マーケティング活動を行う企業が知っておくべき景品表示法について、弁護士が徹底解説!

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【ご相談内容】

広告宣伝に際しては景品表示法を意識する必要があると耳にしたのですが、具体的にはどういった点に気を付ければよいのでしょうか。

 

【回答】

景品表示法は非常に抽象的であり、条文を見ただけではNGな表現は何かをイメージしづらいところがあります。行政(消費者庁、公正取引委員会)が公表しているガイドライン等を照らし合わせながら検討を行う必要があります。以下の【解説】では、優良誤認、有利誤認、二重価格表示、おとり広告、比較広告について検討を行います。

 

【解説】

1.景品表示法における事業者、表示とは

(1)景品表示法の規制対象となる事業者とは?

自己の供給する商品・役務について、一般消費者向けに広告等の表示を行った者になります。この定義からすると、広告代理店や媒体社等は事故の供給する商品・役務の広告等の表示を行った者には該当しないことになります。

(2)表示とは?

結論から言いますと、一般消費者向けに行われた広告表示は全て対象になると考えてよいと思います。なお、景品表示法上2条4項では、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの」と規定されており、内閣総理大臣の指定から漏れている例外があるかのようにも読み込めます。しかし、「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」という告示によれば、

  • 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
  • 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
  • ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告
  • 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
  • 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)

と定められており、現時点で考え得る広告手段をカバーするような形になっています。したがって、景品表示法上の「表示」に該当しないから、同法の適用を免れるという考えは捨てた方が無難です。

 

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2.優良誤認表示とは?

(1)景品表示法4条1項1号にある定義規定では、
「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」

とされています。端的に言えば、品質(内容)面を強調しすぎた不当表示のことを優良誤認表示と考えればイメージしやすいと思います。

例えば、ダイエット食品(健康食品)を販売している事業者が、「レースクイーンが15キログラムもDOWN!?専門家配合サプリ」等と広告表示したことに関し、優良誤認として処断された事例があります。この事例は、健康食品でありがちな著しく強調された効能効果を用いた表現といえます。身体に作用するものである以上、各個人によって効果に差異が生じることから100%の効能効果を記載することはできません。

 

(2)上記事例の場合、広告表示に記載された効能効果や性能・品質等について、仮に真実であることが実証された場合、優良誤認として処断されることはありません。しかし、これは景品表示法として処断されないというだけであって、薬機法や健康増進法違反の問題がまだ残ります(薬機法や健康増進法は真実か否かを違反の要件としていません)。この意味で、景品表示法の問題をクリアーできたから法令違反は一切ないと即断することは禁物です。ちなみに、真実であることの証明は、広告表示を行っている事業者自らが行う必要があります。その際、証明するための合理的資料を消費者庁に提出することになりますが、その場合、次の要件を満たす資料の提出が必要となります。

  • ・提出資料が客観的に実証された内容のものであること
  • ・表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

なお、詳細については、消費者庁が公表している「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」に記載されています。

 

(3)上記事例とは離れますが、近時の環境問題への認識の高さに対応する形で、エコ商品が数多く出されるようになりました。ただ、いわゆる環境ブームに乗っただけのような粗悪品もあり、消費者の期待を裏切る商品も存在したようで、優良誤認として処断されている事例もいくつか存在します。ちょっと古いですが、公正取引委員会は、平成13年に公表した「環境保全に配慮した商品の広告表示に関する実態報告書」は今でも参考になるかと思いますので、環境保全に配慮している商品の広告表示の留意事項について以下引用します。

①表示の示す対象範囲が明確であること

環境保全効果に関する広告表示の内容が、包装等の商品の一部に係るものなのか又は商品全体に係るものなのかについて、一般消費者に誤認されることなく、明確に分かるように表示することが必要である。

②強調する原材料等の使用割合を明確に表示すること

環境保全に配慮した原材料・素材を使用していることを強調的に表示する場合には、「再生紙60%使用」等、その使用割合について明示することが必要である。

③実証データ等による表示の裏付けの必要性

商品の成分が環境保全のための何らかの効果を持っていることを強調して広告表示を行う場合には、通常に当該商品を使用することによって、そのような効果があることを示す実証データ等の根拠を用意する必要がある。

④あいまい又は抽象的な表示は単独で行わないこと

「環境にやさしい」等のあいまい又は抽象的な表示を行う場合には、環境保全の根拠となる事項について説明を併記するべきである。

⑤環境マーク表示における留意点

環境保全に配慮した商品であることを示すマーク表示に関して、第三者機関がマーク表示を認定する場合には、認定理由が明確に分かるような表示にすることが求められる。また、事業者においても、マークの位置に隣接して、認定理由が明確に分かるように説明を併記する必要がある。

なお、上記以外にも環境省が、「環境表示ガイドライン」を公表していますので、このガイドラインを参照しながら、消費者の期待を裏切らない広告表示を行う必要があります。

3.有利誤認表示

(1)景品表示法4条1項2号では、

「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」

と定義されています。

この定義規定を読むと、優良誤認と何が違うのか分からなくなってしまう場合もあるのですが、優良誤認が品質面を強調しすぎた不当表示をいうのに対し、有利誤認は、価格面を強調しすぎた不当表示とイメージすれば区別しやすいと思います。

例えば、某日の新聞折込みチラシに、化粧水(本体)については「当店通常価格2,380円(税込)の品 税込1,980円」と表示し広告したところ、実際には化粧水(本体)については、最近時の販売価格(8週間)のうち、短期間(22日間)において販売されていた価格2,380円を「当店通常価格」と表示していたという事例につき、有利誤認であるとして処断された事例があります。この事例は、過去に販売していた価格を恣意的に取り上げ、当該価格を比較対象とした点で有利誤認であるとされている点がポイントとなります。

(2)ちなみに、上記事例はいわゆる二重価格表示の事例となります。

この「8週間」という基準については、消費者庁が公表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」というガイドラインに記載のある数字となります(このガイドラインでは、8週間の過半数に当たる期間で販売されていた価格を、比較対象の価格とすることを原則的な判断材料とする等々の考慮要素が明記されています)。

二重価格表示を行う際は、上記ガイドラインを遵守することが現場実務では必須の状況となっていること要注意です(消費者庁はガイドラインに基づき形式的に判断し処分する傾向があります)。

(3)なお、上記事例のような価格の比較に以外の事例で有利誤認として処断されるパターンとして割賦販売・ローン販売があります。

ローン販売の場合に誤解を招きやすい(支払総額を見てみると安価になっていないなど)として、消費者庁は「不当な割賦販売価格等の表示に関する不当景品類及び不当表示防止法第5条第2号の運用基準」というガイドラインも公表しています。割賦販売・ローンを用いる場合はこちらも確認しておく必要があります。

4.内閣総理大臣が指定するその他の不当表示

(1)2020年1月時点で指定されているものは次の6つになります。

  • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  • 商品の原産国に関する不当な表示
  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
  • おとり広告に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示

(2)上記の中でも、業種を問わず問題となりやすい「おとり広告」についてのみここでは検討しておきます。

まず誤解のないよう触れておきますと、目玉商品を掲載した顧客誘引広告は古今東西行われており、この広告手法自体は全面的に禁止されていません。あくまでも商品・サービスを売る気が無いにもかかわらず、これを利用して他の商品を売りつけるやり方が禁止されているに過ぎません。要は、消費者にとって「だまし討ち」とならない広告手法を心がければ問題は生じないと思われます。

さて、おとり広告については、何となくイメージができるかと思いますが、消費者庁が公表しているガイドラインである『「おとり広告に関する表示」等の運用基準』によれば、広告、ビラ等における取引の申出に係る商品又は役務が実際には申出どおり購入することができないものであるにもかかわらず、一般消費者がこれを購入できると誤認するおそれがある表示と定義しています。そして、次のような4類型が規定されています。

①取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示

②取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

③取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

④取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示

4類型の詳細かな解釈については、『「おとり広告に関する表示」等の運用基準』に記述がありますので、そちらを参照して欲しいのですが、簡単なポイントだけまとめると次のようになるかと思われます。

∇①について

「取引を行うための準備がなされていない場合」とは、取引を行うための準備が一応できていても、引渡に時間がかかる場合や、一部の商品だけが準備できているに過ぎない場合であっても、これに該当します。

∇②について

「著しく限定されている」とは、予定購買数量の半数に満たない場合をいいます。「明瞭に記載されている」とするためには、単に販売数量が限定されている旨の記載だけでは足りず、商品名等の特定と実際の販売数量の記載が必要となります。

∇③について

「明瞭に記載されている」とするためには、実際の販売日、販売時間等の販売期間、販売の相手方・顧客1人当たりの販売数量の記載が必要となります。

∇④について

合理的理由」とは、例えば未成年者に対して酒類を販売しないことを指し(法令上禁止されているので合理性有り)、他の商品の方が高利益である等の販売者側の都合は合理的理由となりません。

5.比較広告

(1)はじめに

あえて比較広告を独立項目としたのは、比較広告の場合、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の両方が関係してくるため、どこかに分類することがむずしいためです。

それはさておき、比較広告については、「自己の供給する商品又は役務(以下「商品等」という。)について、これと競争関係にある特定の商品等を比較対象商品等として示し(暗示的に示す場合を含む。)、商品等の内容又は取引条件に関して、客観的に測定又は評価することによって比較する広告」と消費者庁は定義しています。

まず、間違ってはいけないのが、比較広告が当然に禁止されているわけではありません。むしろ、一般消費者にとって同種の商品・サービスの品質や取引条件を適切に比較して判断するために有用なものといえます。しかし、虚偽比較はもちろんダメですし、恣意的な比較を行って他社商品が見劣りするように印象づけるなどすることは、一般消費者の誤認を招くものとなります。

したがって、比較広告を行うこと自体は禁止されませんが、一定の限界ラインを越えれば不当表示であるとして景品表示法違反の問題が発生すると理解すれば良いと思います。

(2)一定の限界ラインとは

前述の一定の限界ラインについて、消費者庁は「比較広告に関する景品表示法の考え方」というガイドラインを公表しています。このガイドラインによれば、次の3つの要件を満たすものでなければ、不当表示となる可能性があるとされています。

①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること

(公的機関や広告主と関係のない第三者が公表している数値等が望ましいとしつつも、たとえ広告主が委託した第三者による調査結果であっても、実証方法等が妥当である限り、問題ないとされています。)

②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること

(字義通りかと思いますが、調査方法に関するデータ(調査機関、調査時点、調査場所など)を広告中に表示するのが適当とされています。)

③比較の方法が公正であること

(原則、比較項目について、一部だけを取り上げるのか、どの様な項目を取り上げるのか制限はないとされています。しかし、商品・サービス全体の機能や効用等に大きな影響を及ぼす訳ではないにもかかわらず、あたかも全体に影響を及ぼすかのごとき比較広告はダメとされています。

また、比較対象となる商品・サービスについては、当然のことながら現存する同等の商品・サービスを使用する必要があります。

なお、比較対象となった商品・サービスについて、仮に事実であっても、「信用失墜、人身攻撃にわたるもの等で、広告全体の趣旨からみて、あたかも比較対象商品等が実際のものより著しく劣っているかのような印象を一般消費者に与えるような場合にも、不当表示となるおそれがある。さらに、場合によっては刑法等他の法律で問題となることや、倫理上の問題、品位にかかわる問題を惹起することもあるので、注意する必要がある。」と付言されています。この付言は、不正競争防止法が定める信用棄損行為など他の法体系について付言した内容と考えられます。)

(3)具体例

消費者庁のWEBでは、不当表示なる比較広告の例として次のような事例を掲載しています。

  • パソコンメーカーの場合…「この技術は日本で当社だけ」と表示したが、実際は他社でも同じ技術を採用したマシンを販売していた。
  • 予備校の場合…大学合格実績No.1と表示したが、他校と異なる方法で数値化したもので、適正な比較ではなかった。
  • 携帯電話通信業者の場合…店頭チラシの料金比較で、自社が最も安いように表示したが、実は自社に不利となる割引サービスを除外して比較していた。
  • 酒類量販店の場合…新聞折り込みチラシで、「この辺で一番安い店」と表示していたが、実際は周辺の酒店の価格調査をしておらず、根拠のないものであった。

 

<2020年1月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。


弁護士 湯原伸一

「リーガルブレスD法律事務所」の代表弁護士。IT法務、フランチャイズ法務、労働法務、広告など販促法務、債権回収などの企業法務、顧問弁護士業務を得意とする。 1999年、同志社大学大学院法学研究科私法学専攻課に在学中に司法試験に合格し、2001年大阪弁護士会に登録し、弁護士活動を開始する。中小企業の現状に対し、「法の恩恵(=Legal Bless)を直接届けたい(=Direct delivery)」という思いから、2012年リーガルブレスD法律事務所を開設した。現在では、100社以上の顧問契約実績を持ち、日々中小企業向けの法務サービスを展開している。

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