少額の未払い金を自分で回収したい方へ。支払督促・少額訴訟・通常訴訟の違いと選び方を解説します。
ご相談
数万円程度の未払い金の請求を行いたいが、弁護士に依頼すると費用倒れの懸念があるので、自分で法的手続きを行いたい。
どのような手段があるのか教えてほしい。
ご回答
法的手続き=裁判所を通じた手続きと置き換えた場合、支払督促、少額訴訟、通常訴訟の3つの手続きが挙げられます。
それぞれ特徴があるため、状況に応じた選択が必要です。
なお、弁護士に手続きの代理を依頼しない場合であっても、申立書・訴状の記載内容だけは弁護士にチェックしてもらった方が無難です。なぜなら、いずれの手続きであっても申立書・訴状の記載に不備や誤りがあると、想定外の結論となってしまい、場合によっては二度と法的手続きをとることができなくなってしまうからです。
解説
1. 債権回収のための訴訟手続き
次の3つの手段が考えられます。
①支払督促:「相手が争ってこなさそう」「早く債務名義を取りたい」場合に、書面中心の簡易な手続きです(裁判自体は開催されない)。ただし、相手が異議を出すと通常訴訟へ移行し、最初からやり直しに近い負担が発生し得ます。
②少額訴訟:60万円以下で、争点が単純・証拠も揃っていて、原則1回期日で終わらせたい場合のスピード重視の手続きです。ただし、相手が異議を出すと通常訴訟へ移行することになります
③通常訴訟:「争いがあることが前提」「争点が複雑」「金額が大きい(60万円を超える)」場合に、時間をかけてじっくり行う手続きです。なお、債権者の作業工数が増える分、時間・労力・金銭的な負担は重くなります。
簡単にまとめると、次のようになります。
| 観点 | 支払督促 | 少額訴訟 | 通常訴訟 |
| 目的 | 争いがなければ迅速に債務名義取得 | 60万円以下を迅速に解決 | 争点のある事件を丁寧に審理 |
| 対象 | 原則として金銭請求 | 60万円以下の金銭請求 | 60万円を超える金銭請求(なお、金銭以外の請求も可) |
| 審理の中心 | 書面中心(基本的には出廷不要) | 原則1回の出廷で終了 | 複数回出廷する必要あり |
| 争いが生じた場合 | 相手の異議で通常訴訟へ移行 | 相手の異議で通常訴訟へ移行 | (最初から争いがあることが前提) |
| スピード感 | 争われなければ早い | 早い(1回の裁判で決着) | 長期化しやすい |
| 証拠の出し方 | 証拠の提出は不要 | 初回ですべての証拠を出し切る必要あり | 段階的に証拠を提出(相手より反論がある都度 |
2. どの手続きを選択するべきなのか
次の3点を考慮しながら選択することがポイントです。
①相手が争うかどうか(争う蓋然性)
・争わない可能性が高い…支払督促か少額訴訟を選択する
・争うことが予想される…最初から通常訴訟で進めたほうが合理的
②請求額
・60万円以下の場合…原則として少額訴訟(支払督促も検討余地あり)
・60万円超…原則として通常訴訟(支払督促も検討余地あり)
③証拠の準備状況
・証拠が揃っている…いずれも可
・証拠が揃っていない(間接証拠の積み重ねが必要)…原則として通常訴訟
3. 注意点
法的手続きをとることで得られる最大のメリットは債務名義を取得できることです(債務名義とは強制執行手続きを行うための前提書類とイメージしてください)。
もっとも、相手に財産がない場合、強制執行のしようがありません。
したがって、法的手続きを行う場合、相手にどのような財産があるのかも事前調査するのは重要です。
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弁護士 湯原伸一
































