いま増えている“無料商法”トラブルの実態と、取るべき法的対応を解説します。
ご相談
無料で求人広告を掲載させることができるという求人広告業者のテレアポを受け、申込書に必要事項を記入の上、FAXで掲載申込み手続きを行った。掲載後約1ヶ月経過してから、求人広告事業者より高額の広告掲載料の請求を受けた。
当社が抗議をしても、求人広告業者は「申込書に無料掲載期間経過後は有料になる旨記載がある以上、支払い義務がある」として頻繁に督促を行ってくる状態である。
やはり、広告掲載料は支払う必要があるのか。
結論
近時、上記のような無料求人広告を謡いながら、後で広告掲載料の支払いを求めるという詐欺まがいの相談が増加しています。
一部では裁判にまで発展し、求人広告業者への支払いを否定する裁判例もいくつか出てきています。
諦めることなく、弁護士と相談しながら対処したいところです。
解説
この記事を作成している私自身も、実は上記のような相談を複数受けています。
ただ、非常に悩ましいのが、申込書には…
①無料掲載期間の×日前までに異議を申出ない限り、有料掲載期間に移行すること
②有料掲載期間が開始した場合、中途解約はできないこと
③有料掲載期間中の広告掲載料は×円であること
が明記されており、広告主はその申込書に署名押印していることです。
このため、証拠上は広告掲載料の支払い義務があると言わざるを得ない状態となっています。そして、広告主は消費者ではありませんので、消費者契約法や特定商取引法などの適用がなく、真正面から契約の無効や取消しを主張することが難しいという特徴があります。
もっとも、実際の申込書をよく見ると、上記①から③は非常に分かりづらいところに記載されている、あるいは非常に小さな文字で書かれているなど、あえて広告主が気付きにくいように工夫されています。
また、テレアポ等での勧誘時には「無料で求人広告を掲載することができる」ことだけを説明し、一定期間経過後に有料掲載となることを説明していない場合がほとんどです。
さらに、求人広告業者が掲載したと主張する媒体はほぼ無名な媒体であり、求人者を確保できるとは思えない粗末なものであったりします。
以上のように、この種の求人広告業者は、広告主を騙して有料掲載に移行させ、不当に広告掲載料を支払わせようとしていることから、何とかして法的対策を講じることができないか色々と検討が行われてきました。
そして、一部勇気のある(?)広告主が求人広告業者と訴訟を行うことで、錯誤(勘違いとイメージしてください)により求人掲載広告契約の取消しが認められた裁判例、詐欺による求人掲載広告契約の取消しが認められた裁判例などが出てくるようになりました。また、そもそものビジネススキーム自体が詐欺的商法である以上、公序良俗違反により求人掲載広告契約自体が無効ではないかという議論もあったりします。
なお、上記のように法的対抗策が開発されつつあるものの、やはり根本的には、申込書を熟読・理解することなく安易に申し込まないというのが一番の対処法となります。
ちなみに、本記事作成者は、詐欺又は錯誤で求人広告掲載契約を取消す旨の内容証明郵便を弁護士名義で送付し、あえて支払いには応じない、求人広告業者より督促があっても無視するという対応をとりました。
今のところ求人広告業者が訴訟提起したという事態にはなっておらず、また内容証明郵便送付後は何も連絡してこないことから、このまま静観するという方針で進めているところです(一定期間が経過した後で督促があった場合、念のため消滅時効を援用する予定です)。
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