最近、中小企業であっても国外と取引を行う機会が増えてきました。
この取引の際に気を付けてほしい事項の1つに、「どの国の法律が適用されるのか(準拠法)」があります。
適用法を誤って認識していると、何か事が起こった場合に救済がされず、泣き寝入り…ということもあり得る話です。
事前に法律の適用関係を確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
ご相談
最近、欧米や中国をはじめとする国外のユーザと取引する機会が増えてきました。
例えば、次の①~③のような取引を行った場合、どこの国の法律が適用されるのでしょうか。
①国外事業者が主催するプラットフォームサービスに参加する場合
②国外事業者に対して、製品の販売取引を行う場合
③国外の消費者に対して、役務提取引を行う場合
結論
①の場合、プラットフォームサービスの利用規約にある準拠法の定めを見て判断することになります。
②の場合、原則的にはウィーン売買条約が適用されますので、どちらの国の法律も適用がありません。ただし、ウィーン売買条約の適用を排除する旨合意した場合、またはウィーン売買条約に定めのない事項については、別途検討が必要です。
③の場合、消費者が自国の法律の適用を主張した場合、原則的には当該国の法律が適用されます。
解説
国外取引を行う場合、必ず意識しなければならない事項として「準拠法」の問題があります。
要は、どこの国の法律が適用されるのかということです。
この点、日本では通則法(正式名称は「法の適用に関する通則法」といいます)により、準拠法を判断することになります。
・①のついて
通則法第7条では「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」と定められています。つまり、双方当事者の合意によって準拠法を定めることが可能です。
この点、プラットフォームサービスの場合、その利用規約において準拠法に関する定めがあるのが通常です。
国外事業者の場合、日本法以外の法律が適用されることを定めていることが通常ですので、この点は要注意です(何かトラブルが発生し、国内の弁護士に相談しても、「海外法令は分からない」として相談に応じてもらえず、有効な対策を打てないことにも繋がりかねません)。
・②について
条約と法律が矛盾抵触する場合、条約が優先すると解釈されています。
このため、国外事業者向けの商品売買取引の場合は、通則法ではなく、まずはウィーン売買条約の適用の有無を検討する必要があります(なお、厳密には国外業者が属する国がウィーン売買条約の締約国である必要がありますが、アメリカ、中国、イギリスを除く多くのヨーロッパ諸国などは締約国に該当します)。
その上で、(a)ウィーン売買条約の適用を排除する特約に合意していないか、(b)ウィーン売買条約に定めのない事項が問題となっていないかを検証することになります。
もし(a)(b)のいずれかに該当する場合、準拠法に関する合意が無いかを確認し、合意があれば上記①と同じく通則法第7条によって処理することになります。
一方、合意がない場合、通則上第8条によって処理することになります。この点、通則法第8条第1項は「前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。」と定められているところ、“最も密接な関係がある地の法”とは何を意味するのか解釈が必要となります。
分からない場合は、専門家に相談したほうが無難です。
・③について
日本をはじめ海外主要国では、消費者保護法制が設けられており、当事者間で準拠法に関する合意を行っても、その合意の適用はないと定められていることが通常です(なお、通則法第10条も参照)。
なお、国外の消費者が、日本法を準拠法と定める取引条件に異を唱えなければ、当該消費者の意向に従い、日本法が適用されます。
しかし、消費者が異を唱えた場合、当該消費者が属する国の法律を確認する必要がありますが、一般的には当該消費者が属する国の法律が適用されることになります。
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