健康食品を販売する際に気を付けたい広告宣伝表現を弁護士が解説!

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【ご相談内容】

健康食品の販売を考えているのですが、健康食品の宣伝広告は法律上の規制が厳しいと聞いたことがあります。どういった表現が禁止されているのでしょうか。

 

【回答】

宣伝広告に関する法律としては景品表示法があげられます。

当然のことながら景品表示法、特に優良誤認には注意が必要ですが、健康食品特有の表現規制としては薬機法(旧薬事法)と健康増進法の2つを意識する必要があります。具体的にどういった表現が問題ありとされているのか、以下の【解説】で検討します。

 

【解説】

 

1.健康食品特有の法規制

宣伝広告に関して知っておくべき法律としては景品表示法があげられます。そして、健康食品に関する宣伝広告を行うのであれば、景品表示法を意識する必要があること当然のこととなります。もっとも、健康食品の宣伝広告については、さらに特有の法規制に注意が必要です。その1つが薬機法(旧薬事法)、もう1つが健康増進法です。

本来であれば、薬機法に基づく表現規制と健康増進法に基づく表現規制は別々に検討するのが筋となります。しかし、ある程度重複が見られること、個別の法規制よりも「どのような表現」に気を付けるべきかの方が重要であると思われます。そこで、どちらかの法律(場合によっては両方の法律)に違反しかねない危険な表現内容とは何かという視点で以下解説を行います。

 

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2.効能効果表現を用いなくても医薬品と誤解されてしまう表現

薬機法(旧薬事法)が定める表現規制は、端的に言うと「国が認めていないにもかかわらず、医薬品と誤解するような表現はNG」となります。医薬品と誤解する表現としては、医薬品のみに用いられる独自表現を行うこと、②医薬品にのみ認められる効能効果を表現すること、の2種類があります。ここでは①について解説し、②は後述3.で解説します。

(1)服用時期、服用間隔、服用量等を定める表現

例えば、「毎食後、3粒服用してください」という記載は問題ありとなります。この表現自体が医薬品の服用に関する独自表現であり、健康食品でこの表現を行ってしまうと医薬品と誤解を招いてしまうというのが理由です。

ただ、健康食品であっても、摂取時期や適当量を記載するべきですし、利用者ニーズもあるはずです。この場合、「食品」であることを容器等に分かりやすく(利用者の目につくように)表示した上で、目安として記載することは許されていますので、この点を意識しながら表現内容を検討することになります。

(2)症状に応じた用法用量を定める表現

例えば、「便秘気味の方は1日1粒、恒常的な便秘の方は1日3粒…」といった記載は問題ありとなります。特定症状に応じて摂取することを勧める表現は医薬品そのものであり、誤解を招くことになるからです。

(3)医薬品に特有な服用方法と同様の表現

例えば、「用法用量を守ってください」、「服用量は…」、「オブラートに包んで…」といった表現は問題ありとなります。これも医薬品特有の服用方法であり、健康食品でこの表現を用いると医薬品と誤解されてしまうからです。

なお、医薬品特有の服用方法を記載することはNGというだけですので、例えば、「コップ1杯の水で噛まずに飲み込んでください」といった日常表現にとどまるものであれば問題ありません。

(4)摂取の上限量等を示す表現

これはやや微妙なところがあるのですが、例えば、「××を摂取することで頻尿となります。外出時はご注意ください」と表現すると問題あり、一方で「××を摂取しすぎると尿が近くなる場合がありますので、1日×を上限としてください」と表現すれば問題なし、という取り扱いになっています。どちらも似たようなことが書いてあるのですが、前者の表現は有害事象を主目的とするものであり、医薬品特有の表現となります(なおあえて指摘すれば、有害事象が生じるくらいの効能効果が見込まれることを暗に表現しているとも言えます)。一方、後者の表現は過食等による健康被害を指摘するに過ぎない日常表現、という相違があります。

ちょっとした相違とはなりますが、現場実務では注意が必要な表現となります。

(5)医薬品成分(原材料)の標ぼう

健康食品には医薬品成分が含有されている以上、真実を表現して何が悪いのかと思われるかもしれませんが。しかし、医薬品成分が含有していることは、まさしく医薬品と誤解を受けても仕方がありませんので、やはり表現としてはNGとなります。

例えば、ジュウヤク含有といった生薬名を記載すると問題がありますので、この場合は植物名であるドクダミ含有という表現に置き換える必要があります。

 

3.気を付けるべき効能効果表現

健康食品の特性をアピールしたいがために、どうしても効能効果を表現しがちです。しかし、医薬品のみに認められる効能効果が定められており、このような効能効果を健康食品で表現した場合、無許可医薬品とみなされ薬機法違反、または誤認表示として健康増進法違反として処断されることになります。気を付けなければならない効能効果の表現については、直接的(ダイレクト)に表現する場合と、間接的(暗示的)に表現する場合の2種類があります。以下では分けて解説します。

 

(1)直接型

直接型とは、医薬品にしか認められていない効能効果をそのまま表現していること、ここではそのように定義します。パターンとしては次の4つが考えられます。

a)疾病の治療又は予防を目的とする効能効果の表現

例えば、「糖尿病の方に…」、「アトピー性皮膚炎の悪化を防止…」、「癌が消える…」などの具体的な疾病の改善や予防といった効能効果を表現したものはすべてNGとなります。ここまで明記したいのであれば、もはや健康食品というカテゴリーでは不可能と言わざるを得ません。

b)身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果の表現

例えば、「疲労回復」、「アンチエイジング」、「脂肪燃焼の促進」などの、体内からの改善を示す効能効果の表現はNGとなります。なお、単純に「美容と健康のために」と状態変化を伴わない(現状維持と言えばよいでしょうか)表現をするだけなら、体内からの変更作用に関する効能効果を表現したことにはならないため原則OKとなります(但し、後述d)で記載する通り、特定部位を対象として「美容のために…」と表現することはNGとなること要注意)。

c)疾病等による栄養素の欠乏時等に使用することを特定した表現

「肉体疲労時の栄養補給に…」なんて言う言葉をどこかで聞いたことがあると思うのですが、この表現も実はNGです。肉体疲労時という異常状態を回復する効能効果となってしまうからです。逆に正常状態を前提にした生理現象を念頭に置いた表現、例えば、「ダイエット時の栄養補給に…」といった表現は原則OKとなります(なお、当然のことながら栄養素の需要が増大することについて医学的・栄養学的に裏付けられている必要はあります)。

d)特定部位への改善、増強等ができる旨の表現

上記b)でも少し触れましたが、例えば、「××は目の疲れをほぐします」、「美肌を作る××」なども身体の特定部位の改善・好影響を示す効能効果表現はNGとなります。特定部位に触れることなく、単純に「美容と健康のために××を補給しましょう」という体内からの変更作用を表示しない、現状維持を前提とした表現であれば原則OKと考えられます。

 

(2)暗示・間接型

直接的には効能効果を表現したわけではない、しかし効能効果を連想させるような記載となっている場合も取締り対象となります。ただ、基準は曖昧であり、各社ぎりぎりのラインを狙って宣伝広告を行っているというのが実情です。暗示・間接型のパターンとしては、次のようなものがあります。

a)名称又はキャッチフレーズによる表現

例えば、「不老長寿」、「漢方」「アーユルヴェーダ」といったいかにも効果がありそうなキャッチフレーズを用いることはNGとされています。なお、「スーパーダイエット××」といったダイエット効果があるような商品名を付けることもNGとなります(商品名だから問題ないという方便は通用しません)。

b)含有成分や栄養素の表示および説明による表現

例えば、「皮膚に潤いを与えるコラーゲン配合」、「抗酸化作用のあるコエンザイムQ10を含みます」といった表現もNGとなります。単に「コラーゲン配合」「コエンザイムQ10含有」であれば問題はないのですが、含有成分の説明にかこつけて効能効果を表現してしまうことが問題となります。なお、含有成分による表示等を行いたいと考えるのであれば、機能性表示食品や栄養機能食品への該当性を検討した上で、表示の可否を考えたほうが無難と思われます。

c)製法の説明による表現

イメージ広告に近いのですが、例えば「霊峰××に自生する薬草を摘み、24時間以内に熱抽出したエキスを商品化した…」といった、よく分からないけど、薬草を加工しているのであれば何となく効果がありそう…という表現がNGとなります。なお、この例文では「薬草」というキーワードがあるため、NG表現であるというのは比較的わかりやすいのですが、実際には製造方法を書いただけという認識なのに、問題ありと指摘されたという実例が存在します。結局のところは医薬品を連想するような表現になっていないかという視点で検討するほかないのですが、意外と見落としがちなので注意が必要です。

d)起源、由来等の説明による表現

例えば、「欧米では××の薬として使用されています」、「古来中国では××療法として知られています」といった表現がNGとなります。なお、ここで引用した例文はたとえ内容が真実であったとしても、医薬品的な効能効果を表示する以上は問題ありとなることに要注意です。

e)新聞・雑誌等の記事、医師・学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することによる表現

よく見かけるものとしては「××医学博士の研究によれば、××に癌細胞消滅効果が認められた」といった権威を利用したコメント、あるいは体験談と称して「××を毎日飲んだら1ヶ月で10キロ痩せました」というユーザーコメントを掲載することもNGとなります。なお、このようなコメントは通常裏付けをとっていることが多いのですが、たとえ真実であったとして、医薬品にしか認められない効能効果を表現しているものとして処断されることになります。なお、医薬品的な効能効果を表現しない限り、医師等の権威者やユーザーのコメントを掲載することは問題ありません。

f)国内外の行政機関や研究機関等の認証を標榜する表現

これも見たことがあるかと思うのですが、例えば「××に効果があるとして××国にて認可された食品です」、「××療法として××国にて特許取得済み」といった表現がNGとなります。内容の真実性を問わないこと、医薬品的な効能効果を連想させる限りは許されない表現であることは他と同様です。

g)「××の方に」等の表現(特定の保健の用途に適する旨の表現)

上記3.(1)d)「特定部位への改善、増強等ができる旨の表現」とやや重複するところもあるのですが、例えば、「××はお腹の調子を整える」、「××は血圧が高めの方に効果的です」といった効能効果を表現することはNGとなります。

上記3.(1)d)は改善・増強等という好影響が生じることまで踏む込んだ表現、一方、ここでのg)の記載は、特定の症状に悩む対象者をターゲットにするものの、好影響が生じることまでは触れていない表現という区別が一応はできます(その意味で暗示です)。ただ、あえて項目を分けて考える必要はありませんので、体内からの変化作用をうたう効能効果表現はNGと一括りに考えてよいかと思います。

なお、単純に「不規則な生活の方への栄養補給に」とか「日頃の食事で繊維が足りていないと考えている方に」といった体内からの変化作用を示さない表現(現状維持表現)であれば問題はありません。

h)好転反応等に関する表現

「摂取すること一時的に便が緩くなることがありますが、毒素が排出されることを示すものです。このまま飲み続けてください。」といった表現がNGとなります。なお、ここでいう好転反応とは、治療の過程で一時的に起こる身体反応(悪化反応を意味することが多い)のことを言います。医薬品ではない健康食品での好転反応表現は科学的根拠がない表現であるとして、行政は厳しく取り締まっているようです。

i)「効果」「効用」「ききめ」等の表現

これは文字通り「効果」、「効用」、「ききめ」といった効能効果を意味する用語例を用いることはNGであるということです。例えば、「医薬品のような即効性はありませんが、3ヶ月ほど飲み続けるとその効果を実感していただけます。」とか「穏やかな効き目が特徴です」といった表現はNGとなります。なお、気を付けたいのが、この用語例を形式的に用いただけで問題ありとされてしまいます。つまり、特定の疾病や症状等を表示しなくてもNGとして取り扱われますので注意が必要です。

j)「薬」の文字による表現

これも文字通りであり、例えば、「生薬」、「民間薬」、「妙薬」、「薬用」といった「薬」という用語例を使うとNGとされます。これも上記i)と同じく、特定の疾病や症状等を表示しなくてもNGとなること要注意です。

 

<2020年5月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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