企業・事業者様よりご相談を受けていると、ある程度似通ったご相談をお受けすることがあります。
このWEBサイトを訪問されている方におかれまして、ご参考までの情報共有として、以下記載します。
ご相談
留学生として日本国内にいる外国人労働者をパートタイマーとして雇入れている。もっとシフトを入れてほしいというので、優先的にシフトを割り当てようと考えているが、何か問題があるか。
結論
留学生の場合、そもそも日本国内で就労してよいのか在留資格を確認する必要があります。そして、就労可能であったとしても、一週間の労働時間が28時間を超えないようにする必要があります。
もし就労可能な在留資格を保持していなかった場合、あるいは28時間を超えて就労させた場合、不法就労助長罪で会社が刑事罰を受けるリスクが生じることに注意を要します。
解説
1. まず、相談を受けていて誤解が多いと感じるのが、「査証(ビザ)」と「在留資格」を混同している点です。
査証(ビザ)は日本国に入国できることを示す外務省発行の証明書です。一方、在留資格は入国後に日本国内でどのような活動ができるのかを法務省が示したものです。
つまり、査証(ビザ)を確認しただけでは、就労させてよいのか判断ができないということです。勘違いしている方が多いので、是非とも押さえておきたいポイントです。
2. 一口で在留資格といっても複数の種類がありますが、その中でも文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在となっている場合、日本国内で就労させることは不可能です。
もっとも、法務省に申請し「資格外活動許可」を取得すれば、就労することが可能となります。この資格外活動許可を取得しているか否かですが、例えば在留カードの裏面左下側をチェックすれば確認することが可能です。
さて、留学生が資格外活動許可を取得したとしても、法令上、留学生は1週間当たり28時間以内でしか就労することはできません。なぜなら、留学生はそもそも勉学に励むべきだからです。この28時間のカウントですが、自社での就労時間のみならず、兼業・副業先での就労時間を合算しての時間となります。このため、留学生を就労させる場合、自社での勤務時間のみならず、兼業・副業先での就労時間をも確認しないことには、法律違反(刑事罰あり)となってしまうことに要注意です。
3. ちなみに、36協定の特別条項と勘違いしているのか、36協定を締結すれば、留学生であっても28時間を超えて就労させることは可能と思っている事業者も存在するようです。しかし、留学生に課せられる一週28時間以内就労は絶対的な義務であり、36協定を締結したから上限規制が撤廃されるという関係にならないこと、押さえて頂ければと思います。
4. 留学生を含む外国人労働者を雇入れる場合、ハローワークに外国人雇用状況の届出義務が発生すること、外国人労働者を10人以上雇入れた場合、雇用労務責任者を選任する必要があるのですが、知らない会社・事業者も多いようです。
外国人労働者を雇入れる場合のルールについては、厚生労働省が公表している「外国人雇用管理指針」を参照することをお勧めします。
5. 設問からは外れますが、近時、技能実習制度について社会問題化しています。
そもそも技能実習制度は、開発途上地位の人材育成と技術移転という国際貢献のためなのですが、現実には技能実習生は低賃金・単純労働で劣悪な労働環境に置かれているようです。このため、育成就労制度と名を変えた上で新たなものに変更される予定です。技能実習生を利用している会社・事業者は法改正動向を注意深く見守る必要があります。
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