企業・事業者様よりご相談を受けていると、ある程度似通ったご相談をお受けすることがあります。
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ご相談
会社の株式を一定数保有する共同経営者が、個人的な事情でお金に窮しており、自己破産も考えているとの相談を受けた。
私個人としては、たとえ破産しても引き続き一緒に経営を続けていきたいと考えているが、何か注意するべき点はあるか。
回答
共同経営者が取締役等の役員になっている場合、破産することで一度は取締役を退任しなければなりません。どうしても登記簿に履歴が残てしまうので、対外的にどのように説明するのか考えておく必要があります。
また、自己破産した場合、原則的に株式は共同経営者の手を離れることになります。全くの部外者が株主として参加してくる可能性も否定できないため、株式の帰属につき、コントロールができないか検討を行う必要があります。
解説
1. 取締役と会社との関係は準委任契約とされています。
このため、取締役等の役員が自己破産した場合、民法第653条第2号に基づき、準委任契約は当然に終了することになります。
もっとも、破産したこと自体は取締役の欠落事由ではありませんので、破産開始決定を受けた後、直ちに再度株主総会を開催し、取締役に就任させることは可能です。
したがって、実は自己破産をしても、取締役等の役員として職務を事実上継続することは可能となります。
ただ、登記簿上はどうしても一度は役員を外れたことを記載しなければならないため、事情を知らない人からすれば、役員を辞めて直ぐに復帰するとはどういうことか?と疑問を持つことになります。特に、金融機関はこの辺りの事情は厳しく問い質してきますので、適切に説明ができるようにあらかじめ準備しておいた方が無難です(なお、一部の取締役が自己破産したとなると、融資審査にどうしても影響は生じると言われています)。
2.やむを得ず自己破産を選択した場合、保有する財産を手放す代わりに借金等から解放されるというメリットを享受することが可能となります。
ところで、この保有する財産には当然株式も含まれます。この結果、共同経営者が保有する会社株式は、破産手続き内で処分(第三者への売却)されることになります。
ただ、未上場の閉鎖会社の場合、ある日突然知らない人が株主として経営に参画するというのは具合が悪いことです。このため、たとえ自己破産しても、株式が余所者に移転しないよう対処しておく必要があります。
この点、例えば、一方が自己破産した場合は他方が株式を購入することを定めた株主間契約を予め締結するということが考えられます。あるいは、取得条項付きの種類株式に転換し、破産した場合は会社が買い取ることができるようにするといったことも考えられます。
他にも色々な対処法が検討できるのですが、株式の帰属先をコントールしたいのであれば、その株式を購入できるだけの資金力が必要不可欠となります。この資金が用意できないことには、いくら対処法を講じたところで絵に描いた餅となりかねません。
自己破産のどさくさに紛れ、あわよくば無償で株式を取得する…といった考えなどは持ち合わせてはいけません。
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