同業他社(商売敵)への対抗措置を講じる場合に気を付けるべき事項を弁護士が解説!

【ご相談内容】

同業他社との競争に勝ち残るため、次のような経営方針を立てたのですが、問題になることはあるのでしょうか。

(1) 当社製造の商品Xに類似する商品Yが出回っていることから、取引先やユーザーに対し、注意喚起を行うこと(偽物であること、取り扱わないように呼びかけること)

(2) 小売業者である当社と商圏・顧客層等が重複する競合の近隣小売事業者が、極端な安値販売(当社の仕入れ価格を下回る額)を仕掛けていることから、当社も近隣事業者に負けない安値で販売すること

 

【回答】

(1) 例えば、商品Yについて商標権や意匠権等を侵害する場合、あるいは不正競争防止法2条1項に定める不正競争行為に該当する場合は特に問題が生じないものと思われます。

しかし、何らの権利侵害・法律違反にならないにもかかわらず、商品Yを取り扱うことについて不利益となるような注意喚起を行うことは、独占禁止法2条9項6号ヘ、一般指定14項に定める「取引妨害」に該当し違法と判断される場合があります。また、商品Yを取り扱っている競争事業者との関係では、不正競争防止法2条1項14号に定める信用棄損行為に該当するとして損害賠償責任等が生じる場合があります。

 

(2) 仕入れ値を下回るような販売は「不当廉売」(独占禁止法2条9号3号、一般指定6項)に該当することから、安易な安値競争は回避するべきです。むしろ、近隣小売事業者に対して不当廉売であることの指摘や独占禁止法に基づく差止請求を行うこと、公正取引委員会へ措置を講じてもらうよう申告することが、対応方法として得策のように考えられます。

 

【解説】

1.取引妨害(設問(1)について)

 

独占禁止法に定める取引妨害

上記回答に記載した「取引妨害」について、独占禁止法に基づく一般指定14項では次のように定められています。

 

「自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。」

 

上記回答でも記載した通り、何らかの権利侵害(商標権、意匠権など)や法律違反(不正競争防止法が禁止する商品形態の模倣など)が成立する場合には、独占禁止法が禁止する「取引妨害」には該当しないと考えられます。しかし、類似商品が市場に出回るのは、自由な競争社会ではある意味当たり前であり、類似商品に対するネガティブな言動が許されるのは極めて限定的と考えるべきです。

この観点から独占禁止法が定める「取引妨害」が定められていることを、まずは押さえる必要があります。そして、取引妨害の該当性の判断基準には、不公正な取引方法の類型(取引拒絶、排他条件付き取引等)にありがちな要件である、行為者のシェア等の有力性、商品のブランド力、市場状況等に与える影響などといった大局的な観点からの充足性は必ずしも求められないという点も考慮する必要があります。つまり、端的に、やり方が汚い(競争手段として不公正である)と認定されれば、「取引妨害」に該当することになります。

 

信用毀損等の禁止(不正競争防止法)

ところで、本件のような事例の場合、独占禁止法以外にも不正競争防止法の問題を検討する必要があります(不正競争防止法は民事上の効果が規定されていますので、むしろ不正競争防止法を先に検討するべきかもしれません)。この点、不正競争防止法2条1項14号では「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」は不正競争に該当し、差止め請求の対象とできること、損害賠償請求ができることが定められています。つまり、商品Yを製造・取り扱うメーカー等は、このような注意喚起を行った当社に対し、不正競争防止法に基づく差止めや損害賠償請求を行うことできます。また、不正競争防止法に該当しない場合であっても、民事上の名誉・信用棄損に該当するのであれば、それに基づいて損害賠償請求を行うということもあり得ます。

 

類似品が市場に流通した場合、類似品を排除する方向で動くのか(法的思考としては相手の権利侵害の有無を検討)、自社商品の価値・優位性を訴求するのか(法的思考としては誇大広告や景品表示法上の優良誤認違反にならないか検討)、法務的な視点も持ちながら経営判断を行う必要があると思われます。

 

 

2.不当廉売(設問(2)について)

 

不当廉売の定義

不当廉売という言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。独占禁止法では次のように定義されています。

 

「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」

 

本件の場合、自らの行為が不当廉売に該当しないか検討する必要があります。

 

供給に要する費用

真っ先に検討する事項が「供給に要する費用」に該当するか否かです。これは、仕入れ価格を下回るか否かが重要な判断要素となります。本件の場合、近隣小売業者が既に当社仕入れ価格を下回る小売価格で販売してします。それに対抗する形で当社での小売価格を設定するとなると、当社の行為は不当廉売に該当するといわざるを得ません。

一方、近隣小売業者の仕入れ価格については、情報がつかみにくいところがあります。もっとも、同じ商品であれば、仕入れルートも同一である可能性が高いことから、当該仕入れルートを通じて情報収集することも検討してよいかと思います(なお、この情報収集の過程で当社と近隣小売業者との間で仕入れ価格が異なっていた場合、仕入れ価格の減額交渉材料になることはもちろん、場合によっては独占禁止法2条9項2号に定める「差別対価」の問題が生じるかもしれません)。

 

正当な事由

次に、「正当な理由」の有無に関する検討ですが、例えば賞味・消費期限切れが近い期限生鮮食品、販売最盛期を過ぎた季節商品のように、見切り販売の必要性がある者については正当性ありと判断されます。あるいは、いわゆる訳あり品(キズモノ商品など)についても、キズがあるから市場価格が下がることも有り得る話ですので正当性が認められやすいのではないかと考えられます。逆に、上記のような事情が無いにもかかわらず、仕入れ原価を下回って販売する場合には正当性は無く、不当廉売に該当する可能性は高くなると考えられます。

 

他の事業者の事業活動を困難にすること

最後に、「他の事業者の事業活動を困難」という点ですが、現に事業活動が困難になっていることまで求められるわけではなく、蓋然性が高い場合にも要件該当性が認められると考えられています。

 

以上のような検討を行いながら、近隣小売業者の行為が不当廉売に該当しないか、不当廉売の該当性が高いと判断した場合、その旨の指摘や公正取引委員会への申告等を行い対策を講じることになると考えられます。なお、不当廉売については、公正取引委員会が「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」というガイドラインを公表していますので、こちらもご参照ください。

 

 

<2020年7月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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