合意管轄条項に対する契約交渉の進め方について(ショート記事)

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企業法務に関する相談を受けていると、ある程度似通ったご相談をお受けすることがあります。

このWEBサイトを訪問されている方におかれまして、ご参考までの情報共有として、以下記載します。

 

 

ご相談

契約交渉において、毎回のように合意管轄条項で自社近辺の裁判所を指定するなどして見解が食い違い、協議が難儀します。

何か上手な対処法はないでしょうか。

 

回答

トラブル解決のために裁判(訴訟)手続きを利用しない限り、合意管轄条項が発動することはありませんので、利用頻度の低い条項であることは否めません。しかし、いざ訴訟となった場合…

  • 近くの裁判所を利用できない場合、裁判所に行くだけで時間がかかり、権利行使をためらうことに繋がること
  • 遠方の裁判所に複数回出廷することは、思った以上に労力を割かれること
  • 移動などの費用がどうしても割高となること

といった弊害もみられるところです。

結局のところ、泣き寝入りすることなく、自らの法的権利の行使を容易にし、実効性を確保したいのであれば、合意管轄条項についてはきっちり精査する必要があります。

 

では、合意管轄条項を定めるに当たり、どの裁判所を利用するのかにつき、相手と協議が整わない場合はどういった解決策を模索すればよいのでしょうか。

大まかには次のような解決策が考えられます。

 

【解決法1】合意管轄条項を削除する

合意管轄条項を削除した場合、どの裁判所を利用すればよいのかという問題は、民事訴訟法に従って解決されることになります。

法律に基づいて管轄が決まるという点では、一番フェアな解決方法と言えるかもしれません。

 

ちなみに、たいていの場合、訴訟手続きにおいて請求する内容は金銭支払いになるところ、金銭支払いを求める訴訟の場合、よほどのことがない限り、訴訟を提起する側の近辺の裁判所を利用することが可能です(近辺の裁判所に管轄があるということです)。もちろん、相手の近辺の裁判所でも訴訟を提起することは可能です。

要は、どちらの裁判所も利用することが可能であり、戦略に応じてどの裁判所を利用するのか選択することになります。

なお、相手が上場企業等の大手企業の場合、監査の関係で合意管轄条項を削除することが難しいという実情があるようです。

この場合、合意管轄条項を削除するという提案は受け入れてもらえませんので、注意が必要です。

 

【解決法2】合意管轄条項につき、次のような条項修正を行う

一般的な合意管轄条項では、特定の地名が付された裁判所(例:東京地方裁判所など)のみ訴訟手続き可能と定められています。

この特定の地名が一方当事者にとって遠方過ぎて不利である、しかし、当方近辺の裁判所を指定することは難しいという場合、次のような修正案を提示するのはいかがでしょうか。

「甲及び乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、被告となる者の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」

この修正案のポイントは、訴訟手続きを行うのであれば、それぞれ相手の近辺の裁判所を利用することを義務付けることで、双方に同じ負担を課すことでフェアな取り扱いにするという点です。

相手が上場企業等の大手企業の場合であっても、意外と受け入れてくれる場合があったりしますので、提案自体は行ったほうが良いかと思います。

 

【解決法3】「専属的」という用語のみ削除する

最初に言っておきますが、非常に小手先のテクニックです。

どういうことかというと、専属的を削除することで、契約書に記載されている裁判所のみならず、民事訴訟法に従って認められる裁判所の両方を利用することが可能という解釈ができる状態を作出することに、この方法の意義があります。

もっとも、この解釈論が常に通用するか微妙なところがあること、要注意です。

 

 

 

契約書についてのご相談


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

 

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