無断駐輪に対して罰金等を支払う必要があるのか(ショート記事)

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企業・事業者様よりご相談を受けていると、ある程度似通ったご相談をお受けすることがあります。

このWEBサイトを訪問されている方におかれまして、ご参考までの情報共有として、以下記載します。

 

 

ご相談

先日、取引先に自転車で訪問し、取引先が入居しているビル敷地内に自転車を数時間駐輪しました。

そうしたところ、ビルのオーナーが無断駐輪であるとしてタイヤロックを行った上で移動させてしまいました。

また、ビルのオーナーは、罰金として10万円を支払わないと自転車を返却しないと言っています。

ビルのオーナーの要求に従う必要があるのでしょうか。

 

結論

無断駐輪を行ったこと、それ自体は非難されてしかるべきです。

しかし、ビルのオーナーは自転車の所有者ではない以上、勝手にタイヤロックを行うことはできませんし、勝手に移動させることもできません(形式的には業務妨害罪や窃盗罪に該当します)。

また、無断駐輪によってビルのオーナーに損害が発生したとしても、10万円もの損害が発生したとは考えにくいところがあります(近隣の駐輪場における利用料金の相場を調査する必要がありますが、せいぜい数千円ではないでしょうか)。

したがって、ビルのオーナーの要求に従う必要はないと考えられます。

 

解説

まず、ビルのオーナーが無断駐輪中の自転車に対して、何か対策を講じることができないのかという観点から検討します。

この点、理屈の上では、無断駐輪により敷地の所有権が侵害されていることになりますので、ビルのオーナーは所有権に基づき、自転車の使用者に対して自転車を敷地外に移すよう請求する権利(妨害排除請求権)を有することになります。

ただ、権利を有するからといって、他人の自転車にタイヤロックを行う、ビルのオーナーが勝手に移動させることはできません。

これをするのであれば、裁判手続きを経て勝訴判決を得る必要となります(以下では分かりやすさの点から「裁判所の許可」といいます)。なぜなら、いくら所有者とはいえ、相手の権利(本事例であれば自転車の所有権や占有権)を裁判所の許可なく侵害することはできない、すなわち自力救済は許されないとされているからです。

以上のことから、本事例では、裁判所の許可を得ていない以上、ビルのオーナーがとった対応策は違法となります。

なお、無断駐輪している自転車を業者が撤去している場面を見たことがあるかもしれません。

これは市町村の条例などに撤去を認める法的拠があるからです(撤去を認める法的根拠がある以上、裁判所の許可は不要です)。一民間人には撤去はもちろん、タイヤロックする法的根拠がありません。所有権に基づく妨害排除請求権は、究極的には裁判を通じてしか実現できないことになります。

 

次に、罰金という点ですが、よく駐車場などの立看板で「無断駐車の場合、罰金×円をいただきます」と記載されていることを目にしたことがあるかと思います。

ただ、こういった記載があったとしても、法的には無効であり罰金支払い義務はありません。なぜなら、駐車場の運営者と無断駐車を行った者との間で、罰金を支払うという合意が認められないからです(運営者が一方的に宣言しているだけであって、それ以上でもそれ以下ではないということです)。

本事例は、そもそも立看板への記載など事前の予告さえなかったわけですから、ますます支払い義務など発生しようがないということになります。

ただし、無断駐輪を行ったことで敷地所有権を侵害したことは事実です。このため、敷地を利用した場合に発生する利用料相当額の損害賠償義務が、無断駐輪した者には発生します。

利用料相当額はケースバイケースですが、理屈の上では損害賠償金はゼロとはならないという点は頭の片隅に置いてほしいところです。

 

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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