業務提携契約書を確認するに際して注意するべきポイントを弁護士が解説!

【ご相談内容】

業務提携を行うこととなり先方よりドラフト案を提示されたのですが、何を意識しながらチェックしていけばよいのでしょうか。

 

【回答】

業務提携契約書を確認するに際しては、まずは相互の業務内容・役割分担に関する取り決めが過不足なく規定されているか、それに伴う費用負担が合理的であるか、この点を意識して確認する必要があります。
その上で、業務提携により生じた成果についてどういった取扱い・利用を想定しているのかを考え、予測している利用方法に合致した規定となっているのかを確認する必要があります。
以下、【解説】で具体的な条項を見ながらチェックしていきます。

 

【解説】

1.業務分担の内容を確認する

業務提携を行う目的、それは双方の当事者が有する技術ノウハウや権利等を相互に持ち合い保管することで、単独では実現しえなかったことを可能にするという点にあります。この目的を達成するためには、大前提として双方が行うべき役割や業務内容を明確にする必要があります。

したがって、チェックするべき事項としては、業務提携による目的達成のために必要なる役割分担等について具体的かつ明確に規定されているのかがポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(業務分担)
甲及び乙は、本契約の目的を達成するため、各自次に定める責任を負担する。
・甲は××に関する技術及び技術実施のための情報を開示する。
・乙は××を解析するためのプログラムを開発する。

 

2.費用負担について確認する

業務提携とはいえ、当然のことながら相互独立する事業者ですので、経営それ自体に関与・介入することはありません。あくまでも一定の分野で協力するにとどまります。ただ、業務提携に伴う業務分担を実施していくに際しては様々な経費が生じることとなり、この費用負担について誰がどういった形で負担するのか決めておかないことには、協力関係を維持することは早晩困難となります。

したがって、業務分担の裏返しの問題として費用負担についてチェックすることがポイントとなってきます。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(費用負担)
本契約に基づく業務の履行に際して生じた費用は各自が負担し、相手方に請求しないものとする。但し、過分の費用を要する場合、相手方に対して費用負担について協議を求めることができる。

 

3.業務提携により生じた成果の取扱いについて確認する

業務提携の場合、相互が保有する情報を交換し合うことで成果を出していくことになります。もっとも、提供した情報と成果とは原則別個のモノである以上、情報を発信(開示提供)したから成果についても当然に自分に帰属するという関係には立ちません。このため、成果に対する帰属割合を予め定めておかないことには、場合によっては成果の権利を取得した者が一緒に情報まで合法的に帰属させてしまうことになりかねません。

上記点を踏まえ、何をもって成果とするのか、その成果の権利帰属はどうするのかという視点でチェックするのがポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(成果およびその帰属)
1.本契約における成果とは、本業務提携により得られた成果のうち、××に直接関連する発明、考案、意匠、コンピューターソフトウエア、ノウハウ等一切の技術的成果をいう。
2.甲及び乙は、前項に定める本業務提携の成果を、原則として共有する。ただし、甲又は乙が相手方から提供された資料、情報その他相手方からの助言、援助、協力によることなく単独でなした成果は、当該成果をなした当事者に帰属する。

 

次に、研究者肌の強い会社にありがちなのですが、せっかく業務提携した成果については、直ぐにでもリリースを行い、研究開発能力の高さをアピールしたいという意向の会社が存在します。

気持ちの面ではある程度は理解したいものの、発信(開示)した情報についてできる限り秘密裡にしたいにもかかわらず一方的に発表されてしまうと、情報が外部に漏れだしてしまい価値が無くなってしまうこともあり得ます。したがって、こうした発表に関する制限を設ける条項は忘れずに入れておくことも重要なポイントとなります。

(例)
第×条(成果の発表)
甲及び乙は、本業務提携の成果を第三者に開示又は外部に発表しようとする場合には、その内容、時期、方法等について、あらかじめ文書をもって相手方に通知し、その同意を得なければならない。

 

4.知的財産権の帰属について確認する

成果の帰属の問題と知的財産権の帰属の問題とはセットで考えた方がよいかと思うのですが、特許の出願その他権利化手続について何らの定めを置かない場合、情報受領者側が単独で権利化手続を行うことで、合法的に発信(開示)した情報を情報受領者側に奪取されてしまうことにもなりかねません。

したがって、権利化手続は必ず単独で行えないような内容にて定めておくべきです。

また、意外と明記していないことが多いのですが、サンプル条項例の3項但書の内容は非常に重要です。なぜならば、契約の文言上では「共同研究による成果」と「単独でなした成果」というのは明確に分類できますが、現場の視点では単独か業務提携の成果なのか明確に分類することは困難なところがあるからです。このため、ズル賢い企業になると、業務提携による成果の権利化手続については非常に狭いクレーム(請求項)にて特許出願を行い、一方で単独の成果であるとして秘密裡に単独の特許出願を先に行い、開示対象となった情報を単独出願という名の下で取り込もうとする、情報を合法的に帰属させようとすることも実際にあり得ます。

単独の成果だから単独出願で良いと単純に考えず、権利化手続前の監査ができるような契約内容に必ずするべきです。

上記点を踏まえ、共有の場合は当然のことながら、単独の場合であっても不当な制限をもたらさないかという視点をもってチェックするのがポイントとなります。

(例)
第×条(知的財産権の帰属)
1.甲及び乙は、甲乙共有する本業務提携の成果について、特許権、実用新案権、意匠権などの知的財産権を出願する場合には、本契約の終了後といえども、共同で出願するものとし、この出願により知的財産権を受ける権利及び当該権利に基づき取得された知的財産権(以下総称して「本件知的財産権」という)を共有する。
2.前項の知的財産権の出願をするときは、甲及び乙は、当該知的財産権の持分、出願費用の負担等について取り決めた共同出願契約を締結する。
3.甲又は乙が単独で所有する成果については、その成果の帰属する当事者が知的財産権の出願をなし、かつその手続きを遂行することができる。ただし、当該知的財産権の出願をするときは、当該出願書類のコピーを相手方に提出し、相手方提示の情報が包含されているか否かについて相手方の事前の審査と確認を得なければならない。

 

なお、業務提携先が単独で権利化した場合に備えて、別途次のような条項を設けるのも一案でしょう。

『甲及び乙は、自己単独所有にかかる成果について、相手方から××に直接関係する目的で実施許諾の要請があった場合には、これに応じるものとし、その条件については別途協議して定める。』

 

5.成果の実施方法について確認する

業務提携に伴い開示された情報を含む成果の実施方法について何らかの取り決めが必要なことは気づくことが多いのですが、情報受領者のみで実施するのか、情報受領者を通じて第三者に対しても実施するのかについては、意識的に分けて考えるべきです。当然のことながら、第三者への実施を認めることは、開示した情報を第三者に対してまで開示・提供することを意味するわけですので、第三者との間で情報の帰属や利用方法に関する取り決めを行わないことには、情報の保護を図ることができないことを意味します。

また、成果には開示した情報が含まれていますので、情報が受領者以外の第三者に漏れ出さないようにするためには、成果の持分権に対する譲渡等を禁止する必要があります。この条項についても忘れずに規定しておくべきでしょう。なお、情報が受領者以外の第三者に漏れ出すことを防止することを目的とした条項としては、他にも、①業務提携における分担業務を第三者に委託させることを禁止すること、②目的となっている業務提携の目的・内容について、少なくとも契約期間中は他の第三者との間で行わせないこと、③業務提携が中止となった場合の情報返還等の義務を課すこと等の条項も検討しておくべきです。

上記点を踏まえ、成果を誰が用いるのかを意識しながらチェックするのがポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(成果の実施)
甲および乙は、甲乙共有とされた本業務提携の成果及び本件知的財産権を自由に使用・実施することができる。

第×条(第三者への実施許諾)
甲及び乙は、甲乙共有とされた本業務提携の成果でノウハウとされたもの及び本件知的財産権を第三者に実施許諾する場合には、その可否及び条件を別途協議し取り決める。なお、本条の定めは、ノウハウについてはその秘密が守られている期間、本件知的財産権についてはそれが権利として有効に存続する期間、それぞれ存続するものとする。

第×条(持分の譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の書面による同意を得ずに、本業務提携の成果(本件知的財産権等を含む)に係る自己の持分を譲渡したり、自己の持分に質権を設定したりしてはならない。

 

6.業務提携からの離脱方法について確認する

業務提携に基づき共同作業を行ってきたものの、期待できるような成果が出ないことが判明した場合、業務提携は速やかに解消されるべきです。したがって、解消に際しての条件等があれば明記することになります(なお、一方の費用負担が大きいといった場合は精算の必要がある、技術情報の漏洩を防止する必要があるといった事情に応じて、色々な条件を明記することになります)。

また、提携解消後であっても相互に約束しておくべき事項、これについては①業務提携契約書に規定のある条項について引き続き効力を残存させること、②業務提携契約書に規定のない新たな義務を課す条項を設けること、の2つの観点から検討する必要があります。

上記点を踏まえ、業務提携の解消に際して条件を設定るするべきか、契約終了後の遵守事項は何かという点を意識しながらチェックするのがポイントとなります。例えば次のような条項です。

(例)
第×条(契約期間)
本契約の期間は×年間とする。但し、当事者のいずれかから×ヶ月前の事前申入れにより、本件を無条件に解除することができるものとする。

第×条(契約終了後の措置)
1.甲及び乙は、本契約に基づき相互に開示した情報の所有権、知的財産権、その他一切の権利は情報開示者に帰属することを確認し、相手方の書面による承諾なく当該情報を使用しないものとする。
2.情報受領者は、情報開示者より開示された書面または電磁媒体(写しを含む)を、本契約終了後直ちに返還する。返還不能な場合は情報開示者の指示する裁断・破壊等の方法により破棄しなければならない。
3.本契約終了後といえども、第×条、第×条及び第×条については、引き続き3年間効力を有するものとする。

 

<2020年8月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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