テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)導入時に留意するべき事項を弁護士が解説!

【ご相談内容】

インターネットを利用した在宅勤務やテレワークを導入しようと考えていますが、人事労務の観点からはどういった点に気を付けなければならないのでしょうか。

 

【回答】

インターネット等の通信技術の発達により、会社に出勤しなくても、会社外(自宅等)で仕事をすることができる範囲が拡大してきました。そして、政府も「仕事と生活の調和推進、ワーク・ライフ・バランス推進」という観点から、在宅勤務を含むテレワーク(=ちなみに、社団法人テレワーク協会では、情報通信技術(IT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方と定義しています)の普及促進を図っています。

在宅勤務・テレワークで一番厄介な点は、従事者を直接監視する者がいないことです。これにより労働時間の算定が困難になる場合が生じたりしますが、現行制度を組み合わせることにより対処する必要があります。

 

【解説】

1.テレワーク従事者の法律上の地位を確認する

テレワークを用いた従事者を雇用するのか、それとも請負・委任形態にするのか、まずは確認しておく必要があります。

この点、労働保険や社会保険料の負担、労働基準法上の規律を排除したいことから、一律に請負・委任とする事業主もいます。しかし、雇用か請負・委任かの判断は、業務依頼に対する諾否の自由が従事者にあるのか、指揮監督関係が存在するのか、報酬が労務の対価といえるか、本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているのか、等々の事情を元に実質的に判断されます。

したがって、会社に来ないから雇用契約ではないと判断せず、業務の実態を見て雇用型のテレワークになるのか、請負・委任型のテレワークになるのか判断する必要があります。

以下では、雇用型のテレワークについて検討します。なお、雇用型のテレワークの場合、雇用(労働)契約である以上、労働基準法や労働契約法はもちろん、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働法規が適用されることになります。

 

2.労働基準法上の留意点を確認する

(1)労働条件の明示

事業主は労働契約締結に際し、就業の場所を明示する必要があります(労働基準法施行規則5条2項)。したがって、在宅勤務がある場合には、就業場所として労働者の自宅を明示する必要があります。

なお、労働契約締結の際には自宅勤務等の社外を予定しておらず、労働契約締結後に在宅勤務制度を導入する場合には、労働条件の変更となりますので、対象となる労働者の同意はもちろん、就業規則の変更を伴うことも多いと思われますので、就業規則の変更手続きに従った処理(組合or過半数労働者を代表する者との意見調整等)を行う方がよいでしょう。

 

(2)評価・人事管理等の取扱い

業績評価や人事管理について、会社へ出社する労働者と異なる制度を用いるのであれば、その取扱い内容をきっちり説明しておく必要があります。なお、在宅勤務等を行う労働者について、異なる賃金制度を採用する場合には、就業規則の変更手続きが必要となりますので、注意が必要です(労基法89条2号)。

 

(3)通信費・情報通信機器等の費用負担

これらの費用について誰が負担するのか、きっちりと決めておく必要があります。

なお、在宅勤務等を行う労働者に通信費や情報通信機器等の費用負担をさせる場合には、就業規則に規定する必要があるので(労基法89条5号)、やはり就業規則の変更手続きが必要となる場合があります。

 

(4)社内教育の取扱い

在宅勤務等を行う労働者を対象とした特別な研修制度がある場合にも、就業規則の定めが必要となることから(労基法89条7号)、前述同様、注意が必要です。

 

(5)労働時間の把握

テレワークを利用して在宅勤務となると、プライベート・私生活との切り離しが難しいため、事業主としてもなかなか労働時間なのか日常生活時間なのか把握できないところがあります。しかしだからといって、まったく労働時間の把握を行わないというのも、労働基準法108条・109条の解釈から導かれる労働時間把握義務の観点から問題があります(特に、労働時間の把握をしていないと、残業代の請求等が行われた場合、使用者側は残業の有無や残業時間がもっと短かった等の適切な反論をすることができません)。

そうすると、逐一労働時間を把握しなくても良い制度を採用したいと考えることが多くなります。この点、労働基準法上、用意されている制度としては、『専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)』または『事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2)』があります。

まず、『専門業務型裁量労働制』ですが、全てのテレワークを用いた在宅勤務者に適用できるわけではありません。というのも、当該制度は労働基準法施行規則24条の2の2で規定された業務(例:情報処理システムの分析または設計の業務)に限定されているためです。

次に、勤務時間と日常時間とが混在する状況に鑑み、労働時間を算定しがたいとして『事業場外労働のみなし労働時間制の採用』が考えられます。ところで、まず注意すべき事項として、例えば外勤の営業担当従業員に対して事業場外労働のみなし労働時間制を適用するに際し、当該営業担当が携帯電話を保有し、外勤中の行動を携帯電話で逐一報告させる等して社内にいる従業員が管理していたという場合、労働時間の把握が可能ですので事業場外のみなし労働時間制が適用されません。これとパラレルに考えると、在宅勤務者についても、例えば時間帯等で逐一報告させるとなると事業場外労働のみなし労働時間制が適用されないと考えられますので、注意が必要です。

さて、上記注意点を意識しつつも、この制度の採用により、就業規則等に定められた所定労働時間を勤務したとみなされることになるので、使用者にとっては労働時間の把握から「とりあえず」は解放されることになります。ただ、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されたとしても、在宅勤務者が「深夜労働」を行っている、「休日労働」を行っていた場合には、割増賃金の問題がなお生じます。この問題を解決するには、最低限、深夜労働・休日労働を禁止すること、やむを得ず深夜労働・休日労働する場合には、必ず使用者側担当者の許可を得ることを就業規則等に定め、運用する必要があります。なお、厚生労働省が公表している通達を踏まえると、次の要件を充足する場合には、労働基準法上の労働時間に該当しないと考えられます。

∇形式的な要件

深夜・休日労働に際して事前の許可が必要であり、かつ深夜・休日労働が行われた場合報告が必要となっている場合において、事前申告がないor事前申告があったが許可せずかつ事後報告も無かったこと。なお、事前許可の届出や事後報告に際して、深夜・休日労働の実態を反映させない等の圧力が使用者側よりなされていないことが当然の前提となること

∇実質的な要件

・深夜・休日労働について使用者側からの強制や義務づけがなかったこと

・深夜・休日労働を行わなければならないような、過大な業務量や納期が迫っている等の事情が無いこと

・深夜・休日に電子メールでの報告や、客観的に見て深夜・休日労働を行わなければ成し遂げることが不可能な成果物が提供される等の事情がないこと

 

3.労働安全衛生法上の留意点を確認する

在宅勤務等を行う労働者の健康保持の確認義務や健康診断を行う必要があること(労働安全衛生法66条1項)、必要な安全衛生教育を行うこと(同法59条1項)に留意する必要があります。

なお、厚生労働省が公表している「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」等も参照しておけばよいでしょう。

 

4.労働者災害補償保険法上の留意点を確認する

在宅勤務等であっても、労働者であることには変わりありませんので、労務提供に起因する災害(怪我等)は、業務上の災害として労災保険の対象となります。もちろん、私生活上の怪我等については労災保険の対象とはなりませんが、どうしても事業主の目の届かないところで事故が発生しますので、最低限、労働者による報告書の作成と聞き取り調査を行う必要があるでしょう。

 

 

<2020年5月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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