精神疾患がある旨の診断書を提出した従業員への対応について(ショート記事)

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はじめに

社会的に衝撃の大きい事件・事象が発生した場合、結構な頻度で増える傾向があるのが、従業員の体調不良(精神疾患)への対応に関するご相談です。

ポイントを簡単にまとめてみました。

 

1.労災申請の有無の確認

最初に確認するべき事項は、従業員が労災申請手続きを行う意思の確認です。

というのも、労災申請するのであれば、申請結果を待たないことには、会社主導の対策を講じることが難しくなるからです(労災認定となった場合、解雇はもちろん、次に述べる休職制度の適用も不可です)。

なお、従業員が労災申請について特に触れてこない場合、あえて会社から健康保険制度上の傷病手当金の申請を勧める場合があります。これは形式上、傷病手当金は私傷病(労災ではないこと)を原因として申請手続きを行うためであり、将来的な労災申請を防止するための一手段として用いることを狙っていると考えられます。

 

2.就業規則の休職規定の有無の確認

労災申請の意思がないことが明らかとなった場合、次に就業規則の有無を確認してください。

その就業規則の中に「休職」に関する規定が存在するのであれば、以後は休職規定に従って処理を行うことになります。一方、就業規則は存在するが休職規定の定めがない場合又は就業規則それ自体が存在しない場合は、後述の4.を参照してください。

 

3.休職規定がある場合

まずは休職命令が発令できる条件(例えば欠勤が1ヶ月継続した場合など)を確認し、当該従業員が条件を充足するか確認します。

条件充足の場合、会社より当該従業員に対して休職命令を発令します。休職命令については言った言わない論争を避けるためにも、できる限り書面で発令することが無難です。この書面で一番明記しなければならないポイントは休職期間です。休職期間についても就業規則上明記されているはずですので、それを当てはめて記載することになります。

休職命令発令後は、基本的には従業員の回復待ちとなりますが、可能であれば1ヶ月に1回程度は連絡を取るなどして状況確認に努めるべきです。また、診断書の提出も促したほうが良いでしょう。

休職期間満了の2週間前くらいに、「休職期間が×月×日に満了するので、復職希望であれば主治医の診断書をすること」を当該従業員に連絡します。これについてもできれば書面で連絡することが無難です。

そして、休職期間満了時点で復職希望が出なかった場合(復職希望であっても診断書上復職可と判断できない場合)、就業規則の定めに従って退職処理を行うことになります(おそらく就業規則上は自然退職扱いになっていることが多いと思いますが、時々解雇扱いになっている場合もあるので注意が必要です)。

 

4.休職規定がない場合

そもそも、労働者は会社に対して労務の提供を行う義務があるにもかかわらず、それができていない以上、労働契約を解除(解雇)されても文句は言えないはずです。そして、休職制度はその解雇をあえて留保する恩恵的制度にすぎない以上、休職制度が存在しないのであれば直ちに普通解雇することも、理屈の上では間違っていません。

ただ、ご承知の通り、解雇が法的に有効となるためのハードルは高いことから、任意で一定期間の間、休職制度に準じた取り扱いを行うことでトラブル回避を図るという作戦もあり得ます。その場合は上記3.に記載した手続きを実践することになります。

 

 

 


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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