裁判せずに決着…それでも油断禁物、示談のメリットと限界

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示談は、紛争の早期収束とコスト削減に有効です。謝罪や将来の対応など、裁判では扱いにくい合意も織り込めます。

しかし「守秘義務があるから漏れない」とは言い切れません。当事者以外の第三者が絡むと拘束力が及ばない場合があるからです。

仕組みとリスクを正しく理解し、現実的な運用で想定外を減らしましょう。

 

ご相談

最近、某有名人の示談について話題になっているが、そもそも示談とは何か。また、示談するメリットとは何か。守秘義務付きの示談を行ったにもかかわらず、示談内容が漏洩するのは何故か、について教えて欲しい。

 

結論

示談とは、協議により紛争状態を解決するという意味です。

交通事故や労働災害を解決するに際に「示談」という言葉が用いられることが多いようですが、別に決まり事があるわけではありません。

示談で解決した場合、民事上の紛争は解決したという法定効力が生じます。また、示談内容によっては刑事手続きが加害者有利に扱われることもあります。

 

解説

1.示談と和解に違いはある?

示談は和解契約の一類型となります(民法第695条参照)。

したがって、例えば、なんらかの合意文書につき、タイトルが和解書or示談書のどちらであっても法的効力は同じです。

ちなみに、ChatGPTに尋ねたところ、和解は裁判所が介入して合意に至るもの、示談は当事者間のみで合意に至るものという相違があるとの返答がありましたが、前述の通り間違いです(講学上、裁判所が介入する場合は「裁判上の和解」と呼ぶことが通例です)。

 

2.示談のメリットとは?

一般的には、①時間と費用が節約できること②柔軟な解決が可能なこと③プライバシーの保護に資すること、の3点が挙げられます。

①について、裁判手続きでの紛争解決を図る場合、公平性や透明性を重視するため、どうしても専門的かつ厳格な手続きで進み、自らで対応するのは難しくかつ1年くらいは時間がかかります。

一方、示談であれば、当事者が合意さえすれば、それにて解決となるので時間と費用を節約できます。

 

②について、裁判は法的紛争を解決するための制度であるため、法的な権利以外の事項(感情や心情的なわだかまり)の解決には適していません。

一方、示談であれば、法的な権利以外の事項でも合意可能であるため、柔軟な解決を図ることができます(例えば、謝罪させるなど)

 

③について、裁判手続きの内容は原則公開されますので、誰でもその内容を知ることができ、場合によっては二次被害等が生じる恐れがあります。

一方、示談であれば、通常は第三者がその内容を知る術はなく、また守秘義務条項を定めておくことで、後で漏洩するリスクも防止することが可能です。

 

3.示談内容が漏洩するリスクはある?

残念ながら「ある」と言わざるを得ません。

例えば、示談「前」に当事者が知人等にトラブル内容の話をしていた場合、その知人等が更に第三者に伝えるといったことが起こり得ます。

また、示談により守秘義務を負担するのは、あくまでも示談した者だけです。上記のような知人等は守秘義務を負っていないため、情報漏洩リスクを完全に防止することは困難です。

なお、守秘義務の実効性を確保するために、守秘義務違反があった場合の違約金規定を定める、示談後に知人等より経過を聞かれた場合は「円満に解決した」とだけ説明する義務を負わせるといった方法も見かけますが、やはり当事者間のみでしか拘束力がない以上、限界があります。

 

 

リスク管理・危機管理のご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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