記載しましたが、本部が事実上作成した事業計画書の作成をもって売上予測を行ったと加盟者から後で主張されないよう、本部として対策を講じる必要があること要注意です。

 

【チェック事項11:損害保険の加入義務、内容について指定はあるのか?】

ここで確認するのは、民間の保険会社が販売している店舗賠償責任保険などを前提にしています。法律上加入しなければならない保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険など)については、加盟者が当然加入するべきものですが、加盟者によっては経費削減の名のもとにあえて加入しないという行動をとることも有りますので、コンプライアンス上問題があること、無保険の場合は加盟者のみならずチェーン全体の風評被害を招くことから、必ず加入するよう指導を行ってください。

さて、上記の通り、民間の保険会社が販売している損害保険である以上、法律上の加入義務はありません。ただ、事業運営で起こり得るリスクに対し、すべてのリスクを加盟者が受入れ対処するというのは不可能ですので、リスク転嫁策としての保険の導入は絶対に必要です。ただ、損害保険については内容が複雑であり、一口に損害保険といっても、どういったリスクがカバーされているのか、またどういったリスクを想定した上で補償対象にしてもらうのか、加盟者のみでは判断がつきません。

したがって、本部としては、加盟者に対してあらかじめ本部が指定している損害保険に加入を義務付けることを念頭に置く必要があります。もっとも、損害保険に加入する場合、通常は損害保険代理店を通じて加入することが多いのですが、損害保険代理店までは指定する必要はないかもしれません(損害保険の内容が確定している以上、保険会社が商品として販売していることになりますので、どの保険代理店でも取扱いが可能だからです)。損害保険の内容と、どの代理店を用いるかは一応別問題と本部としては整理したほうが良いと考えられます。

なお、物件の賃貸借契約に付随して、家主が賃借人である加盟者に対し、火災保険に加入することを義務付ける場合があります。この場合、本部が加入を指示する損害保険でカバーされる補償内容と重複しないか、本部として調整を行うべきです(場合によっては、加盟者に無駄な保険負担を押し付けることになります)。

5.開店時に際してのチェック事項

【チェック事項12:開店指導は行うのか?】

開店場所が確定し、内外装工事等が完了し、店内に什器備品等が設置されれば、店舗オープンの準備は一通りできたことになります。ただ、モノはそろっても、その店舗で業務従事するヒトが準備できないことには、運営を行うことはできません。そこで、ほとんどの本部では、店舗開店前後の数日間、開店指導・援助を行うようにしています。

この開店指導等についてトラブルになりやすいのは、加盟者が期待していた指導内容と異なるというパターンです。したがって、本部としては、いつ、どこで、誰が、誰に対し、どういった内容の指導を行うのか、具体的に加盟者に提示し、加盟者と認識共有を図ることができるようあらかじめ対策するべきです。また、開店指導について、加盟金に含まれているのか、あるいは別途負担する必要があるのか等の費用体系の問題、仮に別途負担であれば、加盟者が支払いを行わない場合に開店指導は行わないのか等のルールも明確にしておく必要があります(加盟者が費用負担を行わないから、開店指導を行わないと割り切ってよいのかは非常に悩ましい問題となります。これは法律論ではなく、加盟者が今後の店舗運営を適切にできるのか、加盟者の無茶な運営によりチェーン全体に悪影響が出ないかという経営上の課題を検討する必要があるからです)。

 

【チェック事項13:継続的な経営指導は行うのか?】

フランチャイズといえば、店舗開店後の手厚い経営指導というイメージがあり、どこの本部でもこの点をアピールすることが多いようです。ただ、実際のトラブル現場を見てきた限りでは、本部がアピールしているような経営指導(例えばスーパーバイザーが臨店して指導を行う)が十分には行えていないというのが実情のように思います。

本部としては、加盟促進のためのアピール事項として経営指導の充実を謳いたいところだとは思いますが、特にアーリーステージ段階での本部であれば、開店後の経営指導が行える体制になるのか十分に検証の上、あまり背伸びせず、実際に対応可能な範囲での経営指導内容をアピールする方がトラブル回避にもなりますし、むしろ誠実な対応ではないかと考えます。

ここで本部が検討するべき経営指導の内容ですが、いつ(頻度)、どこで(臨店するというパターンが従来は多かったですが、最近はWEBカメラ等による遠隔指導も見られます)、誰が(社長自らが指導を行う場合もあれば、SV等の担当者に任せる場合もあります)、誰に対し(加盟者の場合もあれば、現場を任せている店長の場合もあります)、どういった指導内容を行うのか(売上改善などの経営面に関することが通常ですが、例えば顧客や従業員とのトラブルについて積極的に本部が介入するのか等の場面に応じた指導方針を明確にした方が無難です)になります。これらの点についても、本部としてはあらかじめ想定し準備を行うべき事項となります。

なお、開店後の経営指導については、一般的にはロイヤルティの対価とすることが多いですが、ロイヤルティを徴収しない代わりに都度指導料を徴収するという本部もあるようです。加盟者にとってわかりやすい費用体系を構築することも本部に必要な対応となります。

 

【チェック事項14:営業時間・営業日及び休業日について指定はあるのか?】

コンビニエンスストアの24時間営業が加盟者にとって困難な事態になってきている等、近時注目を浴びている内容となります。

フランチャイズチェーンが需要者に対して提供する統一的イメージの1つとして、やはり営業日・営業時間等を一律にしたいと考える本部が多いかと思います。そうであれば、フランチャイズ契約上は営業時間・営業日等については具体的に明記するのが原則的対応になります。とはいえ、実際に加盟者が経営困難になってしまっては元も子もありません。時代の要請もありますが、例えば本部が人員派遣する等の応援を行う、営業時間の縮小を行う等の個別的な対応は検討したほうが良いかもしれません。そして、個別的な対応を行うための基準や、個別的対応であるがために他の加盟者が当然に変更措置を要求できるものではないこと等のトラブル防止措置をフランチャイズ契約書に明記するという対応も忘れずに講じるべきです。

 

【チェック事項15:広告・販売促進活動について制約はあるのか?】

フランチャイズの建前からすれば、加盟者は独立自営の経営者である以上、加盟者が自由に宣伝広告や販促活動を行ってもよいはずです。そして、最近ではSNS等の加盟者自ら情報発信ができるツールが揃ってきていることから、加盟者が積極的に販促活動を行っている例も見られます。

ただ、SNSの炎上事件1つを取り上げても分かる通り、チェーン全体への悪影響・風評被害をもたらす可能性がある以上、加盟者の自由な販促活動を認めてしまって良いのかは非常に悩ましいところがあります。そして、チェーン全体への悪影響を防止する義務がある本部としては、やはり加盟者による販促活動については一定の制限をかける方が望ましいように考えられます。したがって、加盟者が行う販促活動をどこまで認めるのか、本部としてはあらかじめルールを設定しておく必要があります(事前許可制にするのか、メディア媒体を制限するのか等)。

ところで、上記とは異なり、チェーン全体のイメージアップ等を目的とした本部による広告宣伝活動も想定されます。この場合、本部のみが広告宣伝費を負担するのであれば特に問題は生じないのですが、加盟者に対して一定の負担を求める場合、事前に負担ルールについて明確にしておかないとトラブルになります。また、一部加盟者が負担しない状況下で本部による広告宣伝活動を実施した場合、加盟者間の不公平がどうしても問題となります。これについての対処法もできる限り想定しておきたい事項となります。

 

【チェック事項16:ロイヤルティ算定の基礎となる売上管理方法は構築できているのか?】

ロイヤルティ(一般的にはフランチャイズ契約締結時からではなく、開店(事業運営)開始後より、1ヶ月ごとで定期的に本部が加盟者より徴収する対価であることが多いようです)を一切徴収しない、または固定額であるというのであれば、以下の記述はあまり気にする必要はありません。

さて、一般的にロイヤルティは、「月額の売上高」に「一定の料率」を掛け合わせたもので算出されることが多いです。そうすると、正確なロイヤルティを計算するためには、本部は加盟者の事業運営による売上高を正確に把握する必要があります。いわゆるPOSレジ(最近ではiPad等の端末にPOSレジアプリを入れて代用する場合もあります)にインターネット回線を接続し、POSレジに記録されている売上高が閲覧できる状態にあるのであれば原則問題はないと思われます。しかし、加盟店からの売上報告ベースとなると正確な数字が把握できているかは不透明なところがあります。この報告内容の正確性をどのように担保するのか本部として検討する必要があります。

なお、「売上」の算出方法についても現場ではいろいろとトラブルがあったりします。例えば、消費税を含む数字を売上とするのか、本部主導で値引きキャンペーン等を実施した場合にはキャンペーン前の本来価格で算出するのか、返品等があった場合はロイヤルティ算出の基礎となる売上から控除してよいのか、といったものが代表例です。できる限りルールを明確化することがポイントとなります。

 

【チェック事項17:会計管理はできる体制になっているのか?】

本部としては、加盟店の経営状況を正確かつタイムリーに把握しておかないことには適切な経営指導を行うことができません。また、チェック事項16で記載したPOSレジは売上高や仕入高(POSレジを通じて事業運営に必要な発注を行う場合)を把握することはできますが、人件費などの運営経費すべてを把握することはできません。したがって、毎月の試算表やPLなどを加盟者に提出するよう義務付けたりするのですが、これもなかなか現場では実行されていないという実情があるようです。

このため、本部によっては、記帳代行を行うところもあれば、加盟者に関与する税理士を指定するといった対策を講じるところもあるようです。あるいは事業運営については一元管理する会計ソフトを導入し、その会計ソフトの使用を義務付ける(場合によっては加盟者に関与している税理士と会計ソフト上の内容を共有する)といった対策を講じる本部もあるようです。

なお、加盟者の事業運営状態については一切関知しないというフランチャイズ本部もあるようです。もちろん、そのような形態にすることも可能です。ただ、本部が加盟者に対して何らかの経営指導を行うという契約内容になっているのであれば、事業運営に関する情報を本部が積極的に取得しないというのは問題があるように考えられます。

 

【チェック事項18:顧客情報の管理ができる体制になっているのか?】

メルマガの配信やアプリ上でのクーポン提供など顧客獲得のためのマーケティング活動は色々と行われています。このような活動を行うためにも顧客の連絡先等を含む個人情報を取得する必要があるのですが、個人情報保護法に従った対応を行うことはもちろん、顧客の漠然としたプライバシー情報漏洩に対する不安をできる限り軽減するための対策をあらかじめ準備しておく必要があります。

典型的な問題としては、加盟者は本部とは異なる独立自営業者である以上、加盟者が取得した顧客に関する個人情報については加盟者に帰属することになります。そして、その顧客に関する個人情報について、加盟者が本部に開示した場合、加盟者は顧客の承諾なく第三者である本部に情報提供したことになります。直接的には加盟者が個人情報保護法違反に問われる可能性があるのですが、世間は「あの××チェーンが情報漏洩した」と認識します。つまり、法律上の加害者と世間が認識する加害者には相違があり、上記のような場合は本部を含めたチェーン全体に被害が及んでしまうということです。上記例であれば本部と加盟者の共同利用にする、あらかじめ第三者提供することを告知する等の対策を講じればよいのですが、意外と本部は、加盟者の顧客情報は本部に当然帰属すると考えがちです。個人情報やプライバシー情報の漏洩に対する世間の目は相当厳しく、経営に与える影響も無視できないというのが最近の特徴です。情報管理の在り方については、事前に検証を行う必要があります。

 

【チェック事項19:ユニフォームの指定はあるのか?】

店舗内で従事する職員のユニフォームについて加盟者に購入を義務付ける、購入までは義務付けないものの職員の身なり・服装については一定のものに制限する(一種のドレスコードと言えばよいでしょうか)といったことを行う本部があります。フランチャイズの統一性という観点から、本部がこういった対応をとること自体が直ちに問題になることはありません。

ただ、ユニフォーム購入を加盟者に義務付ける場合、最近の人員流動化(要は採用しても直ぐに職員が辞めてしまう)のため購入費用が思った以上の負担となり、加盟者の経営を圧迫する要因になったりします。したがって、費用体系の明確化はもちろんのこと、そもそも購入を義務付けるべきなのか(ユニフォームのレンタル等の代替策がないか)を検討してよいかもしれません。

なお、加盟者が職員に対してユニフォームの購入を義務付ける、あるいは業務従事中の身なり・服装について一定の制限を貸す場合、労働基準法や労働契約法の観点から留意するべき事項が出てきます。労務管理は加盟者の責任で行うべき事項とはいえ、トラブルになってしまったらチェーン全体に悪影響を及ぼしてしまいますので、本部としてはあらかじめ加盟者に対して、気を付けなければならない事項を指導できるよう体制を整えたほうがよいかと思われます。

 

【チェック事項20:原材料の供給方法に指定はあるのか?】

チェック8及びチェック9とも少し関連してくるのですが、フランチャイズチェーンとして事業運営する以上、加盟者ごとで商品やサービス内容・品質等が異なるという事態は回避したいところです。そこで、商品やサービスの品質維持等の観点から、原材料の購入については本部指定業者のみとし、本部指定業者以外の第三者からの購入は認めないとする措置を講じることがあります。

上記の通り、商品やサービスの品質維持等の正当性があるのであれば、このような措置が問題となることはありません。もっとも、一般市場で本部が求める品質と同等以上の原材料が流通しており、しかも本部指定業者より購入するより安価であるといった場合であれば、本部指定業者以外の第三者より購入を認めないとする措置の正当性を維持することは困難です(なお、商品・サービスに関する秘密・ノウハウの漏洩防止等の他の理由があれば別途検討する必要はあります)。したがって、原材料について本部が指定する流通ルートに限定するのであれば、なぜ限定する必要があるのか、その正当性について吟味する必要があります。

ちなみに、本部が本部指定業者よりバックマージンを受け取る、あるいは本部自身を指定業者とすることで本部が加盟者への売価と業者からの仕入れ値の差益をとるという場合があります。こういった事態が直ちに違法となることはありません(これも本部の利益獲得のためのビジネス手法であり、もとより合法です)。ただ、結局のところ、上記の通り、原材料の供給先を指定する正当性はあるのかという問題に帰着します。本部による原材料流通に際しての中間利益獲得を非難されることもありますが、この非難は少なくとも法律上は当てはまらないものと考えられます。

なお、加盟者が本部指定業者より原材料を購入する場合、加盟者と本部指定業者との売買契約となり、本部が契約当事者とならないことが通常です。この場合、当然のことながら発注方法や支払決済方法が本部のやり方と異なってきますので、本部としては、加盟者が混乱・誤認しないよう、マニュアル化するなどして情報整理を行うことが得策と考えられます。

 

【チェック事項21:商品の販売方法について決まりごとはあるのか?】

フランチャイズとはいえ、本部と加盟者は別個独立の経営主体です。したがって、加盟者が顧客に対して、商品販売・サービス提供する場合の価格設定については、加盟者の自由裁量に委ねられる(再販価格維持の禁止)のが原則です。もっとも、フランチャイズの統一性、すなわち全国どこに行っても一律の値段・水準で商品を購入でき、サービスの提供を受けることができる顧客の期待及び信頼に応えることは非常に重要です。したがって、フランチャイズの場合、本部が加盟者に対して商品販売価格やサービス提供価格を指定することは直ちに違法とはならないとされています。

もっとも、地域の実情(例えば地域ごとでの所得差があるなど)を踏まえて、商品販売価格やサービス提供価格を変更するという経営方針をとることももちろん可能です。この場合、本部が主導的に行うのか、加盟者の裁量に委ねるのか等については、事前にルールを設定する必要があります。

なお、商品販売価格やサービス提供価格という値段設定以外に、加盟者が取り扱う商品・サービスの内容の統一性についても検討を要します。これについては比較的地域実情に応じて柔軟に対応する本部が多いと思われますが、地域限定商品についてもやはり本部指定業者を通じて購入することを義務付けるのか等(チェック事項20参照)、本部としては流通経路の整理を図る必要があります。

6.契約更新時に関するチェック事項

【チェック事項22:更新料は徴収するのか?】

フランチャイズ契約の契約期間については法律上特別の決まりはありません。したがって、契約期間については本部で事由に定めることができます(ただ、私個人の感覚としては、加盟者が負担する初期投資を回収できる想定期間をベースに契約期間を定めることが多いように思います)。

さて、フランチャイズ契約が契約期間満了となるものの引き続き契約を継続させる場合、(自動)更新とするのか、再度合意の上でフランチャイズ契約書を締結しなおすのか方法は色々ありますが、契約期間の延長(更新)に際して、更新料等の名目で加盟者に別途費用負担を求めるのか検討する必要があります。法律上は更新料等の徴収については何らの規定がありませんので、本部の考え方次第となります。ただ、更新料等の対価を徴収するのであれば、なぜ徴収するのか対価内容を検討するべきです。なぜならば、加盟者としては更新前後で業務運営に変動が生じるわけではなく、何のための更新料か納得が得られにくいからです(なお、更新料不払いだけを根拠にフランチャイズ契約を解除するというのは相当難しいように思います)。

なお、更新料等の徴収する場合、対価内容に見合った金額の設定といえるのか、その合理性・相当性にも気を配る必要があります。

 

【チェック事項23:連帯保証人の取扱はどうするのか?】

フランチャイズ契約締結時、加盟者が法人であれば代表者個人、個人事業主であれば親族等を連帯保証人になってもらうということは、よく行われています。この実務対応については特に問題はないのですが、2020年4月1日に改正される民法により大幅にその手続きが変更となります(例えば、公証人の面前での保証意思の確認が原則となること、極度額(保証人が負担する上限額のこと)を設定する必要があること等です)。本部としては、後で連帯保証契約が無効といわれないよう、連帯保証に関する改正内容については十分に確認する必要があります。

ところで、2020年4月1日以降にフランチャイズ契約の契約期間が満了した場合、従前の連帯保証人の取扱いはどうなるのでしょうか。

実はあまりはっきりしていないというのが、執筆時(2020年1月1日)での状態です。執筆者の私見とはなってしまいますが、おそらくは次のような扱いになると考えられます。

・フランチャイズ契約を自動更新する際、連帯保証人とは特段のやり取りを行わなかった場合

⇒基本的には連帯保証契約も自動更新されたと考えてよい(仮に極度額の定めがなくても、民法改正後も引き続き有効な連帯保証契約となる。但し、フランチャイズ契約書上、別途定めがある場合は条項解釈による)。

・フランチャイズ契約書に自動更新条項がなく、別途延長に関する合意を行った場合

⇒連帯保証契約はフランチャイズ契約とは別契約である以上、延長に関する合意の際に連帯保証人と別途連帯保証契約を締結しない限り、連帯保証契約は終了する。

一方、連帯保証人と延長に関する連帯保証契約を締結する際、2020年4月1日以降であれば改正民法が適用されるため、保証意思の確認や極度額の設定等の新たな手続きを遵守する必要あり。

なお、フランチャイズ契約を更新する際、実務上は連帯保証人への連絡や意思確認は行ったほうが無難ではないかと考えます。というのも、現場で問題が生じ、いざ連帯保証人への請求を行おうと検討した場合、連帯保証人が既に死亡している、離婚している(連帯保証人が配偶者の場合)、加盟者との人間関係が疎遠になっている、場合によっては連帯保証人自身が破産していた等々、色々な問題に直面することが多いからです。フランチャイズ契約は通常長期間となりますので、更新時期くらいは保証意思確認を行うという方針を検討してもよいのではないかと考えます。

7.契約終了時に関するチェック事項

【チェック事項24:競業禁止義務を課すのか?】

フランチャイズ契約は、本部が有する事業成功ノウハウを開示し、そのノウハウをブラッシュアップしながら継続的に提供するというものです。このため、本部としては、フランチャイズ契約の有効期間中、チェーン店の事業成功のためにそのノウハウを使うことは推奨しますが、フランチャイズ契約期間終了後に元加盟者がチェーン店以外の事業運営にそのノウハウを用いることは禁止したいところです。そこで、後述のチェック事項25に定める秘密保持義務を加盟者に課すことはもちろんなのですが、秘密保持義務の実効性を担保するべく、元加盟者の行動を制限する競業禁止義務を課すことが通常行われています。

いわゆる退職した労働者・従業員に対する競業禁止義務は原則無効と考えられます。

しかし、フランチャイズ契約の場合、事業者間取引ですので競業禁止義務は原則有効と考えられています。ただし、競業禁止義務を課すだけの正当性がない(例:ノウハウ等の秘密情報の漏洩を防止するといった正当事由がないなど)、競業禁止義務に基づき制約内容が過度に厳しすぎる(例:フランチャイズ契約終了後10年間は同業・類似業での活動を制限するなど)といった例外事由がある場合は、競業禁止義務が無効とされる可能性があります。

したがって、本部としてはバランスを考慮しながら競業禁止義務の内容をフランチャイズ契約書上に定める必要があります。なお、現場実務の視点としては、競業禁止に該当する「競業行為」とは具体的に何を指すのか、業態や行為等の例示を明確にすることがポイントではないかと思います。

ちなみに、上記はフランチャイズ契約終了後のことを想定した記述になりますが、当然のことながらフランチャイズ契約の有効期間中も競業禁止については定めておく必要があります(ノウハウ等の漏洩防止はフランチャイズ契約の期間中・後を問わず、本部としては必要な要請となります)。なお、名称だけの問題になりそうですが、フランチャイズ契約期間中は事業専念義務という名目で、チェーン店の事業運営のみに集中させるという内容で競業禁止を定める本部もあるようです。

 

【チェック事項25:秘密保持義務を課すのか?】

上記チェック事項24で記載した通り、本部はチェーン店の事業運営成功のためのノウハウを開示し続けることになるところ、このノウハウこそがチェーン店の「強み」であり、本部としては門外不出にしたいものとなります。したがって、ノウハウ等を含む秘密保持義務を課すことは、本部としては当然の対応となります。

ただ、現場実務としては、抽象的に秘密保持義務を定めただけでは実効性がない、はっきり言えば役に立たないと言わざるを得ないところがあります。結局のところ、ノウハウ等を含む秘密といったところで、何が秘密情報なのか内容や輪郭がはっきりせず、秘密情報の老齢や無断使用といえるのか判断ができないという場面がどうしても生じるからです。したがって、何を秘密情報とするのかその定義や内容を明記することはもちろんですが、元加盟者がどういった行動を起こせば秘密情報を無断使用したと判断するのか(その典型例が上記チェック事項24で開設した競業禁止です)をフランチャイズ契約書に明記するのがポイントとなります。

なお、秘密保持義務についても当然のことながら、フランチャイズ契約の有効期間中も加盟者に義務付ける必要があります。

 

【チェック事項26:違約金を定めるのか?】

違約金については、フランチャイズ契約終了後に請求する事例が多いように思いますが(フランチャイズ契約期間中は何だかんだで関係悪化を回避するために保留することが多いように思います)、フランチャイズ契約の有効期間中も当然問題となっていきます。この点はご留意願います。

さて、フランチャイズ契約書に定めた内容については、法律上加盟者が守らなければならない事項ではあるものの、加盟者の中には意図してフランチャイズ契約に定めた内容に反する行動に出る場合もあります。そこで、フランチャイズ契約書に定めてある内容に違反した場合は厳しい制裁が待っていること、その制裁を回避するために契約内容の遵守を動機づける等の目的で、フランチャイズ契約に違反した場合は一定額の違約金を支払うことを義務付ける内容を定める本部が多いようです。

違約金規定を定めることが法律上禁止されているわけではありません。したがって、どういった違反をした場合に、どういった制裁(違約金の額)を課すのかは原則本部の自由裁量となります(もちろん、不当に高額すぎる金額は問題がありますが)。ただ、具体的な違約金の額を設定するとなると、本部としても算定根拠が分からない等の悩みが生じるようです。具体的な金額算定は、フランチャイズ契約に違反することによって、本部が被るであろう損害内容と(元)加盟者に対する心理的抑制力の働く金額のバランスを考慮しながら判断するほかないのですが、百万円単位の違約金を設定する傾向がみられるように個人的には感じます。

 

<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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