フランチャイズ加盟希望者が確認したいフランチャイズ契約書のチェックポイントとは?

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【ご相談内容】

フランチャイズ・チェーンへの加盟を検討しているのですが、どういった事項に注意して検討を進めればよいのでしょうか。

 

 

【回答】

フランチャイズに加盟するに際しては、財務や人材面など多方面にわたって検討しなければならないのですが、執筆者が弁護士という属性であることから、以下の【解説】では、本部とトラブルになりやすい典型事例から逆算して、トラブル回避のためにチェックしておきたい事項を9つにまとめました。

 

 

【解説】

トラブルを避けたいのであれば、加盟候補者は以下の9つの事項を十分に検討するべきです。

 

1.売上高・収益予測の提示の有無、提示している場合はその根拠

まず、大前提ですが、本部はフランチャイズ・チェーンに加盟することによって加盟者が得られる売上高・収益予測を行う法律上の義務はありません。したがって、本部が売上高・収益予測を提示しないことを法律上非難することはできません。

もっとも、実際問題として、収益の見込みが立たないのにフランチャイズ・チェーンに加盟することは通常考えられません。そこで、多くの本部では加盟候補者向けに、売上高・収益予測に関する資料を開示します。当該資料について最初に確認するべきポイントは、当該資料に記載された売上高を保証する趣旨か、あるいは参考データに過ぎないのかという点です。一般的には「参考データ」として開示されることが多いのですが、参考データにすぎないという説明であれば、どうやって算定したのか(例えば、類似する環境にある既存店の実績数値であること等)を問い質してください。本部が合理的な算定方法を説明できないのであれば、加盟は見送ったほうが無難です。

なお、本部が一見すると合理的な算定方法を説明したかのように思ったとしても、加盟候補者は、参考データに過ぎない以上、当該資料をそのまま鵜呑みにするのではなく、自ら調査し検証する必要があります。

 

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2.加盟金返還の取り決め

フランチャイズ・パッケージの対価という性質を有するため、加盟金については返還しないと定めているところが大多数のように思います。おそらく加盟金を返還しない旨の条項を修正してもらうことは難しいので、次善の策として、加盟金の含まれる対価内容、すなわち加盟金を支払うことで本部は何をしてくれるのか、この点を詳細に確認するべきです。なぜならば、例えば、加盟契約を締結したが初期研修前に契約解消となった場合において、加盟金の対価内容として初期研修費が含まれている場合、その分を返還しないのは不合理ではないかという理屈で、加盟金の一部返還が認められる可能性が出てくるからです。

なお、加盟募集案内のパンフレットに記載されている加盟金の対価内容や加盟勧誘時のセールストーク中に出てきた加盟金の対価内容と、フランチャイズ契約書に記載されている加盟金の対価内容にズレが生じている場合があります。こういったズレが生じないかの確認とズレが生じた場合に再度加盟金の対価内容は何か本部と協議し適切にフランチャイズ契約書に明記してもらうこと、この2点は加盟候補者として意識したいところです。

 

3.ロイヤルティの算定方法

一口にロイヤルティと言っても、1ヶ月あたりが定額制の場合もあれば、売上額に一定の料率を掛け合わせて算出する等の変動制という場合もあります。ロイヤルティは毎月支払いを継続しなければならないものであることが多く、加盟候補者にとっては固定費になりますので、その金額については確実に把握する必要があります。なお、やや細かい話になりますが、変動制であれば、例えば基準となる「売上」をどうやって算出するのか(値引前の通常価格を前提にするのか、売れ残った返品分についても売上に含まれるのか等)を確認しておく必要があります。

あと、当然のことながら、ロイヤルティの対価内容(継続的な経営指導、スーパーバイザーの派遣による指導料など)についても検証が必要です。

 

4.商圏(テリトリー権)の有無・内容

まず、ここでいう「商圏(テリトリー権)」とは、本部が加盟者に対して、営業や販売する地域を指定する制度のことを指すと考えてください。つまり、一定の割当地域について、同一チェーンについて本部が直営店を出店もしくは他の加盟者による出店があり得るのか、又は本部が経営する類似業態の店舗出店があり得るのか、という問題とイメージすればよいかと思います。

加盟者からすれば、同一チェーン店舗はもちろん、類似業態の店舗出店が無い方が一定地域を独占でき競合がいませんので、商売をやりやすくなります。一方、本部からすれば、人口動態からして集客力が見込める地域であれば、複数店舗を構えて売上アップを狙いたいところです。以上のように、本部と加盟者との間で利害が対立する部分であるため、商圏(テリトリー権)について、どの様な定めになっているのか確認する必要があります。なお、一般的には、飲食店やコンビニなど店舗を構えて集客し商売する場合はテリトリー権について定めがない、宅配ピザや家庭教師などサービスが店舗外で行われる場合はテリトリー権について定めがある場合が多いように思います。

 

5.経営指導に関する事項

経営が上手く行かない場合、加盟者が必ず口にするのは「本部の指導が悪い」「本部の指導が無い」等の不満です。たしかに、本部が経営指導を行っていない、酷い場合には経営指導を行う体制さえ整えていなかったという事例も散見されます。しかし、「手取り足取り、一から十まで本部が経営指導を行います」と契約書に規定してあることはまずあり得ません。ほとんどのフランチャイズ本部は、経営ノウハウ・情報の提供と月1回程度の面談等による指導と思われます。したがって、加盟候補者としても過度に期待することは避けなければならないと考えられます。

いずれにせよ、本部と加盟者との間で一番認識共有を図りづらい部分ですので、加盟候補者としては、フランチャイズ契約書の内容を検証した上で、具体的に何をしてくれるのか確認する作業が必要となります。

 

6.競業避止(禁止)義務の有無・内容

競業避止・競業禁止規定とは、フランチャイズ契約の期間中及びフランチャイズ契約終了後の一定期間中、加盟者による同種又は類似する業種での営業活動を禁止している規定のことをいいます。この様な条項も原則有効とされています。理由は、本部が提供したノウハウ流出の防止、ノウハウ悪用によるブランドイメージの低下、顧客奪取などの本部へのダメージ回避等のためであると言われていますが、いずれにせよ当然に無効というわけではありません。

つまり、加盟者は本部より吸収できるものだけ吸収して、あとは自前で独自に事業運営を行おうとすることはできないということになります。ただ、競業禁止の具体的内容、例えば義務を負担する期間、事業展開ができない地域、類似するか否かの業種の判別など本部との交渉の余地は残っているかと思います。競業禁止が課せられることはやむを得ないとしても、その義務の内容を少しでも緩くすることができないかが交渉上のポイントとなります。

 

7.中途解約の可否・条件

契約に違反した場合(契約不履行の場合)にフランチャイズ契約の解除が認められるのは当然のことですが、ここでのポイントは、フランチャイズ契約の有効期間中に、本部の契約違反がなくても中途解約が可能かという点です。典型的には、フランチャイズ・チェーンに加盟したものの経営が上手くいかず、これ以上の出血(お金の流出)を避けるためにも離脱したいという加盟店都合の観点から問題となります。なお、本部としても、経営が上手くいなかい加盟者は、本部の指導を受け入れない等の問題児であることが多く、このままチェーンに加盟し続けられてはチェーン全体に悪影響を与えかねないので、早期に離脱してもらった方が望ましいという事情もあったりします。

ただ、中途解約権を認めなければならないという法的義務は存在しません。したがって、フランチャイズ契約書の必ず中途解約に関する規定が設けられているとは限りません。そして、中途解約権がないと言うことは、契約期間中(フランチャイズ契約の場合2~5年が多いと思います)はチェーンと心中することを意味しますので、加盟に際してはよくよく検討する必要があることになります。

なお、中途解約権が規定されていても、解約金が高額である、原状回復義務が重い等の解約までのハードルが高い場合も多々見受けられます。したがって、中途解約権が存在するにしても、その条件は何かまで詰めて検証する必要があります。

 

8.契約違反(債務不履行)、契約解除の場合に要求される損害賠償(違約金)

契約違反があった場合に予め損害賠償額を定めること又は違約金を定めることも原則有効です。ただ、本部側としては、本気で徴収するつもりなのか、それとも抑止力を期待しているのかスタンスにも寄りますが、往々にして高額な金額を設定しがちです。このため、裁判例の中には、高額すぎるとして予め定めた損害賠償額又は違約金の額を減額している事例が見受けられます。

したがって、加盟者としては、フランチャイズ契約に違反しないように業務遂行することはもちろんですが、違約金の算定根拠を聞くなどして、本部として何処まで合理的に検証し契約内容を詰めて定めているのか、つまりフランチャイズ事業を何処まで真剣に検討しているのかの一判断材料として協議してみるというのも一案かもしれません。

 

9.法定開示書面

一般的には「法定開示書面」と呼ばれることが多いですが、本部によって「フランチャイズ契約のしおり」と呼んでいたり、「事前開示書面」等と呼んでいるところもあります。

これは、中小小売商業振興法に基づき開示が要求される事項をまとめた書面のことを意味しますが、実は中小小売商業振興法が適用されるのは、小売・飲食業のみです。したがって、中小小売商業振興法に基づく法定開示書面の開示を求めても、小売・飲食業以外のフランチャイズ・チェーン本部(典型例はサービス事業)には存在しない可能性があります。

もっとも、中小小売商業振興法に基づく法定開示書面が無い場合であっても、公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」というガイドラインを公表しており、フランチャイズ・チェーン本部に対して、中小小売商業振興法が開示を求めている事項と、ある程度重複する事項の開示を行うよう要請しています。そこで、加盟希望者は、上記ガイドラインに基づく説明文書はないかを尋ね、存在するのであれば開示してもらえば良いと思います。

なお、中小小売商業振興法も上記公正取引委員会のガイドラインもその存在自体を知らない本部も少なからずあるのが実情です。この意味で、法定開示書面等が無い本部が全て問題ありと即断することはできませんが、少なくとも法定開示書面等を開示できるフランチャイズ・チェーン本部であれば、法令遵守への意識が備わっていると判断する一材料になると思いますので、加入に際してのポイント事項にして良いと思います。

 

 

<2021年3月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

 

 

フランチャイズについてのご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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